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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第4章 交錯する3人の主人公たち
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第八十話 復讐の青龍! 破られた幻影光龍壊

大会始まったら新キャラ沢山だそう。

過去キャラもたくさんだそう。

たくさん出したい。


 禁断の森での特訓を初めて三週間が過ぎた。

大会開催まではあと一週間ほどに迫っている。

特訓の成果もあり、付け焼刃程度ではあるがショーナの実力を底上げすることはできた。


「肉体的な特訓はここまでじゃな。後は魔法を教える」


「いや、早く帰れよ」


「黙れカイト」


「時間も無いから簡単なヤツと有用なヤツを少しだけやるぞ。まずは比較的簡単な硬質化から…」


 結局、一週間ほど前の川での話からメノウとショーナの距離が縮まることは無かった。

あれから何度か気持ちを伝えようとしたが、メノウはそれを聞き入れなかったのだ。

ショーナにはメノウが何を考えているのかが分からなくなっていた。

彼女の話す魔法の講義も耳にうまく入ってこない。


「聞いておるのか?」


「あ、ああ。聞いてるよ」


「…まぁいい。次は無色理論(クリア・セオリー)の使い方を教えるぞぃ」

 

「おう」


 いつもの過酷な特訓とは異なり、静かな魔法の講義が森の中では行われていた。

あまりに退屈な内容に、カイトは一人眠りに入ってしまった。

もっとも、無色理論(クリア・セオリー)自体が難易度のかなり高い高等魔法の一種。

解説自体がかなり高度なものになってしまうため、彼が退屈な内容と捉えてしまうのも仕方が無いと言える。


「魔法の解除はもちろん、暗示や幻術、その他諸々に応用できる…」


「ふむふむ」


「使い方はまずは…」


 講義が始まって数時間。

最初の調子を維持しつつ講義を続けるメノウ。

それに何とかついて行くショーナ。

昼寝から覚め、川の方へ魚を捕まえに行ったカイト。


「あの二人もよくやるよな~」


 川に向かって釣り糸を垂らしながら一人呟くカイト。

帰るまでにはまだ時間はたっぷりとある。

いっその事、その間にいろいろとしてみるのも悪くは無い。

遺跡を探索して財宝でも探す、ドラゴンを探すetc…


「ん?」


 釣り糸を垂らして少し時間が過ぎた。

ふとその間に何かの視線を感じる。


「この気配…覚えがあるな…」


 辺りを見回し、その視線の主を探す。

森の中に隠れているらしく姿は確認できなかった。

しかし数は分かった。

三体、敵意を持った『何か』が潜んでいるようだ。


「隠れてないで出てこいよ!」


 気配の主に叫ぶカイト。

それに答えたのかソイツは森の中から姿を現した。


「やっぱりな」


 姿を現したのは小型獣型ハンター三体。

彼はかつてこの禁断の森でハンターと交戦したことがあった。

数年前、友人たちと共にこの森に探検に来た際に彼はハンターと出会った。

まだその時のカイトは僅か十一歳、逃げるだけで精一杯だった。

しかし、今は違う。


「あの時の借りをかえさせてもらうぜ」


ハンターは身体中から暗黒のオーラを放ち、紅く鋭い眼光に吸い込まれそうなほど。

一匹が荒い息を上げて低く唸り、涎を垂らしながら、鋭い牙を覗かせ吠えてカイトに襲い掛かった。


「さすがに今回は逃げるわけにはいかないな」


 鞘から剣を引き抜き、飛び掛かってきた小型獣型ハンターを両断。

残る二体はその気迫に怯えたのか、ずくに逃げて行ってしまった。

騎士団から配給された護身用の剣とはいえ、その切れ味は並みの剣を遥かに超える。


「…森の中にいたってことはあの二人は」


 急いでキャンプ地へと戻るカイト。

彼の想像通り、メノウとショーナも既に小型獣型ハンターと交戦していた。


「はッ!」


 脚から放つ斬撃波、『疾風の裂脚』で小型獣型ハンターを数体纏めて切り裂くメノウ。

拳で内部装甲ごとハンターを破壊するショーナ。

辺りには十数体の小型獣型ハンターの残骸が転がり、その中央に背中合わせに立つ二人。

あれだけの数を相手にしながらも、二人はほぼ無傷だった。


「硬質化って便利だよな」


「便利じゃろう?」


 どうやらショーナは、先ほど習った硬質化の魔法を早速使っていたらしい。

ハンターを拳で殴り飛ばしているにもかかわらず、傷を負っていないのはそのためだ。


「なんだ、二人とも無事だったのか」


「当たり前じゃ」


「あんなのに負けるかよ、次はいないのか?」


 ショーナのその言葉に答えたのか、森の奥から更なる敵が現れた。

地響きとともに、空気を割くかのような咆哮が聞こえた。

木をなぎ倒し、小型獣型ハンターの残骸をその足で踏み砕いて行く。


「ほぅ、これはこれは…」


「こいつは…恐竜!?」


「大型肉食恐竜型ハンターだ!でも青い…?」


 現れたのは『大型肉食恐竜型ハンター』、いやそれを改造し造られたという『青龍型ハンター』だ。

背中に飛竜の翼を、前足に鋭い飛竜の爪を装備した特殊仕様。

数年前、メノウが東アルガスタで交戦したものと同型だ。

一目見てその時の戦いを思い出したメノウ。

しかし、一部違う部分があった。

…全身に幾何学的紋様が刻まれているという点だ。


「青龍と、いうことは…」


