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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第2章 西の支配者と東の皇
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第二十六話 偽りの魔術師は魔術師を欺けるか?

魔法の名前を考えるのが楽しかった(小学生並みの感想)

現在、『小説家になろう』で連載している作品で最も有志によってゲーム化されている作品は『ゾット帝国』シリーズと言うことでいいんですかね?

・居酒屋RPGくんのカイトゲーム

・おじさんのジンゲーム

の二つがありますし…

時刻は既に深夜十二時近くになっていた。

このキリカ支部に侵入し、ピアロプの正体を暴くのにもそれほどの時間がかかっていたのだった。

既にスートの連絡していた警察隊がキリカ支部に到着。

犯罪にかかわった疑いのある主要幹部、そしてピアロプを逮捕していた。


「いやぁ、ありがとうございます。これで堂々と悪党どもを逮捕できます」


この逮捕劇に協力してくれたスートとメノウ、そしてツッツに感謝の言葉を述べる警察署長。

署長自らが先陣を切るほどの大捕物となっているのだ。

今までは碌な証拠も無く、相手が巨大組織ということもあり干渉できなかった。

しかし、これでようやく逮捕ができる。


「さぁ来い!逮捕だ!」


「離せ、自分で歩けるわ!」


警察が幹部の一人に手錠をかけ連行していく。

そのような光景があちこちで見かけられた。

抵抗する者もいたが、それもスートとメノウによって鎮められた。

あとは肝心の、トロムの母親であるファミーを探すことだが…


「メノウさん、スートさん!トロムくんを連れてきました!」


やはりここは依頼した本人に探してもらうのが一番、そう思いトロムを連れてきたツッツ。

トロムはスート達が母親を連れ戻すだけだと思っていた。

しかし、まさかキリカ支部そのものを壊滅させてしまうとは思ってもいなかったようだ。

何が起きたか信じられず、辺りを見回しながら軽い放心状態になっていた。


「す、すごい…」


「トロムくん、あなたのお母さんはどこにいますか?」


写真も貰っていないため、ツッツ達がもらった断片的な情報では彼の母親であるファミーを大勢の人々の中から見つけることはできない。

トロムは人ごみをかき分けながら母親を探していく。

やがて彼は、放心状態で空を見上げている一人の女性を見つけた。

手には無駄に大きなゼログリットを抱えている。

どうやら彼女が、トロムの母であるファミーのようだ。


「母ちゃん!」


トロムがファミーの下に走って行く。

それを見たファミーは抱えていたゼログリットを投げ捨てた。

そして彼を抱き寄せ、涙を流しながら謝る。

自分たちの崇めていたピアロプの正体が単なる詐欺師であったこと。

そして夫とトロムに心配と迷惑をかけてしまった自責からだろう。


「トロムくん…」


「まぁ、これでひとまず解決じゃな」


そう言って気を抜くツッツとメノウ。

近くの警察に頼み、水を一杯もらいそれを飲み干す。

特にツッツはここに来てからずっと緊張の糸が張りつめた状態だったためそれが急激に緩んだのだろう。

壁にもたれかけ、その場に座り込んでしまった。


「ふぅ…」


時刻も遅く、一気に疲れが来たのかツッツを強烈な睡魔が襲った。

気付いた時にはツッツはその場で眠りに入ってしまっていた。

その一方で、既に警察隊によるキリカ支部の幹部たちの捕縛はほぼ完了していたようだった。

幹部たち全員、そして支部長であるピアロプもだ。


「(こんなところで…)」


王都からの追放後、逃げに逃げに逃げ回り、やっとたどり着いた安住の地。

それがこの西アルガスタだった。

彼のような犯罪者にとって、軍や警察があまり機能していないこの地はまさに楽園ともいえた。

自身の力により強固な集団を従えてしまえば、もう敵などいない。

そう思っていた。

だからこそ、彼はこのディオンハルコス教団キリカ支部の支部長となった。


「(それをあんな若造とガキに…!)」


そんなピアロプに、あるものが目に入った。

壁にもたれかけ、居眠りをしているツッツだった。

恐らく疲れて寝てしまったのだろう。

それを見逃す彼では無かった。


「(電脳溶解サイバー・ソリューション、電子手錠の鍵を外せ!)」


ピアロプの使用した魔法、『電脳溶解サイバー・ソリューション』は自身の思考を電子機器に同調させ操る魔法。

一種のハッキングのようなものだ。

西アルガスタの警察の使用する手錠は電子手錠であるため、それが仇となってしまった。


「え…手錠が外れ…」


「ジャマだ!」


驚く警察官を殴り飛ばし、その場から逃走するピアロプ。

突然の出来事に困惑する警察たち。

そのゴタゴタを狙い、ピアロプは寝ていたツッツを捕えた。


「え、うわー!」


ツッツが叫ぶ。

恐らく逃亡の際の人質として使うのだろう。

警察隊の乗ってきたパトカーを奪い、その中にツッツを放り込む。

そして先ほど自分が付けていた電子手錠をツッツに付けて車を発進させた。

ピアロプ脱走はすぐさまその場にいた全員に衝撃を与えた。

ただの数人の警官たちが白バイにのり、その後を追いかけた。

警察官の一人がそれを急いでメノウたちに知らせに言った。


「スートさん、メノウさん!ツッツくんがピアロプに攫われてしまいました!」


「なに!?」


「今、数人のグループが追跡中です!キリカ市街にも検問を張るよう連絡を入れました!」


一見正しいとも思える警察の行動。

しかし、今逃走しているのはただの犯人ではない。

