第三話 ゾット帝国のヤバいヤツ!
~前回のあらすじ~
検問所を破りゾット帝国の南アルガスタ地区へと侵入したメノウたち。
ゾット帝国の軍人に虐げられていた農民を助けるが、軍への反逆と検問所破りの罪で指名手配されてしまう。
悪夢の手配書が南アルガスタにばら撒かれた…!
数日前の戦いでゾット帝国の軍人たちを倒したショーナとメノウの二人。
二人は、虐げられていた農民の老人から礼を聞き、別れを告げると足早にその場を後にした。
この地にいては、先ほどの軍人の援軍がやってきて闘いになるかもしれない。
そうなれば農民たちにも迷惑がかかるからだ。
「あやつら、また襲ってくると思ったが来なかったのぉ…」
「ああ。あれから数日経ったけど何の音沙汰も無いな…」
「すこし不気味じゃのう…」
この数日間、軍人共も結局襲っては来なかった。
南アルガスタ内を旅しながら進む二人。
特に代わり映えのしない日々だったがそんな中で一つだけ変わったことがあった。
それは…
「お前さんもそう思うか?アゲート?」
メノウが言った。
以前馬賊から奪った馬に、彼女が『アゲート』と名づけたのだ。
いつまでも『馬』とだけ呼んでいては可哀想だ、とメノウとショーナの二人の間で意見が一致したらしい。
体を震わせ、アゲートが頷く。
「おお、そうかそうか」
「アゲートのやつ、お前にばっか懐くなぁ…」
「ワシは動物の扱いは得意じゃからのぅ」
「へぇ…」
「いつかお主にも懐くようになる。こういうのは時間が大事じゃ」
「そうかなぁ」
初めてであった時、既にメノウは森の中での生活が長いように感じた
どれだけの期間かはわからないが、その間に動物と心を通わせるすべを身に着けたのだろう。
「それにしてもお主、ずいぶんと長い髪じゃなぁ」
「切るの面倒なんだよ」
ショーナの腰まで届きそうなほどの髪を見ながらメノウが言った。
髪がボサボサにならぬよう、布の紐で纏めてあるもののそれでも長く見える。
まだ幼い年齢ということもあり、一見すると髪の長い少女のように見えなくもない。
「女の子みたいな感じしているのう、お主のぅ」
「なんだよ別にいいだろ」
「うーん」
「それよりさ、あの軍人共いいもん持ってやがったなぁ…」
自身の持つカバンの中を見ながら呟くショーナ。
その中に入っていたのは、隊長や他の者達の落としていった拳銃や、その場に残していった携帯食料等だった。
ちょうど武器に困っていたところだったので、この銃の入手はとてもありがたい。
銃弾も十分にあるのでしばらくは弾切れの心配もない。
「これだけあれば街の市場でいいもんと物々交換もできるな」
「街か…そういえばワシは街はあまり行ったことが無いのぅ…」
「たくさん人がいるんだ、楽しいぜ!」
「そんなものかの…ん…?」
メノウがアゲートの足を止めた。
何かを見つけたようだ。
「どうした、メノウ?」
「アヤツら、わし達を追ってこないと思ったらこんなことを…」
「…これは!?」
メノウたちが見つけたもの、それは木に吊るされた二枚の紙。
メノウがそれを剥がし、軽く読むとショーナに手渡す。
そのうちの一枚にはこう書かれていた。
『深き緑眼の少女に告ぐ、南アルガスタD基地にて待つ』
この紙に書かれた『深き緑眼の少女』とは間違いなくメノウのことだろう。
そしてもう一つの紙。
それは、メノウとショーナの顔写真の乗った指名手配書だった。
「し、指名手配書!手をまわすの速すぎだろ!?」
「おたずねものになってしまったか…」
「ど、どうする!?」
「決まっておる」
手配書を真っ二つに破り去ると、アゲートの脚を加速させた。
行く先はもちろん、南アルガスタD基地だ。
もう一枚の紙に書かれた地図を頼りに南アルガスタD基地を目指す。
「せっかくのお誘いじゃ。断るのも失礼じゃろう?」
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一方その頃、南アルガスタD基地…
大戦時に使用されていた軍事基地を改修したこの基地は、南アルガスタ内に四つある『南アルガスタ軍事基地』の内の一つ。
この基地内の広場では、普段は兵士たちの訓練などが日々行われている。
しかし、今この広場では、とある『試合』が行われていた。
「どうした?ただ構えるだけでは俺は倒せんぞ?」
戦っているのは、基地長の男『シヴァ』。
かつて、地下デスプロレスのチャンピオンだった男であり4003回の勝利を収めたと言われている。
364人アルティメットバトルロイヤル、334人デストーナメント、と言った戦いを生き抜いた凄腕の男である。
その腕を南アルガスタの軍閥長に見込まれ、この基地を任されているのだ。
そしてそのシヴァの対戦相手は、年貢を納められなかった、あるいは納めることを拒否し逮捕された三人の男たちだ。
シヴァを取り囲むように、三人の男が武器を構える。
「う、うぅ…」
三人の男たちが持つ武器はあらかじめ、シヴァが持たせたものだ。
素手のシヴァと、武器を持った三人の男。
一見、シヴァの方が戦力的には不利にも見える。
しかし…
「うぅ…うわぁー!」
叫び声をあげ、一人の男が構えていたポンプアクションショットガンの引き金を引く。
だがポンプアクションショットガンを持った男のポンプアクションショットガンの攻撃は当たらずポンプアクションショットガンは空を切る。
ポンプアクションショットガンを持った、ポンプアクションショットガンを撃った男は動揺し辺りを見回す。
シヴァはポンプアクションショットガンを避けどこへ消えたのか?
