第八話 反逆者への手向け 軍閥長動く!
~前回のあらすじ~
D基地に続きC基地も壊滅させたメノウたち。
しかし、メノウはマイホムの盛った薬の影響が抜けずしばらくは戦闘不能のようだった…
C基地の援軍から上手くのがれた三人。
しかし、しばらくはメノウの身体のことも考え近くの小さな村で休養を取ることにした。
まだ薬の影響で体が満足に動かないらしく、足取りもおぼつかないメノウ。
一応、マイホムの館からかき集めた金品があるため金には困らない。
治るまではゆっくりできる。
「一応俺たち指名手配なんだけど大丈夫かな…?」
ショーナが小声で言った。
メノウとショーナは指名手配中の身。
もっとも、今の世では指名手配犯などに一々かまう民間人もほとんどいない。
となると、心配なのは賞金稼ぎとゾット側の人間だが…
「この村にはゾット側の人間はいないみたいだし大丈夫だよ」
以前の戦いで仲間になったミーナが言った。
C基地壊滅に手をかしてしまった手前、追われる身になるのも時間の問題。
どうせならと、二人に着いて行くことにしたらしい。
メノウたちにとってもこれはありがたい。
賞金稼ぎ程度ならミーナが片付けてくれるだろう。
「でも、アタシはもしかしたら顔とか知られてるかもしれないからな…」
「で、その変装か」
「服と髪型変えただけだけどね…」
一応、ミーナは元C基地司令官。
ある程度は民間にも名が知れているので何かと警戒されているかもしれない。
そのため以前まで来ていた着物から、少し派手な赤い着物に。
髪も少し結んでおいた。
パッと見はごまかせる程度だがしないよりはましだろう。
「酒場なら金を払えば泊めてくれるかもな、ちょっと聞いてくるよ」
そう言うとミーナは酒場の方へ向かっていった。
アゲートから降り、近くの建物の壁にもたれかけるように座るメノウ。
その隣にアゲートを繋ぎ場に繋ぎ終えたショーナがその隣に座った。
まだ衰弱した状態のため、一人にしておくわけにはいかないからだ。
「…ありがとうな、ショーナ」
「何がだよメノウ?」
「いや、ワシを助けてくれたじゃろ?」
「へへ。以前のお返しだよ」
「…そうかの」
以前ショーナは湖で溺れてた所をメノウに助けられたことがあった。
今回はその借りを返した、という形にしたいらしい。
その二人の話に割って入るようにミーナが話しかけた。
「しばらく酒場で泊めてくれるってさ!」
「やった!行こうぜメノウ」
「…わかった」
そう言いながら、酒場へと入る三人。
あまり上等な店では無く、店員もほとんどいない。
薄暗く狭い店内にはテーブルが数えるほどしかおいていない。
別室に続く扉が奥にあるが、そこを使えということだろうか。
先ほど話を付けたというカウンターの若い男にミーナが金を渡す。
「しばらく頼むよ店長」
どうやらこの若い男が店長のようだ。
金を受け取ると、奥の棚からつまみと瓶に入った水を三人に出す。
つまみと言っても野獣の干し肉や豆類などの保存食を兼ねたような食べ物だが。
「わかったよ。それはいいが、アンタら子供だけで旅してるのか?」
店長が言った。
店に入ってきたのは三人の子ども、それも二人は女。
気になっても仕方がないか。
特に店長は変わった格好をしているメノウに注目した。
「そうじゃ、ラウルの方から来たのじゃ」
「へぇ~確かリップルがたくさん取れる地域だよな?」
「おほぉ^~まぁのぉ~」
「他にもいろいろ聞かせてくれないか?ラウルの方には一度行ってみたくてさ…」
意外と気が合ったのか、意気投合する店長とメノウ。
いろいろな話をしていく二人を見ながらつまみを食べるショーナ達。
ショーナは干し肉をかじりながら二人を眺め、割と元気なメノウに安心感を覚えた。
この調子なら数日休めばメノウも元の調子に戻るだろう。
「そういえば西のアルガスタでは…あ、いらっしゃい!」
メノウとの会話中に客が入ってきたため、そちらに回る店長。
店員は裏の調理係と店長しかいないため、接客もすべて彼一人でこなさなければならないらしい。
しかし、その店に入ってきた男の雰囲気に威圧されてしまう。
「強い酒と肉、あとつまみだ!」
「は、はい!」
客の男が荒々しく怒鳴るように注文する。
そして店長に料金を払うとメノウ達の席にやってきた。
どうやら、ただの客という訳では無いようだ。
剣を携えておりよく見ると懐にはオートマチック銃を隠し持っている。
いや、他にも複数の武器を携帯しているのがわかる。
「よぉ、相棒」
「…ワシかぁ?」
その客の男が馴れ馴れしくメノウに話しかけた。
相棒、と呼んではいるか当然メノウにこの男との面識はない。
空いていたメノウの隣の席に乱暴に座り、干し肉を食べながら男は話しかけた。
「へへ、アンタがD基地とC基地を落としたっていうメノウ姉貴だろ?」
賞金稼ぎか?
