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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第1章 邪剣『夜』と孤独の黒騎士
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第六話 消えよ悪魔! 魔の山の住人達

~前回のあらすじ~

爆発のショックで気絶していたメノウは敵の屋敷で目を覚ました。

しかし、メノウを助けたその男には何故か敵意は無いようだ…?

メノウは自身の持ち前の強力な回復能力のおかげで、以前受けた傷はほぼ全て癒えていた。

しかし、今彼女の前にいるのはC基地の副司令官マイホム。

だが、彼にはどうやらメノウと戦う意思は無いようだ。


「どうですか?傷の方は…?」


「大丈夫じゃ、ありがとうな」


そう言いながら体に巻かれた包帯を取るメノウ。

そもそも、彼女は目の前にいる人物がC基地の副司令官だとは知らない。

多少の警戒はあるが、敵対心などあるわけがなかった。

包帯の下から現れたメノウの素肌。

シルクのような美しく白いその肌には、傷などどこにも無い。

ミーナの攻撃を受けた部分が少し青くなっている程度だった。


「そうですか、それはよかった」


マイホムがベッドの横に置いてあったローブをメノウに差し出した。

あれだけの爆風を受けたにもかかわらず、ローブには傷一つついていなかった。

このローブもメノウと同じく謎が深い。


「いろいろ聞きたいこともあるでしょう」


「お、そうじゃな」


あれから何が起こったのか?

ショーナは無事か?

ミーナは死んだのか?

