表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第4章 交錯する3人の主人公たち
84/191

第八十一話 脱出!禁断の森(前編)

代名詞破棄リスペクトです

 シェンがメノウとショーナと対峙している丁度その頃。

青龍型ハンターはカイトと灰色の少女グラウが交戦していた。

数年前、かつての東アルガスタでのメノウとの戦いで受けた傷はほぼ修復されている。

紋様による強化があるとはいえ、今の青龍型ハンターには修復できなかったらしき部分も確認できる。

その部分と紋様を考慮すると、恐らく数年前とそれほど。戦闘能力は変わっていないだろう。


「カイト、キミは昔、大型肉食恐竜型ハンターと戦ったことがあると聞いたが…」


「なんでそんなこと知ってるんだよ!」


「そんなことはどうでもいい!青龍は大型肉食恐竜型ハンターの改造体だ」


「それがどうしたんだよ!さっさと戦えよ!」


「大型肉食恐竜型ハンターに弱点があるなら教えてくれ!」


「そんなもんわかんねぇよ!」


「は?」


 確かにカイトは数年前、この禁断の森で大型肉食恐竜型ハンターと戦った。

しかし様々な要因が重なり、結局倒すまでには至らなかった。

小型獣型ハンターと同士討ちをしている間に逃げ出していたのだ。

これでは弱点など分かるはずもない。


「役立たずめ…」


「なんだよ!お前かって弱点がわかんねぇと戦えねぇくせに!」


「ならばお前が行け!」


 その声と共に、彼女はカイトを突き飛ばし青龍型ハンターの目の前に放り出した。

彼が顔をしかめて上半身を起こすと、目の前に青龍型ハンターの紅く鋭い眼が光る。

鋭い牙を覗かせて低く唸り、鼻の穴から鼻息が飛び、カイトのにおいを嗅いでいる。

青龍型ハンターの紅く鋭い眼から赤いレーザーが放たれ、機械的な音を鳴らしスキャンをした。

なんらかのセンサーの類だろうか。

襲われるかもしれない、しかしこれは逆に攻めるチャンスでもある。

そう考えた彼は一転攻勢。

攻撃に転じた。


「う…ウォーターボール!」


 以前、魔法学校に通うミサから教えてもらった魔法、『ウォーターボール』を放つ。

ただ放つのではない、青龍型ハンターの口の中にだ。

ウォーターボールは魔力を込めれば込めるほど強度、大きさを増大させることが出来る。

自身の持つ魔力を可能な限り使い、ウォーターボールを巨大化させたのだ。


「おお…!これは…」


 それを見たグラウが驚嘆の声を上げる。

彼女も、まさかカイトがここまで役に立つとは思わなかったのだろう。

青龍型ハンターは今、口に巨大なジャンボシャボン玉を咥え、顎が外れかけた状態となっている。

想定外の出来事に暴れまわり、ジャンボシャボン玉を割ろうと辺りの物にデタラメに攻撃を仕掛けている。

しかし、それでもそれは割れない。

以外とカイトの魔力が強力だったようだ。


「まさかキミがここまでやるとは思わなかった」


「あ?これくらい軽いもんだぜ」


「ならばまだ戦えるな、ヤツを追うぞ」


「マジかよ…」


 ジャンボシャボン玉を割るため、デタラメに暴れまわる青龍型ハンター。

木をなぎ倒し、岩を砕き、この場から離れた滝壺にまで移動していった。

先ほどのカイトの魔法で倒したわけでは無い、あくまで戦意を少し削いだ程度だ。


「まだ倒したわけではないからな」


「次はお前がやってみろよ、役立たず灰色女」


「…ッ!」


 カイトの言葉を聞き癇に障ったのか、彼に鋭い視線を向けるグラウ。

被っているフードのせいで視線など見えないはずなのだが、明らかに難色を示しているのがわかった。


「追うぞ!」


「やだよ」


「来い!」


 滝壺の近くへと移動した青龍型ハンターを追う二人。

尖った岩に何度もジャンボシャボン玉をぶつけたらしく、既にそれは割られていた。

