117 地厄の脅威
「うわっ」
いや、オレ達にではない。オレ達の進む先に炎の壁が出来た!
めらめらと燃えさかる大きな炎の壁。
熱い。これでは逃げられない……っ!
奴を見るとニタァっと嗤った。
アイツ……! 知能があるのか!?
鬼はまた、倒れている山賊達を掴み喰らいだす。
「しまった。カバンが……」
見れば、メイのカバンは炎に阻まれてとれない。
これでは治癒符がとれない!
どうすれば……っ!
「これを」
ムーコがオレに治癒符を手渡す。
彼女の持っていた治癒符だ。
そして、ナタリと子供が入ったビー玉のような結界宝石も。
「怪我が回復次第、烈風で炎の壁を開けて逃げましょう」
「ムーコ……わかった」
オレは、ナタリと子供が入ったビー玉をズボンのポケットにいれる。
そしてすぐにメイと治癒符を分け、骨折した足にそれを貼っていく。
裂傷などの怪我はすぐに塞がるが、骨折や捻挫などの治癒には数分から数十分かかる。
早く治ればいいが……。
──『ハァァァァ……』
鬼が嗤う。
倒れているすべての山賊を喰らったようだ。
こちらに顔を向ける。
「なるべく時間を稼ぎます。動けるようになったら合図をお願いしますっ」
ムーコが薙刀を手に、緊張した面もちで言う。
「わかった……っ」
危険だが他に方法がない。
でも……くそっ、やばすぎる。
ムーコは時間を稼ぐと言った。倒すではなく、時間を稼ぐ──と。
それほどに──やばい敵なんだ……っ!
──すぅぅぅぅ……。
2つ頭の一方、二本角頭の方が息を吸い込む。そして──
──ブォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
先ほどの炎が、オレ達に向かって吐かれた!
「……っ! 烈風斬り!」
──ズバンッ! ブファァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
強力な烈風が炎を切り裂き、オレ達を守る。
そして、ムーコがつっこむ!
「はぁぁああああああああああ!」
奴に接近するムーコ!
そこへ、頭上から再度吐かれる炎のブレス!
──ブォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
「烈風斬り!」
──ズバンッ! ブファァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
烈風で火炎を切り裂き、奴の右側へと回り込むムーコ。
大きな拳がムーコを捕らえようと迫る!
が、
──ズバンッ!
薙刀でそれを払い、かわし、転がり、奴の背後へと回るムーコ。
奴はムーコを見失った! 上手い!
「はぁあああああ!!」
──ズバン! ズババババババッ!!
ムーコの連撃か! 鬼の背後をぶった斬る音が聞こえる!
まき散らされる黒煙。
狼狽える2つ頭の鬼。
これは……勝てる!?
一瞬期待した直後、
奴は地面に手をついて、ぐるっと身体を回した。
回れるのかよ……っ!
くっ……やばい!
ムーコは奴の目の前!
すぐに左へと回避するムーコ。だが──
──ブォン!!
奴の手のひらがムーコを払いとばす!
空高くふっとばされるムーコ!
「ムーコ!」
「──っ!」
だが、彼女は空中でくるりと身体を回転させ、地面へ向けて小さく烈風斬り。
──ブワッ!!
跳ね返る風で勢いを殺し、綺麗に着地する。
……すごい。
「ムーコ! 怪我はないか!?」
尋ねるオレに「はい! 問題ありません!」とすぐ応えるムーコ。
良かった……。
ていうか、あの状況で鬼の攻撃をガードしきったのか?
大型トラックすら弾き飛ばしそうなあの威力を……っ!?
「すごいな、あの娘……」
メイが驚く。
彼から見ても、ムーコの武芸はすごいようだ。
「もし……万が一倒せるというのなら、奴の急所は角だ。3本を同時に折れば倒せる」
「えっ、そうなの!?」
「ああ、あの角から力が流れ出ている。あれが急所だ」
マジか……。
そんなんオレには全然わからないが……。
「ムーコ! 角が急所だって! 復元する前に3本折れば倒せるらしい!」
「……! 了解です!」
「でも無理すんな! 逃げる方優先で!」
「はいっ!」
あと数分で動けるはず。
そうすればこんなトコとはおさらばだ。
瞬間、鬼が雄叫びをあげた。




