輝いたままの、刹那
梅雨の 匂いがした
きみは傘もささずに笑って
ぼくの頬に小さくキスをして。
空から落ちてくるきらきらしたものを
きれいだって 言った。
今年の雨は
思い出を掻き消して
後ろ姿は雨に滲んで
ぼくは雨に打たれながら
恋しくて 泣いた
まだ好きだって 泣いた。
*
今年もまた、梅雨が来た。
あの人は今も、
変わらない笑顔でいるのだろうか。
どうしようもなくひとりぼっちだった私を
きみはいつだって
ひとりにはしなかった
笑ってくれた
泣いてくれた
抱きしめてくれた
わたしは雨降る真っ白い空の下で
空からこぼれ落ちてくる
きらきらした雫を肌に感じながら
大好きな笑顔で
わたしを見つめるきみの頬に
小さくキスをした。
そのぬくもりは今はもうない
あの日々の優しさも愛しさも温かさも
積み重なってゆく不安と哀しみと一緒に
消えることのない
きらきらした宝物にして
私は静かにふたをした
今日も雨が降り続く
昔も今も、私は弱い。
雨に流されないように
過ぎてゆく時間に
色褪せないように
わたしはきみと過ごした日々を
今も想い出という名前の
ガラスケースの中で輝かせている
いちばんきれいな瞬間を
いちばん愛しいきみを
失うことがないように。