最終話 不思議の少女 メノウ
最終話です。
投稿日は2020/12/18
この六年前にsyamuさんは一度引退しました。
その日にこの最終話を投稿します。
ゾット島での『シャム』との戦い。
北アルガスタ四天王、『ロゼ』、『虚無』、『アズラゴリラ』、『アヘオ・ホスシ』。
そして死の商人『コスッケ・ハイウッド』。
あの激闘から数か月が過ぎた…
王都ガランの墓地を『メノウ』と『ショーナ』は訪れていた。
愛馬である『アゲート』と共に。
かつての大切な仲間であった男、『ファントム』を弔うための墓。
郊外の丘の上にある小さな墓地。
その墓石を掃除するメノウ。
「ファントム、どうやらしばしは平和が続きそうじゃ」
墓石に刻まれた彼の名。
その前に拾った一輪の花を置く。
それと小さな焼き菓子、タバコを添えた。
ひとまずの危機は去った。
しばらくは平和が続くだろう。
そうメノウは言った。
「しばしの間…な…」
そう、戦いは終わったわけでは無い。
近い未来に確実に訪れる脅威。
それが『魔王教団』だ。
以前の戦いでは『アリス』、『アスカ』、『アルア』たち尖兵を退けることができた。
だが、数年後に本体が来るという。
決して負ける訳には行かぬ、苛烈な戦いになるのは確実だろう…!
「メノウ」
「ショーナ、そちらはどうじゃ?」
「ああ、こっちも終わったぜ」
この墓地に訪れた理由は二つある。
一つはファントムの墓。
そしてもう一つ。
あの『黒騎士ガイヤ』の墓だった。
彼の妹である『ルナ』と共に、この墓地に眠っている。
「ガイヤか」
「ああ…」
黒騎士ガイヤ。
数年前、『馬賊』との交戦を経て共に旅をすることになったメノウとショーナ。
その二人が初めて出会った明確な強敵だった。
妹のルナの命を『モール・エレクション』に利用され戦わされていた…
「黒騎士ガイヤ、強敵だったな…」
「そうじゃな…」
ショーナの強敵という言葉。
それを聞きメノウの脳裏にとある男の姿がよぎる。
東のアルガスタの支配者『大羽』だった。
東アルガスタ四聖獣士と『ノービィ・ハーザット』、『モグ・ラーダ』と言った者達を従えていた男。
彼も間違いなく強敵だった。
「…行くかショーナ」
「ああ」
そう言って墓地を後にする二人。
しかしその時、二人はある人物を目撃した。
墓地へと向かう二人の人物、それは…
「あ、マーク将軍だ」
「横の男は確か陸軍の…誰じゃったか…?」
「テリー大佐だな」
その男は南アルガスタの将軍の『マーク・ロナウロ』だった。
かつては軍閥長に代わり、政治などの細かい部分を取り仕切っていた。
現在は南アルガスタの軍閥長として働いている。
「そうか、この墓地には確か…」
この墓地には、かつての大戦で散った者達が眠っている。
そしてマーク将軍のかつての戦友だった『YK・ニック』も。
彼らはこちらには気づいてはいないようだ。
軽く頭を下げ、そのまま墓地から出る二人。
離れた場所に繋いであるアゲートと共に街へと向かう。
と、そこで…
「ん、お前は確か…」
「討伐際のメノウちゃん、ね」
食品の量販店。
そこにいたのは以前メノウが戦った二人。
武闘集団《幽忠武》の戦士、『レービュ』と『マイビ・トウコ』。
幽忠武の火炎使いの少女レービュ。
そしてリーダーの女性のトウコ。
以前は過激だったが、戦い以外では特にそう言ったことは無いらしい。
「《幽忠武》のレービュにトウコか!久しぶりじゃなぁ!」
「幽忠武って、以前の大会に乱入してきた…あの?」
予想外の者達との再会に驚きつつも、軽く話をかわす。
そしてトウコ達と別れるメノウとショーナ。
ちなみに、幽忠武のメンバーのカイ、テミータ、ショークは入院中とのこと。
以前の戦いの傷が癒えていないらしい。
そうしてたどり着いたのは開発地区の広場。
なにやら騒がしい。
「なにかやってるのか?」
「スポーツの大会をやってるようじゃな」
メノウの言うとおり、広場では野球の試合が行われていた。
ゾット刑務所の囚人たちのチーム。
そしてゾット帝国の役人やその関係者を集めたチーム。
その二つで友好試合をしているという。
観客席は満席、しかしなんとか合間をぬけ前に出るメノウとショーナ。
そこで戦っていたのは…
「私のボール打てるかな~?カツミちゃん~?」
「うるせー!次で打ってやる!」
「にはは」