いや、そもそもこの近距離で放たれたポンプアクションショットガンを避けることなどできるのか…
だが次の瞬間、ポンプアクションショットガンを放った男の意識はそこで絶えた。
「ハァッ!」
ポンプアクションショットガンを撃った男が引き金を引く、目を閉じたその一瞬の間だった。
シヴァは空へと飛び上がり銃撃を避けたのだ。
そして、着地と同時に男の頭を潰した。
「ひ、ひぃ!?」
他の二人の男が後ずさりする。
「おいおい、今更逃げるなんて言うなよ?」
「で、でも…」
「俺を倒せばお前たちの罪は取り消して自由にしてやる。それに褒美として好きなモノをやろう」
「それは本当か?」
「ああ、考えてやるよ」
それを聞き、残った片方の男がシヴァと距離を取り武器を構える。
彼の持つ武器はダイナマイト。
いくらシヴァと言えどダイナマイトの爆発の前では無傷では済まないだろう。
持っていた燐を使いダイナマイトの導火線に着火。
男はシヴァに向かって突撃し、そのまま投げつけた。
「ほらよ!」
投げつけられたダイナマイトを受け止めるシヴァ。
導火線の火がダイナマイト本体にたどり着くギリギリのタイミングを見計らい、男に投げ返した。
「ヴェッ…!?」
そう言い残し、男は自身のダイナマイトにより消し飛んだ。
残る男はあと一人。
しかし、彼の持つ武器はただのゾット帝国軍のオートマチック銃。
他の二人の武器に比べてあまりにも貧弱すぎるだろう。
「あとはお前一人だな」
「ひ、ひいぃぃ…」
シヴァがゆっくりと残りの男に詰め寄る。
オートマチック銃を構えるも、シヴァに奪い取られ彼方へ放り投げられてしまった。
「これで終わ…」
「やめろぉ!」
そのシヴァの行為を遮るかのように、基地内にショーナの声が響いた。
監視塔の監視兵を蹴散らし、そこからシヴァに襲われていた男に叫ぶ。
「オッサン、早く逃げろ!」
「あ、ああ!」
「あ、おい待てぃ!」
「お前が待つのじゃ!」
その声と共に、メノウがアゲートを駆り基地内に現れた。
基地の外側を守っていた衛兵をメノウが倒し、二人は基地内に侵入したのだ。
「まったく…最低じゃ…ホント最低…」
「ほう、手配書のメスガキじゃねぇか。よく来たな」
「この基地の首領はお前か?」
「そうだ、それにしても思っていた以上にガキだな」
いくら見た目が子供とはいえ、メノウはかなりの実力者。
それくらいはシヴァにもわかる。
隊長とその部下数人を一度に相手にし勝利したのだ、弱いわけがない。
「それにしても俺の部下共はお前たち二人に全滅させられたというわけか…」
「そうじゃよ」
「クソ共が…後で全員極刑にしてやる…」
悪態を吐くシヴァ。
それを挑発するように、メノウは話を続ける。
アゲートから降り、少しずつシヴァに近づいていく。
「まぁいい。さっさと始末してやるよ」
「それは無理じゃのう」
「ほう、どうしてだ?」
「お前は今ここで、わしに負けるからじゃ」
「ハハハ、面白い冗談だなー!」
そういうと、シヴァは部下に指令を出した。
この勝負に対し、あらゆる干渉をするな。
静観せよ。
という命令だ。
「じゃあさっさと始めようぜ」
まずは小手調べとばかりに、シヴァはメノウに殴り掛る。
しかしその拳は受け流され、メノウの後ろの電燈の柱にめり込む。
大きな電燈の柱はその部分からヒビが入り、音を立てて崩れ落ちる。
「ま、マジがよ…」
絶句するショーナ。
あんな力、とても人間業ではない。
しかし、それとは対照的にメノウはとても冷静だった。
「どうした?わしに攻撃を当てないのか?」
「へへ…結構やるじゃねぇか…」
