表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第2.5章 過去からの挑戦 決戦の南アルガスタ、再び!
40/191

第三十七話 再訪、南アルガスタはシェルマウンド!

今回から2.5章に入ります。

この話を入れるかどうかで迷ってしまい、更新が少し遅れてしまいました。

番外編的な要素が多いので、この章は短めで終わります。


また、最近になって登場人物の名前を考えるのがしんどくなってきたのでもしよければ何かいい名前や元ネタがあれば教えていただけると嬉しいです。(あたま時間なってるで)

syamu関係の単語であれば、既存の物と被らなければ何でもいいです。

 四聖獣士の一人、『青龍のシェン』との戦いから数日が過ぎた。

 その後、列車は特に事件も無く走り続け、『南アルガスタ』の『シェルマウンド』へとたどり着いた。

 東アルガスタへと向かう道中、列車はこの南アルガスタに五日間止まることとなる。

 一刻も早くツッツを救い出したいがこればかりは仕方が無い。

 メノウ達は五日間、南アルガスタで足止めを喰らうわけだが…

 馬のアゲートを列車から降ろし、駅から出るメノウ達。

 

「南アルガスタ、久しぶりじゃのぉ~」

 

 列車から降り、駅から出たメノウが言った。

 彼女とアゲートにとってこの南アルガスタは約一年ぶりに訪れる地だ。

 南アルガスタの『シェルマウンド』、かつてメノウが『黒騎士ガイヤ』と死闘を繰り広げた地だ。

 以前エレクションが治めていたこの地は現在、かつて将軍の地位にいたマークが治めているらしい。

 以前よりも街には活気があるようにも見えた。


「メノウ、包帯はまだ取れないのか?」

 

「いや、これはバンテージじゃよ。傷跡が少し残ってしまってな…」

 

 メノウの左腕は以前のシェンとの戦いで負傷していた。

  その傷は既に治っているのだが、少し傷跡が残ってしまったらしくそれを隠すためにバンテージをしているらしい。

  左腕を全てバンテージで覆っており、指のみが露出している状態になっている。

  もっとも、ある程度時間が経てば傷跡も無くなるようだが。

 

