116 厄災
な、なんだあれは!?
オレ達の目の前には、2つの頭を持つ巨大な鬼。
ムキムキな肉体で、上半身だけで8メートルはあろうか……。
下半身は見えず、上半身だけが地表から生えているように見える。
「──っ!」
奴と目が合い背筋が凍る。
真っ暗で光などなく、どこまでも深い穴のような目。
まるで一切を信じない、一切の憐れみを持たない悪意の塊。
──理解した。いや、解ってしまう。
生きている者なら、間違いなく魂が反応するだろう。
──あれは災い。関わっても不幸にしかならない──と。
「ひゃはーこれでテメェらに勝ち目はねぇ!! こいつは誰にも止められ──」
──ドン!!
鬼が山賊頭を叩き潰した。
そして、つぶれたそれを摘み上げ、
2つの頭──一本角の頭と二本角の頭が、山賊頭の身体を引きちぎるようにして喰らった。
……酷い。
──『ハァァ……』
山賊頭が美味しかったのか、鬼が大きな口で嗤う。そして──
あたりに倒れている山賊たちを掴み、食べ始めた。
まずいっ。すぐ近くにはナタリと子供が──
「結界宝石っ!」
メイが叫び、ナタリと子供に何かをぶつける。
すると二人の姿が一瞬光り、消えた。
いや、よく見ると綺麗なビー玉のようなものが地面に落ちている。
「な、なにこれ!」
ビー玉からナタリの声が聞こえた。
「『結界宝石』だ。これで彼女らに危険はない。たとえあいつでも……地厄でも絶対に手出しはできない」
メイがそう説明する。
そ、そうなのか……。
見れば彼の胸元の3つボタンのうち、2つが取れていた。そこに『結界宝石』とやらを仕込んでいたようだ。
って、今──
「地厄!?」
「ああ……あれは『地厄』だ。黄泉返りがさらに堕ちた存在。まさか山賊があんなものまで持っているとは……」
マジか……。
地厄──。
たしか『退魔師の昇級条件表』で、三級退魔師への昇級条件と書かれていた奴だ。
「ど、どうすれば……」
「これまでの黄泉返りなど比較にならない相手だ。治癒符を使って逃げるしかない……」
そう言ってメイは身体を引きずり、目立たないように地面を這う。
なるほど。
メイの先には、山賊どもが奪ったメイの背負いカバンがある。そこに治癒符があるのだろう。足の怪我を治して逃げるのか。
「幸い地厄はその土地に縛られ、動くことが出来なくなった存在だ。奴から一定の距離をとれば助かるはず」
マジか……。
「あ、蔵の子供たちはどうする?」
蔵にはたくさんの囚われた女子供がいた。
「多少瘴気に当てられるだろうが、あの距離なら大丈夫なはずだ。一旦引き上げ、後で助ける。というか、他に方法がない」
そ、そうか。
確かに他に方法がない……。
「わかった。ムーコっ、撤退だ。ナタリ達を頼む。今のうちに逃げるぞ」
オレは鬼を刺激しないように小声でムーコに言う。
ムーコが頷き、了解の意を示す。
直後──鬼がオレ達に火を吐いた。




