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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第4章 交錯する3人の主人公たち
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第八十五話 予選開始!南アルガスタの戦い(前編)

『ゾッ帝の個人的な考察No.1』


原作ゾッ帝における魔王教団のメンバーには一定の法則があります。

【共通項】

・全員三文字の名前(ジェイ、ジード、アリス、アスカ)


【男性】

・頭文字に『ジ』が付く

・動物の姿をしている

・魔法は補助くらいにしか使用せず、体術や武器で戦う


【女性】

・頭文字に「ア」がつく

・人間の少女の姿をしている

・魔法をメインに戦う(武器も使うことはある)


こうしてみると男性キャラクターと女性キャラクターで対比となっていることが分かります。

また、原作に登場する『ジード』は陸生生物の豹をモチーフとしたキャラクター。

もう一人のメンバーである『ジェイ』は空を舞う鳥をモチーフとしています。

もし原作ゾッ帝が続いていれば『ジ〇〇』という海洋生物モチーフのキャラクターが登場していたかもしれません。


この外伝である『丘の民』では魔王教団所属のオリジナルキャラクターである少女『アルア』が登場しています。

この命名法則に従い、「ア」の着く三文字の名前になっています。


キャラクターの名前に深い意味を込めていた浜川先生は天才作家だった…?

 日は開け、討伐大会予選当日となった。

数日続いた雨は止み、空には雲一つない。

綺麗な晴天となった。

大地も乾き、ショーナとメノウの心配は杞憂に終わったというわけだ。

 朝日が南アルガスタの街を包み込む。

それを見て決意を固める少年が一人…


「…今日から予選か」


 自室で食事をとり、予選大会へと向かう準備をするショーナ。

ちなみに、メノウはルエラ姫から頼まれていた見回りをするため前日から会場へ入場していた。

彼女とは向こうで会えるだろう。


「確かメノウの作ったスープが残ってたな…」


 そう言いながら朝飯を用意するショーナ。

数日前の買い出し後にメノウが作ったひよこ豆と雑穀のスープ、固パン、水。

部屋のテーブルにそれらを並べ、椅子に座り食事をとる。

パンをスープに浸し、水で流し込む。

スープの具を飲み込み、最後に水を飲んだ。


「よし、さっさと行くか」


 動きやすい格好に着替え、荷物の入った包みを手に持つ。

私用の財布と弁当代わりの干し肉とパン、チーズの欠片。

そして野菜の瓶詰。水は向こうで買えるだろうから持たなかった。

家を飛び出し、予選会場へと向かった。

予選会場はシェルマウンドの中心街から離れた再開発地区にある大型の広場で行われる。

祭事などでも使用されるこの広場に、簡易的な建材などで作られた仮設の会場を置きそこで三日間の日程で予選が行われる。


「行くぞ、アゲート!」


 庭に繋いでいたメノウの愛馬、アゲートを駆り会場へと向かう。

馬で行く以上、街中を通るわけにはいかない。

一旦街の外へ出てそこから迂回するように会場へと向かった。


「お前にのれるようになったのは一年ほど前だったかな」


 ふん、と鼻息で笑う様にアゲートが答えた。

数年前、メノウが解決した『人斬り狐事件』、その時ショーナはこの南アルガスタにはおらず王都ガランに出向いていた。

ガランから帰った時には既にメノウは再び南アルガスタから旅立った後だった。

その時メノウには会えなかったが、彼女はこのアゲートを将軍であるマークに預けていた。


「その時からずっとのれるようにがんばってさ

お前はメノウと同じでちょっと変わった性格なんだよなぁ…」


 そう言われたアゲートが少し不機嫌そうな顔になる。

メノウと自分に対し軽く苦言を言われたことに対し怒りを隠せぬようだ。


「そう怒るなよ、そんなお前らがすきなんだからさ。もうすぐつくぞ」


 さすがは元軍馬というべきか、ショーナの操馬術が上手いと言うべきか、話している間に既に会場のある広場へと到着した。

簡易的な作りながらゲートが作られている。

奥には予選会場となる、かつて軍用の倉庫として使われていた大きな建物が見える。


「馬止めはあっちか。…ん?」


 会場のゲートの前に目をやるショーナ。

そこにはメノウとレオナが何やら話しているのが確認できた。

二人もこちらに気付いたのか、手を振りながらこちらへと走ってきた。


「メノウにレオナ!一緒だったのか」


「おーショーナ!やっと来たか」


 以前とは打って変わり、動きやすそうな簡素な服装をしているレオナ。

左手には長い木の棒を持っていた。

メノウはいつものローブとヴェール。

多少の見栄えを考えたのかストールは巻いていなかった。


「メノウ、弁当持ってきたぞ」


「おお、ありがとうな!」


「水ってどこかで売ってるかな?」


「ああ、会場内でさっき見たぞぃ」


 どうやら水は会場内で販売しているようだ。

さらに、メノウと共にいたレオナの話によると、水以外にも簡単な食事なども販売しているらしい。

