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18 ミーティング



「あっ、お休みでしたか?」

「ううん大丈夫。目が覚めた。どうしたの?」

「その……今後の事などについて、お話ししたいと思いまして」

「あぁ、そうだね。そっち行く?」

「いえ、宜しければこちらで」

「じゃ、ちょっと狭いけどどうぞ」

「おじゃまします」


 ムーコとナタリが入ってくる。

 行灯に火をつけ部屋を明るくし、押入から座布団を出す。

 座布団は二枚しかなかったので、彼女たちに使ってもらい、オレは布団の上にそのまま座った。


 三畳なのでそれでいっぱいいっぱいになる。


「お茶入れますね」


 自室の茶菓子を持参してきたムーコはそれらをテーブルに並べ、お茶の準備をする。といっても、ヤカンに入った茶を注ぐだけだけど。


「これは……なんですか?」


 ムーコがテーブル上の缶詰かんづめを見て聞いてきた。

 オレが捨て猫にやるつもりだったツナ缶。ずっとポケットに入れたままで、この部屋に着いてから出して置いたものだ。


「ツナ缶だよ」

「つなかん?」

「うん。マグロの身が入ってる」

「マグロの身が!? どうしてこんな中に?」


 とても不思議そうに言うムーコ。


「保存食だよ。そうすれば何年も鮮度を保ってられて、いざというときに食べられる」

「いざと言うときに……」


 ごくりと唾を飲むムーコ。


「食べる?」

「いいんですか?」

「いいよ。猫にあげるつもりだったけど、もうあげられないし」

「猫?」

「うん。この世界にくる前に神社の軒下に捨てられてたんだ」

「そうなんですか……猫ちゃんは大丈夫ですかね?」

「たぶんね。神主さんもたまに見かけるくらいの神社だったから、そのうち誰か気づくと思う」

「そうですか」


 ちょっとほっとした表情のムーコ。


「そこのピンをあげて引っ張れば開けられるよ」

「そうなんですか……ぴったり閉じられているのに凄い造りですね」


 開け方を教えると、本気で缶詰に感心するムーコ。

 言われてみれば確かに凄い造りだ。引っ張るだけで綺麗に開けられるなんてどんな技術なんだろう……。今更ながらにオレも感心する。


「でも保存食になると言うのでしたら、今日はやめておきます。……いざという時にいただいても良いですか?」

「いいよ」


 真剣に聞いてくるムーコに、オレは軽く笑って答えた。

 お茶を飲み、一息つく。


「フブキおにーさん」

「ん?」

「今日は、その、いろいろと助けてくれて、ありがとう」


 ナタリがペコリと頭を下げた。……背負った事とかかな。


「大したことしてないよ。気にしなくていい」

「ううん。骸骨がいこつと戦ってくれたのは、とても危ないことだったと思う」


 あ、そっちか。


「あー、それは自分の為でもあったし」

「そうかもだけど、ありがとうって言いたくて」

「そうか……。じゃあ、どういたしまして」


 オレは笑って応える。

 人に礼を言われるのは、少し苦手だ。


「でも、そもそも助けてくれたのはあのビャクさんって人だから、今度会ったら一緒にお礼を言おう」

「うん」


 素直に応えるナタリ。普通によい子だな。

 しかも気を使ってか、2Mゴロツキの事には触れないでいてくれる。


「あの……私はフブキくんに、謝らなければいけないことが……」


 今度はムーコが申し訳なさそうに言った。


「謝らなければならないこと?」

「はい。フブキくんは武芸経験のない方ですよね。それなのに、フブキくんにその骸骨がいこつとの戦いを任せてしまいました」

「ああ……そんなことか」

「そ、そんなことではありませんっ。もう少しで取り返しのつかない怪我をさせてしまうところでしたっ」

「いや、でも……その時はムーコ、オレが戦えないって知らなかったわけだし」

「いえ、それは刀の扱い方ですぐにわかりました」

「そ、そうなんだ……さすが武芸者ぶげいもの

「はい。そうなのです。私は武芸者ぶげいものなのです。それなのに……私は骸骨がいこつが怖くて、一歩下がったところにいたのです」


 しゅんと俯くムーコ。


「いや、でもあんなお化けみたいな奴、普通は手を出さないでしょ。たたられるかも知れないし……」

「でもフブキくんは、戦ってくれました」


 や、それはさっきも言ったけど、自分を守る為でもあったから……。


「それを私は、一体目が上手くいったから、残り二体もフブキくんにお願いするという愚行を……。刀が通じる相手と分かれば、私こそ前に出て戦うべきなのに……。恥ずべき振る舞いです」


 膝の上でぐっと手を握りしめ、うつむくムーコ。

 そんなに気にしなくても……。


「で、でもさ、刀を持ってたのオレだけだったし……」

「いえ、私がお借りして戦うべきでした」


 かたくなに言うムーコ。

 そこまで……と思うが、これが武芸をやっていた者のほこりというものなのだろうか。


「あー、でもまぁ女の子を守るのは、普通、男の役目だし。そんな気にしないでよ」

「……フブキくん。かっこよすぎです」


 ムーコが驚いた様子で顔を上げた。


「えっ……いや、でも普通そうでしょ。逆に、男のくせに女の子の背に隠れて逃げてちゃダメだろ?」

「それは……そうですが」

「それにオレは──」


 あのスーツの人を助けられなかった。

 おめんの奴を前に、身体がすくんで動けなかったのだ……。かっこいい筈もない。


「それに?」


 ムーコが続きを促してきたが、わざわざ怖かった事を思い出させることもない……。


「いや、なんでもない。それより、さっき今後の事を話したいって言ってたけど?」

「えっ……あ、はい。えーっとですね……。今後、私たちはどうなっていくのかなと思いまして」


 どうなっていくのか、か……。



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