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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第4章 交錯する3人の主人公たち
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第九十話 嵐の前の静けさ

『ゾッ帝の個人的な考察No.6』


そもそも『ゾット帝国』とは どのような地区が存在しているのでしょうか?

原作に登場する主な舞台は

・禁断の森 (広大な森。遺跡もある)

・王都ガラン (中世の街)

・港町キリカ (西のアルガスタにある港町。現代風な施設もある)

の三つです。

このような三つがゾット帝国では共存しています。

名前やほんの少しふれられただけの場所も含めれば、

・ズール砂漠 (ミサイルの実験が出来るくらい広い場所)

・禁断の森の遺跡以外の、別の遺跡多数

などもあるようです。

森の中にある実在の遺跡といえば、『アンコールワット』や『インカ』などの者が有名です。

一方、王都ガランは中世ヨーロッパ的な雰囲気をしています。

港町キリカは現代風な街並みなので正直よくわかりません。

そして砂漠や多数の遺跡の数々。

このことから、『ゾット帝国』は結構大きな国ではないかということが想像できます。

砂漠や広大な森もあるので、実在の国に当てはめるとオーストラリアや中国のような感じでしょうか…?


なので、この外伝である『丘の民』では一応オーストラリアを少しイメージして書いています。


「…まったく!お主というやつは」


 レオナと出かけたあの日から数日。

メノウ達はショーナのいる宿へと戻ってきていた。

ウェーダーは疲れたのか自室へ、ジンは王都への連絡のため電話を借りにいった。

部屋に残されたのはメノウとショーナの二人。

ショーナがこっそり抜け出し、街で遊んでいたことに気付いたメノウの怒声が宿に響く。


「あれほど勝手に出かけるなと言ったじゃろうに!」


「ご、ごめん」


「カイトの奴でも待つことくらいはでき…いや、できるか…?

ともこく、この街に魔王教団の奴らがいるのは確実じゃ、あまり出歩かない方がよい」


 この港町キリカには僅かにだが、妙な魔力の乱れがあった。

以前、シェンやミサキといった魔王教団の眷属たちと出会った時と同じ感覚だった。


「わかったよ。ごめんな…」


「わかればよい」


「そうだ、メノウ。これ…!」


 抜け出した際に、レオナと共に行ったゲームセンターの射的で手に入れた銀色のドッグタグ。

それをメノウに渡すショーナ。


「ワシに…?」


「街で手に入れたんだ。くだらないものだけど」


「こ、こんなものでごまかされるとでも…!?」


 そう言いつつも、少し嬉しそうな表情を見せながらドッグタグを眺めるメノウ。

それを懐にしまいつつ話を続ける。


「…ありがとうな」


「ちょっとしたゲームでもらった物なんだ。

誰もいなくてずっと退屈だったからさ…」


「…確かにずっと部屋の中というのも退屈じゃな」


「え?」


「今夜、皆でどこかに食事にでもしに行こうか」


「あ、ああ!」


 現在の時刻は十五時丁度。

あと三時間ほどしたら食事に出かけるという。

ウェーダーとジンにこの事を伝えに行くショーナ。

だが…


「ウェーダーさん、夕食についてなんですが」


「どーしたんだよ…ショーナ…」


 どうやら寝ていたのか、目をこすりながら自室から出てきたウェーダー。

ジョーの研究所へ行き、帰ってくる間ずっと彼が車を運転していたのだ。

ほぼ片道だけでも半日以上休憩なしでの運転はさすがに堪えたのだろう。


「メノウが夕食は街に出て食べようって…」


「すまん、俺はパスだ。ずっと運転しっぱなしで疲れた。眠いんだ…」


「そうですか…」


「気持ちはありがたいんだが悪いな…」


 あくびを堪えながら部屋へと戻って行くウェーダー。

この調子では、とても外出など無理だろう。

続いてジンにも話を伝えに行くショーナ。


「それはありがたい。少し仕事が残っているのですぐ終わらせよう」


「三時間後くらいに出かけるみたいですよ」


「わかった」


 残念ながらウェーダーは欠席するようだ。

また彼の疲れがとれた頃にもう一度誘うことにしよう。

そう考えつつ、メノウとショーナは時間を潰すため宿の大広間でゲームをすることに。

何個か暇つぶし用のゲームが置いてあったためそれを借りることにした。


「なにをする?(サイコロ)か、それともカードか?ボードゲームか?」

 