今のメノウには知りたいことがたくさんあった。


「どうです?軽く食事でもしながら。もう体の方も大丈夫のようですし…」


マイホムはそう言うと、館の食堂へとメノウを案内した。

広い館内には不思議と人っ子一人いない。

人の気配も全く無かった。

だが、食堂にはすでに料理が用意されていた。

巨大なテーブルの上に所狭しと置かれた料理の数々。

チョコレートにカレーやキムチ、炭酸の利いた飲み物など上げればきりがない。


「うまそでしょぉ^~?」


「そ、そうかのう…?」


テーブルに置かれた料理は、お世辞にもあまりいい趣味とは言えなかった。

ゲテモノでこそ無いが、部屋の周りに置かれた高級な美術品や絵画に比べると明らかに料理だけが浮いている。

ついでに言うと、食器も汚い。

ソードオフ・鍋や薄汚い丼などが所狭しと置かれた異様な光景だ。


「これはヤバいぜぇ~?」


「(違う意味でやぱいのぅ…)」


そんな中、メノウはテーブルに置かれた一つの果物がふと目に入った。

トゲトゲとした硬い皮を持つ大きな果物。

今まで見たこともないその果物に興味津々なようだ。

それを手に取り、匂いをかぐ。

だか…


「臭いが凄いよぉコレー!?」


その果物から発せられた変な臭いを嗅ぎ、目を回すメノウ。

それを見たマイホムかメノウに説明する。


「それはドリアンという南国のフルーツですよ、初見さん」


「うぅ…鼻が曲がりそうじゃ…」


客席にメノウを座らせるマイホム。

それと同時に、どこからか現れた彼の従者が飲み物を運んできた。

オレンジ色の液体で、明らかに水じゃなかった。

柑橘類、あるいは南国の果実のジュースだろうか。

いや、この匂いをメノウは知っていた。


「ほぉ~、リップルか!」


「ええ、リップルはこの辺りでよく取れるのです」


「ワシの住んでいたラウル遺跡でもよくとれたなぁ」


そう言いながら、喉を鳴らして飲む。

あまりにも冷たくて美味くて、ごくごくと喉を鳴らして飲み干す。

その途中、先ほどの従者が前菜の料理を持ってきた。

小麦を水で練った生地の中に肉と野菜を詰め焼いたもの…のようだ。

メノウの眼にはただのグチャグチャとしたわけのわからない物体にしか見えなかった。


「(物体Xじゃ…)」


とりあえず口に運ぶ。

案の定、味はあまりいいとは言えなかった。

元々こういう料理なのだろうか、よくは分からないが彼女の舌には会わなかった。

逆にどうやったらこのような物体Xが作れるのか、そちらの方に興味がわいてきた。

物体Xを食べ終わったメノウが次に気になったもの、それはテーブルの端におかれていた丸いデザートだった。


「これはなんじゃ?」


「『ドラゴンに乗るワイバーン』というお菓子です。別名『ゲート・ガーディアン』、『アミュレット・ドラゴン』とも呼びます」


大層な名前の割に、小さなケーキの上にチョコフレークが乗っただけのデザートだ。

見た目は少し汚らしいが、少なくともまずそうではない。


「変な名前じゃ…」


「カスが、こぼれないように召し上がれ」


とりあえず一つ口に入れてみるメノウ。

少なくとも物体Xよりは美味しい。

だが、特別おいしいというわけでもない。

微妙な感じだ。


「…」


「お口に合いませんでしたか?とりあえずガッツリ系食べましょう!」


そう言ってマイホムが出してきたのは丼に入ったカレー?だった。

それも二品。

片方にはトンカツがたくさん入っている。

もう片方にはカツは入っていないが少し汁っぽい。


「(がんせきふうじ…かのぅ?)」


「ガッツリとしたオリジナルメニューです」


トンカツの入った方のカレーを食べるメノウ。

だが…


「ヴォエ!」


あまりの塩辛さと味の濃さに思わず吐きそうになる。

何とか飲み込むも、二口めが進まない。

なんとか我慢し、スプーンを進めていく。


「チキンラーメンカレーもありますよ」


「…とりあえず食べるかのぅ」


マイホムの出した『カツカレー炒飯』と『チキンラーメンカレー』をひとまず平らげるメノウ。

とても子供が摂取していいカロリー量ではないが、無理矢理腹に入れた。

ついでに箸休めとして出されたキムチも食べた。


「(胃もたれしそうじゃ…)」


「食べるあなたも、主人公なんで」


「そうかの」


「まだまだたくさんありますからお好きなだけどうぞ、『メノウ』さん?」


気味の悪い笑みを浮かべるマイホム。

今までの紳士的な雰囲気から一転攻勢、その場の流れが変わる。


「…そういえば、お前さんは何者じゃ?」


「ふふ…」


「何故、ワシの名を?」


「自己紹介が遅れました。私はマイホム、南アルガスタC基地の副司令官です」


マイホムはメノウにこれまでの経緯を語った。

司令官ミーナを裏切り、作戦中に謀殺しようとしたこと。

その際にミーナと互角以上の力を見せ、爆発に巻き込まれても死ななかったメノウに目を付けたこと。


「元々、C基地は私の治めていた基地でした。それをあの小娘が…」


「つまり、お前さんはゾット側の人間じゃと…?」


「おっと。私はあなたと敵対する意思は、ないです」


