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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第4章 交錯する3人の主人公たち
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第八十六話 予選開始!南アルガスタの戦い(後編)

『ゾッ帝の個人的な考察No.2』


原作ゾッ帝には二つの世界が登場します。

異世界『アルガスタ』、そして異世界『ユニフォン』です。

ユニフォンはアルガスタとは全く違う世界です。


ユニフォンは日本や中国のような精神文明、アルガスタは西洋のような物質文明の世界です。

というよりただ単に和風な世界と洋風な世界というだけですが。

アルガスタの魔王はユニフォンの世界にとっても脅威であるらしく、魔王を監視する秘密結社がユニフォンに存在しています。


二つの世界は特殊な力を持つ物であれば移動が可能なのようです。

原作で自分の意思で移動が確認できるのは

・アリス

・佐藤葛城 (アラン)

・魔王の部下

の三人です。

また、転生という方法でも移動は可能らしく

・カイト

・魔王

この二人が転生してユニフォンへ行っています。

カイトの持つ『天生牙』という刀が次元移動のカギを握っているようです。

この刀は王族のルエラ姫から貰った物です。

また、佐藤葛城 (アラン)の話によると王族の誰かがユニフォンに逃げ延びた可能性があるらしいです。

王族の誰かが時空転移の鍵を握っているのかもしれません。


この外伝である『丘の民』では灰色の少女『グラウ・メートヒェン』が同名の刀を所持しています。


 試合経過を眺めるショーナとメノウ。

見たことも無い格闘技や変わった武器の使い方をする者など、意外と見ていて飽きない試合が続いた。

命を懸けた戦いばかり経験したメノウにとって、純粋に戦いを楽しむということが新鮮に見えたのだろう。


「格闘技の試合を見るというのも悪くはないのぅ」


「メノウってこういうの見たこと無かったのか?」


「う~ん…見たことあるような…無いような…」


 もしかしたら見たことがあるかもしれない、という漠然とした答えを返すメノウ。

仮に見ていたとしてもそうとう昔のことなのだろう。

もしかしたら、数千年前のラウル帝国時代にまで遡らなければならないかもしれない。


「数千年前のラウル帝国で見たような…?」


「それじゃあわかんねぇな…」


「お、次の試合が始まったぞ!」


 やはりと言うべきか武器の使用者が参加者の七割を占めていた。

武器の使用が絶対的有利というわけではないが、単純に棒術を使用するだけで、そのリーチは素手で戦う者よりも遥かに長くなる。

流行りというのもあるだろうが。


「棒術者と木錘使いの試合か…」


 木錘と棒術ではリーチに多少の差が生まれる。

この勝負は棒術者がある程度の距離を保ちつつ勝利した。

大会で使用可能な武器の中でも特に人気なのはやはり棒術用の木の棒のようだ。

この試合が終わり、次の試合の準備が進められる。

次の試合は…


「三十二番と十一番!両者共に試合場へ!」


「ショーナ、三十二番じゃろ」


「ああ、いってくるよ」


 ショーナが試合場へと上がる。

一方の対戦相手は長身の二節混使いだ。

比較的小柄なショーナと比べるとよりその身長の高さが際立つ。


「…メノウの為にも負けるわけにはいかない」


「ガキが相手か、悪いが勝たせてもらうぜ」


「試合開始!」


 審判の声と共に長身の男がショーナに襲い掛かった。

二節混を構え、ショーナとの距離を一気に詰める。

武器を持っていないため、懐に潜り過ぎるのは危険、そう判断したのか、ある程度距離を保ちつつ攻撃を仕掛ける木のようだ。

しかし…


「せいッ!」


「ウオォッ!?」


 ショーナの放った掌底撃ちにより対戦相手の体が宙を舞う。

試合会場から弾き飛ばされた相手は場外により失格となった。


「さ、三十二番の選手の勝ち!」


 長身の男を一撃で場外負けへと追い込んだショーナ。

昔の彼からは想像できないほどの鮮やかな動き、そして驚異的な力。

禁断の森でのメノウとの特訓に加え、元来の彼の持つ素質、そして常日頃から鍛えた身体。

それらがあわさり、これほどの力を発揮したのだ。


「やったな、ショーナ!」


「おう!」


 対戦相手が二節混使いというのも試合をうまく進めることが出来た理由の一つだ。

