114 オレとメイの快進撃
「『阿・吽』っ!」
オレは『道満符』を2枚取り出し、放つ。
──ぼわん!
煙が上がり、2体の鬼が現れる。
鬼と言っても、オレの股下までの背丈しかない小鬼だ。
1体が『弓矢』で、もう1体『石斧』を持っている。
実はこれ、式神だ。
よくマンガやアニメなどで陰陽師などが使役し、意のままに操ったとされる式神。
宝具『道満符』は、頭のなかで想像した式神を創ることが出来た。
メイに道満符の説明を受けた後、オレはすぐにこの式神を創った。
式神を創る種類には制限がありやり直しが利かない。なので本来なら時間をかけ考えて創るのが本当らしいが、そんな余裕もなかったし、幸いオレにはすぐイメージがわいた。
「いくぞ。阿吽っ!」
オレが声をかけると、
──『阿!』
──『吽!』
と、奇っ怪な声で返事をする2体の式神。
ちなみに1体が『阿』であり、もう一体が『吽』のつもりで創ったが、出来たのは見た目の区別が付かない2体の小鬼。仕方ないので2体まとめて『阿吽』と呼ぶことにしてある。
ビジュアルをイメージするのって難しい……。
そう考えながら、オレは襲いかかってくる面山賊の刀を受け止める。
──ギィン!
そこをすかさず『阿吽』が攻撃する!
──ズドッズドッ!
──ドガンッ!
即崩れ落ちる面山賊。
が、すぐにオレの背後に別の面山賊!
──ズドッズドッ! ドガンッ!!
阿吽のうち、一体が矢で動きを止め、もう一体が石斧で倒す。
その面山賊も地に伏せる。
おぉ……すごい。
想像以上に使える!
実はこれ、ナタリと協力して面山賊を倒していったときにあいつのサポートが余りに楽だったので、そういうことが出来る奴、というイメージで『阿吽』を創ったのだ。
もちろん阿吽の武器も退魔刀の効果をイメージして創ったので、それと同じ効果を発する。
倒された面山賊は黒煙となって消え、そこにお面のみが残った。
よしっ。オレは『阿吽』と共に、どんどん黄泉返りを倒していく。骸骨だろうと面山賊だろうとお構いなしだ!
「良い感じだねフブキくん!」
「ああ! ありがとう!」
15体くらい倒しただろうか、振り返ってメイを見ると、彼は、既に残りの黄泉返りをすべて呪物化させていた。
もう!?
こいつ……すごいっ! 一体どうやって……!?
見ればメイのお面。あれから黄泉返りの『呪物』みたいな禍々《まがまが》しさを感じる。
あれも宝具……なのだろうか。
メイが山賊頭とその取り巻きに向き合う。
オレもそれに便乗する。
「な、なんて奴らだ……」
「お、お頭……マズイですよ、どうしたら」
「う、うるせぇ」
狼狽えまくる山賊たち。
よし。このままなら倒せるっ。
ナタリたちを助けられる……っ!
「ひーーはーーー! ひーーーーはーーーー! うごくんじゃねぇぇええええええ!!!」
「……なっ!」
蔵から変な男が出てきた。
そいつは縄で縛られたナタリと子供の二人を連れ、彼女らの首筋に刃物を突きつけている。
しまった……っ!
「で、でかしたニノイチィ!」
山賊頭がそう叫ぶ。
「ひーーはーーー!。動くんじゃねぇぞガキどもぉおおお。動くとつるっと刺しちゃうからなぁあああ。つるっとよぉおおお!」
そう脅して、奴はナタリの頬を舌で舐めあげる。
「ひぃ……」
気色悪がるナタリ。
「薬物中毒のニノイチ。なかなか使えやすね」
「ていうか、また蔵に無断で忍び込んで薬ってたんじゃねぇですか? またハイになってやがるし」
「だとしたら懲罰ものでしょう」
取り巻きが山賊頭にいろいろと言う。
「ひーーーーはーーーー! ひーーーーはーーーー! お頭ぁあああ! お頭ぁあああ! おれだってたまにゃあ役立ってみせますぜぇ、お頭ぁあああ! 手柄ほめてくださいよ、ひーーーはーーーーー!」
「あ~、わかったわかった。そのまま人質を抑えておけよニノイチ」
山賊頭が、仕方ねぇなって感じでヒーハー男に命令する。
だがヒーハー男は返事もせず、またナタリの頬を舐める。
「ひぃ……っ」
「うめぇぇぇええええ! うめぇぇええええ!!! おまえ薬と同じにおいがするなぁああああ! ひーーーーはーーーー!」
な、なんだあの変態は……っ。
「す、するわけないでしょ! へんたい!」
ナタリが勇敢にも言い返す。
「うめぇぇええええ! うめぇぇええええ! たまらねぇよぉおおおおお!!」
「あー……見りゃわかるが、あいつは薬中だ。大人しくしねぇとさくっと刺しちまうぜ」
山賊頭がオレたちに言う。
「大人しくしてても刺すかもしれませんけどね……」
取り巻きの一人が怖ろしいことを呟く。
くっ……。
「とにかく武器を捨てて貰おうか」
山賊頭が命令してくる。
どうすれば……。
言うことを聞かないとナタリが……。いや聞いたとしても……。
なにか方法はないのか……っ。
「ひーーーーはーーーー!! ひーーーーはーーーーー!!」
くそっ。ヒーハー野郎がうるさい。
ちらっとメイを見ると、彼は首を横に振った。
そしてつけていた面をとって足下に落とす。金剛杖も……。
メイ……。
「ほら。後はお前だけだ。その変な子鬼もしまえ」
山賊頭がオレに言う。
くそっ。何も方法がうかばない。
今にも斬られそうなナタリを前に、オレも従うほかなかった。
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