第七十四話 再会
原作者の裕P先生と再会したい。
ルビナ姫に依頼され、『魔王討伐大会』の監視及び参加者の警護をすることとなったメノウ達。
東西南北のアルガスタで行われる全四回の予選のうち、最初に行われる予選は南アルガスタのもの。
メノウたちは四組に分かれ、それぞれの地区へと向かった…
「なんで俺はお前と一緒なんだよ!」
「仕方ないじゃろう、他のみんなは別の地区に行ってしまったのじゃ」
そう言いながら、列車から降りるカイトとメノウ。
どうやらカイトはメノウに対しあまりいい印象を持っていないらしい。
年下の少女に馬鹿にされたことを根に持っているのだろうか。
もっとも、実際の年齢ではメノウの方が上なのだが…
「南アルガスタ、久しぶりじゃのぉ。…なんか以前も言った気がするのぅ」
「なんか年寄りくさいぞ、お前」
「そうか?」
列車から荷物の入ったずた袋を降ろしそれを肩にかけるメノウ。
カイトの方は荷物を特に持っていないようだった。
騎士団の剣とオートマチック銃以外はミサから借りたというホバーボードくらいだ。
迎えが来るとあらかじめ聞いていたので駅の前で待つことに。
だがどうやら既に迎えの者は到着していたようだった。
「よ、久しぶりだな!」
「ミーナ!」
待っていたのは、かつてメノウと共に旅をした棒術使いの少女ミーナだった。
久しぶりの出会いに抱き合って喜ぶ二人。
「元気じゃったか?」
「ああ!」
「よかった!」
「で、そっちは…?その服装は騎士団のものみたいだけど」
ミーナの言葉に対し、腰に手を当てて額に手を当て、瞼を閉じてやれやれと首を横に振るカイト。
瞼を閉じたまま、肩を竦めてため息を零しながらこう言った。
「俺はゾット帝国騎士団所属のカイトだ!」
「うん、まぁ見た目でわかるけどさ」
「騎士団だぞ!この歳で騎士団所属は結構すごいはずだ!」
「カイト、ミーナは南アルガスタ四重臣所属じゃぞ」
四重臣は軍の大佐と同等かそれ以上の地位にある。
ミーナははかつて、ゾット帝国軍所属の南アルガスタ四重臣C基地の治めていたが一時脱退。
あの南アルガスタでの戦いの後、別の仕事を行った後、再び四重臣の座に舞い戻った。
カイトと同じ年齢の際には既に四重臣の座に着いていただけに、彼がどのように凄いのかが分からなかったのだ。
「し、四重臣かよ。ミーナって…」
「ああ、そうだよ。けど地位なんて高くても意味ないよ、逆に殺される機会が増えるだけだ」
かつての自分の体験を交えながら皮肉交じりで言うミーナ。
実際に地位が高かったがゆえに殺されかけた女であるため何とも言えない。
「メノウ、アタシ出世したんだ!今は四重臣のA基地の司令官だよ」
「おぉ~!」
「しかもなんかすごい偉いし…俺いじけちゃうし…」
元々の四重臣メンバーである黒騎士ガイヤとシヴァは死亡とされている。
ヤクモは表向きは行方不明ということになっている。
残ったミーナが繰り上げでA基地の司令官となったらしい。
「ショーナは?ショーナは今、南アルガスタにいるのか!?アゲートは?」
「ああ、もうすぐ一緒に来ると思うよ」
「それは本当か!?」
メノウが声を荒げて言った。
ミーナのみ先に仕事を切り上げ、駅の前で待っていたらしい。
「ん?珍しいな。こんな街中で馬の蹄の音が…」
カイトが言った。
メノウとミーナが話していた丁度その時だった。
その音は段々とこちらに近づいている。
メノウはこの音の主が何者かを知っていた。
それはかつて南アルガスタを旅した際によく聞いた『あの音』だったから。
「待たせたな!メノウ!」
「ショーナ!アゲート!」
その蹄の音の主、それは馬のアゲートを駆るショーナだった。
凛々しく成長したその姿にメノウも驚きを隠せない。
しかしその眼に宿す光はまさしく、かつて共に旅した時の彼と同じもの。
「久しぶりだなぁ、一体何年ぶりだ!?」
アゲートから降りながらショーナが言った。
久々にメノウに合えたことを、両者ともに喜んでいるようだ。
「会いたかったぞぉ~!」
ショーナに飛びつき抱きかかるメノウ。
かつての旅の時のメノウとショーナにそこまでの身長差は無い。
しかし今では二回りほどショーナの方が大きくなっていた。
そのため抱き合うという形では無く、メノウが抱きつくという形になってしまった。
「へへ、相変わらずだなぁ」
「お主もな」
ショーナの顔を見上げるメノウ。
それを見た彼は、メノウが数年前からあまり成長していないことに気が付いた。
何故かと一瞬考えるも、ただ単に食事をあまりとっていなかったのであろうと結論付けた。
主要都市以外ではいまでも食事をまともに取れぬ者たちが多くいるのも事実。
旅を続けていれば、そのような地区で過ごすこともあったはず。
ショーナはそう考えたのだ。
「それにしても見違えたのぉ、ショーナ」
「へへへ、あれから俺、ずげえがんばったんだぜ!」
メノウと別れてからショーナはシェルマウンドにある学校で基礎的な学問を一通り学んだという。
もともと彼は、独学とはいえ数学や確率論、その他機械工学の分野に秀でた才能を持っていた。
それは知識に対しひたすら貪欲な彼の持つ元来の性格があったからこそ。
環境が悪く、幼いころのショーナは勉強の道に進むことができなかった。
シェルマウンドに住み、援助を受けられたことでその道に進むことが出来たのは幸運といっていいだろう。
「俺は四重臣のD基地の司令官やってるよ」
「おお!すごいなショーナ!