メノウの友人であり、ショーナの姉的存在でもある『猫夜叉のミーナ』、彼女の得意とする武器が多節混なのだ。

彼女と何度か手合せをすることもよくあるショーナは、多節混系統の武器に対する対策を知っていたのだ。


「ちょっとミーナの戦い方に似ておったな、今の男」


「ああ。けどミーナみたいに高速移動で翻弄するタイプの戦法ではなかったけどな」


「ショーナ、お主の次の試合はいつじゃ?」


「次までは結構時間があるみたいだな…」


 ショーナの試合まではまた時間があるため、他の会場も回ることにしたメノウ。

彼の以外にも友達であるレオナやその他の者の試合も気になる。

軽食の屋台がたくさん出ているということもあり、それらを食べながら観戦をすることにした。


「小倉とーすとに餡の氷菓子…桃ケツまん…ようわからんものが多いな…」


 東洋街に近いためか、東方大陸の料理を出す屋台が大部分を占めていた。

メノウとしては、簡単に食べることの出来るイモや豆で作ったパンケーキのような物を探しているようだ。

数ある屋台が提供する料理の中から香草とチキンのクレープを選び購入。

それを食べながら別の試合会場Bへと移動した。


「お、メノウ!何食ってるんだ?」


「ミーナか、お前さんもこの大会に参加しておったのか?」


 Bの試合会場にいたのは猫夜叉のミーナだった。

手には棒術用の棒が握られていた。

彼女は多節混使いであるが、同時に棒術も天才的な腕を持っている。

この大会では多節混の類の武器は二節混しか使えないため、こちらを使っているのだろう。


「まーなー」


「そこで買ったクレープじゃ、少し食うか?」


「さんきゅー!じゃあ一口もらうよ」


 メノウのクレープを少し頂くミーナ。

このクレープは香草の匂いが結構キツイため、結構好みが分かれそうな食べ物だ。

だが、どうやらミーナの好みに合った食べ物らしい。


「あ、うまい!後でアタシも同じの買って来よう…」


「ミーナ、調子はどうじゃ。予選突破できそうか?」


「ああ、この様子ならいけそうだな」


「でもお前さんも参加しているとは思わなかったぞぃ」


「目立つのあんまり好きじゃないし、アタシも出たくは無かったんだけどさ…」


 どうやら彼女が参加したのは、上司であるマーク将軍の意向らしい。

現在のミーナは、南アルガスタ四重臣最強の実力を持つA基地を治めるほどの実力者。

その地位はかつての黒騎士ガイヤと同格。

それだけの地位となると、南アルガスタの威信を賭けた戦いを任されることも多くなる。


「この大会で優勝…とまではいかなくてもそこそこの戦績を残せば士気も上がるからってさ」


 他の地区に対する実力の誇示や南アルガスタ内の民の士気の向上などを目的とし、大会へと参加したミーナ。

地位も高くなれば、それだけ他の者に対する影響力も出てくるというわけだ。


「ショーナはどうだい。アイツも大会に出てるんだろ?」


「あの様子なら予選突破は確実じゃな」


「そうか、よかったぁ」


「むかしのショーナからは想像できんほどじゃ」


「そうかい、ガランでの本戦が楽しみだよ」 


 そう言いながら持っていた棒術用の木棒を軽く振り回すミーナ。

その動きは昔から遜色の全くない、見事なものだった。


「ミーナ、それと聞きたいことがあるのじゃが」


「…魔王教団のことか?」


「そうじゃ、ミーナも聞いておったか」


「ああ。アタシもルビナ姫の命令を受けたんだ。可能な限りメノウ達をサポートしろってな」


「そうじゃったか」


「ああ。けど今メノウに渡せそうな情報は無い。ゴメンな」


 一旦その場を離れ、次の試合会場へと向かう。

そこではレオナが戦っていた。

試合中だったため話しかけることはできなかったが、あの流れならば彼女も予選突破できるだろう。

ショーナとミーナも予選突破はほぼ確実。

魔王教団の者が紛れ込んでいるかとも思ったがそのような者は見当たらなかった。

一通りの試合を見終わった後、メノウは一軒の屋台が眼に入った。


「すし…?」


「へい、寿司処『浜ちゃんでい!』へようこそ!」


 屋台の店主が威勢の良い声を上げる。

大きなグラサンを駆けた坊主頭の男だ。


「すしとはなんじゃ?」


「ご飯を使ったオリジナルメニューです!」


 サムズアップをしながら言う店主。

屋台には数個の寿司ネタが書かれたメニュー表が置かれていた。

メノウが読むことの出来ない東洋文字中心であるが、イラストも描かれているのでどれが届の料理か一発でわかるようになっていた。