「じゃあサイコロでいいよ」


「よ~し、それでは賽を十個用意して…」


 二人でサイコロゲームで時間を潰していると、あっという間に時間が過ぎて行った。

ふと気が付くと、既に三時間ほどの時間が経っていることに気が付いた。


「おや、もうこんな時間か。ちょうどいい暇つぶしになったわ」


「積んだやつ戻しておこうぜ」


「おお、そうじゃな」


 サイコロを元の場所に戻す二人。

それと共に、ジンもちょうど部屋から出てきた。


「ちょうど資料を纏め終わったところだ。もう行くのか?」


「ああ、ワシらもちょうど片付けたところじゃ」


「わかった。それでは行くとしようか」


 メノウから誘った形になるのだが、ここはジンが先導する形となった。

かれは幼いころからこの港町キリカに遊びに来たことがある。

当然、街のことにもとても詳しい。

下手に歩いて迷うよりも、彼に案内してもらった方が確実というわけだ。


「とりあえず大通りへ行こう。この街で一番の繁華街だ」


 彼の提案により、港町キリカで最もにぎやかな繁華街へと向かうことに。

どこか一か所の店で食事をとるわけでは無く、食べ歩きのような形をとるらしい。

実はメノウは数年前もこの大通りに来たことがあった。


「ここはあのときの…」


 数年前…

街の郊外でカツミと再会し、刺客の差し向けた大型肉食恐竜型ハンターと共に戦ったあの日。

しかしその後、西アルガスタ四聖獣士のザクラに、仲間であるツッツが攫われた。

彼女を追う道中、この繁華街を通っていたのだ。


「そうじゃ、あの時は…」


 あの日のことはよく覚えている。

忘れるわけが無い。

攫われたツッツやカツミとの再会。

しかしそれだけでは無い。


「数年前、この場所ではある事件があってな」


 ジンが言った。

この大通りはかつて、西のウルガスタの支配者だった『ジョー』が破壊した場所だった。

担架でレスキュー車に運ばれてゆく頭に包帯を巻いた男性の怪我人。

すがる様に担架に寄り添い、泣き叫ぶ女性。

衝突で車内に閉じ込められ、窓を叩く子供。

人が何人も血だらけであちこちに倒れていた。

その光景をメノウは今でも覚えていた。


「ジョー…か」


「知っていたか」


「ワシもその時ここにいたのでな」


「奇遇だな。私もそのときこの街にいた」


 さらに詳しく話すため、この大通りの道沿いにあるオープンカフェに入る三人。

まずはこの店で軽く食事をとるというわけだ。

数年前の事件の後に作られた店だ。

大通りに面している席に座り、軽食を注文する。


「あのときショーナはいなかったのう」


「そうだな。俺はその事件を知らない」


「この西アルガスタはかつて『ジョー』という男が支配していた時期があった…」


 かつての事件を思い出したのか、苦虫を噛んだような表情になるジン。

あまり思い出したくない事象なのだろう。

その話を続けるのは良くないと判断したショーナ。

ジンの話に割り込み、別の話に切り替えようとするが…


「そういえば昔の南アルガスタの軍閥長だったモール・エレクションもひどいヤツだったなぁ」


「東アルガスタの大羽も悪人じゃったぞ」


「…軍閥長って碌でも無いヤツばっかりだな」


「そう言われてみればそうじゃな」


 話を変える罪利があまりよくない流れとなってしまった。

しかしちょうど注文した料理が来たので皆でそれを頂くことに。

籠に入ったたくさんのパン、蒸し魚のバジルソースがけ、そしてスープ。

少し物足りなく感じるが、食べ終わったらまた別の店に行くことを考えるとこの程度がちょうどいいのだろう。


「この後のこともあるから酒は注文していないがな」


「ワシは構わんぞ」


「俺は酒はあまり飲まないから…」


 そう言いつつ、籠からパンをとり口に運ぶメノウ。

このパンは西アルガスタ特有の物らしく、あまり他の地区では食べることが出来ない。

数年前、この地区を訪れた際食べたことがあったことを彼女はふと思い出した。


「スープは魚をふんだんに使っているのか」


「この街は魚介類で有名だからな」


「蒸し魚もウマいぞ」


「メノウ、俺にも少しくれ」


「おう。ほれ」


  パンに蒸し魚とソースを乗せ、ショーナに渡すメノウ。

