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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第4章 交錯する3人の主人公たち
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第八十三話 開催三日前!ショーナとメノウ

更新が少し遅れてしまいました。

全部僕のインナーチャイルドがインディゴで尊厳損傷したせいです(責任転換)

インディゴってどういう意味なんでしょうか?


 禁断の森から帰還したショーナ達。

特訓の最中、魔王教団の下僕と化したシェンの襲撃を受けるも何とかそれを撃退したのだった。

しかしその戦いでショーナは大怪我を負ってしまった…


「う、うぅ…」


 怪我を負い、シェンとの戦いが終わるとともに気絶してしまったショーナ。

彼が目覚めたのはシェルマウンドにある自宅のベッドの上だった。

横のテーブルには飲料水の瓶が置かれている。


「あれ、俺ん家…?」


 シェンを倒したところまでは覚えている。

しかしその後どうなったのかはわからない。

ふと体をさすってみるが、あの時受けた傷はほとんど無くなっていた。

しかし体に巻いてある包帯を触ると少し鈍い痛みを感じた。

打撲の跡がまだ少し残っているらしい。


「あ、起きたかショーナ。食料借りたぞ」


「ああ、いいよ…アッ!?」


 そう言いながら、メノウが部屋のドアを開け部屋に入って来た。

ノックも無しにいきなりのことだったため、ショーナは妙な奇声を上げてしまった。

もっとも、今のメノウの格好を見ればそれも仕方が無い。

いつものローブとベールを脱ぎ、ストールと腰布のみの姿を見ればだれでも違和感を覚えるだろう。

ストールの装飾の布のおかげで見え辛いが、サラシもまいていないように見える。


「変な声を出すな、こっちが驚いてしまうわ」


「い、いや、服くらい着ろよ!」


「いいじゃろう、誰が見ているわけでも無い」


 表情一つ変えずそう言い放つメノウ。

以前の禁断の森での水浴びの時といい、もう少し格好には気を使ってほしいとショーナは思った。


「俺がいるだろ!森での水浴びの時といい…!」


「わかったわかった。サラシまいてくるから待っておれ」


 慌てるショーナの様子を見たメノウがふと笑みをこぼした。

部屋をしばし退室し、サラシをまいてメノウは再び戻ってきた。

この姿も中々にひどいが、先ほどよりはマシだろう。


「まぁ、その様子じゃともう傷は大丈夫みたいじゃな」


「ああ。まぁな。ところで何で俺ん家にメノウが…?」


 自身の疑問をそのままメノウにぶつけるショーナ。

それを聞いたメノウは一瞬呆気にとられつつも、何かを納得したような顔で彼に言った。


「そうか、覚えていないか」


「ああ、シェンのヤツを倒したところまでは覚えているんだけどな…」


「ならば順を追って説明してやろう…」


 灰色の少女グラウの作った時空間ゲートを通り、メノウ達はシェルマウンド郊外へと瞬間移動した。

メノウも最初は何が何だかわからず戸惑いを隠せなかったらしい。

グラウに説明を求めてもハッキリとした答えは返ってこなかった。


「お主はあれから三日ほど眠っておった」


「三日か…」


「ワシが治癒魔法を使っていたとはいえ、意外と回復が早くて驚いたぞぃ」


「となると、大会開催まで同じく三日ってわけか…」


「ああ。街の中も参加者らしき輩が大勢いたぞ」


 討伐大会の南アルガスタ予選まであと三日。

それだけあれば、ショーナのコンディションも完全に回復するだろう。

当日になるまではゆっくり休んでおくといい。

メノウはそう言った。


「それにしてもグラウの瞬間移動って…?以前ヤクモが使ってた技か?」


 瞬間移動と聞いてショーナが真っ先に思い浮かべたのは、以前ヤクモの使用していた『縮地法』の技だった。

元南アルガスタ四重臣の一員にして、シェンと同様に魔王教団の下僕となった男。

しかしメノウが言うには、グラウの技はそれとはまるで異なるという。


「いや、ヤクモのあれは単なる縮地法の一種じゃ。グラウのソレはそんなものでは無かった」


「へぇ…」


「おっと、話が逸れたな…」


 シェルマウンドに返ってきたメノウ達。

一旦ミーナに連絡を取りショーナの現在住んでいる家を聞き出し、そこに転がり込んだという。

カイトは連絡のために数日ほど別行動をとるらしく、今はここにいない。

グラウはいつの間にか姿を消していたらしい。


「そっか、俺ん家の場所はミーナに聞いたのか」


「そうじゃ。それにしても結構いい家じゃなぁ…」


「もらったんだよ、以前の礼がわりにな」


「そうなのか」


 この家は、数年前の黒騎士ガイヤとの戦いの後に礼として受け取ったらしい。

