第四話 抹殺指令! 激流に消えたメノウ!?
~前回のあらすじ~
D基地を陥落させたメノウたち。
しかし、その知らせはすぐさま全国を駆け巡った。
D基地を陥落させたメノウとショーナ。
その知らせは直ちに国中に知れ渡った。
あれから一週間、手配書に記された懸賞金は書き換えられ、二人を始末すべく更なる刺客が送られた。
しかしそんな刺客のことなど全く知らない二人は、少し前に手に入れた新たな手配書を見ていた。
馬のアゲートに乗りながら、その手配書を見る。
「シヴァの基地に行く前が二人合わせて十万キッボ…」
「そして今が百万キッボじゃな」
キッボとはアルガスタ国内で流通する貨幣である。
D基地を陥落させたとはいえ、この価格はこの年頃の子供に賭けられる懸賞金としては破格の値だ。
十万キッボならまだありえない価格でも無いが…
「この賞金だと賞金稼ぎ共が狙ってくる可能性もあるな…」
「面倒じゃのう、まぁ片っ端からたおせばいいわい」
そう言うメノウ。
やがて二人は深い谷に吊るされた吊橋に差し掛かった。
谷底には激流、もし落ちたらタダでは済まないだろう。
幸い、吊橋は丈夫なようだ。
しかし、橋を渡るメノウたちの前に『ソイツ』は突然現れた。
「見つけたよ、深緑眼の女!」
そう言って現れたのは、メノウたちより少し年上といった少女だ。
この辺りではまず見かけぬ、極東の国の物と思われる服を着ている。
「ま~た変なのが現れたのぉ…」
「お前、賞金稼ぎか!?」
ショーナが叫ぶ。
今、自分たちにかけられている懸賞金は二人合わせて百万キッボ。
賞金稼ぎにとってはとても魅力的な値段だ。
しかし、彼女は賞金稼ぎではなかった。
「いや、アタシは以前アンタたちが倒したシヴァと同じ『南アルガスタ四重臣』の一人さ」
そう、彼女は以前ヤクモと話していたあの少女だった。
「南アルガスタ四重臣…?知らんのぉ…」
「シヴァより強くて偉い『C基地』だぞぉ!」
「いや、俺は聞いたことあるぜ…」
そう言いながら、ショーナが語りだした。
『南アルガスタ四重臣』、それはこの南アルガスタを統治する軍閥長の下にいる四人の戦士のことだ。
その権力は陸海空軍の大佐にも匹敵し、全アルガスタ国内での権限による自由な活動が許されている。
他の東、北、西、中央のアルガスタにも『似たような地位の人物』たちは存在するらしいが…
「へぇ、よく知ってるな。褒めてやるよ」
「別に嬉くねぇよーだ」
南アルガスタ四重臣のメンバーは、以前倒した『死闘士のシヴァ』。
そのシヴァを始末した『ヤクモ』。
今目の前にいるこの少女。
そしてもう一人の謎の人物…
「かわいげのないガキだなぁ、あんただけ先に吹っ飛ばそうかい?」
少女が手に持っている長い棒をショーナに向ける。
だが、その時点では攻撃はせずさらに標的をメノウに変えた。
「アタシの目的はただ一人、アンタさ」
「おほぉ^~ワシも有名になったんかなぁ…」
「それだけの懸賞金が掛れば嫌でも有名になるさ」
少女が言った。
それと同時に手に持った棒を構える。
恐らくあと少ししたら攻撃を仕掛けてくる、メノウは確信した。
ショーナと馬のアゲートを吊橋から戻らせる。
吊橋の上での戦いに巻き込ませないために。
「…お前、名前は?」
「ミーナ、『猫夜叉のミーナ』だ!」
そういうと、ミーナが棒を構え突進してきた。
小手調べとばかりに、棒で連続突きを繰り出す。
ミーナの連続突きを軽く避け続けるメノウ。
それを見たショーナは少し疑問に感じた。
「(さっきアイツは『自分がシヴァより強い』と言っていた。けどあの戦い方ではとてもそうは見えないぜ…)」
ミーナの今の戦いを見る限り、どうしてもシヴァより強いとは思えない。
単純に直線的な攻撃を連続して繰り出すだけなら、シヴァの重い一撃の方がはるかに強力だ。
しかし、ショーナかそう思うのも仕方がない。
幅の狭い吊橋の上での戦いとなるとどうしても三次元的な動きの戦いは難しい。
となれば、その攻撃はどうしても単調にならざるをえない。
攻撃を受けるメノウは、攻撃を仕掛けるミーナの動きをほぼ予測し、避けることができるのだ。
「全部避けたか、結構やるじゃない」
「あんなもの全部当たったら、しまいには、骨がくだけるぞ!」
「なら当ててやるよ!」
そう言うと、ミーナが再びメノウに向かって突進する。