D基地は南アルガスタ内でもかなり辺境の地域。
四重臣の制度自体が、メンバーの地位、出身などを問わないという規約がある。
以前、単なる旅の少女だったミーナが司令官になれたのもそれが理由だ。
そのため、いきなりショーナがその地位に付けのだ。
「なんか偉いヤツばかりだなぁ…」
そう言ってため息をこぼすカイト。
壁に寄りかかり街の様子を軽く眺める。
「ん?アイツやたら派手な格好しているなぁ…」
「どれじゃ?」
「アイツだよ、ほら」
カイトが指差したのは、一人の少女だった。
燃え盛る炎の様に赤く、黄金の刺繍を入れた悪趣味な着物を身に纏ったその人物。
それは数年前、南アルガスタで戦った人斬り『汐之ミサキ』だった。
時が経ち成長していたが、その冷たい眼は忘れるわけが無い。
あの戦いの後、ゾット刑務所へ収容されたと聞いていたが…
「…ヤツは!」
「お、おいメノウ!」
ミサキもメノウに気付いたのか、軽く挑発するような軽い笑顔を浮かべる。
そしてその身を裏路地へと隠すように逃げて行った。
当然、そのまま逃がすメノウでは無い。
「ショーナとミーナはアゲートを見ててくれ!」
「あ、ああ!」
「俺も行くぞ!」
裏路地を逃げるミサキとそれを追いかけるメノウ、カイト。
やがてミサキは建設中のビルへと入って行った。
まだ鉄骨がむき出しの、骨組のみの状態だ。
敷地は広く、建材などで視界も悪い。
隠れるには最適な場所といえるだろう。
「突然なんだよ!いいかげんにしやがれ!」
カイトが怒鳴り散らした。
「ヤツは汐之ミサキ、以前この南アルガスタを荒らしまわった人斬りじゃ」
「人斬りだって!」
「何故ここにヤツが…!数年前に捕まえたはずじゃ…」
建設現場へと踏み込む二人。
不思議と人の気配はしなかった。
気配を殺しているのではない、気配そのものを感じないのだ。
「人の気配は感じないが…」
「立っているだけで体に嫌な気を感じるのぅ…」
何か妙な気配が辺りを包み込む。
と、その時…
「ひはははははは!久しぶりだねメノウちゃーん!」
建設途中のビルの骨組みに立つ人斬りミサキ。
彼女の笑い声が建設現場に響き渡った。
高所からメノウとカイトを見下ろしながら、高笑いを続けている。
「ミサキ!お前さんにはききたいことがある!」
「へぇ、まぁ私からは話すことなんてないんだけど」
「ならば無理矢理吐かせてやるわ!」
鉄骨を飛び移り、ミサキのいる場所へと昇って行くメノウ。
しかしミサキが、それをそのまま見ているわけが無い。
腰に差した刀を引き抜き、幻術による炎をつかいメノウに襲い掛かった。
「喰らえ!『炎舞折朱』!」
「危ねぇ!?」
巨大な火炎に包まれたメノウを見てカイトが叫ぶ。
しかし、メノウはその炎から無傷で飛び出した。
「以前も言ったはずじゃ、ワシに魔法は通じんと!」
「これはあいさつ代わり!本命はこっちだよ!」
その声と共に刀から放たれた多数の真空波がメノウを襲った。
さらにその攻撃と共にミサキの刀そのものが砕け散り、その破片も雨霰のようにメノウに降りかかる。
「魔力の関係ない実体攻撃!『鎖刀折朱』!」
「なに!?…うわっ!」
砕け散った刀の破片をローブで防ぐも、衝撃波で吹き飛ばされるメノウ。
「おい!左の足場に飛び移れ!」
「左…あれか!」
カイトの言葉を聞き、足場となっていた鉄板に着地するメノウ。
体勢を整え改めて再びミサキに視線を移す。
「ミサキ!」
「まぁこれくらい当然だよね、今日はここまでだよ」
「なに?」
「今度の討伐大会、楽しみにしてるよ。ひははははは!」
そう言いのこし、ミサキはその場から姿を消した。
名前:ショーナ(三年後) 性別:男 歳:十六歳
メノウと別れた後、猛勉強を重ね王都ガランの学校に進学。
さらに武術の習得や訓練を受け、メノウと共に戦えるほどの技能を身につけた。
守られる自分では無く、メノウを守る男になりたいという理想を持つ。
南アルガスタ四重臣の一人となった。
メカニックとしての腕も健在。
剣技、東洋武術、射撃の腕もかなりのものをもつ。
かつてのメノウと同じく、アゲートを相棒として駆る。
名前:ミーナ(三年後) 性別:女 歳:十七歳 一人称:アタシ
南アルガスタ四重臣の一人、A基地の司令官に昇格した。
以前の経験から、部下に対する接し方を変えたらしい。
多節混を使った棒術も健在。
ショーナの上司兼姉的な存在。