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17 これから……


 

 女将のご厚意に甘え、二部屋を案内して貰った。


 和風作りで、掃除も行き届いており綺麗だ。

 設備は押入おしいれに布団、枕、浴衣ゆかた。小さいテーブルにお茶と茶菓子。そして部屋の隅に、行灯あんどんという紙張りの照明具が一つ。当然テレビはない。


 まぁそれはいいんだけど、オレの一人部屋は三畳。二人部屋は四畳半ほどしかなかった。

 このあたり日本の旅館と比べて結構狭いと思う。


 でもまぁ、世界が違うのだ。旅館事情も違って当然か。むしろ不満を言っては女将の厚意に対して失礼だ。

 とりあえず疲れたので寝転がって休んでいたら、ナタリとムーコが来てお風呂に誘われたので入りに行った。


 男湯は誰もおらず、大きな風呂を貸し切り状態で気分で良かった。

 女湯とは真ん中で区切られているようで、何人かが入っているのか賑やかそうだった。

 長湯は苦手なので十分程度であがり、持ってきてた浴衣に着替える。

 そして部屋に戻って布団を出し、横になった。


 少し……ビャクさんの事が心配だった。彼は無事だろうか。

 何人も亡くなった事件ではあるが、国の門番さんに伝えたら想像以上の大騒ぎとなった。

 結局、150人はあの神社に向かったんじゃないだろうか?


 それにオレ達……元の世界に戻れないって…………。

 改めてこれまで得た情報で考えてみるが……、



 ──『その例えで言うなら、天国と地獄だろうな。距離が離れているって意味じゃあない』



 ──『ん? 一度この世界に来た奴は戻れんぞ。ここにゃそういう奴はごまんといる。けれど誰も帰れちゃいねー』



 ──『超常現象の類だ、どうしようもあるまい』



 どれをとっても、到底帰れるとは思えない情報ばかり。

 しかも極めつけが、オレ達が()とも(・・)別々《・・》()世界・・から(・・)てる(・・)っぽい(・・・)ってことだ……。


 こんなの……どうしようもない。

 さすがにもう無理だ。まさかこんな目に遭うなんて…………。


 でも……改めて考えてみると、オレの場合さした問題でもないのかも知れない。

 四ヶ月前に両親が事故で他界し、唯一の血縁者である田舎の祖父の下へ預けられた。その祖父も一月ひとつきまえに病気で亡くなっている。


 オレが急にいなくなっても、せいぜい『田舎の学生が失踪』と小さく記事になるだけだ。いや失踪者は毎年、何百何千といるんだっけ。事件にすらならないか……。


 もしかしたら田舎で出来た友人や、祖父が亡くなったときにお世話になった寺の住職が多少心配するかも知れないが、まだそう深いつきあいでもない。何処かへ行ったのか? と思うだけで、いずれ忘れられるだろう。


 他に親戚関係は一切ないし…………。

 なんだ、誰にも大きな迷惑をかけないで済むではないか。すごいな。

 それなら別に、元の世界に帰れないなら帰れないで構わないかもな……。


 ここは祖父の家がある田舎町より、ずっと自然豊かで空気もきれいだ。田舎好きで旅好きなオレにとっては、ある意味魅力的な世界と言える。この世界で安全を確保して生きていけるのならば、それも悪くないかも知れない…………けど、


 ──黄泉よみがえり。


 あんな化け物たちがいる世界で、オレは生きていけるのか?

 村にだってゴロツキ共がのさばっているのだ。治安面に不安を感じる……。


 でもこの村……いや、『ジドの国』だっけ。ここにだって普通に優しい人達がいる。換金所の人や旅館の女将さんのような人たちだ。彼らがここで生活出来ている以上、生きていけるはずだ。

 その為には──まず、安全に生活する為の『家』と、それを維持する為のお金。つまり『仕事』が必要になるだろうか……。


 仕事……。ろくに働いたことのないオレに、何か出来る仕事があるのだろうか?

 ビャクさんのおかげで多少お金は入ったが、おそらくちゃんとしないとあっという間になくなってしまう金額だろう。……宿代高いし。


 ……退魔師たいましって言ってたっけ。『黄泉よみがえり』を狩る仕事……。


 でも、あれはないな。お面三枚で15万ポウとかすごく高く換金されたけど、オレがやっても死ぬだけだろうし。それでなくても痛いの絶対嫌だしあり得ない。そもそも武芸経験もないから論外だ。あ、ムーコなら出来るのかもな……。武芸を習ってたみたいだし……すごい強かった。まぁ、とにかく何か安全でオレに出来る仕事を探さなくちゃ……だな……。うん……。


 ……。

 …………。

 うとうと仕掛けたところで戸をノックされた。


 出ると浴衣姿のムーコとナタリだった。

 風呂上がりで艶っぽいその姿に、少しドキリとする。



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