「まぁ、少ししたら傷跡も治るじゃろう。それよりどうじゃ、この街は?」


「南アルガスタのシェルマウンド、結構賑やかだな」


 カツミが街を軽く見まわす。

 駅は小高い位置にあるため、ここからある程度街を一望できる。

 恐らく以前までいた港町キリカよりも住みやすそうだ。

 そう思いながら視線を人混みに移すカツミ。

 と、その時…


「おーい!そこの二人ー!」


 人混みの中からメノウにとって聞き慣れた『ある人物』の声が聞こえた。

 それはかつてこのシェルマウンドでメノウが出会った隠密の少女、『アズサ』だった。

 かつてこの地を支配していたエレクションとの戦いの際にも協力してくれた、メノウの大切な仲間。

 以前列車から電話をかけた相手というのがこのアズサだったのだ。

 今日は仕事も休みらしく、二人を案内してくれるらしい。


「おほぉ^~久しぶりじゃのぉ~アズサ!」


「久しぶりだね、メノウちゃん!」


 久々の再会を喜び合う二人。

 あれから約一年、メノウは特に変わってはいないがアズサはほんの少し成長しているようにも感じた。

 以前よりも少し女性らしくなった気がする。

 それでも身長があまり高くない、というのは一切変わっていないが…


「それよりどうしたの!その左腕!?」


「ちょっとな。まぁもう治りかけている怪我じゃから大丈夫じゃ」


「そうなの…」


「アズサ、ワシの仲間のカツミじゃ」


「電話で聞いたわ、よろしくねカツミちゃん」


「オッス、よろしくな」


 軽く挨拶と自己紹介を済ませると、アズサは自身が住み込みで働いている東洋料理屋へと二人を案内した。

 カツミはもちろんシェルマウンドを訪れたことは無い。

 アゲートも以前は別の場所に預けていたため、このシェルマウンドに来たことは無いのだ。

 以前アズサが働いていた店はエレクション死亡と共に遊郭の事業を廃止。

 東方大陸の料理を提供する料理店へと変わったらしい。

 店長が元々は料理人だったということもあり、現在店は大盛況のようだ。


「そういえばアズサ、ショーナ達はどうしておるのじゃ?」


「ショーナくんとミーナちゃん?あの二人はね…」


 どうやらアズサの話によると、ショーナは現在は中央アルガスタにある学園に通っているらしい。

 マーク将軍の計らいにより、特別に入学できたそうだ。

 元々機械工学や数学関係は非常に優れた能力を持っていたショーナ。

 語学などは苦戦しているようだが、それ以外では学園内でもかなり良い成績を残しているという。


「ミーナちゃんは別の地区で仕事してるらしいよ」


「どうせなら会いたかったが、残念じゃ。会わせればアゲートも喜ぶかと思ったが…」


「う~ん、結構忙しそうだし…あ、着いたわよ。奢るから」


 そう言ってアズサは一軒の店を指さした。

 かつて遊郭だったとは思えないほどの改装が施されたその料理店は、昼近くだからか多くの人で賑わっていた。

 店内だけでは無く、店外にも数名が席が空くのを待っている様だ。


「なんだ、席が埋まってるのか?」


 カツミが店の窓から店内を覗く。

 ほぼすべての席が埋まり、店員もあわただしく店内を駆け回っている。

 てんてこ舞いの状況だ。


「大丈夫よ、特別に奥で食べさせてもらえるから」


「わざわざ悪いな、そこまでさせて」


「私はここで働いてるのよ、それくらい大丈夫」


 アゲートを馬止めに繋ぐと

 どうやらアズサが事前に話をつけておいたらしく、店の奥の予約客用の席に案内してもらうことが出来た。

 元々は遊郭の乗客用の部屋だったらしいが、現在は改装され部屋の作りにその面影を残すのみ。

 落ち着いた雰囲気の部屋になっていた。

 席に着き、適当に料理を頼む三人。


「いい店だな」


「まぁね、以前の事件の後からここまで直すのに苦労したんだから」


 あの事件以降、この街にあった大量の遊郭などはほぼ全て改装され別の店になったという。

 以前は別の地区の者が遊郭街として利用していたシェルマウンドだが、今はそれも無い。

 街が活気づいているのもその影響なのかもしれない。


「以前の事件ってなんだ?」


 カツミがアズサに尋ねる。

 以前のシェルマウンドでの、いやメノウの南アルガスタでの戦いの殆どをカツミは知らない。

 メノウの話も交え、かつての戦いについてアズサはカツミに語った。

 シェルマウンドでの戦いはもちろん、メノウとショーナ、アゲートの出会い。

 ミーナやガイヤとの戦いなど…


「そんなことが…」


 カツミはメノウから断片的には南アルガスタについての話を聞いていたが、通して聞いたのはこれが初めてだ。

 その内容に思わず息をのむ。

 話の途中、店員が持ってきた饅頭を口に運びながらさらに話を聞く。


「そういえば『ヤクモ』、あの男はどうなったのじゃ?」


 メノウがはふと『ある男』の名を上げた

 元南アルガスタ四重臣の男、ヤクモ。

 札術や縮地法といった変わった技を使う風変わりな男だった。

 アズサによると、現在は行方知らずらしいが…


「あの人、どっちかというと元軍閥長寄りの男だったから…」


「まぁ、そうだったかのぅ…?」


「どこか別の地区にでも逃げ出したんじゃないの?よく分かんないけどね」


 今更居なくなった男の話をしても仕方が無い。

 料理をたべながら別の話で盛り上がろうと、カツミが話を始めようとした。

 その時だった…


「クソッ!」


「フハッ」


 メノウ達の座っている席の背後で、ある男の怒鳴り声が聞こえた。

 別の客だが、先ほどからずっと数名の人物が話をしているようだった。

 そのうちの一人が急に怒鳴り声を上げたのだ。

 思わず妙な声を上げるメノウ。

 アズサとカツミがその客の席に反対に怒鳴りこみにいった。


「ちょっと止めてよそれ」


「聞いてんのか!」


 席に座っていたのは二人の男。