そう思ったミーナが壁に掛けてあった多節混にこっそり手を伸ばす。
だが、男にはどうやら戦う意思は無いようだ。
「俺の名は『アシッド』、あんたをスカウトしに来たんだ」
その後の話によるとこのアシッドという男、どうやらならず者集団のリーダーだと言う。
最近、名の売れてきたメノウがこの辺りに来ているという噂を聞きやってきたのだ。
自分のチームにメノウが加われば、よい戦力になると考えたのだろう。
たが、当然そんな集団の仲間に入るメノウでもない。
「ワシは悪いことに興味は無い、他を当たれ」
「まぁ、そう言わずに。この料理を奢るからさ」
そう言いながら先ほど注文した料理をメノウに差し出す。
だが彼女の思いは変わらない。
…ただし料理は頂いた。
「もちろんタダとは言わん。金だって払うし食い物だって…」
「やだ!ワシやだ!」
「は?」
「うるせぇ!嫌がってんだろ!」
そう言うとミーナがアシッドに多節混を叩きこみ、店の外へと叩き出した。
「二度とメノウに近づくな!」
店の外に吹き飛ばされたアシッドにそう言い捨てるミーナ。
普通の者ならここでメノウを仲間に引き入れるのを諦めるだろう。
だが、彼は違った。
不気味な薄ら笑いを浮かべながら、その場を静かに離れていった。
その様子を窓越しに眺めるショーナが言った。
「…何だったんだ?」
「たまにああいうヤツが来るんだよ、強い奴を探しにな」
店長によると、この辺りではよくあることらしい。
小さな盗賊団などでは戦力確保も重要なため、強いと噂の人物に積極的に声をかけて回っているとか。
旅人や退役軍人など見境なくに、だ。
「まぁ、放っておけばいいよ。気にしてたらキリが無い」
「そうか…」
ショーナは一抹の不安を感じながら、メノウに目をやる。
彼女は特に気にする様子もなく、ミーナと共に先ほどアシッドから頂いた料理を食べていた。
気にしすぎるのも良くない、そう考えたショーナはこれ以上アシッドのことを考えるのを止めた。
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一方その頃、南アルガスタの中央軍都『シェルマウンド』。
小高い丘の上にあるこの都市に、この夜一筋の旋風が駆け巡った。
D基地に続きメノウたち三人が、C基地を壊滅させたという知らせがマイホムから届いたのだ。
事を重く見た軍閥長は、南アルガスタ軍の将軍『マーク・ロナウロ』を軍閥長の間に召喚した。
「ああ痒い痒い!ストレスで全身痒くなってきただで!」
「ぐ、軍閥長!落ち着いてください」
「落ち着けるわけないだで!」
そう言い、将軍のマークの静止を振りほどき全身を掻き毟る男。
この男が南アルガスタの軍閥長『モール・エレクション』だ。
死亡した先代の軍閥長の息子であるが、その独裁的な統治の仕方に疑問を持つものも多い。
将軍であるマークも彼には疑問を抱いているのだが、先代軍閥長の息子という手前あまり強くも言えない。
「あいつらは俺の命を狙ってるだで!全軍で抹殺するだで!」
エレクションがマークに怒鳴り散らす。
これまでの基地などはしょせん地方を治めるための集団に過ぎない。
軍は南アルガスタが行使できるゾット帝国の軍力そのものということだ。
だが、ただの数人のために軍を動かすなど前代未聞。
財政的負担も大きい今、軍を動かす余裕などない。
「だったら税金をもっと上げるだで!」
「これ以上の負担は民に影響が…」
「オラの命は一つしかないんだで!今すぐ陸、海、空の全軍を招集するんだで!」
軍閥長『モール・エレクション』の勅命が下った。
それを受け、ゾット帝国南アルガスタ軍の精鋭部隊がこの『シェルマウンド』に集結しつつあった。
名前:ヤクモ 性別:男 歳:17 一人称:私
恰好:東方の大陸の民族衣装
武器:札、カードの類
南アルガスタ四重臣の一人。
B基地の司令官兼軍閥長参謀。
軽業術や札を使った術の類が得意。
ミーナとは異なる極東の国の出身らしい…?