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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第3章 攫われの少女を追って…
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第四十七話 VS青龍!(後編)

最近、裕P先生とあった方からの話によりますと裕P先生はゾッ帝をエタらせる気らしいです。

…は?

 囚われのツッツを求めてビル内を駆け回るカツミ。

片っ端から扉を開け、人の気配がないかを探る。

しかし、十階までを探した時点ではツッツは見つからなかった。 


「このビル、広すぎるぞ…」


 そう呟き、床に手を着くカツミ。

無理も無い、広大なフロアの全ての部屋を探さなければならないのだ。

しかも、数がとても多いうえにそのどこにいるのか手がかりも無い。

手当たり次第にやっていくしか探す方法は無い。


「これは少し時間がかかりそうだな…」




-----------------




 幻影(ファントム)光龍壊を大型肉食恐竜型ハンターへと放ったメノウ。

以前の西アルガスタにおける別個体との戦いではこの一撃で勝利を収めることが出来た。

 しかしそれは、カツミと共闘していた、装備の貧弱な個体だったからという理由もある。

今回は単独での戦い、しかも相手は特殊な強化がされた青龍仕様の大型肉食恐竜型ハンターだ。


「当たった…か…」


 光が収まった時、その場に立っていたのはメノウと大型肉食恐竜型ハンターだった。

メノウの幻影(ファントム)光龍壊は確かに当たった、だがギリギリで急所を避けられてしまった。

背中の装甲と内部フレームを破壊したのみで致命傷とはならなかったのだ。


「(じゃが、もう一度当てることができれば…)」


 先ほどは口の中から体内へ攻撃を加えようとして避けられてしまった。

しかし今の攻撃で装甲を破壊し、内部の機械を露出させることが出来た。

その部分を狙えば今度こそ倒すことが出来るだろう。

口の中に再び攻撃を当てるよりはずっと簡単なはずだ。

大型肉食恐竜型ハンターもこちらを警戒しつつ唸り声を上げている。


「よし、もう一度…」


 そう言って再び構えを取る。

しかしそれを見たシェンが不敵に笑う。


「…シェンよ、なぜに笑う?」


「いやぁ、ここまでハンターを追い詰めるとは思わなくてね」


 そう言って先ほど破壊された飛竜型ハンターへと目をやるシェン。

それと同時に、その残骸に『ある変化』が起きた。

飛竜型ハンターの残骸が大型肉食恐竜型ハンターと融合を始めたのだ。

 触手のように伸びた電磁ワイヤーが残骸を引き寄せ、己の体に取り込み始める。

飛竜の鎧は竜の刃に。

翼と武具は大空を舞う竜へと受け継がれる。


「ま、まずい!」


 異変を感じ取ったメノウが再び幻影(ファントム)光龍壊を大型肉食恐竜型ハンターへと放つべく構えを取る。

しかし時既に遅し、手負いの大型肉食恐竜型ハンターは飛竜の力を得ることで新たな姿へと生まれ変わった。


「飛竜とティラノサウルスで『青龍(ブルードラゴン)』の完成だよ!」


 大型肉食恐竜型ハンター改め『青龍型ハンター』、その姿は以前の二体の特徴をそのまま引き継いでいた。

身体のベースは大型肉食恐竜型ハンター、装甲と翼、加速ブースターは飛竜型ハンターのものを装備。

先ほどメノウが与えた傷も飛竜型ハンターのパーツで修復、補強されている。


「ドラゴン…竜…!?」


「そうだよ。メノウちゃんは『竜』が好きなんだよねぇ?」


「…ッ!ふざけるな!」


 メノウの眼が憎悪に染まる。

いつもならば敵の挑発になど絶対に乗らぬ彼女が不思議と感情をはっきりと表し青龍型ハンターへと襲い掛かる。

構え無しのクイック幻影(ファントム)光龍壊を放ち、一撃必殺を狙う。

だが、そのメノウの攻撃も軽く避けられてしまう。

背中の翼を使い青龍型ハンターは上空へとのがれたのだ。


「な…!飛べるのか!?」


「当たり前だよ、ハンターの翼は飾りなんかじゃないからね!」


 その巨体からは想像もつかないほどの身のこなしで攻撃を避け、カウンターを仕掛ける青龍型ハンター。

