41 鐘の音
「あ、じゃあ、すぐ戻るから」
「うん。あたしたちはもう少し休んでる」
「お気をつけて」
オレの言葉に、ナタリはテント内で寝転がりながら答え、ムーコは身体を起こして返事をする。
予定変更で、オレだけ一足先に商店街に行くことにしたのだ。商店街は目と鼻の先。長靴を売った今、早いとこ何か履き物が欲しかった。
というかナタリがまだ疲れており、暇を持て余したので先に靴だけ買っておくことにしたのだ。
すぐ商店街に入った。
町の中心部と同じように人が多く、混雑しているようだ。
ただこっちは、歩いている人たちの身なりが貧しそうだったり、怖そうな人だったりと感じる事が多いが……。
◇
雑貨屋で靴を買った。
靴といっても、草鞋だ。500ポウ。かかとまで縛るタイプで、履き方がわからず手間取ったら、雑貨屋のおばちゃんが教えてくれた。
草鞋の履き方も解らないという事から、オレが別の世界から来たマレビトだと解り、「住む場所は?」とか「仕事はあるのか?」という話になった。
テントを得たが、仕事はまだないと答えると、この国の『外壁造り』の仕事を紹介してくれた。なんでも国を丸ごと囲う外壁を造ることで『黄泉返り』の進入を防ぎ、夜中でも安全な町を作るそうだ。国をあげての計画だそうで、先日企画が決定され、募集がかかったとの事。男手ならどれだけでも欲しいらしい。
これまでは、そのスケールの大きさから難しかったそうだが、人が増え実現可能となったのだそうだ。
履き物も買え、予期せぬ仕事のツテも得た。
ツいてる。運が向いてきた。
テントも安く譲ってもらい、残高も十分ある。
ようやくこの世界で生きていけそうな見通しがついた。
自然、テントへ向かう足取りも軽くなる。
カーン。カーン。カーン。
突然、どこかで鐘の音のようなものが鳴り響いた。
なんだ?
周囲の人たちがざわつく。
男が一人、テント街に走り込んできた。
「襲撃だぁーーーーー!!」
…………襲撃?
「なんだと!? 敵は!?」
他の誰かが叫んで尋ねる。
「骸骨およそ一万3000体! くるぞ! 今すぐ逃げろーー!!」
骸骨……? 一万?
「一万!? 馬鹿な……っ」
「本当だ! もうそこまでっ……!」
「結界は!? 『結界城』はどうなってる!?」
「もう落ちた! こんな事、冗談で言うかよぉっ……!」
あたりがざわついてくる。
…………っ!?
少し遠くで悲鳴が聞こえた。
そして金属音。
これは──刀と刀がぶつかる音……!
「テントを畳め! 逃げるぞ! 早くっ!」
「仲間にも知らせろっ! 骸骨がくるぞぉーーー!!」
一瞬の沈黙のあと──、あちこちから怒声がわき上がる。
な……骸骨が来るって!? そんな……っ。
「あ、あの! テントの中にいたらダメなんですか!?」
オレは近くでテントをたたみだす人に聞いた。
「あほか! 一万3000だぞ! 『結界城』が落ちたんだっ、骸骨に囲まれて何ヶ月もテントから出られなくなるぞ!」
何ヶ月も……っ! そ、そうかっ。
「あ、ありがとうございますっ!」
礼を言って、オレは自分のテントの場所、ムーコとナタリのところへ急いで戻る。




