38 ザッシオ三人組
突然のことで、がっくり肩を落とすオレとナタリ。
だが、仕方がない。早いもの勝ちなのだ。
「ごめんね。フブ兄、私がペンダントを売らなかったから……」
ナタリが小さく言った。
「それはちがうよ。オレが自分の服でも何でもすぐ売れば良かったんだ。もたもたしてたから……」
オレも小さく答える。
仕方ないのだ。
運が悪かった。こういう事もある。
「ねぇ、そっちの子達、テント買う気だったんじゃないの?」
男の後ろから来た、なんかセクシーな格好の女がテントを購入した男に言った。
「ん?」
彼らがこちらを見てくる。
「そうなのか?」
「えっと、まぁ一応……」
男の質問に、オレは戸惑いながら答える。
「ほら、周りをちゃんと見ないから人に迷惑をかけるんだ」
さらにイケメンが来て、テントを買った男を馬鹿にするかのように言った。
「うるせぇ! オレはそのとき欲しいものしか目に入らないんだよっ!!」
男はまっすぐな奴だった。
「いや、でもまぁ悪かったな。てっきり物を売ってるだけかと」
「ウチのアホがすまない」
男二人がすまなそうに詫びてくる。
「いえ、先着順ですし、気にしないで下さい。どのみち代金が足りていませんでしたから」
「そうなのか……?」
「はい」
オレが金額が足りなかった事を伝えると、男は少し安心した。
「いくら足りなかったの?」
今度は女の人が聞いてくる。
「えっと……1000ポウほどです」
「あとちょっとじゃない。それならザッシオが横取りしなきゃ買えたんじゃ」
「横取りとかいうなよ……」
「横取りじゃないの」
ザッシオと呼ばれるテント購入男が文句を言ったが、セクシー女がキッと睨むと黙った。
「失礼だがキミ達、マレビトさんかな?」
イケメンが聞いてきた。
「あ、そうですけど……」
「なるほど……。それでテントを買おうとしてたってことは、現在は住む場所がなかったりするのかい?」
「はい。そう……ですけど」
オレは繰り返し答える。
「そうか。なら、よかったらボク達が使ってたテントを買わないかい?」
イケメンが背に丸まった荷物を軽くあげて言った。
テントを!?
「あら、いいじゃないの。ちょうど三人みたいだし……三人よね?」
「あ、そうです。三人です」
「ボク達はメンバーが増えて、三人用から六人でも使える大型のテントを探してたんだ。だから六人用を手に入れたいま、三人用テントはどうせ売ってしまうつもりだったんだけど、よかったらどうだい? ちょうどこの六人用と同じく『対人結界機能』もついてるし、人数こそは半分だが、内装などはワンランク上等のものだよ」
イケメンが持ってるテントの説明をしてくれた。
……とても良い話に思える。
「その『持ち主登録』というのは回数制限あるみたいだけど、何回残っているの?」
ナタリがイケメンに聞いた。
「ああ、すまない。忘れていた。回数はあと1回分だ。テント売りが最初の一回目、購入して少し使ったボク達が二回目。──で残りの三回目さ。だからキミ達が最後の利用者だ。つまり転売は出来なくなる」
イケメンはさわやかに答える。
なるほど。
転売は出来なくなるのか……。だがオレ達は三人組で他に仲間もいない。むしろその分安く手に入れられるなら、ありがたい話になる。
オレはナタリとムーコと顔を見合わせて頷く。買いだ。
「それは……いくらくらいで譲ってくれますか?」
オレは彼らに聞く。
「いくらで譲ってあげるの? アンタが決めなさいよザッシオ。アンタが買うとき一番そのテントにこだわってたし」
「そうだな、お前が決めろザッシオ」
二人がザッシオに値段を決めさせる。
「んーじゃあ、キミ達の手持ちはいくらだっけ?」
ザッシオがオレ達に聞いてきた。
「えっと、29万9000ポウです」
「よし。ならそれで売ろう」
瞬間、イケメンとセクシー女が思いっきりザッシオの頭を叩いた。
「痛っ! 何をするっ」
ザッシオが言うが、
「あんたこの子達のお金、全部とる気!?」
「どれだけ強欲なんだお前は……」
とイケメンとセクシー女が怒る。
「仕方ないボクが決めよう。と……その前にテント売りさんに見て貰いたい。この三人用テント、テント売りさんはいくらで買い取ってくれますか?」
イケメンが目の前であっという間にテントを開き──設置した。
おお、早い。……便利だ。
「そうデスね。『持ち主登録』が残りの一回で転売ができないので、ワタシ個人が使用する前提で考えますと──……。まだ使用期間も短いようデスし、23万ポウで買いますデスね」
「さすがお目が高いですね。確かにテント売りさんに言われたとおり、使用期間はまだ短い。実際、1ヶ月程しか使用してない美品だ。これは証明できないが、ボクの美しい顔に誓って保証するよ」
イケメンが歯をきらーんと輝かせて笑った。




