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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第2章 西の支配者と東の皇
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第二十二話 戦難イオンの仲間と町に未来を

ちょっとね~最近ちょっといろいろあって更新できなかった~

ごめんよ、ごめんやで?

ツシマ一派の頭、ツシマ・ソルト―は悩んでいた。

最近儲けが少なくなったとか、毒草を食べて腹を壊したとかの理由ではない。

兄である、タイマ・ソルトーのことについてだ。

元々は二人で盗賊組織を率いていたのだが、ある理由から解散。

以後二人は敵対するようになった。

一応、現在は停戦協定を結んではいるが直接戦えばあちらの方が優勢。

眼の上のたんこぶというわけだ。 


「あのクソ兄が」


近くの村から奪った水を飲みながら、ツシマが呟く。

いつか決着をつけたいところだが、下手に動くこともできない。

以前奪った金を机に散らしながら頭を抱える。

そんな中、彼の部下がある報告を持ってきた。


「ツシマ!調達部隊の奴らが!」


「どうした!?」


先ほどメノウとウェーダーに討伐された調達部隊が戻ってきたのだ。

隊長以下全員がやられ、ボロボロの状態だった。

食料や燃料の調達もできず、子供にやられて帰ってきた調達部隊の者達に怒りの言葉を飛ばすツシマ。

だが調達部隊のやられ様を見る限りではよほど腕の立つ者だということが理解できる。

ツシマはそれ以上部下を責めるのは辞め、その他の情報を聞き出した。


「で、そのガキ共がどうしたって?」


「一人は町へ商人共を送り、もう一人はタイマ団が連れていきました…」


「連れていった…?」


「たぶん傭兵かなんかとして雇うのではないでしょうか…?」


それを聞き、激高するツシマ。

部下にではない、兄であり敵対するタイマ団のリーダーであるタイマに対してだ。

これはほぼ間違いなく自分たちツシマ一派に対する挑戦だ。

そう思い始めるともう収拾がつかない。

一度彼の心の中でついた闘争心の火は決して消えず、段々と大きくなっていく。

彼は部下に戦いの準備を進めるよう命じた。

近々停戦協定を破り、戦いが始まるであろう。


しかし、それは兄のタイマも同じ思いだった。

彼は以前から欲していた『切り札』を手に入れることができた。

それがメノウだった。

彼女が助っ人として加わればタイマ団の戦力がより強力になる。

そう考え、彼はツシマ一派から彼女たちを救うふりをしてタイマ団と勧誘した。


「…というわけで、今日から仲間になるメノウだ」


「よろしゅー」


一旦、自身の根城に戻り仲間たちにメノウを紹介するタイマ。

彼はメノウの強さをその眼で見ているが、他の団員は違う。

単なる少女を突然連れてきて「仲間にする」と言い出したタイマに妙な不安を感じているようだった。


「…本気か?」


「こんなガキを?」


口々に不満の言葉を漏らす団員達。

タイマが左肩に乗せている小さな少女に、それほど役に立つ能力があるとは思えない。

娼婦代わりというわけでも無さそうだ。


「こいつは強い!戦力強化になる!」


「そいつを戦わせる気か?タイマ!?」


「当たり前だ!俺はこの目でコイツの強さを見たんだ!」


「…はぁ」


そう言うも、明らかに信じていない様子の団員達。

中には、砂漠の熱にでもやられてボケかけていると思っている者までいた。

このタイマという男、仲間からの信用があまりないようだ。

そんな中、一人の団員がメノウの前に立ちはだかった。


「タイマさん、こんなガキ連れてくるくらいなら俺たちにもっと金回してくださいよ」


そう言って大柄な男がタイマの肩の上からメノウを引きはがそうとする。

