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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第4章 交錯する3人の主人公たち
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第九十六話 意外なる参加者!? 北アルガスタ予選(後編)

『ゾッ帝の個人的な考察No.12』


ゾッ帝原作では『父親』というのはかなり重要なワードです。

母親は登場しませんが、父親のみ登場しているキャラクターが多いです。

また、それらの父親キャラクターは全て何らかの『悪行』ほしています。

(程度の大きさはともかく)

裕P先生は父親という存在に何か特別な感情を持っているのでしょうか?



 その後も受け付けをしていたメノウとショーナ。

しかし結局参加者はほとんど集まらなかった。

グラウとシャムが参加した後、しばらくして一人。

そしてその後、二人組の男たちが参加。


「合計五人か、少ないな…」


「ここから四人の代表を決めるのか?」


「いや、どうやら違うみたいだぜ」


 北アルガスタは予選参加人数自体が非常に少ない。

毎回十人集まるか、集まらないかという程度である。

そのため、ここから選ばれる代表者は、他の地区の半分。

つまり、『二人のみ』となっている。


「ちょっとまてショーナ」


「どうしたメノウ?」


「それじゃとガランでの本戦の時、人数が合わなくなるのではないか?」


 メノウは以前、各地から四人を集め合計十六人で戦うと聞いていた。

しかし、北アルガスタで二人だけだと人数が合わなくなってしまう。

のこり二人はどこから集めるというのか。


「敗者復活戦から二人選ぶらしい。これで合計十六人だ」


「なるほどな」


「それよりメノウ、そろそろ会場の中入ろうぜ。もう少しで予選も始まるだろうしな」


 ショーナの言葉を聞き、持ってきたカバンから包みを取り出すメノウ。


「弁当持ってきたが一緒に食べるか?」


「朝から作ってたのはそれか!」


「まぁのう。水も持ってきてある」


「おお、ありがとな。一緒にいただくよ」


 そう言って会場へと入る二人。

他の地区とは違い、参加者以外の人間はほとんどいない。

観客はまばら、運営スタッフも数人しかいない。

広い会場がひどく殺風景に見えた。

 しかしそんなことは気にせずに、観客席に座るメノウとショーナ。

持ってきた弁当を広げ、食べながら観戦をすることに。


「ほれ、ヒヨコパン。それと魚の揚げ物じゃ」


 小ぶりの丸いパンと小さな魚の揚げ物。

それらがたくさん入った弁当箱を差し出すメノウ。

なるほど、ヒヨコの名を持つだけはある。

彼女の差し出したヒヨコパンとは、ヒヨコの形をした黄色いパンだった。


「ひよこ…そうか、両方ともヒヨコマメの粉で作ったのか」


 そのパンが、メノウの好物であるヒヨコマメから作られたということは容易に想像がついた。

ヒヨコマメの粉であるペザン粉を使い、揚げ物の衣とパンを作ったのだろう。

よく見ると野菜の切れ端で目やくちばしなどの装飾品も作ってあった。


「ふふふ、当たりじゃよ」


「揚げ物は泥臭さも無いし、パンともよく合うよ」


「川魚は泥抜きが重要じゃ。そこは時間を掛けたぞ」


「こういう料理って俺好きだぜ」


「好き…か?」


「ああ、好き…」


 以前のことを思い出し、少し顔を赤める二人。

ショーナが、手に持っていた揚げ物とパンを口に放り込むと急いでもう一つを手に取る。

照れ隠しの様にたくさん食べようとするあまり、変なところに料理が入ってしまった。


「ウっ!げほっ…」


「急ぐからじゃ。水をのめ」


「あ、ありがとう…」


「そ、それよりもうすぐ予選試合が始まるみたいじゃぞ…」


 控室から出てくる五人の参加者たち。

灰色の少女グラウ、北のアルガスタの支配者シャム。

そしてその他三人。


「負けるんじゃないぞ、灰色のー!」


「この相手にグラウは負けないだろ」


 グラウは以前、シェンの操る青龍型ハンターや人斬りミサキと互角以上に戦っている。

また複数の強敵を倒していることから、戦闘能力はかなり高いのだろう。

それに対し、この予選の参加者はシャムを除き一般人のみ。

うち二人はガラの悪いチンピラのような男。

もう一人はそこそこ腕に自信がありそうな格闘家の青年だが…


「あのシャムという男は油断できぬからな」


「…まぁ、どんな戦いをするのか見ておくのも悪くは無いか」


「それよりヒヨコパン、もう一つどうじゃ?」


「お、じゃあもう一つ。揚げ物も…」


 そう言って弁当箱から料理を取るショーナ。

と、そのとき予選の参加者たち五人が同時に試合場へと立った。

その光景に違和感を覚える二人。

係員たちが試合の準備を進めていたことから、これから試合が始まるのは間違いが無いはずだが…


「なんじゃ、試合を始めるのではないか?」


「そういえばシャムさんが以前、『特別ルールがある』とか言ってたな…」


「あの時のか…!」


「たぶんそれが関係してると思うぜ」


 以前シャムが言っていたことを思い出すメノウとショーナ。

と、そこに…


「…全員同時に戦うの…この試合」


 メノウとショーナの前に現れたのは、シャムと共に行動していた少女シャドだった。

ゾット帝国騎士団の服とマントに身を包み、茶色の髪を大きなリボンで束ねている。


「全員同時に?」


「そう…」


 全員同時に試合を行い、残った二人が王都ガランでの本戦に進める。

つまり俗に言う『バトルロイヤルルール』だ。

確かに他の地区では絶対に行われない、いや行えないルールだ。

