第九十三話 その名は『シャム』!もう一つの伝説
『ゾッ帝の個人的な考察No.9』
ゾッ帝原作に登場するキャラクターの個人的な考察を少し載せて行こうと思います。
まずはこの作品に未登場の原作キャラから。
名前:ネロ 性別:男 歳:11 一人称:ボク
恰好:黒いハットを斜めに被り、黒ぶち眼鏡を掛け、左耳にピアス。
服は白いシャツに黒いジャケットを羽織り、左手の小指と中指に指輪を嵌め、右手首にブレスレット。下はデニムパンツにスニーカーを履いている。
武器:改良した武器
キャラ説明:カイトの幼馴染
クールで冷静沈着。武器を改良するのが趣味。
「カイト。お前は後先考えずに行動するな。いつか大切なモノを失くすぞ」
名前の由来はローマの『皇帝ネロ』でしょうか?
某アニメや某ゲームに同名の人物や犬がいますが関係は無いと思います
カイト編に『光秀』というキャラクターが登場しているので、キャラの名前を歴史上の人物からとるというマイブームでもあったのでしょうか?
普通に考えればあまりプラスのイメージの無い『明智光秀』の名前や、イメージ最悪な『皇帝ネロ』の名前を主人公側のキャラクターの名前に採用するとは考えづらいですが、Sな裕P先生ですので…
あるいはイタリア語で黒を意味する『NERO』からという可能性も。
ゾッ帝のネロは黒い服装をしているため、こちらからの方が可能性は高そうです。
その場合、裕P先生は洋画好きなため、イタリア映画からインスピレーションを得た可能性があります。
ちなみに、この外伝である『丘の民』の主人公である『メノウ』の初期案の名前は『プラシノ』や『ミドリ』、『トラコ』でした。ショーナの名前は数秒で考えました。
続きます。
北アルガスタの軍閥長からの使者の案内の元、用意された馬車で進むショーナ。
そしてそれにアゲートを駆りついて行くメノウ。
ショーナは馬車の中で使者の老人にこの北アルガスタについての話を聞くことにした。
北アルガスタは他の地区と違い、あまり人も住んでおらず発展もしていない。
そのため、この地区に関する情報は他の地区にはほとんど入ってこないのだ。
当然、ショーナもほとんどこの地区については知らない。
「あの、この北アルガスタについていろいろと話を聞きたいんですけど…」
「はい。どのようなことでしょうか」
「この北アルガスタの人口っはどれくらいですか?」
「山間部に住む者達がいるのではっきりとは分かりませんが、少なくともこの町には約千人ほどが住んでいます」
千人という数字は軍閥長が住む町としてはあまりにも少なすぎる。
まともな経済活動自体が行えているのかさえ疑問だ。
その後の話によると、この地区に住む殆どの者は自給自足に近い生活を送っているらしい。
他の地区からくる旅行者のような者も一応いるため、そういった者向けの商売などもあるようだ。
「なるほど…」
「なにしろ豊富な自然しか取り柄が無い地区ですから、しょうがないですよ」
馬車から外を眺めると確かに壮大な自然が眼に入る。
列なる山々、流れる川、広がる森。
メノウは気に入ったのか、アゲートを駆りながらも自然を満喫しているようだった。
「自然が多いのは良いことじゃ。ワシは好きじゃぞ」
「そう言っていただけると私もうれしいです」
「ところで軍閥長のいるのはどこですか…?」
「もうすぐ見えてきますよ」
案内人の老人の言うとおり、すぐに目的地である軍閥長の屋敷が見えてきた。
屋敷といっても、古びた洋館を改装したような建物だった。
広いと言えば確かに広いが、軍閥長が住むような建物としては少し物足りない。
王都ガランに行けばこれよりも大きな屋敷に住む金持ちは大勢いるだろう。
他の地区の軍閥長の居た場所と比べてもやはり見劣りしてしまう。
「ささ、どうぞ」
門を潜り、屋敷に入っていく。
古いとはいえ、庭園は丁寧に手入れがされていた。
屋敷自体も何度か塗り直しがされているらしく、少なくとも汚れているわけでは無い。