先ほどの大型肉食恐竜形態の時とは異なり、『飛翔』といった立体的戦闘をも可能となっている。

今まで与えた傷も全て修復されている。

 一方、メノウの体力は幻影(ファントム)の連発をしたためかなり減ってしまっている。

この先、幻影(ファントム)光龍壊を当てることが出来ても倒せるかどうかは未知数。

少なくとも攻撃力で勝つことは不可能だ。

ならばとる戦法は一つ。


「ウォーターボール!」


 水魔法の一つ『ウォーターボール』、以前旅の途中で出会った魔術師スートが使用していた魔法をコピーしたものだ。

ジャンボシャボン玉をバトルエリアに多数発生させ、青龍型ハンターの動きをかく乱させる。

このジャンボシャボン玉は単なる水の玉などでは無い。

魔力を込めればそれだけ硬度を上げるのだ、並みの攻撃では破壊することはできない。


「ジャンボシャボン玉!?」


「そう!ジャンボシャボン玉じゃよ!」


「そんなもの、全部叩き壊しちゃうよ!」


 突然のジャンボシャボン玉の出現に困惑する青龍型ハンターだが、シェンの指令を受けすぐにそれを実行に移す。

いくら強固な防御力を持つと言えど、破壊不可能と言うわけではない。

尾の一振りと帰還銃の乱射で次々破壊されていくジャンボシャボン玉たち。


「ほらほらほらほら、ジャンボシャボン玉が全部壊れちゃうよ!」


「なんの!もう一度ウォーターボールの魔法じゃ!」


 そう言って再びジャンボシャボン玉を召喚するメノウ。

そしてそれを再度破壊する青龍型ハンター。

この連鎖が何度も続いて行く。

無意味なジャンボシャボン玉の連続召喚に何らかの意味があるのか考えるシェン。


「(例え何を考えていても関係無い、全て壊しちゃえばね…)」


 そう考え、メノウの魔力切れを狙うつもりだ。

確かに、本来ならばこれだけ大量の水の塊であるジャンボシャボン玉を出すには多量の魔力が必要。

しかし今回ばかりは違った。

メノウも何も考えも無しにこのようなことをする女ではない。


「(ちょっと水借りるぞぃ!)」


 ウォーターボールによりジャンボシャボン玉を呼び出すには、魔力で水を生成する必要がある。

これが意外と魔力を喰うのだ。

そのため、通常はウォーターボールの魔法を連射することはできない。

しかし、ここは建物の中。

ジャンボシャボン玉に使用する水を消火用のスプリンクラーや水道の水、その他の使えるだけのライフラインなどから呼び出すことができる。

これは彼女にとってかなりの魔力節約となった。


「ちょっと蒸し暑くなってきたな…」


 シェンが下を見おろしながら言う。

全面ガラス張りと言うこのビルの変わった構造により、エントランスにまで直接日光が当たる形となっている。

特に今日は雲一つ無い晴天。

先ほど割ったジャンボシャボン玉の水のせいで辺りはちょっとしたサウナ状態になっていた。

しかしこれこそメノウの狙い。

ある一定の特殊な環境下でのみ使用できる技を使用するためだ。


「これでどうじゃ!幻影(ファントム)濃違八点(こいはってん)!」


 その声と共に、メノウの幻影(ファントム)がその場に複数体現れる。

本物と合わせるとその数八体。

そしてそれらそれぞれが大型肉食恐竜型ハンターに攻撃を仕掛けた。


「どうせ本物は一つだけ、ほかの幻影の攻撃を受けたって…」


 そう言うシェンの目に写ったのは驚きの光景経った。

メノウの幻影(ファントム)はそれそれが確かに実体を持ち、青龍型ハンターを攻撃しているのだ。

 確かに攻撃自体は本物のメノウよりは弱い。

しかし、幻影(ファントム)ゆえに自身がダメージを受けることも無い。

一方的に、そして確実に青龍型ハンターを追い詰めている。


「こんなことが…!」


 メノウの使用した『幻影(ファントム)濃違八点』は空気中の水や粉塵に自身の姿を投影し、幻影(ファントム)とする技。

通常の幻影(ファントム)と異なるのは、それが『実体を持っている』ということだろう。

とはいえ、完全なメノウの分身と言うわけではない。

投影した水などに魔力を込め、攻撃時の一瞬のみ実体を出現させているのだ。

攻撃自体も本物とは比べ物にならないほど弱いが、それを数とスピードでカバーしている。


「ほらほらほらほら」