それを受け取り口へと運び、スープと共に流し込む。


「うん、おいしい。店味だ」


「店なんじゃから当然じゃろうに」


「それもそうだな。

…そういえばメノウとジンさんはここ数日で何か見つけたのか?」


 数日に渡り、メノウとジン、そしてここに不在のウェーダーはジョーの研究所跡へ調査に向かっていた。

そこで何を見つけたのか、ショーナは非常に興味があった。


「率直に結論から言おう。ワシらは何も見つけられなかった」


 メノウ達が到着した時、既に研究所は荒らされた後だった。

ジョーが失脚した後、研究所は全て政府の管理下に置かれていたはずだった。

荒らされることなどあるはずがないはずなのだが…


「重要な書類などは全て持ち去られた後だった。それにもう一つ問題もあった」


「問題ですか?」


「ジョーの研究資料はほとんどが複製され王都で保管されているのだが…」


 あまり公にはできないが、実はジョーの研究資料は全て複製され王都ガランのある施設に保管されている。

彼は非人道的な研究を多く行っていたが、そんな研究の中にも科学の発展の役に立つ物は存在する。

しかし、近年はジョーに対するバッシングの声が大きい。

表には公表されていない理由がそれだ。


「王都に保管されている複製品のほとんどが消滅していた…」


 恐らくそれは魔王教団の手の者の仕業だろう。

彼らはある程度ならば魔法により姿を自在に変えることが出来る。

いくら極秘情報といえど、それを手に入れること自体たやすいこと。


「つまり、ジョーの研究資料は奴らの手に…!」


「そうじゃ。じゃが、何も収穫が無かったわけでは無いのじゃ」


 メノウ達は確かに何も見つけることが出来なかった。

だからと言って全く収穫が無かったわけでは無い。


「無くなった資料の管理番号や現像前の写真のデータなどは見つけることが出来た」


 資料は無くなったが、奇跡的にも管理用のデータを見つけることが出来た。

少し古めの物だったらしく、研究所の部屋の隅にゴミと共に乱雑に放置されていたのだ。

そこに書かれていた管理番号などから、無くなった資料の簡易的な内容のみ把握することが出来た。

そして同じところから画像のデータも少し見つけることが出来た。


「そこから推測されるのは…」


 持ち去られた資料は主に次にあげるものとなる。

生体兵器や特殊な改造手術、人体実験、そして異能者のデータ。

そして…


「大型肉食恐竜型ハンターを始めとする、ハンターの資料だ」


「ハンター…

前に禁断の森で戦ったシェンとかいうやつが使ってたあの化け物か!?」


「大羽のヤツから手に入れた資料じゃな…!」


 数年前、ハンターの軍事転用を目論んでいた男がいた。

彼の名は大羽、メノウとカツミに倒された古代からの刺客だ。

かつて東のアルガスタの支配者としてジョーと裏取引をしていた。

大羽はハンターの技術を、ジョーは異能者のデータをそれぞれ技術提供し合い研究の幅を広げていた。

そのときのハンターの研究データも、そのまま魔王教団が手に入れたこととなる。


「詳しい内容が分かれば対策も打てるのじゃが…」


「残っていた資料をかき集め、王都ガランで再調査をするつもりだ。しかしそこまでは難しいだろうな」


 内容は分からず、残されているのは僅かな画像データと管理用の番号やタイトルのみ。

さすがにこれでは、どのような内容の資料が奪われたのか判断のしようが無い。

その内容次第によっては、最悪のケースを想定しなければならなくなるだろう。


「わかりました。ありがとうジンさん、メノ…ん?」


二人に礼を言うショーナ。

しかしその時、何かに気付いたのかふと視線を遠くへと移す。


「なんだ、今の?」


「何か衝撃のようなものがしたが…」


「地震、というわけでも無さそうだ」


 メノウ、ジンもそれに気づいていたようだ。

なにか妙な感覚が三人を包む。

そして…


「おい、アレ!」


 ショーナがある物を指さした。

街の郊外から大きく上がる煙。

火事なのか炎が燃え上がり、その周辺の夜空が赤く染まっていた…


次話は久しぶりの戦闘回です。

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