表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第4章 交錯する3人の主人公たち
74/191

第七十一話 ゾット帝国騎士団カイトがゆく!

見た目は子供でも数百歳くらいなのでメノウは酒飲んでも平気です。

一週間ほどの時が経ち、メノウ達は王都ガランへとたどり着いた。

王族たちの住む、この国の中枢だ。

通常ならば北アルガスタの辺境の地から王都ガランまでたどり着くにはかなりの時間がかかる。

山を徒歩で抜け、列車を使い二週間。

全て荒地や山間部で時間を取られるのが原因だ。


「ウェーダーさんの車が合って助かりましたよ」


「軍用だからな、スピードも速くて悪路に強いんだぜ。かっぱらったヤツだけど…」


「運転かわりましょうか?」


「スートさん、アンタ夜中ずっと運転してたじゃねぇか。少し休んだ方がいいぞ」


「そ、そうですね。ではお言葉に甘えて…」


 ウェーダーが乗っていた軍用ジープを使い、これだけの時間短縮をすることが出来たのだ。

以前、西アルガスタの港町キリカで破棄されていた物らしい。

特別な調整が施されているらしく、ナイトラスオキサイドシステムや防弾ガラスなどが標準装備。

もし同じものを買うならば、51.4万キッボはするだろう。


「ま、着いたみたいだぜ。王都ガランに」


「検問所前だけどね」


「そう言えば昔、ショーナが言っていたのぅ。検問所があると…」


 ゾット帝国の首都である『王都ガラン』は、ディオンハルコス鉱石を巡るかつての大戦前の街並みを今なお残す古都だ。

レンガ造りの建物と道など、中世の息吹が今でも息づいている。

しかし、だからといってこの都市は古いだけの不便な場所というわけでは無い。

大戦で破壊された地区は最新の建築物が立て並び、東洋街も一部に存在している。

さらに、王城を含む一部の地区は景観保存のための特別法が施工されている。

古今東西の施設が揃い、


「先に手続きを済ませてくるので少し待っていてください」


 そう言ってスートが車から降りる。

その間に改めてガランの周りにある城壁を見回す。

十数メートルはある巨大な壁、これがこの都市への侵入者を防いでいるのだ。

 大戦前のかつてこの都市は、ゾット帝国の前身である『アルガスタ公国』の首都として使用されていた。

それが特に顕著なのは城や都全体を覆う城壁、その他国の公共施設などだろう。

これらはアルガスタ公国のものをほぼそのまま流用している。


「終りましたよ」


 本来ならば身分を証明する者の無いメノウとウェーダーはこの街に入ることはできない。

スートが王女と繋がりを持つ者であるため、半ば無理矢理入れたようなものだ。

アズサのみ、シェルマウンドの東洋街出身であるため、そちらに問い合わせることで何とかなったが。


「お二人は身分証を持っていないらしいので、こちらで適当に言って通してもらいました」


「助かるよ、スートさん」


「ありがとうな、スート」


 スートに礼を言う二人。

検問所を抜け、ガランの城壁内部へと入る。

この辺りは中世の面影の残る地区らしく、ほぼ全ての建物がレンガでできていた。

落ち着いた雰囲気ながらもどこか気品を感じさせている。


「この街並みに軍用ジープってのはちょっと浮いてるな」


「そうね…」


 そう言うアズサ。

それと同時に空腹からか、彼女の腹が鳴った。

顔を赤らめる彼女だが、メノウもそれに同調した。

既に太陽も高く昇り、昼を少し過ぎているというのもあるだろう。


「あ…」


「そう言えば今日は何も食べてないのぅ」


「ずっと走り通しだったからな、仕方ねぇよ」


「あの角の所に料理屋があります、そこで食事でもとりましょう」


 スートの提案を受け、その料理屋へと向かう一行。

どうやら旅人向けの宿も兼業しているらしく、一階が料理や酒を提供する店舗。

二階が宿である貸し部屋となっている。


「失礼しますよ」


「いらっしゃい、旅の人かい?」


 店に入ると同時に店長と思われる男が言った。

木製のカウンターにテーブル、外観の通り落ち着いた雰囲気の店だ。

昼過ぎの時間帯であるため、店内に人は殆どいなかった。

案内された席に座り、料理を注文する。


「じゃあワシはひよこ豆のスープとパン、ソーセージを…」


「生の魚料理は無いのね…私は魚のフライを」


「内陸だから仕方が無いぜ、俺はこっちとこの肉とポテト、あと酒だ!これとこれとこれ!」


 昼間から酒盛りというのもあまりいいものでは無い。

しかし、スートも最初からこの宿で休息を取るつもりだったらしい。

ここまでの旅の疲れを取るという意味もある。


「すいません、私は先に少し休ませてもらいます」


「そう…」


「店長さん、あと電話を借りたいのですが」


「電話ならこちらにありますよ」


「(黒電話だ…)」


 連絡したい者がいるのか、スートは店にある電話を借りどこかに電話をかけていた。

少し話し込んだ後、彼は黒パンと水、瓶詰の野菜を受け取り二階の宿泊部屋へと籠ってしまった。

よほど疲れがたまっていたのだろう。

 

