第六十二話 四聖融合 合成魔獣型ハンター!
八月十一日なのに何も進展が無いですね~
不思議ですね~
浜川裕平先生の復活は絶望的ですねー
後脚と後翼と尾は青龍、前脚と頭部は白虎。
装甲は玄武、前脚の爪と前翼、頭部の装飾は朱雀。
異形の魔獣、合成魔獣型ハンターを前に言葉を失うメノウ。
動揺を隠せず、その深緑の瞳がさざ波のように揺れる。
それとは対照的に大羽は表情一つ変えずにその状況を、ただ一人冷静に眺めていた。
「その魔獣に勝てたのならば、君の知りたいことを全て話そう」
「ま、待て!逃げるのか!?」
「屋上のヘリポートで待っている。負けたら君の死体は資料として回収させてもらうよ」
メノウ達のいる外の広場から、一人ビルの中へと撤退する大羽。
壁の残骸を軽快な動きで飛び越え、ビルの奥にある上階への階段の前に立つ。
「まぁ、精々頑張るがいいさ」
そう言って大羽はその場から去って行った。
それと共に、合成魔獣型ハンターはメノウに対し攻撃を仕掛け始めた。
白虎の鋭い爪を構え、メノウをその前脚で切り裂くべく飛び掛かる。
合成魔獣型ハンターの恐るべき咆哮が周囲に響く。
「速い!以前戦った白虎よりも確実に!」
これは白虎のしなやかな前脚に加え、青龍の後脚による強靭な力が作用しているためだ。
咄嗟に呼び出した幻影を囮にすることで攻撃を避けるも、この攻撃を一撃でも受ければメノウはひとたまりもないだろう。
全高十五メートルの巨躯からは想像も出来ぬ、素早い動きだ。
攻撃を避けたメノウに対し、再び咆哮を上げる合成魔獣型ハンター。
「…叫ぶことしかできぬのか!」
合成魔獣型ハンターは、メノウに振り向いて大きく口を開けて吠える。
まるで主人である大羽の邪魔するなと言っているようで、攻撃を止めて戸惑うメノウ。
メノウは合成魔獣型のハンターに軽いウォーターボールのジャンボシャボン玉を放ち威嚇したり、衝撃波で威嚇している。
合成魔獣型ハンターはぶるぶると頭を振ってメノウを片足で踏み潰そうとする。
合成魔獣型ハンターに踏み潰されそうになったメノウは頭を上げて拳を構える。
メノウの発動したウォーターボールのジャンボシャボン玉が点滅して消え、メノウの後ろにあった配電盤からばちばちと火花が散っている。
合成魔獣型ハンターが、近くにあった瓦礫の残骸をメノウに放り投げ、口の中の砲口が伸びてキャノン砲でメノウを撃つ。
メノウが空中で身体を起こすのも虚しく、纏っていたローブで防ぎながらも空中爆発する。
合成魔獣型ハンターは尻尾でメノウを薙ぎ払い、口の中の砲口からキャノン砲で、避けながら逃げるメノウを撃っている。
メノウが合成魔獣型ハンターと戦っている。
「はぁ…はぁ…」
戦いが始まってまだ数分。
既にメノウはスタミナ切れを起こしていた。
長旅の疲れに玄武、ツッツとの連戦による疲労。
精神的疲労、その全てがこの戦いの最中に襲ってきたのだ。
「まるで四聖獣士全員を同時に相手にして戦っているようじゃ…」
今まで戦った四神をモチーフとした四体のハンターの姿の特徴を、合成魔獣型ハンターは持っている。
このハンターの攻撃パターンもその四体の物と同じものだ。
攻撃を受けるたびにその時の戦いが記憶の奥底からフラッシュバックされる。
「(カツミがいてくれれば…いや、それを言うのは単なるわがままじゃな…)」
彼女に別れを切り出したのは自分自身だ、そう言い聞かせる。
最後まで気高き心を持ち、自分自身として戦う。
すこしでも弱い自分を出したら、この勝負に負けてしまう。
勝つためには決してあきらめぬ、強い心が必要だ。
「残りの魔力と体力も残り少ない、出来る限り節約していかぬとな…」
そう言うと、メノウは今迄ら見たことも無い拳の構えを取る。
それと同時に、夜空に今まで雲で隠れていた月が現れる。
雲が晴れ、月の光に地表が照らされる。
今日の月はちょうど満月。
いつもよりも一層、夜空が美しく見える。
「月が出ている時のみ使える技がワシにはある…!」
メノウの言葉の意味を知ってか知らずか、先ほどまでの攻撃を止め警戒態勢を取る合成魔獣型ハンター。
月の光が、合成魔獣型ハンターとメノウを照らす。
「それがこの技じゃ、幻影螺武法閾!」
その叫びと共にメノウの動きが徐々に速くなっていく。
それはかつて、彼女の使用した『幻影制光移』の動きによく似ている。
しかし、この技の性質はそれとは少々異なる。
『幻影制光移』は太陽光を魔力に変換し徐々に自身の速度を加速させていく技。
だが、今のメノウが使用した『幻影螺武法閾』はそれとは逆。
月の光を魔力とし、自身の速度を一気に上げる技だ。
「一気に終わらせるぞぃ!」
それに対し、合成魔獣型ハンターは再びメノウを威嚇するため、その大きな口を上げ獣の咆哮を上げる。
先ほどは攻撃を止めてしまったメノウだったが、今は違う。
彼女は合成魔獣型のハンターの攻撃を幻影螺武法閾でかく乱する。
「どうじゃ!さすがにこの動きは読めまい!