 青龍型ハンターの装甲を剥がし、その下のエネルギー供給パイプを次々と引き千切る。

通常の状態ではまず不可能な戦術をも可能にするメノウの不思議な力。

この連撃を受け立ち続けられる者など存在しない。


「さらにスピードも上げるぞ!もう一度幻影(ファントム)制光移(せいこうい)!じゃ」


 さらに幻影(ファントム)制光移(せいこうい)を使用することによりスピードを上げていく。

その間もメノウの攻撃は止むことは無い。

青龍型ハンターは大きな口を開けて、口の中の砲口からキャノン砲を撃つ体勢を取るも時すでに遅し。

 パイプから徐々にエネルギーが漏れ出していく。

やがて青龍型ハンターは静かにその動きを止めた。


『エネルギー切れ』


 この戦いの結末としては相応しくない、呆気ない幕切れだった。

撃とうとする体制をとり、上を向いた状態のままその場に固まる青龍型ハンター。


「そんな!こんな決着なんてありえない!」


 シェンが叫ぶも無駄なこと。

既に青龍型ハンターに戦う力など残されていなかった。

自身のいる三階地点から飛び降り青龍型ハンターに駆け寄るシェン。


「くッ…そんな…」


「さぁ、早くツッツを返してもらおうか!」


「…」


「それにお前さんには聞きたいことがいくつもある…」


 と、その時カツミがビルの階段から降りてきた。

ツッツも一緒だ。


「終わったか、メノウ。コイツは助けたぞ」


「カツミさん、メノウさん!」


「探すのに苦労したんだ、片っ端から部屋をあけてな…」


 カツミが言った。

以前のツッツは帽子をかぶっていてその髪型がわからなかったが今はハッキリと見える。

ザクラに囚われた際には風に揺られよくは分からなかった、美しい銀色の長髪が。


「ツッツ…」


 久々の再開に喜びの感情を抑えきれぬメノウ。

しかし今はそれよりも優先すべきことが彼女にはあった。

なぜ、自分たちをこの東アルガスタへと誘ったのか。

なぜ、ここにきてツッツを返す気になったのか。

ツッツの持つ『異能の力』とは何なのか…


「シェン、言ってみろ」


「…言わないよ」


「ならば喰らえ、無色理論(クリア・セオリー)!」


 口を割らせる魔法をシェンにかけ、これらを問い詰めようとするメノウ。

だがその直後、半ばには信じがたい出来事が起きた。

先ほどまで動きを止めていた青龍型ハンターが再び動き出したのだ。

 いや、正確には『動いてしまった』と言うべきか。

先ほどの攻撃で破壊されなかった僅かなパイプから供給されたエネルギーがここにきて充填。

青龍型ハンターからキャノン砲が発射されたのだ。


「なッ…!」


「動いた…!?」


 その出来事に驚きを隠せぬメノウとシェン。

彼らにとってもこれは完全に予想外だった。

キャノン砲は上を向いたままの姿勢で発射された、つまり攻撃目標はビルの吹き抜けの最上部にあるガラスと照明。

それらの破片が勢いよくメノウとシェン、二人の元へと落下してきた。


「う、うわぁぁ!?」


 気が動転しその場から逃げようとするシェン。

咄嗟のことに頭の処理能力が追い付かずパニック状態となってしまっている。


「メノウ、逃げろ!」


 カツミが叫ぶ。

しかし、落下物の速度が予想以上に速い。

いくらメノウでもこれを避けるのは不可能…


「メノウさん、動かないで!」


 そこで叫んだのはツッツ。

彼女の脳裏に何かか浮かんだ。

漠然とした、『何か』が…

それを聞き一瞬動きを止めるメノウ。


「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「メノウ!?」


 ガラスと照明が砕ける音と共にシェンの叫び声がエントランスに響き渡る。

無事を確認する気にはなれなかった、恐らく助からないだろう。

しかしメノウは違った。


「…あ」


 カラスの破片も、砕けた照明の残骸も、全てメノウに当たることは無かった。

不思議に思いつつも、カツミとツッツは彼女の勝利と無事を確認し抱き合ったのだった。




とりあえずこの外伝は絶対完結させますので安心してください。

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