参加者の少ないこの地区だからこそのルールだと言える。


「シャド、お前さんも食べるか?ヒヨコパン」


 パンを差し出すメノウ。

しかしシャドはそれを警戒しているようだった。

以前、メノウは勘違いとはいえ彼女の父のような存在でもあるシャムに攻撃を仕掛けたのだ。

無理も無いだろう。


「…以前のことは悪かった」


「…あの人を攻撃した」


「仲直りがしたいのじゃ」


「俺からも頼むよ。メノウも昔いろいろあって…」


 ショーナの言葉を聞き、少し警戒を解くシャド。

彼に対しては少し心を許したらしい。

メノウのヒヨコパンと揚げ物を受け取り、ともに試合を観戦することに。


「うまいかー?」


「うん…おいしい」


「よかった」


「ショーナ、そろそろ始まるようじゃ」


 少し広めの試合場に立つ五人の参加者たち。

この状態で五人が同時に戦い、残った二人が本戦に進める。

これならば試合時間もさほどかからず、結果が決まるだろう。


「あのシャムという男、そして灰色の…」


「なぁメノウ、どれくらいで決まると思う?」


「一瞬…じゃな」


 シャムとグラウ以外の参加者はあくまで一般人の域を出ない者達だ。

試合は一瞬でケリがつく。

メノウはそう考えた。


「試合、始め!」


 審判のその声と共に試合の火ぶたが切って落とされた。

二人組の男がそれと同時にグラウに襲い掛かった。

身長二メートル近くの巨漢が彼女に拳を振り上げる。


「ケガだけじゃすまないかもなぁ!」


「確実に一人ずつ潰してやる!」


 しかしその二人の拳をグラウが軽く避ける。

その場から一歩も動かず、上半身を僅かにずらすことで二人の攻撃を無力化したのだ。

避けた際の勢いを利用し、一人に拳を放ち試合場の外へと弾き飛ばした。

さらに返す刀でもう一人に鋭い手刀を放ち、その場に気絶させる。

攻撃を受けてからこの間、僅か一秒足らずのことだった。


「…そ、そこまで!試合終了!」


 審判の声が再び海上に響き渡った。

グラウが二人の男たちを倒したのとほぼ同時に、シャムが武闘家の青年を倒していたのだった。

シャムの足元には、彼が倒したであろう武闘家の青年が倒れている。

目立つ外傷も無いことから、軽く気絶しているだけなのだろう。


「あっという間に終わったぜ、メノウ」


「やはりな」


 勝負を冷静に見据えるショーナとメノウ。

試合に敗れた三人の参加者達が担架で運ばれ、試合場に残るはシャムとグラウのみ。

だがグラウは何か物足りようだった。


「…試合は終わったが、このまま黙って退場するのでは少し物足りないとは思わないか?」


 確かに勝負はついた。

シャムとグラウ、二人が勝者だ。

王都ガランへの本戦はこの二人が参加することとなる。

しかし、ただそれだけでは面白くも無い。


「それで、なにをする気なんだい」


「簡単なこと。貴方と私で勝負をし決着をつけたい」


 いつもと同じく灰色のローブを深く被っているグラウ。

そのため、彼女が何を考えているのか表情から読み取ることはできない。


「もちろん、本戦の参加権など関係無く。受けてくれるか?」


「なるほど、決闘だね。おもしろい」


「ルールはこの予選と同じ。試合場もそのまま使わせてもらいたいが…」


「ええ、オッケーですよ」


 淡々と話すグラウに対し、明るく答えるシャム。

彼が大会運営の係員に事情を話し、試合場を少し使わせてもらえることとなった。

皆の了承を取り、シャムとグラウの特別試合が開始されることとなった。

先ほどの審判がもう一度、試合開始の宣言を宣言する。


「番外試合を始めます。試合、開始!」


 審判の声とともに、グラウが距離を一気に詰めた。

おそらく短期決着を着けるつもりなのだろう。


「あやつは長期戦は苦手なのか…のぅ…?」


 観戦をしているメノウが呟いた。

これまでのグラウの戦い方を見る限り、彼女はあまり長期戦は得意ではないようだった。

いずれの戦いも、ほぼ一瞬での決着をつける戦いをしていた。

 逆にそれらが出来なかったミサキとの戦いでは少々苦戦を強いられていた。

小柄な分、長期戦だとスタミナが持たなくなるのだろうか。

いや、何かそれ以外の理由もあるのかもしれない…


「速いけど…速い!」


 シャムがその動きに合わせ、受け身の姿勢を取る。

完全に避けることは不可能。

被害を最小限に抑えるため攻撃をあえて受けたのだ。


「いやぁ、まいったね…」

 

 受け身を取ったためダメージはそこまで通ることは無かった。

体勢を立て直し、シャムが戦闘態勢をとる。


「本戦までこれは使わないつもりだったんだけど…」


 その声と共にシャムの姿が一瞬消えた。

瞬きをするほどのほんのわずかな時間だった。

次の瞬間、彼はグラウの前に姿を現した。


「なッ…!」


「よし、おっけ!」


「縮地かッ…!?いや違う!?」


 咄嗟に 攻撃を受け止めカウンターの一撃を放つグラウ。

しかしほぼ同時にシャムも攻撃を放っていた。

互いに攻撃を受けた二人は正反対の方向へと吹き飛ばされた。

試合会場の床に勢いよく叩きつけられる二人。


「うぐッ…」


「おぉ…」


 そう言いつつ立ち上がる二人。

戦い自体は続けられるかもしれない。

しかし試合場が二人の戦いにより破壊されてしまった。

もともと単なるバトルロイヤル方式の予選用に作られた簡易施設。

激しい戦いに耐えられるつくりにはなっていないのだ。


「この戦いはここで分け、じゃな…」


 メノウが小声で呟いた。

これ以上の試合続行はこの場に居る全員にとってデメリットにしかならないだろう…


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