「ボールに炎をつけるのはやめろよな!」
試合に参加しているのは、いずれもメノウの知った顔ばかりだった。
バットを握るのは疾風の少女『カツミ』、ボールを投げるのは人斬り狐『汐之ミサキ』だった。
ゾット帝国チームの監督は高等魔術師の『スート』。
猫夜叉の『ミーナ』、忍びの『アズサ』、賞金稼ぎ『タクミ・ウェーダー』。
それだけでは無い。
『レオナ』、『ツッツ』、『ヤマカワ』、『ビャオウ』、『ザクラ』…
「あ、メノウさ~ん」
メノウの姿を見つけたツッツが駆け寄ってきた。
彼女も参加していたらしい。
「ツッツ、お前さんも野球しておるのか」
「あ、はい。それよりメノウさん、チームに相手が強くて…」
そう言ってツッツが敵チームを指さす。
ゾット刑務所チームのメンバー。
それは『シェン』、『ヤーツァ・バッタリー』、『アシッド』、『ジョニー』、『タイマ・ソルトー』、『ツシマ・ソルトー』、『キャプテン・シザー』、『浜裂きジャック』という面子だった。
「なんか豪華なメンバーじゃな」
「は、はい」
「う~ん…できれば手を貸したいが…」
「むずかしいですよね…」
さすがにいきなりメノウが参戦することは出来ないだろう。
相手チームも許可はしないはず。
「わかりました、勝って見せます!」
「がんばれ!」
「はい!」
「カツミたちにもよろしくなー」
そう言ってツッツにも別れを告げるメノウ。
メノウが相手チームの控えをよく見ると、以前自信を攫った者の姿があった。
『クース』、『リート』、『ヌリーグ』、『スウリ』の四人だ。
嫌な気分になりつつも、その場を後にする。
運動場の外へと出るメノウとショーナ。
「いろいろな出店があるな」
「なんかお祭りみたいじゃな」
人が集まる場所だからか、多くの店が出ていた。
以前に出会ったカツドンと刃物三兄弟も店を開いていた。
何か妙な料理を売っていたので無視する。
「何か食ってくかメノウ?」
「いや、いい」
「そうか」
町外れの公園へやって来た二人。
そこに…
「よお、久しぶりやな!ゾット島以来やな」
「紅の一派のサイトウ!」
「へへへ」
公園にいたのは紅の一派の頭領の男『サイトウ』だった。
昼間から安酒を飲み酔っぱらっていた。
公園の椅子に寝転がりながら。
「ちょうど王都での仕事が終わったんや。給金ももらったしなぁ」
「そ、そうか…」
「お前ら二人には酒やらんからな」
そう言いながら再び酒を呑むサイトウ。
どうやら完全によっているようだ。
さらに歩いていくと…
「あら、お久しぶり」
「お前さんは…フィーリア!」
霧の中の屋敷で出会った少女、フィーリア。
この国の数少ない高等魔術師の一人だ。
どうやら研究の報告と資料やの回収のため、王都にやって来ていたらしい。
「荷物多そうじゃな」
「ええ。ちょっとね」
フィーリアの抱えているかばん。
王都で手に入れた資料や研究材料。
ここでしか手に入らない生活用品などが入っているらしい。
それと…
「別の国に妹が住んでるの。その子に贈り物をね」
「ほう」
「『ミーフィア』っていうんだけど、仕事が忙しいらしいから差し入れをと思ってね」
その後も軽く会話を交わす。
とはいえ荷物を持っているフィーリアをずっと引き留めておくわけにもいかない。
会話は早めに終わらせ、再会を約束し合う。
「じゃあね、バイバイ」
「じゃあのー」
そう言ってフィーリアは去っていった。
一気に知り合いと再会したため、少し疲れてしまったらしい。
少し静かなところで、二人で落ち着きたい。
そう考えていた。
「今日はたくさんの奴と再会した気がするのぅ…」
「そうだなぁ」
少し歩くと、休憩用のベンチが見えた。
そこに座り身体を伸ばす。
ふー、と気の抜けた声を出すメノウ。
「平和じゃなあ」
「平和か…」
今までメノウたちは多くの戦いを経験してきた。
そのおかげで多くの者達と出会った。
しかしこの平和は一時のもの。
必ず戦いはまた始まる
遠くない、近い未来に…
「ショーナ」
「どうした?」
「帰ろう、少し休んだらな」
「ああ、帰ろう。俺たちの南アルガスタに!」
そう遠くない未来。
必ず戦いは起こる。
しかし、それまでは平和が続くのも事実。
その少しばかりの平和を、今は謳歌することにした。
ほんの僅かな平和を…!
syamuさんが再び復活してゾッ帝を執筆したら復活します。