カイトのウォーターボールの魔力の作用により、少し口の部分に傷を負っているものの致命傷と呼べるものでは無い。

むしろ、それにより怒りを呼び覚ましてしまったようだった。


「キミの魔法が裏目に出たな」


「なんだよ!お前が何もしなかったから俺が代わりに戦おうとしたんだろ!」


「あんなことをしろとは言っていない!」


「なんだと!?」


 そんな二人のやり取りにしびれを切らせた青龍型ハンターは二人に向かっていきなり攻撃を仕掛けはじめた。

青龍型ハンターは、グラウに振り向いて大きく口を開けて吠える。

まるで話の邪魔するなと言われているようで、カイトとの会話を止めて戦闘態勢を取るグラウ。

カイトは青龍型ハンターに剣を向けて威嚇したり、オートマチック銃を構えて威嚇している。

 青龍型ハンターはぶるぶると頭を振ってカイトを踏みつぶそうと片足を上げる。

青龍型ハンターに踏み潰されかけたカイトは頭を上げて倒れ、頭が地面に突く。

 グラウがカイトに襲い掛かろうとしている青龍型ハンターの片腕を手刀から放たれる斬撃波て切断。

それを放り投げ、衝撃波で粉々に破壊した。

青龍型ハンターが抵抗を起こすのも虚しく、切断された片腕が空中爆発する。

青龍型ハンターは尻尾でカイトを薙ぎ払い、口の中の砲口からキャノン砲で逃げる彼を撃っているも、全て避けられる。

 カイトとグラウが青龍型ハンターと戦っている。


「あの青龍型ハンター、すごい強いな…」


 キャノン砲による攻撃を全て避け、肩で息をしながらカイトが言った。

ふざけた態度ではあるが、常人ならば先ほどの攻撃など避けられるはずもない。

青龍型ハンターの放った尾での攻撃も、意識してか無意識か、受け身を取ることでダメージを最低限に減らしていた。

少なくとも騎士団所属というのは伊達ではないようだ。


「…カイト、キミの剣を貸してくれないか?」


「やだよ、自分の刀を使えよ」


 確かにカイトのいうとおり、グラウ自身も刀を所持している。

以前、東アルガスタの海洋上でシェンと交戦した際に使用した物だ。

背中に背負った東洋の刀、彼女はその刀の名を『天生牙』と呼んでいた。


「この刀は今は使えない」


「何でだよ」


「今はその時では無い」


「はぁ!?」


「この刀には『真の持ち主』がいる」


「なに言ってんだよこんな時に!意味わかんねぇよ!自分勝手なヤツだな」


 カイトは知らないが、彼女は以前に天生牙を使用して戦っていた。

言葉に込めた意図は少々違うものの、確かに彼女が天生牙を使用しないというのは不自然だ。

しかしその疑問に対し彼女はこう答えた。


「いずれわかるさ」


「なんだこいつ」


「…借りるぞ!」


 カイトの隙を突き、彼が背中の斜め掛けの鞘にかけた剣を奪い取るグラウ。

一瞬の出来事に対応できず、彼はただ戸惑うばかり。


「せい!」


 カイトの剣を使い、グラウが青龍型ハンターへと攻撃を放つ。

青龍型ハンターの全身に仕込まれた刃の鎧、その僅かな隙間を突き内部フレームに的確に攻撃を仕掛けるグラウ。

ハンターの弱点は内部への攻撃、これは全てのハンターに共通することだ。

その攻撃で右足が自重に耐えられなくなり、青龍型ハンターが膝をつく。


「やあ!」


 さらに攻撃を仕掛けようとグラウが一歩前へと出る。

しかしそのまま攻撃を受ける青龍型ハンターでは無い。

尻尾を鞭のようにしならせ、彼女に叩きつけた。

カイトの剣で受け流すグラウ。

しかし、あまりにも強力な衝撃で剣は一撃で砕け散ってしまった。


「俺の剣がぁ!」


「片足と腕を失ってもまだ動けるのか」


 失った部位など気にも留めず、攻撃を続ける青龍型ハンター。

二人を噛み砕こうと突進を仕掛けた。


「はッ!」


 その声と共にグラウは攻撃を回避、空へと舞い上がった。

