107 無理!!
オレ達は逃げた。
あんな化け物、戦えるわけがない。
一目散に逃げる。
「ど、どうするフブ兄!?」
オレとともに逃げるナタリが叫ぶ。
「あれを倒すのはオレ達じゃ無理だ! 倒せるとしたらアイツしかいない!」
「──わかった。じゃあ引き連れていくしかないね!」
「ああっ!」
運がよいのか悪いのか、頭はオレ達2人を追いかけてくる!
だがそのゴツさゆえか、オレ達より足は遅い。
「ナタリ! 東口についたらすぐテントへ入れ!」
「わかった! フブ兄は!?」
「オレは──」
──『グォォォッォォオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!』
面山賊・頭が吼える!
そして飛んでくる鉄球!
オレ達のすぐ後ろにあった小屋が粉々に吹き飛ぶ!!
「ひぃぃ!!」
オレとナタリが悲鳴をあげる。
怖ぇ……っ!
なんて怖さだ!
身体の芯から身が竦むっ!
だが、これでようやく東口が見えてきた!
「ナタリ、テントへ!」
「うん!」
「ムーコ!」
「フブキくん! 『頭』ですかっ!?」
「ああ! 倒せるか!?」
「はいっ! ですが『落ち武者だるま』の方は!?」
「そいつはオレがやる!」
ああ、勢い言ってしまった。
だが他に方法はない。せめて引きつけておく。
「──! わかりました! 一応、『後頭部』と『あごの下』以外すべて攻撃しましたが復元してしまいました! ですからそのどちらかが急所だと思いますっ!」
「マジか! わかった、ありがとう!」
オレとムーコが交差して、互いの敵を入れ替える。
──『グォォォッォォオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!』
──「はぁああああああああああ!!」
背後で面山賊・頭の雄叫びとムーコの気合い。
くそっ。こんな危険なことになるなんて……っ!
「ちくしょお!」
オレはそのまま『落ち武者だるま』へ立ち向かう。
「おおおおお!」
迫りくる髪を避ける!
捕まったらやばい! 斬って斬って斬り進む!
二刀流にして良かった! 手数が倍だからどんどん接近できる!!
奴まであと5メートル!
急所は『後頭部』か『あごの下』……。
──あごの下!?
あんなデカくて重そうな奴のあごの下なんて、どーやって攻撃すんだ!?
くっ……取り合えず後頭部だ!
落ち武者だるまの横に回り込むオレ。
奴もオレを追うようにぐるっぐるっと向きを変えてくる!
だがオレが回り込む方が早い!
「おら……っ!」
奴の後頭部に退魔刀をお見舞いする!
そして即、迫り来る髪から逃れるよう距離をとる!
奴の後頭部は黒い靄をまき散らすが──
「だめかっ」
すぐに復元する後頭部。
なら、あと考えられる急所は『あごの下』!
「フブキくん! 全力で撃ちますっ!」
「ムーコ!?」
「はぁあああああああ!! 烈風斬り!!」
──ブォン! ズブファアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!
猛烈な烈風が、だるまの体を持ち上げる!
髪は烈風でなびいて完全に無防備!
「オラァ!!」
ヘッドスライディングの要領で、奴のあご下に退魔刀を入れる!
──ズンッ!
落ち武者だるまの巨体が震えた。
そして──
──ブワァアアア!!!!
全身が黒い靄となって消えていく!
やった! 倒せた!
振り返って見ると、ムーコの背後で同じように消えていく『面山賊・頭』の巨体。
「えっ! もう倒したのかムーコ!?」
「はいっ。これは力だけの奴でしたので、前に倒した『頭』より楽でした」
「マジか……すごいな」
やっぱムーコすげぇ……。
「フブキくんもお見事です。すばらしい反応でした」
「いや……」
どっちかと言えばがむしゃらで格好悪かったはずだ。
倒せたのも、ムーコのおかげで急所の位置を絞りこめてたわけだし。
ムーコがすごい。
「無事か!?」
ヤナギダさんがこちらへ来る。
「はい。なんとか終わりました」
「そうか。よかった」
安堵した表情を見せるヤナギダさん。
数日のつきあいのオレ達を案じてくれる。
彼に南側での被害を聞くと、どうにか死者はなし。
怪我人も、みんな治癒符で治療できたとのこと。
良かった……。
「これも治癒符をくれたアンタたちのおかげだ。ありがとう」
「いえ……」
治癒符は事前に配っていた。
いざという時、すぐ手当できるかどうかが命の分かれ目となることもある。
役に立てて良かった。
なにより、村の子供達への被害をゼロに出来たのが嬉しい。
ムーコの顔を見ると、彼女がにこりと微笑む。
もうすぐ夜明け。
そう。これで防衛任務は終わりとなる。
明日には行商人さんが結界を直し、北国シーラへ案内してもらえるのだ。
そう言えばナタリが出てこない。未だテントで震えてるのだろうか。
ふふっ。戦いが終わったことを知らせてやらねば。
「ナタリー終わったぞー」
テントをあけて中を覗くと、そこにナタリの姿はなかった。
◇