それを避けるように肩から飛び降りると、メノウはタイマに尋ねた。


「ためしにコイツを吹っ飛ばしてみてもいいか?」


「好きにしな」


そう言われ、メノウは自身に絡んできた男に蹴りを一発はなった。

たった一発の蹴りでその男は数人の仲間を巻き込み、アジトの壁に叩きつけられた。


「見たか?蹴りだけ見てもこの強さだ」


そう言って彼は、先ほど見たツシマ一派とメノウの戦いの様子を事細かに話し始めた。

ウェーダーと共闘していたとはいえ、その能力は単なる少女のソレを遥かに超えることは明らかだ。

それを聞いた団員たちは先ほどとは打って変わりメノウを歓迎し始めた。


「これでツシマのヤツに勝てるぜぇ~」


「メノウ姉貴がいてくれればあいつらなんて…」


口々にメノウを褒め称える団員達。

多少オーバーな気もするが、それほどタイマ団とツシマ一派は均衡した力を持っているのだ。

だからこそ、どちらかがその均衡を崩す力を手に入ればそのパワーバランスはすぐに崩れる。

タイマ団はさっそく、ツシマ一派を潰しにかかろうと戦いの準備を始めようとする。

しかし、それをメノウが止めた。


「ちょちょちょ、待て!今から戦いに行くのか!?」


「あたりまえっすよメノウ姉貴!」


「急すぎるわ!作戦とかないのか!」


「俺たちはいつでも突撃あるのみだからな!」


それを聞き、呆れるメノウ。


「そんなことであいつらに勝てるとでも思ってるのかのぅ?」


「え、でも…」


「ワシにいい案がある…」


そう言ってメノウはタイマ団全員にある『作戦』を与えた。

ツシマ一派との戦いの場所、時間帯などを事細かに指示する。

すっかりツシマ一派との抗争ムードになっているが、いつかは組織の均衡が崩れることは確実だった。

この抗争は、それをメノウが少し早めただけに過ぎない…



----------



一週間後、見晴らしの良い荒野の盆地にてタイマ団とツシマ一派の戦いが始まろうとしていた。

タイマからの戦いの申し立てをツシマ一派は承認。

時間は本日の午後零時丁度からだ。

二つの組織は荒野の真ん中を流れる小川を挟む形で陣を取っていた。

メノウが授けた『第一の作戦』、それは敵であるツシマに有利なフィールドを取らせないということだった。

ツシマは頭の切れる男だと以前ウェーダーから聞いたメノウ。

普段ならば何らかの策を練って戦いを受けてくるだろう。


「まぁこれだけ見晴らしのいい場所なら、戦場に妙なことはできないじゃろ」


数日前から監視していたが、この盆地にツシマ一派が何か細工をしたような痕跡は無い。

さすがに戦術などに干渉することはできないが、戦場となる盆地への干渉は防げる。

仮にツシマ一派が地雷や落とし穴を仕掛けたとしても、見抜くことができる。

直接的な戦闘に持ち込めるわけだ。


「策を練らない戦いならこちらの方が強い、違うか?」


戦力はほぼ互角だが、ツシマ一派の作戦をある程度封じることが出来れはタイマ団にも勝機はある。

そこをさらにメノウが穴埋めし、確実な勝利をもぎ取る。

それがタイマ団の首領、タイマの考えた最終的なシナリオ。


「へへ、頼むぞメノウ」


「まかせろ」


やがて時刻は午後零時になった。

待ってましたとばかりに二つの組織の構成員たちが戦いを始めていく。

しかしその中にタイマ、そしてメノウの姿はまだない。

少し離れた高台から戦いを監視しているだけだ。

メノウに戦いに加わるように言うタイマ。


「おいメノウ!行かないのか?」


「まだまだ、相手が疲労してからじゃよ」


さすがの自分でも、武装した数十人を一気に相手にするのはキツイ。

時間が経ち、ある程度敵が疲労したら一気に攻める。

メノウはそう言い放った。


「そ、そうか…」


しかし三十分、一時間たってもメノウは動こうとはしない。

やがて痺れを切らしたタイマがメノウに怒鳴りつける。

だが…


「だったら自分で行けや!」


「うわ!」