かつて王都ガランにて魔術を学んでいた天才魔術師『ピアロプ・トロシード』なのだ。

並の警察官など相手になるわけが無い。


「ま、待て!今すぐ全員を戻らせるんじゃ!」


メノウが知らせに来た警察官に言った。

しかし時すでに遅し。

とっくの昔に追跡していた警察官たちはピアロプの手によってやられていた。

彼らは全員、ピアロプの変身魔法によって犬に変えられていたのだった。

被害は今のところただの数人の警察官にとどまっている。

しかし、この先ピアロプが逃げ続ければ被害はさらに広がり続けるだろう。


「クッ…アゲートォ!」


メノウがアゲートに跨りピアロプを追う。

幸い逃げた方向はキリカ市街では無く山の方面。

山ならば被害が大きく拡大することもない。

また、ピアロプが乗っているパトカーは舗装されていないオフロードではスピードが少し落ちる。

軍馬であるアゲートならばすぐに追いつくことができるはずだ。


「すいません、ホバーボートと警棒を一つずつ私に貸してください!私も追いかけます!」


スートも警察からホバーボードと警棒を借りその後を追う。

ピアロプの残していったパトカーのタイヤの轍を頼りに暗い森の中を追跡していく二人。

その道中に彼の魔法にやられた警官隊の白バイやパトカーが森の木にぶつかって大破しているのが確認できた。

犬に変えられた警官隊達は全員回収されている。

今この瞬間だけでも、死者が出なかったのを感謝すべきかもしれない。

だからと言って逃亡しているピアロプを許すわけにはいかない。

借りた警棒を構え、魔法を使用する構えを取るスート。


生視噴射アライブ・スプリンクラー指砲切断タッチャッキー・ヲビユ、そしてウォーターボールの重ね魔法!」


「重ね魔法じゃと!」


スートは三種の魔法を同時発動するという驚愕の手に出た。

それぞれが全く種類の異なる魔法を同時に発動するのは至難の業。

高度瞑想中ならば不可能ではないかもしれない。

しかしそれをホバーボートでの移動中にやってのけるのは、現代の並の魔術師ではまず不可能といっていい。


生視噴射アライブ・スプリンクラーでピアロプを探し指砲切断タッチャッキー・ヲビユで遠隔攻撃!それと同時にウォーターボールによるジャンボシャボン玉でツッツさんの安全も確保する!」


生視噴射アライブ・スプリンクラーは生物がどこにいるかを遠隔透視することができる。

その後に使用した指砲切断タッチャッキー・ヲビユは先ほども使用した精密、高威力の切断技。

相性は抜群だ。


「手ごたえあり…!」


スートが叫ぶ。

どうやら遠隔魔法攻撃は見事当たったようだ。

しかし、移動中に高度な魔法を使用したことにより彼の体力は大きく減ってしまった。

ホバーボードから転げ落ちるスートを、アゲートから降りたメノウが受け止める。


「すいません、少し力を使いすぎてしまいました…後は頼みます、あっちの方向にツッツさんは…」


そう言い残し、その場で気を失ってしまったスート。

メノウはスートの指した方向へと歩いて行く。

そこにはジャンボシャボン玉で包まれ気絶したツッツ、そして岩にぶつかり大破したパトカーがあった。

それを運転していた逃亡者ピアロプの姿は不思議と見えなかった。


「ツッツ、無事か?」


メノウがツッツに駆け寄る。

スートの張ってくれたジャンボシャボン玉のおかげでツッツには怪我一つ無いようだ。

しかし肝心のピアロプはどこへ姿を隠したのか。

彼はスートの遠隔攻撃により負傷しているはずだ。


「そう遠くへは逃げられないはずじゃ…」


よく見ると地面には彼の物と思われる血痕が残されていた。

それをたどっていくメノウ。

しばらくすると、左の頬に大きな傷を付けたピアロプが木に手を着いて立っていた。

指砲切断タッチャッキー・ヲビユにより、負傷したのだろう。


「さっきの魔法はあの若造の…術か…」


「そうじゃ」


「…ヤツはどうした?」


「魔力を使い果たしてダウンしておるわ。しばらくはあのままじゃろう」


それを聞き、再び体勢を立て直すピアロプ。

彼はこう考えた。

今目の前にいるのは、単なる少女に過ぎない。

負傷しているとはいえ、天才魔術師と言われた自分の魔法を使えばこの少女を人質にまだ逃亡を続けられる、と。


「(この少女の乗ってきた馬は使えないだろうから、適当な乗り物を後で調達する必要はあるな…)」


「どうした?さすがにもう諦めたか」


そう言ってメノウはピアロプのもとに近づいてくる。

そして次の瞬間、ピアロプはメノウに動きを封じる魔法を使用した。


「『緊縛平野(バインド・プレイン)』!」


「なッ…拘束魔法…」


その言葉と共に、その場に固まるメノウ。

ピアロプの魔法『緊縛平野(バインド・プレイン)』は単なる拘束魔法に過ぎない。

しかし、この状況では最高の効果を発揮する。

このままこの少女を人質として逃亡を続けよう。

そう考え、メノウを抱え上げようとする。

しかし…


「…甘いわ!」


拘束魔法を受けたはずのメノウが突如動きだしピアロプを殴り飛ばした。

突然の出来事に対応できず、ピアロプはそれをもろに喰らってその場に伸びてしまった。


「ワシには一切の魔法が効かないんじゃ…『例外』を除いてな…」


今度こそピアロプは倒れた。

少ししてこの場に来た警察隊に気絶した彼は回収されていった。

このキリカ支部での事件に決着がついた瞬間だった。


名前:ファミー・ポップ 性別:女  年齢:三十三歳

トロムの母親。

カルト宗教にはまりゼログリットを大量に買い漁ってしまった。

後に元に戻った。

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