そういうと再び攻撃を続けるシヴァ。
しかしそれもことごとく避けられる。
「チッ!動くと当たらないだろォッ!」
そう言いながら拳を繰り出し続けるシヴァ。
しかしそれもすべて見切られメノウに当たることは一切無い。
「何の面白味も無い戦法じゃ、もうワシは飽きた…」
「なに!?」
「もう終わりじゃよ」
そう言うと、メノウはシヴァの左腕に飛び掛かる。
それと同時に、間接を砕き筋を切り裂く。
シヴァの左腕が通常とは全く違う方向に曲がる。
「お、俺の腕が…な、なにを…」
「これ以上続けても無駄じゃ、さっさと降参すれば命くらいは助けてやるぞ」
「誰が命乞いなど…するかぁ…!」
シヴァが叫ぶ。
半ばヤケクソでメノウへ特攻するシヴァ。
しかし、そのような攻撃は当然通用するはずもなかった。
「やれやれ、しょうがないのぅ…」
シヴァの腹へメノウの強烈な拳が叩き込まれる。
一発だけではない。
十、いやもっとあるだろう。
その攻撃を受け、シヴァは完全に沈黙した。
「そ、そんな!」
「シヴァ様が負けた!」
「逃げろ、とても勝ち目など無い!」
そう言うと、シヴァの部下たちは蜘蛛の子を散らしたように退散していった。
もともと、この辺りの軍人は元ならず者がほとんどだ。
シヴァという首領を失った今、彼らはただの烏合の衆。
いまここに、南アルガスタD基地が陥落した。
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深夜、メノウに敗れたシヴァは誰もいなくなり陥落した南アルガスタ本隊のD基地にて『何者か』と戦っていた。
メノウから受けた傷も癒えぬその状態、戦うには、その相手はあまりにも強すぎた。
「く、ぐうぅ…」
「ガキに負けるような弱小者はいらない…あなたが言った言葉ですよ?」
「う、うるせぇ!」
シヴァがその男に拳を叩きつける。
しかし、その攻撃は簡単に避けられてしまった。
メノウとは違い、攻撃を受け流すのではない。
『超高速』でこの男は攻撃を避けている。
「俺は弱くなど無い!」
「ふふ、そうですね」
男が皮肉交じりに笑う。
そして、懐から出した三枚の札のようなものをシヴァに投げつけた。
その三枚の札がシヴァに触れると同時に、札から緑色の炎が上がった。
「う、うわぁ!」
緑色の炎に包まれながら、その場に崩れ去るシヴァ。
やがて火が収まるも、辺りにはひどい悪臭が漂っていた。
「終わりましたよ」
男が言った。
それを聞き、物陰から一人の少女が現れる。
「結構やるじゃん、ヤクモ」
先ほどまでシヴァと戦っていた男はどうやら『ヤクモ』という名のようだ。
「この程度、どうということもないですよ」
「ふーん、まぁアンタの力ならそうだろうね。シヴァはアタシ達『南アルガスタ四重臣』でも一番弱いんだから」
少女の言う『南アルガスタ四重臣』、それはこの南アルガスタを統治する軍閥長の下にいる四人の戦士。
シヴァ、ヤクモ、この少女、そしてもう一人…
「それより、次にあの深緑眼の少女と戦うのは私か…それとも貴女か…」
「順番でいったらアタシでしょ、シヴァがD基地、アタシがその次のC基地なんだから」
「ふふ、そうですね。ではあなたに任せますよ」
そう言うと、ヤクモは少女の前から姿を消した。
一応、今回からキャラクター紹介を載せていきます。
本家『ゾット帝国』シリーズリスペクトです。
名前:メノウ 性別:女 歳:13? 一人称:ワシ
恰好:白いローブ
武器:無し、素手
キャラ紹介:ラウル古代遺跡で出会った不思議の少女。
深緑の眼をしている。正義感が強い。