しかし一人で住むには広すぎるらしく、ショーナ自身はもっぱら一階部分しか使っていない。

今二人がいるのも一階の寝室だ。


「とりあえず腹も減っておるじゃろう。食事作ってあるから喰うか?」


「あ、ああ。いただこうかな…」


「運んで来てやるからちょっと待っておれ」


 そう言って部屋から出るメノウ。

しばらくしてスープとパンを持って戻ってきた。

それを横のテーブルに置く。

瓶に入った水をコップに注ぎ、ショーナに手渡した。


「ほれ、水。スープは野菜の瓶詰と干し肉があったからそれを使ってつくったのじゃが…」


「ありがとう、メノウ」


 瓶詰と干し肉を使っているため多少油が多いが、ショーナは特に気にならなかった。

パンは保存用の固いパンだったためスープに漬けて飲み込んだ。

久々の食事ということもあり、軽く平らげた。


「ふぅ…」


「ふふ、元気そうじゃな」


「メノウのおかげだよ。治療してくれて食事も作ってくれて…」


「ハハァ…」


「パン、もう一個もらっていいか?」


「ああ、いいぞ」


 メノウの隣に座り、彼女の持っていた紙袋に入っていたパンをひとつ手に取る。

味も何もない単なるパンだが、久しぶりに口に含んだ食べものだけにどこか不思議な感じがした。

しかしいきなり口に放り込んだため、喉をつまらせてしまう。


「お、大丈夫か大丈夫か?これ飲んでみな」


 そう言ってメノウが瓶入りの水をショーナに渡した。

水でパンを流し込み彼女に一言礼を言う。

一呼吸置いた後、ショーナはメノウにあることを言った。


「…メノウ、言いたいことがあるんだけど」


 そこまで言いかけるショーナだったが、その言葉はメノウによって遮られてしまった。

彼女がショーナの口の中にパンを突っ込み、無理矢理中断させたのだった。


「げほっ…げほ…」


「…言いたいことは大体わかる。前の続きじゃろう?」


「ああ、禁断の森で言いそびれたことを言おうと思ってな」


 以前の時の様にまた話をあとまわしにはさせたくない。

またいつか、と後回しにしていては話は進まないだろう。

なんとか今日、メノウから話を聞き出したい。

ショーナはそう考えていた。


「はぐらかさないではっきりと聞いてほしいんだ。頼むよ、メノウ」


 はっきりとした決断をメノウに迫るショーナ。

さすがにもう後回しにはできない、そう思ったのかメノウはその重い口を開いた。


「…わかった」


「……」


「じゃが、お主の想いに今のワシは答えることはできない」


 メノウの返事、それは『拒否』だった。

肩を落とすショーナに対し、彼女は話を続けた。


「別にお主のことが嫌いというわけでは無い。好きじゃよ」


「メノウ…」


「けどそれは『友達』として…」


「友達、か」


「ワシはお主と共に旅をしてから多くの者と出会ってきた」


 共に旅をしてきた南アルガスタのミーナ、西アルガスタの疾風の少女カツミ。

一時の共闘関係にあった者だけならばさらに多くの者がいる。

マーク将軍、ノザキ、ヤマカワ、アズサ、ウェーダー。

そしてカイトとジン、灰色の少女グラウ…


「皆ワシにとって大切な仲間、そして友達じゃ」


 そんな中でショーナだけを特別な目で見ることはしたくは無い。

そう言いたいのだろうか…?


「とにかく、今すぐに答えは出せん」


「じ、じゃあさ!」


 今すぐには答えを出せない。

そう言うメノウに対しショーナはある提案を出した。

それは…


「今度の討伐大会、もし俺が『優勝』したらその『答え』を出してくれないか?」


 ショーナの提案を聞き、一瞬目を丸くするメノウ。

たしかに約一か月間、特訓をし大会用の戦術も授けた。

それでもさすがに優勝まではいかないだろう。

 しかし確かにショーナは強い。

予選突破だけならば比較的現実的なラインだろう。

上手く立ち回ればもしくは…?


「わかった、考えてやろう」


 もし彼が本当に優勝した時は自分の『全て』を彼に語ろう。

その上で自分を受け入れてくれるのであれば、その想いを聞き入れよう。

メノウはそう考えた。


「本当か!?」


「当然じゃ」


「よし、絶対勝ち抜いてやるぜ!」


「ふふ、がんばれよショーナ」


「ああ!」



・疾風の裂脚

【使用者:メノウ、ショーナ、カツミ、ヤマカワ】

破壊力:B タイプ:斬撃

カツミの使用する『激情の開陽拳』の奥義の一つ。

疾風を操り、幻空と現空の差圧によって万物を切り裂くという理の下に定められた技。

斬撃であるため、直撃すれば人間ならば一撃で再起不能となる。

車両や電柱くらいならば切断可能。

しかし強固な金属などに対しては効かないという弱点もある。


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