第百七十一話 俺のメノウを返せ!
ゾッ帝原作者の祐P先生がゾッ帝リブート小説の執筆を計画中のようです。
現在はまだどうなるかはわかりませんが注目です。
王都での魔王教団との攻防。
一般の人々には知られることが無く一旦その戦いは終結した。
協力者であったフィゼリス・ウェスカーは逮捕。
その部下たちも捕縛された。
魔王教団メンバーたちは姿を消した。
国中に指名手配を行っているが目撃証言は全くない…
「魔王教団の奴ら、まだ捕まってないんだってさメノウ」
「あの三人、どこに行ったんじゃろうなぁ?」
あの戦いから一週間。
愛馬であるアゲートの背に乗りながら南アルガスタへと向かうショーナとメノウ。
メノウがアゲートを駆り、その後ろでショーナが新聞を読んでいた。
今回はただ南アルガスタに帰るだけ。
急ぐ旅でもない、ゆっくり戻ることにした。
大きな道も無く、森の中の細い道を通っている。
日は沈みかけ、夕日が森の道を照らす。
「いきなり転がり込んでしまって悪いのぅ」
「何言ってんだよ。もう一緒に暮らすんだからさ」
もともと住所不定だったメノウ。
これを期にショーナの家に住むことにした。
どうやら南アルガスタにある彼の家は結構広いらしい。
そこに向かうための旅路。
帰路。
「そうじゃな。ふふ…」
「家ついたらいろいろと準備を…」
ショーナがそう言いかけたその時、メノウがふと小声でつぶやいた。
甘えるように静かな声で。
「のぅショーナ」
「なんだ?」
「今日は野宿じゃなくどこかの町で宿をとらんか?」
「ああ、いいけど」
「できれば安宿じゃなくしっかりとした…場所が…いい…かな」
そう言うメノウ。
ここ数日は彼女の言葉通り、安宿や野宿ばかりをしていた。
数年前の旅の時と同じように。
丁度近くに少し大きな町がある。
そこなら彼女の希望するような宿があるだろう。
「よしわかった。それならさっそくいこうぜ」
「やった!」
「よーし…ん?」
「どうしたショーナ?」
ふとショーナは妙な気配を感じた。
周囲の森の木の発葉が不自然な動きをした気がした。
それと共に何かが動いたような気が。
いや、単なる気のせいかもしれない。
事実メノウは何も反応していないように見える。
もし気づいていれば彼女も何らかの反応を示すだろう。
「なぁメノウ、今なんか変な感じがしなかったか?」
「…いや、別に」
「そうか…」
気のせいだろう、そう思いながら再びアゲートの足を進める。
森を貫くように作られた細い道。
数十年前の大戦時代に物資輸送用に作られた道だと近くの村では聞いた。
アスファルトもひび割れとても歩きづらい。
アゲートも面倒そうだ。
「悪いなアゲート。ここが一番マシなルートなんだ。我慢してくれ」
他の道は高い山道を往くルートや崩れかけのトンネルなどを往かねばならない。
それに比べればこのルートが一番安全かつ、早く帰れるという訳だ。
森の中の朽ち果てたアスファルトの道路。
もうすぐで夕日が沈み夜闇が広がるだろう。
明かりもないが夜道の旅は慣れている。
とその時…
「ッ…!」
「どうしたショーナ」
「メノウ…」
「なんじゃ?」
「少し離れててくれ!アゲートと一緒に!」
そう言ってアゲートから飛び降り辺りをゆっくり見まわす。
メノウは彼の言葉を受け物陰に隠れる。
そしてそれと共に謎の人物たちが木の上から姿を現した。
「お前たち何者だ?」
突然ショーナたちの前に現れた謎の二人組。
一人は東洋人風の男、もう一人は白い肌の巨漢。
おそらく両者ともにこの国の者ではなさそうだ。
「単なる通行人じゃなさそうだな」
「ケケケ…」
「へへへ…」
二人の目には明らかに敵意が込められている。
そして突然ショーナに襲いかかった。
巨漢が頭を狙って殴り掛かってきた。
それを避けできる限りメノウたちから離れる。
しかしそれが隙となり東洋人に腕の間接を極めかけられる。
「うおッ!?やっぺぇ!」
急いで彼を蹴り飛ばし腕を引っ込める。
そして返す刀で巨漢の顔面に拳を叩きこむ。
そのまま叩きつけただけなので全力を込めたわけではない。
しかしいい感じに虚をつく形となった。
片足を突き顔を抑える巨漢。
「うぅ…」
「お前ら何者だ?盗賊か?」
そう言うショーナ。
しかしこの辺りに盗賊がいると言う情報は聞いていない。
外国人の盗賊、というのもおかしい。
それにただの盗賊にしては手ごたえがありすぎる。
「へへ…」
「ッ!?メノウ!」
巨漢の方に気を取られていたショーナ。
もう一人の東洋人のことをすっかり忘れていた。
先ほど突き飛ばしたあの男。
その男が目を付けたのはメノウだった。
「ずあッ!」
「なん…ギャッ!」
ショーナが見たのは信じられぬ光景だった。
東洋人の放った一撃で沈むメノウ。
不意打ちでも無く正面からの一撃。
そしてそのまま気絶したメノウを抱え、東洋人はその場から去ろうとする。
だがそれをアゲートが止めた。
体重を込めた前足で彼を潰そうと足を上げる。
「うく…、クソッ!」
その俊敏な脚でメノウを抱え逃げる東洋人。
ショーナから技を外され、アゲートから逃げる辺り、そこまでの実力ではないのかもしれない。
しかし何故メノウを一撃で倒せたのか…
「早く追わないと…」
「追わなくていいぞ」
「なッ…うわッ!」
メノウたちに気を取られ、巨漢のことを完全に忘れていた。
頭をおもい切り殴られたショーナ。
地面に叩きつけられた彼はそのまま気を失った。
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次にショーナが目覚めたのは、付近の村の医療施設だった。
本格的な病院という訳ではないため本格的な設備があるわけではない。
傷の部分に最低限の手当と包帯、薬のみの処置をされベッドで寝かされていた。
「メノウ…メノウは!?」
気を失っていた彼はそういって目覚めた。
小さな病室。
時計は無い。
ならばと思いカーテンをめくり窓から外を見る。
既に日は沈んでいた。
月がのぼっている。
あの襲撃から結構な時間が経っていることは容易に想像できた。
どれくらいの時間が過ぎたのか…?