簡易的な屋台で提供できる程度の物なので、麺類やフライ、調理済みのパンなどが主となるようだ。


「ここでメノウちゃんと偶然会って話してたの。

ショーナくんも大会に参加するって聞いて少し驚いちゃった」


「もしかしたら戦うことになるかもな」


「そうかもしれないわね。でも、今すぐじゃないみたい」


「…あ」


 そう言ってレオナがある物を指さした。

それは予選大会の試合表だった。

この予選は王都ガランで開かれる本大会の予選に過ぎない。

代表四名を一つの地区から選出。

東西南北の地区の合計十六名が王都ガランで戦うこととなっている。


「私とショーナくんは別々の場所で代表になるかどうかを決めるみたいだから」


「そっか、もしレオナと戦うことになるとすれば王都ガランの本戦以外ないのか…」


 南アルガスタの予選会場には四つの試合場がある。

そこの一つ一つで代表者を決め、その四人を王都ガランの本戦に出場させる。

ショーナが戦う試合場をAとするならば、レオナの参加する場所はB。

つまり二人は予選で戦うことは無い。

もし試合で戦いたければ、二人ともが予選を勝ち抜く必要がある。

そして王都ガランで開かれる本戦で当たることを祈るのみ。


「予選、二人で勝ち抜きましょう」


「ああ、必ずな」


「それじゃあ、私はあっちの試合場だから。後で会いましょう」


「ああ、俺はこっちだ!後でいくよ!」


 そう言って別の試合場へと向かうレオナ。

その場に残されたしメノウとショーナは馬小屋にアゲートを止めに行った。

ショーナの戦う試合会場へと向かう二人。

道中で二人は、歩きながら大会の内容について話し始めた。


「ショーナ、この大会では武器の使用は可能なのか?」


「ああ、運営が定めた指定武器ならな」


 この大会では、外部からの武器の持ち込みは不可。

しかし運営の定める武器の使用は許可されている。

先ほどレオナの持っていた一メートル半ほどの長さの木の棒も運営が許可している武器の一つ。

その他にも二節混など数種類が使用可能となっている。


「昔は使用禁止だったらしいけど、試合の幅を広げるために許可されたらしいぜ」


「ほう」


「単なる儀式的行事だった昔と違って、今は金とって見世物にするからなぁ…」


 武器を使った方が見世物として盛り上がる、というのが使用が許可された理由らしい。

また、単なる素手での戦いではいつしか限界が見える時が来るかもしれない。

参加者の顔ぶれを毎回ある程度入れ替えるため、という理由も一応ある。

事実、昔は優勝者が三回連続で同じ人物だったということもあったらしい。


「でもそのせいで武器重視の戦いに最近は傾いているとか…」


「そう言えばレオナ以外にも武器を持っている者が結構おったのぅ」


「普通に考えれば使った方が有利だからな」


「ショーナ、お主は使うか?武器を」


 メノウが悪戯顔でショーナに問う。

しかし彼はその言葉を否定した。


「いいや。慣れた戦い方が一番だよ」


 話しているうちに二人は試合場へとたどり着いた。

ショーナが戦う試合会場だ。

既に参加者もかなりの数が集まっていた。

この場所だけでも百人近く入るだろうか。

A会場以外の三つも含めれば、南アルガスタ予選だけでも四百人は参加者がいることとなる。

この試合会場にいる参加者たちを軽く見まわしながらショーナが小声で言った。


「…メノウ、魔王教団の奴らはこの中にはいるか?」


 大会には魔王教団の眷属が紛れ込んでいるとの情報を得た。

予選の時点で紛れ込んでいるのか、本大会でのみ現れるのかはわからない。

しかし現時点で警戒するに越したことは無い。


「この会場にはいない」


「そうか」


 メノウは魔力の流れに非常に敏感な感覚を持つ。

もし眷属が紛れ込んでいれば、たとえその者が何らかの偽装をしていたとしても察知することが出来る。


「お主の来る前に何回か会場全体を確認したが、それらしい人物はいなかった」


「でもその後紛れ込んでいるかもしれないぜ」


「そうじゃな。他の場所はカイトたちが見張っているから大丈夫じゃとは思うが」


「…それは大丈夫と言えるのか?」


「お、そろそろ始まるみたいじゃぞ」


 彼の持つ一抹の不安をよそに、予選大会はついに始まった。

本大会ならば盛大な開会式があるのだが今回はあくまで予選。

そのようなものは無く、ただ単に進行係のスタッフ数名が開催を告げるのみだった。

事前の受け付けの際に登録した参加者の名前をスタッフが読み上げ、番号札を渡していく。

その札を元にトーナメント表が組まれた。


「ショーナ、お主の番号は?」


「三十二だな」


「三十二、普通…じゃないな!」


「?」


「いや、なんでもない」


「??」


 スタッフの発表した試合順番によると、どうやら三十二番の試合は少し後になるらしい。

他の参加者の試合を観戦しつつ、メノウ達はしばし待つことにした。


単に名前のパターンが少ないから似たような名前になっているだけとか言うのは辞めて差し上げろ。

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