「きれいな庭じゃなぁ…」
他と比べ寒い地区であるにもかかわらず、庭園には沢山の花が咲いていた。
よほど丁寧に手入れをしてあるのだろう。
育てるのが難しいであろう種類の物も多くあるが、それらも美しく花を開かせていた。
「それでは…」
屋敷へと入り来客をもてなすための応接室へと案内される。
応接間とはいえ豪華な作りでは無く、どこか事務的な部屋だった。
案内の老人はここで下がり、代わりにメイドがメノウ達をもてなした。
この屋敷にも人はほとんどいない。
十人いるかいないか程度だった。
「どうぞ」
「あ、どうも」
茶と茶菓子を出され、軽く礼をするショーナ。
「もうすぐで軍閥長がお見えになります。少しお待ちください」
そう言うとメイドが部屋から退出した。
そして待つこと十分弱。
「のぅ、ショーナ。まだか?」
「まだだよ。いい加減に警戒解いたほうが…」
「今までの事があるから身構えてしまうんじゃよ」
数年前、このゾット帝国には四人の軍閥長がいた。
西のアルガスタの支配者、ジョー。
東のアルガスタの龍皇、大羽。
南のアルガスタの独裁者、モール・エレクション。
メノウはそのうちの二人と出会った。
大羽とエレクション、その両者は敵としてメノウに立ちはだかってきた。
「確かにそいつらは悪人だったかもしれないけどさ」
「北の軍閥長はいいヤツだと思いたい。しかしのう…」
西のアルガスタの支配者だったジョー、彼とメノウは直接会ってはいない。
しかしその悪行は数多く聞いている。
彼も他の者達に劣らないほどの悪人と言えるだろう。
しかし数年前に既に失脚しているが。
「さすがに考えすぎだって!」
「そうじゃのう、さすがに考えすぎじゃな」
そう話していると、ふと応接間の扉をノックする音が聞こえた。
乾いた木の扉を叩く音が部屋に響く。
「お待たせしました。この方が『北アルガスタ』の軍閥長です」
メイドがそう言うと共にゆっくりと扉が開いた。
部屋に足を踏み入れる北アルガスタの支配者。
その顔にメノウは…
いや、ショーナとメノウ、二人はその男の顔を知っていた。
その男の風貌、それは…
「お、お前さんは…」
「も…『モール・エレクション』…!」
メノウとショーナの前に現れたのは、かつての南アルガスタの軍閥長『モール・エレクション』と同じ顔を持つ男だった。
数年前、南アルガスタを支配し多くの民を虐げてきたあの暴君の顔とウリ二つの顔だったのだ。
「アイツは死んだと聞いていたけど…」
「生きておったかッ!」
拳を握りしめたメノウがその男に飛び掛かった。
かつて黒騎士ガイヤとその妹の運命を弄んだその男がまだ生きていた。
そのことが彼女を突き動かしたのだ。
「女子、とりあえず落ち着け」
「な…受け止めた…じゃと?」
室内であったため必殺技の幻影光龍壊を使ったわけではないものの、それでもこの一撃にはかなりの力を込めていた。
それをこの男は軽く受け止めたのだ。
受け止めた際に発生するはずの衝撃も全て受け流し相殺。
周囲に一切のダメージを与えることなく、メノウの一撃のダメージを殺していた。
「くっ…!」
「たぶんね、人違いだと思うんですよ。私は『モール・エレクション』ではございません」
「なんじゃと?」
「私の名は『シャム』、あの男とは別人」
その男、『シャム』はそう言ったが、二人にとってはそんな話を信じられるわけが無い。
一旦このシャムと名乗る男と距離を取るメノウ。
拳を構え、戦闘態勢を取るショーナ。
と、そこに…
「…ダメッ!」
「おぅ!?」
突如、部屋に飛び込んできた少女がメノウを突き飛ばした。
声にならぬ声を上げ、メノウはその場に倒れこんだ。
「…やめて」
そう言ってメノウ達の前に立つ少女。
歳は十かそれに満たない程度。
背もメノウよりさらに一回りは小さい。
整った茶色のショートヘア、そして『犬耳』が特徴的だった。
カチューシャの装飾だろうか?
