26 割烹着のおばあちゃん
この食堂で朝食を作ってくれてるおばあちゃんだ。
「あらあら、ついお話に割りこんじゃったねぇ」
「いえ……それよりも心配いらないっていうのは……どういうことですか?」
気になったので、聞いてみる。
「そりゃ~黄泉返りっちゅーもんがなんなのか、昔っから解っているからさぁ」
「昔から……?」
「そうそう。黄泉返りとは、人を襲う魔物さぁ。罪人や、怨み憎しみに囚われた者が死ぬと、ああなるのさぁ」
罪人!? 怨み憎しみに囚われた人って……
「あれ、元は人間なんですか!?」
「元は人間、でも今は死んで人ならざる存在……魔物さぁ」
死んで人ならざる……モノ。魔物……。
いや、でも──
オレが意見しようとしたら、おばあちゃんが首を横にふって止められた。
「女だろうと、幼子だろうと、きゃつらは平等に襲い、殺す。……そんなモノ……もはや人でなかろうて……」
おばあちゃんの言葉に、わずかながら哀しみの色が見えた。
いろいろあるのかも知れない……。
「……でもねぇ、『寺院の坊様方』は、そんな人ならざる存在に堕ちた者さえも救ってくださるんだ」
寺院……。
あの遺体を処理していたおじさんが、困ったらおいでって言ってた場所だ。
「まず、退魔師の先生方が、人々を襲うきゃつら黄泉返りを退治する。そして『呪物と化したモノ』を換金所を通して寺院へ運ぶ。そこで坊様方が長い時間かけて供養する」
「供養……」
「そうさ、昔っからしてきたことさ」
そうなんだ……。
「あの、呪物と化したモノってのは、お面のことですよね?」
オレは、換金所のダンディーさんが教えてくれたことを思い返す。
「そうだよぉ。面の奴らなら『お面』。骸骨なら『黒い骨』。退治した後に残る、奴らの魂が宿っているモノだよぅ」
そうなんだ……。
骸骨は『黒い骨』……か。神社での時は気づかなかったが、倒した後、黒い骨になっていたんだろうか……。
なるほど……おおよそだが、全体的な仕組みが解ってきた。
「退魔師の先生方のお仕事がわかったかい? 黄泉返りから人々を守る為に身体を張って戦っているんだよ。そして、またきゃつらを救う仕事の一端も担っているんだ……。そういう救いの仕事なんだよ、退魔師ってのはさ」
なるほど……そうなのか。
「わかりました。ありがとうございます」
「ありがとうございます。おばあちゃん」
オレとムーコが礼を言うと、おばあちゃんは「じゃましたねぇ」と笑って仕事に戻って行く。
親切だが、少し気味の悪いおばあちゃんだった。
……それにしても、『黄泉返り』。元は人間、だけど今は人ならざる存在。
退魔師……救いの仕事────。
ムーコが提案した骸骨狩りについて、少し本気で考えてみる必要があるな……。
「ねぇ……まだ時間あるし、決めるのはもう少し『仕事』や『住む場所』を探してからでもいいんじゃない? いい仕事、見つかるかも知れないし」
ナタリが言った。
確かに……。
「そうですね。まだ時間ありますし」
「そうだな……。とりあえず今日はもう仕事とか探しにいこっか」
「うん」
「骸骨の件、考えとくよ」
「わかりました」
そして昨夜決めたとおり、今日も『仕事と住む場所探し』に行くこととなった。




