105 異変
夜10時頃。
オレ達は見張りをはじめる。
「今夜防衛すれば、近日中に北国シーラだ。油断せずいこう」
「りょーかいフブ兄」
「了解ですフブキくん」
二人が元気よく答えてくれる。
前日までの3日間、村人たちの事前情報とは異なり、日を追うごとに黄泉返りの襲撃は減っていった。オレ達が来る奴すべて討伐しているからだろう。少しずつこのあたりに生息?している黄泉返りの数が減っているかも知れない。
このままいけば、割と楽に防衛任務を終えることが出来そうだ。
だが、油断は禁物。
なぜなら、まだ村人が言っていた『落ち武者だるま』という黄泉返りが来ていないのだ。
村人の被害もそいつからが多いらしく、倒せていないから急所の位置もわからない。その姿形と、髪の毛を伸ばして人を捉え、そのまま食べてしまうという情報以外解らないので、オレ達にとっては未だ最も警戒が必要な黄泉返りと言える。
今夜も気を抜かず、がんばろう。
ちなみに、もう夜に仮眠はしていない。交代でテントで休みはするが、3人とも明け方から日中まで寝ているので眠くないのだ。おかげで、何かあってもすぐ全員が戦いに参加出来る。
まぁ昼夜逆転は健康に良くないから、あまりうれしいことではないが……。
◇
真夜中。
突然、ぎゃあと、怖ろしい絶叫が聞こえた。
見張りの方だ!
オレ達と同じ、東側を見張っている村人の悲鳴!
見れば、40メートルほど離れた場所にいる村人さんに、黒い何かが巻き付いていた。
な、なんだあれは!?
うねうねと蠢く黒いもの。あれは──髪か!
髪が森から伸び、村人の身体を捉えている!
──やばい!
すぐに駆けるオレとムーコ。
だがあっという間に引きずられる村人。
早い! ものすごい力だ!
大の男がなすがまま引っ張られていく!
「た、助けてくれぇ!」
叫ぶ村人。
「く……っ! ラッ!」
森の中へ引きずり込まれる直前、オレが退魔刀で髪を断ち切る。
髪は思いのほか簡単に斬れた。
「た、助かっただっ!」
「下がってくださいっ!」
「お、おう! あ、でも足が……っ」
村人さんは足を引きずっていた。
オレはすぐに肩をかして、村人さんと共に村の方へ下がる。
森は敵の姿が見えなくて怖い。
だが、おそらく──
「落ち武者だるま、ですね」
ムーコが落ち着いて言う。
「ああ、聞いてた奴だ」
オレのそばに、ナタリと退魔矢を持ったヤナギダさん達が来る。
すぐに足を痛めた村人さんを、もう一人の村人さんが背負い避難させる。
「ついに来たか……」
ヤナギダさんが呟く。
のそりのそりと、森の奥からそいつは出てきた。
月明かりに照らされ、はっきりと姿が見える。
──でかい。
大型のワゴン車くらいあるだろうか。
髪をうねうねしながら、こちらをギョロリと見てくる。
「……っ!」
遠方から悲鳴。
南の──畑側の方だ!
耳を澄ますと、雄叫びと悲鳴が入り交じって聞こえる。かなりの騒ぎとなっているようだ。
これまで面山賊が2体来たときも、こうはなってなかった。つまり、これはそれ以上の黄泉返りの襲撃に遭っているということ。
どーする!?
ここで目の前のこいつを倒してから助けに行くか!?
いや、でもこいつは急所がどこにあるのかわからない。
どれだけ時間がかかるのか……っ!
「ムーコ、アイツやばそうか!?」
「──! いえ、私一人なら負けません」
「わかった! オレ達は南を助けに行ってくる! 倒せなくても負けないでいてくれムーコ!」
「……っ! わかりました! どうかお気をつけて!」
「おう! 行くぞナタリ! ヤナギダさんも!」
「うん!」
「わかった!」