例え弱点が分からなくとも、それならばゴリ押しで倒せばよい。

グラウの風を纏った手刀が、青龍型ハンターの首を断ち切った。

さすがに軽く切断、というわけにはいかなかったらしく不快な金切り音が辺りに響き渡った。


「す、すげぇ…」


 その光景を見たカイトが呟いた。

さすがの青龍型ハンターも、首を失えば戦うことはできない。

万が一を考え、グラウは頭部装甲を手刀で貫き、内部のコントロールパネルを引き千切る。

先ほどのカイトのウォーターボールの魔法を受けた時の青龍型ハンターの動きは明らかに異常な物だった。

ハンターは胴体に弱点となる動力部を持つが、それに次いで重要な器官が頭にある。

それが制御用のコントロールパネルだ。


「あれほど頭部を気にしていれば、大体想像はつく」


 先ほどの異常な行動は頭部に起きた異常を排除するための物だったのだ。

それを見たグラウは頭部に重要な器官があることを見抜いていた。

コントロールパネルを引き千切られた青龍型ハンターはその場に崩れ落ちた。


「所詮は再生体、倒すだけならば簡単。だが…」


 引き千切り、握りつぶしたコントロールパネルの破片を見つめながら言った。

倒したことは喜ばしいことだが、何か腑に堕ちぬようだ…




------------------



 一方、メノウとショーナはシェンと戦っていた。

かつてのシェンはあくまでハンターを操り戦うだけの者。

もちろん元四聖獣士である以上、身体能力は高かったのだろうが。

しかし、今の彼は違う。


「とりゃっ!」


「うお!?」


 シェンの拳をギリギリで避けるショーナ。

その拳が背後にあった木に直撃、衝撃と共に一撃でへし折られた。


「あんなもの受けたら身体が粉々になっちまうぞ…」


「じゃあ避け続けてみろよ!」


「ショーナ、どけ!」


 シェンの背後からメノウが攻撃を放った。

先ほどの幻影(ファントム)光龍壊は既に見切られた技、この状況で使用しても通用するかどうかは分からない。

それならば…


「『幻影(ファントム)光龍壊 弐壊冥』!」


「な…しまった!?」


 通常の幻影光龍壊よりも威力は高いが、隙が大きいこの技。

ショーナが注意をひきつけていたおかげで発動することが出来たのだ。

後ろから放たれたそれはシェンの身体と右腕の一部を抉り取った。

それを受け、力なくその場に倒れるシェンの身体。

断末魔も上げる暇も無く、無言で崩れ落ちた。


「やったか、メノウ?」


「ああ。さすがにこれを喰らえば無事では済まないじゃろう」


 かつて大羽との最終決戦の際に使用したこの技。

その時は魔竜と化した大羽の身体を貫くほどの威力を見せた、

ショーナが近くにいたため多少威力は抑えたものの、それでも幻影光龍壊の数倍の威力。

無事なわけが無い。


「悪く思うな、仕方が無いのじゃ」


 そう言い残しその場から去ろうとする二人。

しかしその時、驚くべきことが起きた。


「今のは効いたよ…」


 攻撃を受け絶命したかに思えたシェン、しかし彼は立ち上がって見せた。

失った身体の一部と右腕は魔力によって修復。

傷も全快している。


「弐壊冥を受けて立ち上がるじゃと!?」


「この刻印のおかげで結構頑丈になってるんだよ」


「…厄介じゃのう」


幻影(ファントム)光龍壊

【使用者:メノウ】

破壊力:B タイプ:貫通

全身に魔力を纏いそのまま相手に突撃し貫く。

魔力により全身を超硬質化しているためメノウに対する攻撃を一瞬ではあるが無効化できる。

もともと彼女には魔法も効かないため、この技を受けたら防ぐのはほぼ不可能。

物理的に防御をした大羽、コピー技で避けたシェンなどの例外もある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