「まぁ、僕も当然いるわけだけど」


「やっぱりな」


 木の影から姿を現した、元東アルガスタ四聖獣士の少年シェン。

青龍型ハンターと同様の紋様をその腕に刻んでいる。

以前、灰色の少女グラウから受けた忠告の通りになってしまった。


「グラウが言っていた通りじゃったか」


「あれ?キミ達もあの子知ってるの?」


「正体は知らんがな」


「じゃあ意味ないね。今回は最初から本気でいかせてもらうよ」


 これまでにシェンはメノウと二回戦ったことがある。

一回目は単なる様子見、二回目は東アルガスタでの戦い。

そのいずれも彼を倒してきた。

しかし今回は以前とは少し状況が違う。


「グラウが言っていたことが気になるのぅ…」


 以前ショーナと灰色の少女の話を盗み聞きしていたメノウ。

その時、灰色の使用所の言った言葉は『シェンという男に気をつけろ』と言う物だった。

シェンの体に刻まれた奇妙な紋様、そして灰色の少女の言葉。

青龍型ハンターに気をつけろ、というのならば話は分かる。

しかし『シェン』に気をつけろと言うのは一体…?


「気を抜くな!」


「灰色の…ッ!」


 その声と共に現れたのは、灰色の少女グラウ。

青龍型ハンターの前に立ちはだかった。


「貴女はヤツの相手を。私はハンターの始末をする!」


「お前さんは一体なぜそこまで…」


「そんなことはどうでもいいでしょう、カイトたちは離れていろ!」


 深く被ったフードのせいで顔こそはっきりと見えないが、少なくとも彼女は信頼できる。

以前の魔獣シヤンの時もそうだった。

そしてショーナへの忠告。

正体は明かせないのには何か理由があるのだろう。


「灰色のッ!頼むぞぃ!」


「…シェンは頼みますよ!」


「ああ!まずはシェン!お前さんを先に倒す!」


「へぇ、それはおもしろい」


 大型のハンターに対し勝負を長引かせるとのはスタミナの関係で不利になることは、今までの戦いでわかっている。

事実、前回の東アルガスタでの戦いではメノウの魔法に対して補正が掛っていなければあのような勝利は無かった。

灰色の少女がどれほどの強さを持つかはわからないが、ここでメノウがとる作戦は一つ。


「お前さんを速攻で倒し、グラウに加勢するまで!」


「そう上手くいくかな?」


「いかせてみせる!」


「へぇ…」


「過去の亡霊に何ができるかぁ!幻影(ファントム)光龍壊!」


 速攻で決着をつけるため、メノウがとった策。

それは幻影(ファントム)光龍壊を速攻で使用すること。

対峙するシェンに幻影(ファントム)光龍壊を放つメノウ。

しかし、勝負を急ぐことほど愚かな者はいない。


「過去にこだわってるのはどっちかな?メノウちゃん!」


 その声と共にシェンも構えを取り技を出す。

それは… 


「魔技、『反転幻影(ファントム)光龍壊』!」


「なに!?」


 メノウの持つ幻影(ファントム)光龍壊、それを完璧に模倣したシェンの放つもう一つの幻影(ファントム)光龍壊。

威力はほぼ互角、二人の拳が激突する。

その衝撃は凄まじく、それだけで周囲一帯の木が折れ、地面が抉られるほど。

使用者同士でなければメノウとシェンも一瞬で吹き飛ばされていただろう。


「こんなカビの生えたような昔の技に、いつまでこだわっている気だよ!」


 幻影(ファントム)光龍壊、その技の原理自体は確かに難しいことでは無い。

全身に魔力を纏わせ疑似的に硬質化。

その後、敵を貫くと同時に纏っていた魔力を放出し内部からの破壊を可能とするのだ。


「この程度の技ならコピーなんて難しくないんだよ、この紋様の力があればね!」


 彼の腕に刻まれた紋様が不気味に輝きを増す。

幻影(ファントム)光龍壊のコピー技自体は彼が初というわけでは無い。

もともとこの技自体が、かつてメノウが対峙した『ファントム』という戦士の技のコピー。

それを彼女が改良して造りだしたのだ。

数年前、メノウと共に旅をした少女カツミも簡易的ではあるが幻影(ファントム)光龍壊のコピー技を使用している。


「カツミの技とは違う、完全にワシのコピー技…!」


「ハッ!」


 ここまで互角だった拳にさらに魔力を込めるシェン。

徐々に強めるのではなく一気に魔力を流し込んできたのだ。

突然の出来事に対応できず、押し負けたメノウはそのまま弾きとばされてしまう。

折れ曲がった木に叩きつけられかけた彼女をショーナが受け止めた。


「クッ…!」


「ショーナ!?」


「こ、これくらい軽いものさ…」


「ありがとうな、ショーナ…」


「へへ…」


 ショーナが軽い笑みを浮かべながら言った。

しかしメノウを受け止めた際の衝撃が意外と強かったのか、彼自身もダメージを受けているようだった。

反対に、攻撃を受けたメノウ自身には大きなダメージを見られなかった。


「ちょっと熱いんじゃな~い二人とも~?僕も混ぜてくれや、おーい」


「うるさいわ!そういうものではない!」


「ああそうかい」


「それにしてもシェン、お前さんがここまで強くなっていたとは少し驚いたぞ…」


「まぁね、以前メノウちゃんが戦ったスート達とは違うんだよ!」


「正直、これは結構キツイ状況じゃな…」


 シェン対メノウとショーナ。

そして青龍型ハンター対カイトとグラウ。

禁断の森の特訓、最後の戦いが始まった…


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