「メノウさんは連れ去られてしまいました」
そう言って部屋に入ってきたのは『ツッツ』だった。
グラウの名で行動していた際の格好と同じだったが、フードのみ外していた。
彼女とは王都ガランで別れたはずだったが…?
「あれ、なんでツッツがここに?」
「それは…」
「おーい、そいつ起きたのか?」
さらに病室に入ってきた人物、それはゾット帝国騎士団見習いの少年『カイト』だった。
彼もツッツと同じく王都ガランで別れたはずだ。
なぜその二人が共にいるのか。
そしてなぜここにいるのか。
今のショーナには分からないことばかりだ。
「なんで二人がここに?」
「追って説明します。それより軽く水でも飲んで落ち着いてください」
メノウがさらわれたと言われ落ち着けと言うのも難しい。
だからといって焦ってどうにかなるわけでも無い。
水を飲み軽く顔を洗って再びベッドに座る。
そしてツッツとカイトの話を聞くことにした。
まずはカイトからだ。
「まずは俺からだ。俺とジンは魔王教団と並行して別の組織も追っていたんだ」
カイトとジンが追っていたという組織、それは『竜』捕獲を目的とした違法組織だった。
現在この世界に竜はゾット帝国にしか生息していない。
そしてその個体数も極めて少ない。
そのため国で大切に保護されている。
だがそれが理由で竜は裏ルートで高く売れると言う。
「竜を捕まえる…組織…?」
「ああ。メノウのヤツをさらったのもそいつらの仕業だ」
「何でそれを知って…」
「あの状況を見れば誰でもわかるよ」
あの東洋人と巨漢を追っていたツッツとカイト。
途中で巻かれてしまったが、その道中で気絶したショーナとそれに付き添うアゲートを見つけたのだ。
その後村に戻りショーナを治療したのだ。
「アゲートは近くの小屋で休んでいます。
「ありがとう、ふたりとも」
「へへへ、まぁな」
「礼には及びませんよ」
「それにしても何でメノウが…あッ!」
メノウは竜の力を持つという古代ラウル帝国の『竜の巫女』だ。
その身には竜の骨が埋め込まれており、竜の力そのものが宿っている。
「だからってなんでメノウを…」
「わかんねーよ。誰か説明しやがれ!」
そう言いながらツッツに丸投げするカイト。
若干困ったような表情を見せるツッツ。
「とにかく、さらわれた以上助けるしかないでしょう!」
「助け…助け…」
「そうだ、助けに行こう…いたた…」
気合を入れ体に力を入れたショーナ。
だがまだ傷が完治したわけではない。
その傷で助けに行くのは難しいだろう。
「その身体では無理です。僕とカイトくんでいきますから」
「…場所は分かるのか?」
「一応、アタリはつけてあります。メノウさんの魔力の足跡もたどれば確実です」
「頼む、俺も連れて行ってくれ!」
この傷では難しいだろう。
断ろうとするツッツ。
だがそれをカイトが止めた。
「言っても聞かないぜ、こういうタイプは」
「けど…」
「女を助けたいんだろ?来いよ、足手まといになるなよ」
「…ありがとう」
カイトの言葉を受け彼と握手するショーナ。
ツッツはもう止めなかった。
男同士にしかわからないこともあるのだろう、そう考えながら。
しかし一つショーナに忠告をした。
「ショーナさん、今のメノウさんは何らかの理由で力が一時的に低下しているのかもしれません」
「力が低下?」
「はい、メノウさんの魔力の残香がいつもよりも遥かに弱いんです」
「…そうか、だから」
それを聞いて先ほどのことに納得がいった。
何故メノウが一撃でやられてしまったのか。
「とりあえず、一旦休んで作戦を立てましょう。準備も忘れずに…」
「わかった」
「ああ」
ショーナ、ツッツ、カイトによるメノウ救出の作戦が結構されようとしていた。
そして竜を追う組織とは…?