「いいの?お酒なんか飲んで」


「一日ほど休むみたいだし大丈夫だろ?」


「ワシも飲むぞー!」


「子供はダメよ!」


「なんじゃ」


「別に大丈夫だろ、メノウも飲もうぜ」


「おおー!」


「私、どうなっても知らないよ」


 アズサの言葉を無視し昼間から酒盛りを始めようとする二人。

この店は肉料理とビールを売りとしているらしく、二人はそれらを次々と注文していった。

料理が来るまでしばらく時間がかかるらしく、先にビールが運ばれてきた。

適当に注文したからかたくさんの種類の瓶が並ぶ。


「おっ、美味そうな酒だ!」


 ウェーダーの反応に気を良くしたのか、ビールを運んできた店長がそれぞれの銘柄の説明を始める。

大雑把な性格のウェーダーは普段ならばこう言った話を聞いたりはしない。

しかし今回は違った。

店長の熱のこもった解説に思わず聞き入ってしまった。

よほど自身の店の酒に自信があるのだろう。

黒ビールやアルコールの高いもの、逆に低い女性向けのもの、ホップの香りの強いもの。

それぞれを産地の逸話を交えての熱弁、これを聞き逃すわけにはいかなかった。


「当店はアルガスタ全土から地方特産のビールを取り寄せています。きっとお客様の好みのものがあると思いますよ」


「なるほどな、値段も安いしこれなら気軽に飲めるぜ」


「ビールは一般に広く親しまれる酒です。構えずに頂くのが自然な飲み方です」


「そうだな、でも出来ればつまみの方も…」


「ポテトと焼きソーセージならすぐに提供できますよ、どちらも相性は抜群ですよ」


「ありがたい!頼むよ」


「はい、ではすぐにお持ちいたします」


 その言葉の後、店長はすぐにつまみのポテトとソーセージを持ってきた。

それを食べながら酒盛りを始めるウェーダーとメノウ。

一気に飲んで急に酔いが回ったのか、アズサの料理が運ばれてきたころには二人は完全に酔っぱらっていた。

さらに、所狭しと、テーブルの上に追加のビールとメインの肉料理が運ばれてきた。

されを見てテンションが上がったのかさらに酒盛りの激しさは増していった。


「酒飲んだら金になるのかー!?」


「ワシは勉強が嫌いじゃー!」


「メノウ、クレープいらんのかー!?」


「少し大人しくしてくれぬか?」


「え、やだよぉ!」


 意味不明な言葉を羅列するクソアホ二人組。

それを変な物を見るような眼で見るアズサ。

この場にスートがいたら確実に二人を止めていただろう。

彼が二人に対するリミッター的役割を果たしていたことを再確認させられた。


「全く、子供なんだから!」


「子供じゃないぞぃ」


「あれメノウちゃん、酔っぱらったんじゃ?」


「ワシは酔うのは早いが醒めるのも早い」


「そうなんだ、じゃあコレは?」


 アズサが一人で盛り上がっているウェーダーを指さす。

それを見て、メノウは酔っ払いを客観的に見るとどうなるかを再確認させられ、軽い自己嫌悪に陥った。


「あ…見てて気分のいい物じゃないのぅ…」


「舌ペロきっしょ!」


「黙れ酔っ払い!」


「まりものうで」


「それにしてもよく飲み食いするわね…見てるだけで胸焼けしそう…」


「酔っ払い最低じゃな」


「貴女もさっきまでそうだったのよ。周りに迷惑かかってないかな…?」


 そう言ってアズサが席の周囲を見回す。

店長は全く気にせず料理を作っていた。

このようなことは恐らく日常茶飯事なのだろう。

他の店員も同じだ。

 しかし客は違った。

恐らく常連と思われる一般男性や同じ酔っ払い以外は少し迷惑そうな顔をしていた。

そんな中…

 

「おい! おまえら昼間から酒飲んで、こっちとら酒臭くて、飯が不味くなったぞ!」

 

 ウェーダーの酒盛りに対して、店内にいた少年が大声で怒鳴った。

その声を聞き、気を抜いていたアズサがいきなりのことに驚きの表情を見せた。

店内の何人かの客が何事かと、こちらを見ている。


「(あの服、帝国軍のものじゃな…)」


 メノウがその少年に視線を移す。

歳は十三か十四と言ったところか。

ゾット帝国軍の軍服に帽子とマント。

革手袋と革靴と、どこか窮屈そうな姿だ。

武器は肩掛けの剣と、腰のホルスターにオートマチック銃。

他には所持していないだろう。


「お前らなんなんだ?ならず者か?」


「あ~…あたし達そんなんじゃ…」


 アズサの弁明の途中、酔ったウェーダーが割って入った。

邪魔されたせいか機嫌も悪そうだ。


「誰がならず者だって!?ガキが」


「ちょ、ちょっとウェーダー、飲みすぎよ…」


 アズサの制止を気にも留めず、その少年に食って掛かるウェーダー。

少年もそれに引くことなく顔を背けて舌打ちする。

拳でテーブルを叩き、歯を食いしばってウェーダーを睨み据える。

それを見かねた、連れの少女が彼に駆け寄って二人を止めようとした。

しかし…


「ち、ちょっと!カイト!せっかく二人でお祝いしようって…」


「うるさいミサ!お前は黙ってろ!」


 『カイト』と呼ばれた少年は連れの少女『ミサ』の手を払いのけ、再びウェーダーを睨み据える


「カイト、それがお前の名前か」


「ああ、ゾット帝国騎士団所属のカイトだ。ならず者は俺が片付けてやるぜ!」



名前:カイト 性別:男 歳:十四 一人称:オレ 第一話で登場

恰好:頭の後ろで髪を小さく結え、両耳に羽ピアス。

ゾット帝国軍の軍服を着ている。

帽子を被り、マントを羽織り、防弾チョッキを着て、革手袋を嵌め、革靴を履いている。

武器:剣(騎士団からくすねた)オートマチック銃(騎士団からくすねた)

キャラ説明:ミサの幼馴染。

後さき考えずに行動する癖がある。好奇心旺盛で情緒不安定。

友人のデートに突然押しかけて親友に嫌われたことがある。

原作『ゾット帝国騎士団カイトがゆく!~人を守る剣の受け継がれる思い~』の主人公である。

『禁断の森へ』から三年後の設定となっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