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10 殺意


 

 5分程歩いただろうか。


 道すがら、換金所の場所を何人かの人に尋ねたが、「さあな……」とか「知らねー」とかで相手にされない。

 はっきり言って不親切な対応だ。


 ていうか親切そうな声をかけやすそうな人がいない。武装した人やがらの悪そうな人たちしか歩いていない。夜遅いからだろうか。


 さらに数分歩くと、人通りも少なくなってきた。

 開いている店も減り、同時に辺りも薄暗くなってくる。

 どうしよう……。


 一旦、要塞ようさい城門じょうもんのところに戻ろうかと考える。

 今なら門番さんも手があいていて、いろいろと教えてくれるかもしれない。


「キャッ」

「いってえな……どこに目ぇつけてんだガギッ」


 振り向くとナタリが尻餅をついていた。身体のデカい男達とぶつかったようだ。


「大丈夫ですかナタリちゃん」

「うん……」


 手をとってナタリを引き起こすムーコ。


「大丈夫ですかじゃねぇよ! ちゃんと前見て歩けボケッ! 詫びはねーのか詫びは? ああ?」


 いきなり怒鳴り散らす大男。


「なっ……。そっちがいきなり飛び出してきたんじゃない」


 ナタリが大男を見上げながら言い返す。


「あ~? オレが悪いってのか? オレが? あー痛てて、こりゃ肩が外れたぜ、おい」

「マジかよ。おいおいどーしてくれんだよ。仲間が怪我しちまった。こりゃ洒落になんねーぞ?」

「はぁ? そんなんで怪我するわけないでしょ。何いってんの?」


 あまりの難癖にナタリが怒る。

 ……なんか絵に描いたようなトラブルだ。


「あの、連れがどうかしましたか?」


 どっちが悪いにしろ、早く場を収めた方がいい。ちょっと怖いけれどオレは仲裁に入る。

 ていうかデカい男達、ほんとにデカいな。3人いるが、みんな二メートル近くある。2メートルトリオだ。


「おぉ……小っちぇえな。女かと思ったぜ」

「ぎゃはは、本当だ」


 ぐっ……おまえ等から見たらみんなちっせぇよ。つーか、こいつら礼儀の欠片もないな……。しかし──


「すみませんが、僕たち──ぐっ!」


 腹部に重い衝撃。


「フブキくん!」

「すみませんじゃねーんだよ。悪いと思ってんならまず慰謝料だろが。誠意みせんかい誠意」


 な、なんだこいつら……いきなり腹を殴られた。めちゃくちゃだ。痛ぇ……。

 オレはあまりの痛みに腹を抱える。嫌な汗がでる。


「そうそう誠意。おっ、いいもん持ってるじゃねーか。その腰に下げてる『面』を寄越せば許してやるぜぇ」


 男がにやけて言う。その笑みで、ぴんときた。


 ──こいつら、お面が目当てだ。


 今気づいたようなセリフだが、バレても全く構わない人をなめきった態度。最初からこれを奪うつもりで絡んできたのだ。だから謝罪の言葉などききもしない。つまりただの強奪だ。ありえねぇ……。


 それにしても、お面っていいものなのか?

 ビャクさんが駄賃代わりって言ってたけど、こいつらが奪い取ろうとするくらいには価値のあるものってことだ。だとすると、やはり宿代や食事代の為にも必要──


「黙ってんじゃねぇよっ!」


 横っ面を殴られた。……痛い。


「おっ。なんだネェちゃん。やんのか?」

「それ以上、手を出すのは許しません」


 見ると、ムーコがオレを殴った大男相手に薙刀を構えている。

 にやける大男に対し、毅然きぜんとした態度のムーコ。でも……。


「いいよ、ムーコ。だいじょうぶ」

「ですが……」

「だいじょうぶ。下がっててお願い」


 刃物なんてふるったらダメだ。こんな強そうなゴロツキ三人を本気で怒らせたらやばい。彼らもそれぞれ何かしら腰に刃物を持ってる。幼いナタリもいるんだ。喧嘩になるのだけは、絶対に避けなくちゃいけない。


 なんとか時間を稼いで警察…………警察なんているのか? ここは元の世界とは違うのだ。いないかも知れない。けど警察じゃなくても何か治安維持してる組織みたいなの、ないのか?


 ちらりと通行人が通り過ぎるのが見えた。

 みな見て見ぬふりか? くそっ。どーする。

 お面はきっと必要になる。


「……すみません。お面は僕だけのものじゃないので……一枚だけあげますからそれで──ぐほっ」


 また腹を殴られた。痛い。あまりの痛みにうずくまるオレ。


「だめだ。全部よこしな」


 なんだよ。欲しいなら無理矢理奪えばいいのに……。


 頭上から、男たちのあざ笑う声。

 ああ……こいつらお面だけが目的じゃない。オレをいたぶって楽しんでんのか……。やべぇ……どうしよう。……どうしたらいいのかわからないけど、戦うのだけはダメだ。


 誠心誠意を込めて謝る。こいつらだって人間だ。情けのひとかけらくらいあるはず。誠意を伝えるのだ。


「どうか一枚で勘弁してください。オレ達、右も左も分からない余所者なんです。お願いしますっ!」


 オレはうずくまったまま、半分土下座のように頭を下げてお願いする。

 しばしの沈黙。

 頭上から降ってくる言葉は、オレが期待したもの──

 ではなかった。


「……おいおい、こいつはすげぇ腰抜けだ」

「腰に下げてる刀を抜いて見ろよ、ああ? 喧嘩もできねぇのか?」

「すげぇカスだな」


 うれしそうに笑う男たち。

 そしてオレは頭を思いっきり踏まれ──蹴り上げられた。

 そして壁にたたきつけられる。


「……っぐ!」


 ……痛い。痛みは何度味わっても痛い。


「ちょっといい加減に────ぐっ!」


 口を挟んだナタリが、大男に殴り飛ばされた。


「ナタリ……っ!」


 吹っ飛ばされたナタリが、壁にぶつかり崩れ落ちる。

 そして、そこにつばをを吐きかける大男。

 コイツ────


 殺す。



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