タイマを高台から蹴り飛ばすメノウ。

元々彼女にはこの戦いに参加する機など毛頭なかった。

二つの組織を無駄に戦わせ、戦力を消耗させることが狙いだった。

タイマ団に入ったのはこちらの方が上手く利用できると思ったからだ。

ツシマ一派の場合、首領のツシマに見破られる恐れがあるが、こちらならその心配も無い。


「ほほ、うまく動いてくれて助かったわ」


そう言って高台から下を見下ろすメノウ。

だが、その後ろからある者が忍び寄る。

…ツシマ一派の首領であるツシマだ。


「お前も一緒に落ちろ!二人纏めて始末してやる!」


メノウがタイマを突き落したように、ツシマも彼女に攻撃を仕掛ける。

彼のふるう鞭がメノウに襲い掛かる。


「おっと、お前さんもいたか」


だが、メノウはそれを軽く避け鞭先を捕縛。

先ほどのタイマと同じように高台からツシマを突き落した。

そしてそれに続くようにメノウも下に飛び降りる。

それを見たツシマは突き落された際にできた怪我も無視し、再度メノウに襲い掛かる。


「頭の回るガキは嫌いなんだよ!」


先ほどよりも素早く、正確に鞭を振るもその全てをメノウに避けられる。

やがて鞭を捨て、腰に差したサーベルでメノウに切りかかるツシマ。

それを避けようと、メノウは後ろに跳び上がろうとする。

だが…


「へ、へへ…」


先ほど突き落したタイマが拳を構えメノウに殴りかかる。

まさかのコンビプレーを見せたタイマとツシマ。

だが、メノウはそれをさらに回避。

そしてタイマの後頭部に蹴りを入れ、ツシマの構えるサーベルの方へと吹っ飛ばした。

サーベルの薄い刃はタイマがぶつかった勢いで折れ、彼は先ほどの一撃で気絶。

ツシマもその際の衝撃で意識を失った。


「縛らなきゃ…」


ツシマの持っていた鞭で二人を縛り上げるメノウ。

その後、未だ戦いを続けていた両組織の構成員たちをウェーダーと共に捕縛。

残った者達を拘束し、軍へと引き渡すことに成功した。




-----------------



タイマ団とツシマ一派を全滅させたメノウとウェーダー。

ほぼ両組織の自滅という形だったが、イオンシティの町長からは多額の礼金をもらうことができた。

これでしばらくは旅の資金繰りに困ることは無いだろう。

イオンシティの中央広場にてウェーダーと会話するメノウ。

旅の支度はツッツに全て任せてある。


「なぁメノウ、お前はこの先どうするんだ?」


「う~ん…まだ決めておらんわ…」


「この先の砂漠を抜けると『港町キリカ』という都市がある。そこを目指してみたらどうだ?」


ウェーダーによると、『キリカ』は西アルガスタで最も栄えている街だという。

景色は良く、魚介類が新鮮で美味しい。

遊ぶ所もあり、住むならばまさに理想の街と言える。 

以前の大戦でも戦争にあまり巻き込まれず、古い街並みがいまだに残っていることでも有名だ。

それを聞いたメノウはさっそくその街を次の目的地へと決めた。


「砂漠を抜けて一番最初に着く街がキリカだから、嫌でも立ち寄ることになるだろうけどな」


「ほうほう!」


「俺はしばらくこの町にいるよ。少し滞在してまた旅を続ける」


そう言うウェーダー。

とその時、遠くからアゲートを連れたツッツの声が聞こえた。

どうやら、買い出しが終わったようだ。


「メノウさーん!買い出し終わりましたー!」


「わかった、今いくぞー!」


「じゃあな、メノウ!」


「お前さんもな、ウェーダー!」


そう言ってメノウはこの砂漠の交易都市イオンシティを後にした。

次の目的地は港町キリカだ。



名前:ツシマ・ソルトー 性別:男 一人称:俺 年齢:25歳

盗賊組織『ツシマ一派』の頭。

兄の率いる『ツシマ一派』とは敵対している。

意外と頭が回り、武器の扱いにも長けているようだ。

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