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12 原因


 

「ナタリ大丈夫か?」


 オレはナタリに手を差し伸べて起こす。


「うん……大丈夫。ちょっと痛むけど、あたしよりおにーさんの方が……」

「オレは大丈夫だよ。ちょっと見せて」


 ナタリの殴られたほおを見せてもらう。少し赤くなってる。内出血。

 けれど2メートルの大男に殴られたにしては軽傷だろうか……。いや、こういうのはこれから腫れてくるかも知れない。


「しびれとかない?」

「うん……」

「そうか…………。とりあえず早いとこ冷やした方がいいな」

「大丈夫よ。殴られたとき思いっきり当たらないように避けたから」

「そうか、ナタリは反射神経がいいな」

「えへへ」


 元気に笑うナタリ。強い子だ。

 つい、涙が出そうになる。


「フブキくん。すみません、手を出してしまいました」


 ムーコが謝ってきた。

 申し訳ないといった感じでうつむいている。


「いや……ムーコは悪くないよ。むしろ助かった。ありがとう」

「ですが……せっかくフブキくんが耐えて穏便に事をおさめようとしていたのに……のち禍根(かこん)を残すことに」


 ムーコは賢いやつだった。


「……ううん、どのみちそれは無理だったよ。オレも──いや、うん。とても穏便になんて済みそうになかった。だから、ムーコが謝る必要はないよ。オレがムーコにお礼を言うべきだ」

「フブキくん……」

「ありがとうムーコ。本当に助かった。すごいねムーコは」


 感謝を伝えると、固かったムーコの表情が少し和らいだ。


「…………オレの方こそ、ごめんな」


 今度は、オレが二人に謝る。


「えっ? なんでおにーさんが謝るの? むしろあたしが絡まれたせいでおにーさんが……」


 ナタリはなぜ謝られるのか、全くわからない様子だ。申し訳なさそうに俯いた。

 誤解は……いや、原因ははっきりしておかなくてはいけない。


「オレが軽率だったんだ。あいつら最初から『お面』が目当てだったみたいだ。貴重なものとは考えず、不用心に腰から下げてたオレが悪い。絡まれたのはオレのせいだ。それに──」


 オレは一旦言葉を切る。

 言いにくかった。


「…………それに?」


 言いよどんだオレに、ナタリが首を傾げる。


「それに……オレがデカくて強そうだったら絡まれることもなかった。オレが…………貧相なナリをしてるから……。ごめんな、嫌な思いさせちゃって」


 男として情けないが、事実だ。

 客観的事実。オレは弱い。小柄でとても強そうには見えない。

 ああいう連中にしたら、さぞいいカモに見えるだろう。

 一緒にいる二人に申し訳なく思う。


「そんな……っ。フブキおにーさんは悪くないよっ」


 オレの詫びに、ナタリが真っ向から反論した。


「お面の……ことはっ、みんな知らなかったんだからしょうがないし、その……身体が大きくないことも、悪いことなんかじゃないよっ」


 これまでのナタリにしては、はっきりと主張する。言いにくい事も……しっかりと。

 神社の時のショックで弱っているところばかり見てきたが、本当に強い子なんだな……。


 そして優しい奴。


「そうですっ。フブキくんは悪くありません。もちろんナタリちゃんもです」


 ムーコも……。

 あまりの情けなさと、申し訳なさで謝ってしまったが、女の子二人にフォローされるのもまた情けない。……落ち込んでてもしょうがないしな。


「悪いのはあの人たちですっ」

「ん。……そうだね。ごめん。ありがとう」


 いきどおるムーコに同意し、ふたりの優しさに感謝する。

 それから、腰から下げてたお面を服の中にいれた。

 これで大丈夫だな……。


「換金所、二つ前の十字路って言ってたっけ……気をつけて行こうか」

「はいっ」

「うんっ」


 二人が元気よく返事する。……気を使わせちゃってるのかもしれない。


「ムーコ、あいつらから聞き出してくれてありがとう」

「いえ、丁度良かったので」


 丁度良かったって……。

 それにしてもムーコがあんなに強いとはな……。見た目はふつうの女の子なのに……武芸ってすごいんだな。武芸というものに対する認識が大きく変化したよ。


 それからすぐ換金所に向かった。



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