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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第3章 攫われの少女を追って…
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第五十七話 VS白虎!(後編) 疾風の開陽虎狼殺!

元ネタがゾッ帝だけに世界観の広げようがないんですよね…

パラレルワールド編、宇宙編、別の時間軸編いってみるか~?

 鉄壁の盾、フリージュンシールドを突破したものの、戦況はあまりよくなったとは言えない。

白虎型ハンターのスピードの前に翻弄される二人。

盾を破壊された白虎型ハンターは予想をはるかに超えたスピードを持っていたのだ。

二手に一旦別れるも、狙いを付けられたのはカツミより一歩スピードで劣るメノウだった。


「メノウ、気を付けろ!思った以上に速いぞ!」


「わかっておる、幻影(ファントム)制光移!!」


 加速魔法の幻影(ファントム)制光移を使い何とか攻撃を避けるメノウ。

太陽の照りつける荒野での戦いなので、この魔法の発動条件である『光』を補うことが出来たのが幸いだった。

しかし、あくまで避けられるだけ。

反撃にうつるタイミングをつかむのは非常に難しい。


「メノウだけを戦わせるわけにはいかない!」


 カツミが白虎型ハンターの後ろから奇襲をかけた。

脚で空を斬り、その軌跡が斬撃波となり白虎型ハンターを襲う。

白銀に輝く装甲を切断し、内部機械を破壊するのが目的だ。

だが、その斬撃波は装甲に当たった瞬間に拡散。

無効化されてしまった。


「チッ!斬撃ではダメージが通らない!」


 斬撃波にはある程度の限界がある。

通常の生物が相手の場合ならばこれで十分だが、今の場合では得策とは言えない。

衝撃波ならば多少の傷は与えられるかもしれないが、精々それでもひび割れを起こさせるのが限界だ。


「カツミッ…!うっ…」


 先ほどのグラウンドボール、そして幻影(ファントム)制光移。

多数の魔法の使用と以前の戦いの傷。

それによりメノウは通常時の半分程度の力しか発揮できない状態にある。

 しかも徐々に腹部の傷口から魔力が漏れ出し始めている。

ツッツから受けた腹部貫通の一撃が予想以上にメノウに対しダメージを与えていたのだ。

このままでは白虎型ハンターにやられるのも時間の問題だろう。


「カツミ…お前さんがコイツを…倒すんじゃ…」


「あ、あたしが!?」


「た、頼む…!」


 カツミの技はそのほとんどが対生物、対人用の技。

ハンターのような化け物を相手に想定して作られた技では無い。

それゆえ、今までの戦いではカツミが補助を担当。

メノウが主戦力として戦ってきたことが多かった。

しかし、今は状況が違う。


「(やるしかない。わかっている。だが、あたしの攻撃の殆どはハンターには通じないんだよ…)」


「思ってたより魔力の漏れが…うぅ…」


 腹部の傷口を抑えながら回避を続けるメノウ。

幻影(ファントム)制光移を使ってはいるものの、その動きはどこかいつもより弱弱しく見える。


「すまんカツミ、ワシが足を引っ張ってしまって…」


「時間が無い、あたしがコイツを倒してやる…」


 そう言うも、カツミに決定的な攻撃手段が無いのは事実。

どの攻撃も強固な防御力を誇る白虎型ハンターの装甲の前には通じない。

いつものメノウが健在ならば、幻影(ファントム)光龍壊で倒せるのだがそれもできない…


「諦めろ、今の君達には白虎型ハンターを倒すことはできない」


 ビャオウが淡々と二人に対し語りかける。

メノウがその言葉を聞いていたのかどうかはわからない。

少なくとも、避けるのに必死な今では聞いている余裕も無いだろう。

その言葉に対しカツミはビャオウに言葉を投げつける。