「あ、こら」
シャドの頭を軽く撫でながら、彼女をなだめるシャム。
一応、シャドは騎士団所属なのだろうか。
彼女はゾット帝国騎士団の鎧を身に纏っていた。
以前、カイトが着ていた物と同じものだ。
細部の色は多少異なるが。
「ごめんなさい」
「あっだ!もうシャド、この人たちはお客様だよ。今は下がっていなさい」
「…はい」
シャムに言われ、部屋から去っていくシャド。
改めてシャムは話を再開した。
「モール・エレクションは私の兄だった男です」
「…つまりお前さんはヤツの弟じゃと?」
「そういうこと~になりますね。ええ」
身体の特徴から顔。
この男は、それら全てがあのモールエレクションと同じだった。
しかし唯一違う物があった。
それは彼の持つ『威厳』だった。
どこかあの男とは違う、堂々とした佇まい。
落ち着いたその態度にメノウの攻撃を咄嗟に受け止める力。
それらはあのモール・エレクションが持っていなかった物だ。
「…嘘は言っていないようじゃな」
「この女子、いい感じだで」
「女子じゃなくてメノウじゃ」
メノウは嘘を見抜く力に非常に長けた観察眼を持っている。
彼女はこのシャムという男が嘘を言っていないということを見抜いた。
しかしそれでも、シャムが何を考えているのかがいまいち掴めなかった。
「しかしいいのか?ワシとショーナはお前さんの兄のかたきのような存在じゃ」
「俺とメノウが直接手を下したわけじゃない。けど…」
それを聞き、シャムは軽い笑みをこぼした。
何か悪事を考えているような笑みでは無く、ごく自然な笑みだった。
まるで親しい友人と話している子供のような笑みだった。
「弟である私が言うのもアレなんですけどね、別に気にしてはいないですね。ええ」
シャムとモール・エレクションは、共に英雄『YK・ニック』の息子だ。
モールが兄でシャムが弟である。
しかし長男のモールはとにかく出来が悪かった。
頭も、素行も、運動能力も。
逆にシャムはその全てを持っていた。
どの分野においても天才的な才能を、そしてカリスマを持っていた。
「私は父を尊敬していましたよ。段々小さくなっていく父の背中に哀愁を感じたり…」
「でも確かモール・エレクションは…」
「…俺が許せないのは父を道具として扱う男だ」
モールはYK・ニックの死を偽装し、その地位を自分の物としていた。
父を尊敬していたシャムにとってそれは決して許せることでは無い。
そのモールを下したメノウ達に対し、シャムは恨みの感情を抱くわけが無い。
「…そうか。なるほど。お前さんはあの男とは確かに違うようじゃな」
「わかってくれて光栄でございますぅぅぅ…」
そう言うシャム。
ふと気が付くと、先ほど部屋から出された少女、シャドがドアを少し開けこちらを覗いていた。
何かを心配するようなその眼、シャムのことを心配しているのだろうか。
「来いホイ」
「…はい!」
嬉しそうな顔をしながらシャムの膝の上に乗るシャド。
どうやら根は甘え好きのようだ。
その様子を見たショーナがシャムら尋ねた。
「シャムさん、この子は?」
「この子はシャド、私の分身のような存在です」
彼の話によると、どうやらシャドという少女は戦災孤児だったらしい。
そんな彼女を軍閥長であるシャムが拾い、育てているそうだ。
意外と運動神経も高く、北アルガスタの騎士団に僅か十歳で所属しているという。
「やっと紹介してくれたね、私はシャド。よろしく」
「まったくまったく…」
そう言いながら彼は、膝の上に乗るシャドを優しく撫でた。
それを中断するようで悪い気もするが、メノウは断りを入れつつ話を聞くことにした。
この地区での討伐大会予選についてだ。
「すまぬが、話を聞いてもよいか?」
「ん、ああ。かまわないよ」
「この地区の討伐大会予選についてなのじゃが…」
「予選?ああ、あれか。この地区ではやらないよ」
軍閥長であるシャムから返ってきた思わぬ一言。
この地区では予選はやらないというのだ。
以外過ぎる答えを聞き、少し呆けたような表情を取るメノウとショーナ。
そんな二人に対してシャムが慌てて話を続けた。
「ああ、すまない。やらないというわけではないのだが、少々特別な方法でやるんだよ」
北アルガスタでは参加人数自体が非常に少ないため、近年は特別ルールによる予選が行われているらしい。
そのルールとは、参加者全員による『バトルロイヤル』形式による試合だ。
参加者全員が試合場で戦い、残った四人が王都ガランで行われる本戦へ行ける。
この方法ならば狭い試合場でも、時間と人員を掛けず予選を行うことが出来る。
「まぁ、近年は参加者も大体同じようなメンツなんだけどね。一応お祭りで経済効果もあるから、惰性でやっている感じかな。軍閥長である私が言うのもアレなんだけど」
「なるほど…」
事情は知っている、その言葉に若干の違和感を覚えるメノウ達。
しかし今回は彼の厚意に甘えることにした。
シャム 性別:男 年齢:33
大戦時の英雄『YK・ニック』の息子。
そして、元南アルガスタの軍閥長であるモール・エレクションの弟。
兄であるモールとは比較にならないほど優秀な頭脳と卓越した能力を持つ。
何か不思議な雰囲気の男だ。
外見はモールと瓜二つだが、シャムは常に大きめのサングラスを着用している。