 長い髪を後ろで束ね、長い前髪が目許に垂れている男。

 口に煙草を銜え、黒い制服を着ていた。

 そしてもう一人はと彼の部下らしき男。


「あ、あなた憲兵団の…」


「ん、お前は…」


「知り合いか、アズサ?」


 アズサはどうやらその長髪の男と知り合いのようだった。


「憲兵団、一番隊隊長の『イトウ』だ。先ほどは失礼した」


「すいませんでした」


 イトウと名乗る男は先ほどの侘びとばかりに謝罪の言葉を述べた。

 横にいた部下の男も同じく謝罪の言葉を述べ頭を下げた。


「どうなった?二人とも?」


「あ、メノウ。こいつらも謝ってくれたからもういいよ」


 メノウが席の後ろからひょいっと頭を出し彼らを覗き込む。

 その時…


「メノウ…?もしかして以前、あの事件を解決したという『緑眼の少女』か!?」


 イトウはどうやらメノウのことを知っていたようだ。

 とはいっても、以前のこの南アルガスタでのあの事件の詳細を知っているのは極一部の者のみ。

 それ以外の者は噂程度にしか知らないだろうが。


「隊長、それって…」


「ああ…」


「?」


 意味深な会話を続ける二人とその意味が解らず首をかしげるメノウ。

 暫くして部下の男がメノウに言った。


「お願いします、メノウさん達の力を貸してください!」


「い、いきなりなんじゃ!?」


 突然の申し出に驚くメノウ。

 無理も無い、とりあえず理由を聞くことにした。

 少し長い話になるため席に皆を座らせるイトウ。


「一体ワシらに何をしてほしいのじゃ?」


「実は…」


 そう言ってイトウは最近このシェルマウンドで多発している事件について語り始めた。

 それは『無差別人斬り』、何の関連性もない人物が斬られるという事件が多発しているのだ。

 手がかりは犯行現場に必ず残されている凶器の刀剣。

 しかし、犯行に使われた凶器は全て盗品の刀剣であったという。

 調べても証拠は一切見つからなかった。


「これ以上の犯行は俺達の隊の威信に関わるからな…」


「つまりメノウにその調査をして欲しいというわけか」


「もちろん謝礼も出す」


「だが、あたしもメノウもここに五日しかいないんだよ。旅の途中に寄っただけなんだ」


 カツミが言った。

 あくまで今回は東アルガスタへの旅路の途中で寄っただけに過ぎない。

 あまり長期間の協力は不可能。

 その間の僅かな期間で、今まで証拠も出さなかった犯人を捕まえられるとは思えない。


「五日だけでも構わない、協力して欲しい」


「それにメノウさんがいれば隊の士気も上がります!お願いします!」


「どうする、メノウ?」


「いいぞ」


 メノウの答えは簡単だった。

 どうせ五日間をただ無駄に過ごすのも性に合わない。

 それならば少しでもこの地に貢献したい、そう考えるメノウ。

 また怪我のせいで身体を動かせず、少し鈍ってしまった勘を取り戻すという意味も兼ねている。

 いずれにしろこの申し出を断る理由はメノウには無かった。


「メノウがいいって言うなら、あたしも協力しよう」


「…そういえばお前は?」


「あたしはカツミ、まぁメノウの友達みたいなもんだよ」


 カツミが言ったその時、店の表から大きな物音が聞こえた。

 そして叫び声や群衆のざわめく声、そして何者かの怒鳴り声だ。

 メノウ達も急いで店の表に飛び出た。

 そこでは下品な顔の大柄な男が暴れまわっていた。

 彼の周りには数名の店員が倒れている。

 どうやらあの男にのされてしまったらしい。


「どういうことじゃけぇ、この店は遊郭やったやろ!」


「そ、それは一年ほど前でして…」


「ふざけるなぁ!オレは東からわざわざこんなところまで来たんや!」


 そう言って説明していた店員の男を店の壁に叩きつける大柄な男。

 イトウが男を取り押さえようと前に出ようとする。

 しかし、それをカツミが制止した。

 そしてあることをイトウに尋ねた。


「暴れてるやつに手を出しても罪にならないのか?」


「ああ…」


「そうか、わかった」


 それだけ言うと、カツミがその男の前に立ちはだかった。


「何だお前は、俺は小娘を抱く趣味は無いぞ!別のいい女を連れてこいや!」


「は?」


「どうしてもって言うなら、そっちの緑髪の小娘と一緒に抱いてやらんことも…」


「ちょっと黙ってろお前」


 そう言うと、カツミは右手の五本の指先で軽く男の全身をすれ違い様に一瞬撫でた。

 何をされたのか分からず、一瞬困惑の顔を見せる男。

 だがすぐに再び激昂しカツミに襲い掛かろうとする。

 しかし…


「その煩く喋りすぎる口、閉じてた方がいいぞ。とっとと帰れ」


「何を…!」


 その言葉と同時に、先ほどカツミが撫でた大柄な男の身体の部分が全て切り裂かれた。

 鮮血が全身から大量に吹き出し、先ほどまで暴れまわっていた男は意識を失い気絶した


「この技は血が激しく出るだけで痛みは無い。単なるこけおどしの技なんだけどな…」


 カツミの使ったのは彼女の使う開陽拳の奥義の一つだ。

 斬撃波を皮膚を通さずに相手の体内に送り込むことで、血管の表面を切り裂き出血させるのだ。

 見た目の派手さの割に傷は非常に浅い。

 しかしその大量の出血を見た者は気絶してしまうことが多い。


「暴れるだけしか能の無い小物だ、戦う価値も無いさ」


 そう言ってカツミは倒れたその男を見ながら言い放った。

 

名前:イトウ 性別:男 一人称:俺 年齢:二十代

若くして憲兵隊一番隊を率いる男。

しかし多くの場数を踏み、幾多の死線を超えてきた強者である。

エレクションが支配していた時期は、彼の気に障ったのか辺境の地の警備をさせられていた。

剣技はもちろん、銃の扱いにも長けている。

陸軍中佐のテリーとは知り合い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