「あ、諦めるわけないだろう?」


「少なくとも君は我々の計画に関係の無い人物だ。ここで退くのならば深追いはしない」


「…メノウを見捨てて逃げろということか?」


 メノウを見捨てて逃げれば命を見逃す。

ビャオウはそう言った。

彼の今の目的はメノウのデータの収集。

単なる一般通過少女であるカツミなど眼中には無い。


「仲間を見捨てて逃げられるわけないだろう!」


「ならばこのまま戦うか、勝ち目があるとでも?」


「…ああ、あるさ」


 この答えはビャオウにとって予想外の返答だった。

今のカツミの眼は単なる虚勢を張る者の眼ではない。

カツミは戦いの中、逆転への切り札を見つけ出したのだ。 

逆転への鍵、それは…


幻影(ファントム)光龍壊…!」


 カツミはふと、あることに気付いたのだ。

幻影(ファントム)光龍壊、それはメノウが使う幻影系の技の中でも最大級の威力を持つ技。

魔力を纏い、その状態で攻撃を放つ。

その状態で拳を握り突進するも良し、単なる爆発魔法のように使うも良しの汎用性の高さを誇る。


「試してみるしかない…!」


 その声と共に、白虎型ハンターのいる方向へと走り出すカツミ。

対抗できる技が無いのならば『作ればいい』のだ。

メノウの幻影(ファントム)光龍壊にカツミのオリジナルアレンジを加えた技を…


「(だが所詮はぶっつけ本番、不完全な技。失敗したら逆転の手は完全に潰える!)」


 メノウの魔力漏洩、カツミの攻撃力不足。

この二つがある限りこの戦いに勝つことはできない。

不完全な技ではあるが試すしかない。

 カツミはこれまでに幻影(ファントム)光龍壊を二度見てきた。

だがそのどちらもはっきりと見たわけではなかった。

一回目は西アルガスタでの大型肉食恐竜型ハンターとの戦い。

二度目は青龍型ハンターとの戦い。

 いずれも様々な要因が重なり、技の全容を見たわけではない。


「だが、ここで完成させるしかない、この一回で!」


 カツミは魔力を完全に操ることはできない。

ゆえに、幻影(ファントム)光龍壊の発動条件の一つ、『全身に纏う魔力』は存在しない。

しかしそれを彼女は、自身の開陽の奥義から生み出される『斬撃波』で補った。

確実なる勝利のために、神経を研ぎ澄まし最善の一撃を放つしかない。

 だが、技の発動をそう易々と許すビャオウでは無い。


「そうはさせん!白虎ォ!」


 技を妨害するため、白虎型ハンターはメノウへの攻撃を止めターゲットをカツミへと変更する。

大地を駆け、一旦数百メートル以上の距離を取る白虎型ハンター。

その途中、大きく旋回しこちらへと向かい疾走する。

速度を上げ攻撃の威力を高めるつもりなのだろう。


「一直線に向かってきたか!」


 これだけの速度ではもはや曲がるのも至難の技。

この一撃でカツミを確実に仕留めるつもりなのだろう。

これだけの速度では下手に避けることも出来ない。

数百メートル近くあった距離差はあっという間に僅か百メートル足らずとなる。

数秒としないうちに白虎型ハンターはカツミの下へと到達するだろう。


「メノウが以前やったあの通りにやれば、勝てる…」


 狙いは白虎型ハンターの口の中、体内の機関がむき出しになる唯一の場所。

かつて西アルガスタでの戦いにて、大型肉食恐竜型ハンターを倒したときと同じ方法だ。

わずか数秒で狙いを定め、それを成功させる。

未だ一度も試したことの無い不完全な『技』で。

それが勝利への道となる。


幻影(ファントム)…いや…!」


 そう呟いた次の瞬間、カツミが構えを取る。

それと同時に白虎型ハンターが咆哮を上げその鋭く銀色に輝く牙を露わにする。

口が開いた、カツミはその時を待っていたのだ。


「見えた!」


 地を蹴り白虎型ハンターの咆哮を全身に纏った斬撃波で切り裂いていく。

メノウの『幻影(ファントム)光龍壊』、それと似て非になるカツミの技は…


