115 激怒する戦姫
──ドスッ!
──ドゴッ!!
山賊たちが、オレとメイを蹴る。
かれこれ、10分くらいいたぶられているだろうか。
治癒符やメイのカバンなども奪われ、オレ達は地に伏している。
痛い……。
おそらく足が折れている。もしくはひびが……。
奴らはうっぷんを晴らすためか、最初にオレ達の両足をメイの金剛杖でぶっ叩いた。
それが身体を蹴られるたび、激しく痛む。
くそっ。このままじゃいずれ殺される、
どうすれば……っ。
……っ! そうだ!
「……さ、山賊のお頭さん。頼みがある」
オレは思いついた提案を言ってみる。
「あ? 聞く理由がねぇよ」
「そこをなんとか頼みたい」
「…………ちっ。なんだ? 言って見ろ」
「アンタ達は盗賊一味は、人を攫って遠くの国に売ると聞いた」
「そうだが……?」
「売るつもりだった人間すべて、オレが買い取りたい」
「…………ほぅ」
盗賊頭が感嘆する。
「いくらもってる?」
「300万ポウある」
「足りねぇな。それじゃその人質2人くらいの金にしかならねぇぞ」
「とりあえずはそれで。足りない分は、また払いにくる。その都度金と交換でもいい全部買わせてほしい。頼む」
金で解決……。
はっきり言ってきれいな解決方法ではないが、どこか酷いところにナタリたちが売られるよりまマシだ。なんとか交渉する。
「……だめだ。話にならねぇな。ここでお前を逃がせばが仲間連れてくるかもしんねぇ。その手にはのらねぇよ」
「そんなことはしない。捕まっている女子供がいるんだ。出来ないだろ? そんなこと」
「……いや、多少の犠牲を無視して数で責められちゃかわなねぇからな。悪いが無理だ。そもそも売り先はあるんだ、危険を呑んでお前に売る必要はねぇだろ。危険が増すだけだ」
……それもそうだ。
だがなんとか言いくるめないと……。
──トトッ!
ヒーハー男のナタリ達に突きつけていた刃物が、地面に落ちた。
なんだ……?
何者かがヒーハー男の背後にいる。
「はぁ!!」
そいつがヒーハー男を背負い投げした。
「ごはぁ!!」
地面に叩きつけられたヒーハー男。
そこには、薙刀を手にしたムーコがいた。
ムーコっ!
「ムーコ姉っ!」
「烈風の薙刀!!」
──ドゴォ!! ズバァァアアアアアン!!!!!!!!!!!!!
地面で気絶していたヒーハー男は、20メートル先の森の茂みまで飛んでいった。
なんて威力!
「な、なんだテメェは!!」
オレを蹴っていた山賊の一人が怒鳴る!!
が、一瞬で間合いをつめたムーコがそいつを薙払う!
──ズダン!! ズバァァアアアアアン!!!!!!!!!!!!!
また一人、森の茂みまで飛んでいった。
「許しません……よくもフブキくんを」
ムーコが激怒している。すさまじい怒気だ。
「く……っ。生意気な女め! みんなでやっちま……ぐっ」
声を出した山賊が、いきなり苦しみ倒れた。
いやそれだけじゃない。オレ達をいたぶっていた山賊らも、全員苦しみ倒れる。
「ふぅ。ようやく効いてきたか」
メイがつぶやき、山賊が手放した彼の金剛杖を掴む。
なんだ!? メイが何かしたのか!?
とにかく形勢が逆転した。
オレもすぐに退魔刀を拾う。
「お、おいっ。なんだあの化け物みたいな女は!?」
山賊頭がオレに聞いてくる。いや、オレに聞くなよ……。
奴の周りにはあと6人の取り巻き。
「皆殺しです……」
ムーコが呟く。
「ひ、ひぃいいいいい!!」
取り巻きのうち、2人がいきなり走って逃げ出した。
「烈風斬り!!」
ムーコの放つ烈風が、そいつらの背に当たり、
──ドゴォオ!!
木に激しく衝突した。
そしてその場に崩れ落ちる。
「逃がしません……」
ゆっくり山賊たちに近づくムーコ。
怖ぇ……。
いや、オレが怖がる必要ないんだけども……っ。
ドゴッ! ズドン!! バキッ!!
蛇に睨まれた蛙状態となった取り巻き連中が、ムーコによって地に沈められる。
あとは山賊頭と、ぶるぶる震える取り巻きが一人。
勝負は見えた。
ムーコが二人をのしてお終い。
彼らには同情すら感じる……。
「お、お頭ぁ……」
涙目の取り巻きがお頭をうかがう。
お頭は額に汗を浮かべて……腰に下げている布袋から木箱を出す。
また木箱。黄泉返りか?
だがさっきと同じ程度の黄泉返りなら、あっという間にムーコが倒すだろう。
でも山賊頭の持つ箱は、さっきのと違って黒い炭のように見える。
「そ、それは……っ!」
メイが驚く。
「こいつが何かわかるか、薙刀のネェチャンよ」
「……?」
「か、頭……っ! そいつはだめだ!」
先ほどまでムーコにビビっていた取り巻きが、今度はその箱にビビりだす。
「黙ってろ。他に方法がねぇ!」
「だ、だが……それで何人も喰われた! そいつだけはだめだ! そいつだけはだめだ頭ぁ!!」
「うるせぇっ!!」
その箱に掴みかかろうとした取り巻きが、頭に裏拳でぶっとばされる。
ぐふっと倒れる取り巻き。
「オレらに手を出したこと、後悔しなっ」
山賊頭が木箱を地面に叩きつける!
バキン! ──ボォワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
真っ黒な煙があたりにあふれる。
そして──
巨大な化け物がそこに現れた。
◇




