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鳥居のむこうは別の世界(旧:異世界でヒロインとサバイバル共同生活する話)  作者: ふすまを閉めてく猫。
第3章 力になれることがあるのなら、力になりたいと思う
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118 譲れないもの




 ──『ヴォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!』



 木々が揺れ、空気が震える!

 なんて声だ!

 見ると、鬼の表情が激変していた!


 それは──怒り。憤怒ふんぬの表情!!

 ムーコにいいように攻撃され、しかも彼女にダメージを与えられなかったことでブチギレたのだ。


 鬼はムーコから視線を切り、オレとメイの方を見る。

 そして息を吸い込む!

 やばい!!



 ──ブォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!



 予想したとおり、奴の炎のブレス!

 ──が、

 目の前にムーコが割って入る!


烈風れっぷうり!」


 烈風れっぷう薙刀なぎなた付加効果ふかこうかが、炎を断ち切る!

 だが、熱いっ! なんて熱量だ!

 こんなのまともにくらったら、一発で丸焦げだ!


 炎が止む。

 しかし、鬼はまたすぐ息を吸い込み──



 ──ブォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!



烈風れっぷうりっ!」


 再度、ムーコが炎を断ち切る!

 が、今度は炎の放射が長い……っ!


「く……っ! 烈風れっぷうり!」


 なんとかもう一振りし、炎を断ち切るムーコ。

 彼女がぜいぜいと息を吐く。


「まずいな……。彼女の武芸はすごいが、パワーに差があり過ぎる。このままじゃ炎だけで押し切られるぞ」

「……っ」


 どうすれば……っ。

 まだオレ達の足の怪我は癒えていない。

 歩くことはおろか、転がることすら満足に出来ないっ!


 またすぐ吐かれる炎のブレス。

 ムーコが烈風れっぷうで凌ぐ!

 くそっ。

 オレ達がここにいるからムーコは避けることも出来ないのだ。

 だから正面からあんなのとパワー勝負するハメに……っ。


 肩で息をするムーコ。

 やばい。限界が近い。

 山賊をぶっ飛ばした時から合わせて、もう8回は『烈風れっぷうり』を使っている。

 村での戦いを合わせれば、それ以上!

 このままじゃムーコが倒れるっ!


 ────────っ!


「ムーコっ! 無理だ! ナタリ達を持って逃げろ! オレ達はなんとかする!」

「えっ……」

「このままじゃお前また倒れるぞ! そしたらやばい!! 逃げろっ!」

「い、いやです」

「は!? なんでだ!! おまえなら子供たち守ってここから逃げられるはずだ! 早く逃げてくれ!」

「む、無理ですっ!」


 え、なんで……。

 また吐き出される炎のブレス。 

 ムーコが凌ぐ!!

 ぜぇぜぇと息を吐くムーコ。

 もうやばい!! これ以上は倒れる!


「くっ……なんでも申しつけろって言ったじゃねぇかっ。側仕そばづかえなんだろっ!? 逃げろムーコ!」

「────っ! そ、それでも無理です!! せっかく申し付けてくれたのにごめんなさいっ。でも、フブキくんの安全が最優先なのです!」

「ムーコっ!」


 また吐かれる炎のブレス。

 それをどうにか退け、ふらふらになるムーコ。

 顔色も悪い。

 どう見ても限界だ!


「ムーコ! ナタリと子供のためにも逃げてくれ!」

「……っ!」

「このままじゃどのみち皆やられてしまう! せめてこいつらだけでも助けてやってくれ!!」

「~~~~~っ」


 ムーコが葛藤する。

 幸いおにの攻撃は止んだ。

 奴も無限に火炎を吐き続けられるわけではないようだ。

 だが時間の問題。次を吐かれたら終わる。


「あ、あたしなら平気! 自分だけ逃げたくないっ!」


 結界宝石けっかいほうせきのなかからナタリが叫んだ。

 ナタリ……!


「ナタリちゃん……」

「いや、その子は大丈夫だ。さっきも言ったが結界宝石は絶対だ。地厄じやくでも手をだせない」


 メイ……。

 それをいま言うか?


「結界は1日で自然と解除される。適度に地厄じやくから遠ざけておけば安全だよ」


 そうなのか……。

 それを聞いたムーコが、オレの手からさっとナタリと子供入りの宝石をとって、ぽいっと遠くへ投げた。


「ムーコっ」

「ごめんなさいフブキくん……。なんと言われようと、逃げるのはいやです。私はフブキくんの側仕そばづかえなのです。お守りすると誓ったのです」


 ムーコ……。


「ここで逃げては、武芸者として生きていけないのです……」


 こいつは…………。


「……祖父の教えの一つに、『他者の為に命を捨てられる者を死なせてはならん』というものがあります」


 他者の為に、命を捨てられる者を……?

 オレが捨て身で面山賊めんさんぞくからムーコを守ったことを言っているのか……?


「武芸者として、最低限・・・りたい(・・・)矜持きょうじです」


 ……ムーコ。

 ……………………。

 お前のそういうところ、心から尊敬するよ……。

 でもな……、


「メイ」

「なに?」


 オレは手ぶりで、彼に一つお願いをした。

 酷いお願いだったと思う。

 けれど彼は快く了承してくれた。

 彼もまた、尊敬に値する奴だと思った。


 こんな──ここで死ぬことがなければ、いい友達になれたかも知れない。


「恩に着るよ」


 オレはメイに礼を言い、狙いを定める。

 いくぜ──


結界宝石けっかいほうせき!」


 オレはムーコにそれを投げつけた。

 メイがナタリと子供の為に使った、宝石のなかに閉じこめる結界宝具けっかいほうぐ



 彼の胸元にあった──その(・・)最後・・()()()()



「えっ」


 フラフラになっているムーコにそれをけるすべはなく──



 ──パァアア!



 簡単に、彼女を結界宝石けっかいほうせきの中に封じ込めることが出来た。


「ふ、フブキくん! なんで!」


 ムーコが、宝石の中から辛そうな声で叫ぶ。


「わかってねーな」

「えっ……」

「ムーコもムーコのじいさんもわかってねーよ……」


 オレは、痛みをこらえてどうにか立ち上がる。


「ふ、フブキくん……?」

「お前の側仕そばづかえとしての──武芸者ぶげいものとしての誇りは尊敬するよ。……素直に立派だと思う」

「……フブキくん」

「でもなムーコ。そんなことよりも前に、一つ決まってることがあるんだよ……」

「決まっていること……?」

「ああ…………。オレ(・・)()()()()だって(・・・)ことだ(・・・)

「──っ!」



「女守るのが────男なんだよっ!!!!!!!」



 オレは『道満符』を()すべて(・・・)発動・・させた(・・・)



 絶対に──────守る!!



   ◇



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