開陽虎狼殺(かいようころうさつ)!」


 普段ならば『技の名前』など叫ぶカツミでは無い。

だが、この技だけは違った。

この技はメノウのもの。

そしてカツミが作り出した新たな技でもある。

彼女への敬意を込めての『技の名前』だった。


「技名か…」


 たった一瞬で勝負はついたのだ。

カツミは開陽虎狼殺(かいようころうさつ)で白虎型ハンターの口から尾の付け根までを全て貫通。

それにより、内部機関が完全に破壊された。

彼女が纏った斬撃により内部から完全に破壊された白虎型ハンターは、静かにその場に崩れ落ちた。


「叫ぶのも悪くは無い…かもな…」


 カツミは一度、メノウに『何故技の名前を叫ぶのか』と聞いたことがあった。

理由は簡単だった。


『自らを鼓舞するため』


 死という恐怖が付きまとう戦いの中でも、自分(メノウ)だけは笑顔と勇気を忘れず敵に立ち向かう。

神話に名を遺した伝説の英雄たちのように、せめて戦いの中だけでも誇り高く、気高く振舞いたい。

そう言う理由だった。


「(あいつがそこまで考えているなんて、考えもしてなかったな…)」


 そう言ってメノウの方を振り向くカツミ。

普段のふんわりとした態度からは想像できぬ、意外な理由だった。

 一方、この一連の出来事に驚きの声を上げたのは白と虎型ハンターを操るビャオウだけでは無い。

幻影(ファントム)光龍壊の使い手であるメノウもだった。

 

「ここで幻影(ファントム)光龍壊を進化させるとは…意外じゃったのぉ…」


 幻影(ファントム)光龍壊の本来の使い手、メノウ。

彼女のカツミに対する『特別な想い』が芽生えた瞬間だった。




----------------




 白虎型ハンターの残骸を前にし、その場に座り込むビャオウ。

素直に自分の負けを認めた彼は、敵にもかかわらずメノウ達に軽く称賛を送った。


「聞きたいことがあるなら、答えられる範囲で答えよう。キミ達が勝者として得られる当然の権利だ」


 仮に嘘を付いても、メノウならばその真贋を一瞬で見抜くことが出来る。

それに今のビャオウは嘘を付くような者の顔では無い。

少なくとも、これから聞く彼の発言は『信用できる』と言えるだろう。


「じゃあ尋ねるが、ツッツはどこにいるんだ?」


「異能者の少女か…」


「証拠が何もなかったから、ワシらは三ツ矢サイバービルの跡地に行こうと思ってたのじゃが」


「三ツ矢サイバーか、言っても何もないと思うが…」


 ビャオウによると、三ツ矢サイバービルはあくまで戦いの舞台として用意された場所であり、たいして重要な場所ではないらしい。

もともと株価の下落で潰れるのも時間の問題だった末端の会社だったのだ。

重要な情報など残っているはずもない。


「軍閥長である大羽社長と共に法輝火麗(ほてるかれい)地区にある本社にいるだろうな」


 『法輝火麗(ほてるかれい)』地区、それは東アルガスタで最も火山活動の活発な東の海洋上に位置する。

小さな島々の連なる諸島の総称である。

大羽はこの地区の小島を改造し人工島を建造し、それを本社とした。

かつての戦時中に研究されていた地熱発電や波力発電といったエネルギー源の実験のため、というのが表向きの理由だが…


「間違い無い、俺が知る限りではその場所以外はあり得ない」


「そうか、ありがとうな。ビャオウ」


 敵としてでは無く、もっと別な出会いをしていれば。

そう感じずにはいられない二人。

敵対した相手に対し、こんな感情を抱いたのは随分と久しぶりだ。


法輝火麗(ほてるかれい)地区は東の港からずっと行った先にある。まぁ、そこら辺は自分で何とかするといいさ」


 ツッツを取り戻すため、メノウとカツミは大羽のいるという法輝火麗(ほてるかれい)地区へと向かった。

海洋上にあるという、絶海の要塞島へと…

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