そしてラジオからはやたらトロピカルな音楽が流れている。


「コメか?」


「へい!」


「ワシ、コメはあまり好きではないのじゃが…」


 メノウは東方大陸特有の粘り気のある米が苦手だ。

炊いた時の匂いがどうしてもダメなのだという。

香辛料を多数使ったカレーのようなものがかけられた料理や、匂いのあまりしないパサパサとした米ならば大丈夫らしい。


「ままー、ひとつ食べてみようという気は無いんでしょうか?単なる嫉妬でしょうか?」


「むっ!それなら何かひとつ貰おうか」


「へい!じゃあ焼きゴリ寿司で」


「…味が濃い」


 そう言いながら水でその料理を流し込むメノウ。

どうやら彼女にここの食べ物は合わなかったらしい。

出されたものを食べ終わり、すぐに屋台から出ようと金をとりだすメノウ。

と、そこに一人の客がやってきた。


「おじさーん、いなり寿司ちょうだい」


「ないね」


「また無いのか…」


 困惑した様子でうなだれるその客。

そのやり取り自体に特に妙なものはない。

しかし、屋台に訪れたこの客、それはメノウにとって最も警戒すべき者だった…


「汐之…ミサキ…!」


 帽子と眼鏡で簡単な変装をしているものの、その顔は忘れるわけが無い。

この南アルガスタのシェルマウンドをかつて荒らしまわった『人斬りミサキ』、その人だったのだから。

いつもの東洋風の服では無く、シャツに短パン、パーカーという非常にラフな格好だった。


「おぉ、偶然だねメノウちゃん」


「何故お前さんがここに…?」


「前言ったでしょ、討伐大会を楽しみにしてるって!」


 警戒しつつミサキの動向を伺うメノウ。

見たところ刀は所持していないようだが、服の中に短刀か何かを隠し持っているかもしれない。


「ここに来たときお前さんの気配は感じなかった。大会には参加していないのか?」


「まぁね。あ、おじさん!高いネタから順に三つ頂戴」


「へい!」


 注文を入れるミサキ。

どうやら今の彼女に戦意は無いらしい。

しかしだからと言ってメノウがこのまま彼女と戦うのは危険だ。

広範囲に被害をもたらす火炎魔法と幻術を使われれば確実に一般人にも被害が出る。


「そう言えばメノウちゃん、シェンのヤツを倒したんだって?」


 ミサキのその言葉を聞き、メノウの心に動揺が走る。

あのシェンとの戦いを知るのはカイトとショーナのみのはずだ。


「何故そのことを!」


「いやぁ、アイツあんなに意気込んで出て行った割に帰ってこなかったしさぁ…」


「そうじゃない!まさか、お前さんも…?」


 その予感は的中した。

服の袖を捲ったミサキの肌に刻まれていたのは、あのシェンが持っていた物と同じ紋様だった。


「それは…」


「そう言えば話して無かったっけ?私も魔王教団の仲間なんだよ」


「奴らの眷属に成り下がったか…」


「なんとでもいいなよ。あ、寿司でてきた」


 店主の差し出す寿司を口に運びながら話を続けるミサキ。

刑務所に投獄されていたところを魔王教団に救われたこと。

自分やシェン以外にも、既に何人もの実力者が魔王教団の傘下に入っているということ。

そして…


「メノウちゃん、『ファントム』って知ってる?」


「何故、その名を…?」


 メノウにはその名前に聞き覚えがあった。

幻影の名を持つ戦士『ファントム』、忘れたくても忘れられるわけが無い名前。


「ふふふ、なんでもなーい!寿司おいしー」


「どういうことじゃ」


「メノウちゃん、『ファントムの本名』って知ってる?言える?答えられる?」


 挑発するように言うミサキ。

メノウはその言葉に答えることが出来なかった。

ファントム、忘れたくても忘れられない名前。

しかし、それは同時にメノウが『忘れてしまった』者でもある。


「ひはは、言えないみたいだね」


「それは…」


「じゃあお金払っておいてよ」


「は?」


「あ、それと一つ言っておくよ。東アルガスタの予選、荒れるよ」


「何!待て、どういうことじゃ!?」


「ひはははははははは!」


 笑い声と共にミサキは人ごみの中へと消えていった。

その後、ショーナ達の予選突破が決定した。

本来ならば心から喜ぶべきことだったが、今のメノウはミサキの言葉が心に引っかかっていた。


佐藤葛城は『さとうかつき』と読みます。

『かつらぎ』ではありません。

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