吊橋の両側の手すりのロープを足場代わりとし、身軽な動きでメノウを翻弄する。
『猫夜叉のミーナ』の名前の由来はこの身軽さにある。
猫のような素早さ、身軽さで敵を翻弄し混乱させたのちに敵を倒すのだ。
「確かに早いが、見切れんほどでも…」
「そうかな!?」
ミーナが棒を、メノウの頭上から思い切り叩きつける。
当然、その攻撃もメノウは避けた…はずだった。
だが…
「あ、かぁ…!」
頭上からの攻撃をメノウは体を右に移動させることで避けた。
しかしその瞬間、ミーナの持っていた棒が割れ、メノウの横腹に叩きつけられた。
脇腹を抑え、思わずその場にひざまずくメノウ。
「なんだ!あの棒!?」
「この棒は内部にディオンハルコス合金製のワイヤーを通した特性の三節混さ!」
三節混とは多節混の一種であり、非常に簡単に説明するならば三個連結したヌンチャクのようなものである。
しかしミーナの三節混は特殊な仕組みが施してあるのだ。
通常は棒状態で闘い、いざというときは三節混状態で戦うこともできる。
その最大の利点は棒形態を警戒した相手の意表を付けるというところだ。
事実、メノウも棒形態での攻撃を避けたつもりが多節混状態での攻撃を受けてしまった。
「さすがのアンタも、極東の武具である三節混までは知らなかったようだね」
「ま、まさかワシが攻撃を受けてしまうとはのぅ…」
よろよろとメノウが立ち上がる。
横腹を抑え、顔をゆがめている。
「(そう言えば、俺はメノウがまともに攻撃を受けているのを一度も見たことが無い…)」
この時ショーナは思った。
今まではメノウの超人的な攻撃力のみを見てきた。
しかし、その防御力は知らなかった。
もしかして、防御力そのものは普通の子供と変わらないのか…?
「中々扱いづらそうな武器じゃ…お主、あのシヴァとかいうやつより数段強い…」
「ありがとう、よ!」
ミーナがさらに攻撃を続けるべく間合いを取る。
メノウも同じく間合いを取る。
「(クソッ!俺は見てることしか出来ねぇのか!)」
ショーナが心の中で叫ぶ。
今、ショーナの下には以前奪ったオートマチック銃と呼ばれる拳銃がある。
だが、素人がいくら銃を撃っても素早く身軽なミーナに当てることはできないだろう。
下手に撃てば、メノウに当たりかねない。
「(男だってのに、情けねぇ…)」
そんなショーナをよそに、二人の戦いは激化していた。
先ほどの一撃以降、多節混による攻撃を警戒するようになったメノウ。
それによりミーナも攻めがし辛くなっているのだ。
「ここは逆に…正面からいくよ!」
攻めかねていたミーナが痺れを切らし、メノウに飛び掛かる。
メノウが少し後ろへ小さく後退した。
と、その時だった。
二人が戦場としていた吊橋が突如爆発したのだった。
轟音と共に、崩れ落ちる吊橋。
残骸が谷底の激流に落ちていくのが確認できた。
爆風で吹き飛ばされるショーナとアゲート。
「メ、メノウ!」
急いで谷底を覗き込むショーナ。
しかし、あまりの深さにメノウがどうなったのかは確認できなかった。
誰が橋を爆破したのか、あのミーナか?
いや、爆発はミーナとメノウが激突するまさにその瞬間だった。
自身が巻き込まれる瞬間に爆発などさせないだろう。
「嘘だろ…」
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少し時間が経ち、夜になった。
あれからショーナはかつて吊橋のあった場所で待ち続けた。
谷底に降りようとも考えたが、切り立った崖と激流に阻まれそれも無理だった。
降りれるような場所もない。
待ち続けても、メノウは姿を現さなかった。
「まさか、メノウは…」
たき火の火を見ながら、最悪の事態を想定する。
いくらメノウとて、あの爆発では…
「いや、そんなはずねぇ!」
不安を振り払うべく大声で叫ぶショーナ。
以前奪ったゾット帝国軍人の携帯食料を一心不乱に食べ不安を消そうとする。
だが、一度思った疑念は消えなかった。
「メノウ…」
そう言うと、どっと一気に疲れが湧いてきた。
ショーナは深い眠りにおちた…
名前:ショーナ 性別:男 歳:13 一人称:俺
恰好:ボロをマントのように羽織っている
武器:軍から奪った拳銃
キャラ紹介:臆病な性格だったが、メノウとの出会いで変わっていく。
メカに強く、順応性も高い。
常識の無いメノウのストッパー役でもある。