「無い、あ…」


もし敵対する意思があるならば、メノウを助けたりなどしない。

彼がメノウを助けたのには確かな理由があった。


「ここで一つ提案があります。私たちと手を組みませんか?」


マイホムの狙い、それはメノウを仲間に引き入れることだった。

メノウは南アルガスタ四重臣であるシヴァやミーナよりも実力は上。

いや、最低でもB基地の司令官ヤクモよりも上だとマイホムは判断したのだ。


「このC基地は支部基地の中で最大の兵力を持ちます。私たちが手を組めばこの南アルガスタを支配…」


「興味無いな」


マイホムの提案を切り捨てるメノウ。


「そういうのは嫌いなんじゃ、すまんな」


「お、お待ちください!」


「介抱と料理については礼を言おう、ありがとう」


そういうと、メノウは席から立ち上がりこの場から去ろうとする。

このままいてもどうせ無駄な話を聞かされるだけだ。

この場で始末してもいいが、介抱や食事を提供してもらった恩もある。

敵とはいえ、一度くらい見逃してもいいだろう。

そう思うメノウ。

だが…


「まぁ、そう思うなら仕方ないですな…」


「…ッ!」


マイホムの言葉と共に、メノウの身体から急激に力が抜けていく。

意識はハッキリとしているが、不自然と力だけが抜けていくのだ。

身体が異常に熱くなり、呼吸も苦しい。

異常なほど全身から発汗、


「かッ…」


呂律もまわらなくなるメノウ。

その場に崩れるように倒れこんでしまった。

メノウの視線に合わせ、彼女の顔を掴みマイホムが話しかける。


「知らない人に食べ物をもらってはいけないと教わりませんでしたか?」


「ゆうぅ…」


マイホムは食べ物に強力な薬物を仕込んでいた。

カレーやキムチなどの香料が強いものに入れ、薄味の物には薬品をいれないことで警戒心を薄めていた。

元々、匂いのキツイものならば多少の薬品が混ざっても、よほどのことが無い限りバレはしない。

また、辛みの強いものを多く料理として出すことで、多量の飲み物を摂取させるのもマイホムの狙い。

辛い物を食べた後には飲み物も欲しくなる。

アイスティーや糖分の多い飲み物ならば、カレーなどと同じく薬品を入れてもばれ難いからだ。


「いくら強くてもしょせんは子ども、たやすく騙せますね」


「まっ…」


「コイツを地下室に閉じ込めておきなさい!」


先ほど料理を運んできた従者に命じるマイホム。

メノウを担いだ従者はそのまま地下へと続く扉へ入って行った。


「後でゆっくり可愛がってあげますよ…」




-----------------





一方その頃、ショーナと猫夜叉のミーナは山の上のマイホムの館を目指していた。

ロープでぐるぐるに縛ったサヨアも一緒だ。


「おいサヨア!本当に罠とかは無いんだろうな!」


「ありません、ありません!だから許してミーナ様ぁ~!」


元部下のサヨアを多節混で叩きながら歩くミーナ。

そのたびに変な声を上げるサヨア。

その様子を見たショーナは…


「(最初はこの二人が仲間割れした『演技』でもしてるかとも思ったが…)」


ミーナとサヨアが結託し、ショーナの信用を得る。

最初はそのような作戦かとも疑ってはいた。

しかし、どうやら今の二人を見る限りそれは違うようだ。

二人が結託しているにしては、ミーナのサヨアに対する扱いが酷すぎる。

それに、一歩間違えばミーナ自身も大怪我を負うほどの作戦を決行するとも思えない。


「(少なくとも、このミーナって姉ちゃんは信用できるな…)」


アゲートに乗りながらショーナはミーナの方を見る。

以前からメノウに教わってきたおかげで、彼も馬の扱いがかなりうまくなってきた。


「も、もうすぐです!もうすぐで館です!」


サヨアが叫んだ。

いつの間にか、館の近くまで来ていたのだ。

近くには湖がある、小高い山の上にそびえる洋館。


「そうか、ここからならアタシでもわかるよ。ありがとう」


そういうと、ミーナはサヨアの縄を解いた。


「油断したなパーカ!このままマイホム様に言いつけてやるからね!」


そういうと、サヨアはとても重傷者とは思えぬ動きでその場を去ろうとする。

だが…


「うるせぇ!落ちろ!」


ミーナが思い切り多節混でサヨアを殴り飛ばした。

勢いよく吹き飛ばされ、館の下の湖に落ちていった。

数秒後に叫び声と水音が聞こえた。


「意外と早く落ちたな~」


「(あのサヨアってやつも意外と丈夫だなぁ…)」


改めてマイホムの館へと目をやる二人。

囚われのメノウを救う。

今まで彼女に頼りきりだったショーナが、逆に彼女を救おうとしていた…




名前:アゲート 性別:雄 『馬』

恰好:ゾット帝国製の鐙など

武器:蹄など

キャラ紹介:元はゾット帝国軍の軍馬だったが、いろいろあってメノウたちの元へ。

メノウにはすぐ懐いたが、ショーナに対してはなかなか懐かなかったらしい。

時折見せるショーナの勇敢さに、徐々に彼を認めてはいるようだ。

リップルの実が好き。

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