合成魔獣型ハンターはメノウを白虎の爪で切り裂くべく、その前脚で再び斬りかかる。
青龍の後脚で勢いをつけ突進を仕掛ける。
しかしその攻撃もメノウは軽く回避。
頭を合成魔獣型ハンターの方へと向けて拳を構える。
合成魔獣型ハンターは、一旦距離を取り、口の中に仕込まれた機銃でメノウを撃つ。
「手数で勝負に来たか!」
纏っていたローブで機銃を防ぎ、空中で体勢を立て直す。
ビルの残骸を足場に、その場に立つ。
青龍の尾で残骸を薙ぎ払い、それをメノウにめがけて弾き飛ばす合成魔獣型ハンター。
数メートルはある巨大なコンクリートの塊、それがライフル弾なみの勢いで向かってくるのだ。
個距離では避けられるわけが無い。
だが、メノウはそれを避けた。
「それは幻影じゃよ」
いや、合成魔獣型ハンターが狙ったのは、最初からメノウが生み出した幻影だった。
それに気づいたのか、合成魔獣型ハンターは再び白虎の爪と牙で攻撃を仕掛ける。
今、月下の下、合成魔獣型ハンターとメノウが熱戦を繰り広げている。
「どうじゃ!?この動きは」
メノウの、幻影を纏う高速移動に翻弄される合成魔獣型ハンター。
それを前にしメノウが技の構えに入る。
今の彼女は魔力、体力も消耗しきった状態。
残りの力を振り絞り、彼女の持つ最強の技を放つ。
「幻影…!」
幻影を囮に合成魔獣型ハンターの正面、弱点である口の中を狙える最高の位置にメノウが立つ。
他の部位は玄武の装甲に守られている。
唯一装甲の無い腹部は、合成魔獣型ハンターが四足歩行であるという性質上、とても狙い辛い。
となれば、以前の青龍の時と同様、口の中を狙うのが最善の手。
必殺の幻影光龍壊を放つ構えを取るメノウ。
合成魔獣型ハンターはその攻撃を阻止すべく、白虎の爪と牙でメノウを攻撃しようとする。
「(やはり動きは大味じゃな)」
いくら素早く動けるとは言え、合成魔獣型ハンターは十数メートルもの巨体の持ち主。
その攻撃はどうしても大ぶりなものにならざるを得ない。
それならば攻撃を掻い潜りつつ、攻撃を当てることが出来る。
メノウはそう考えたのだ。
事実、この白虎の牙と爪の攻撃も、メノウならば軽く避けることが出来る。
「(勝った!)」
爪と牙の連撃を、幻影を交えながら避けていく。
技の射程に入り、あとは口の中から体内へ入り内部から破壊を行うだけ。
「光龍か…!?」
だが、その必殺の一撃が放たれることは無かった。
メノウは攻撃を確実に当てるため、白虎の牙と爪を全て避けていた。
申し訳程度に放たれる機銃も全て回避した。
しかし、思わぬ伏兵といえる、合成魔獣型ハンターの攻撃が彼女を襲ったのだ。
「な…がッ…!?」
合成魔獣型ハンターの持つ『朱雀の翼』、その一撃がメノウの身体に叩きこまれたのだ。
翼とはいえ、それは巨大な金属の塊。
身体中の骨が砕け散るような衝撃がメノウの身体を襲った。
「うわっ…が…!」
もはや声にならぬ声を上げ、地面に叩きつけられるメノウ。
完全に不意を突かれ、防御も出来ぬままに攻撃をうけてしまった。
普段ならば攻撃を受けながす、あるいは避けるところだったが、勝負の決着を急いだがために隙が生まれてしまったのだ。
「朱雀の…はね…じゃと…」
この戦いの中、合成魔獣型ハンターは朱雀の羽を使っていなかった。
それに加え、『翼は飛行のために使うもの』という先入観から、まさか攻撃に転用してくるとは思いもよらなかった。
何とかギリギリで受け身を取ることが出来たものの、衝撃を完全に殺したわけではない。
着地の際の衝撃により、身体はかなりの傷を負っていた。
この様子では外部だけでは無く、体の内部までダメージを受けているだろう。
「う、うぅ…」
腕を上げようとするも、意識が朦朧とし行動に移せない。
その間にも合成魔獣型ハンターがメノウに襲い掛かろうと、ゆっくりと歩み寄ってくる。
「(身体が…うごか…にげ…)」
もはやメノウの身体が言うことを聞かない。
しかしそんなことなど合成魔獣型ハンターには全く関係の無い話だろう。
倒れているメノウにめがけて、銀色に輝く白虎の爪が振り下ろされた…
浜川センセと小説について朝まで討論したい