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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第7章 幻影への鎮魂歌
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第百六十五話 幻影のファントムvs緑瑪瑙のメノウ(中編)

ゾッ帝原作者の祐P先生が復活されましたが小説を書く様子は内容です。

新しい作品を書きたい、とは言っていましたが…

 

 メノウとファントム、二人の戦いはなおも続く。

 誰もいない街の郊外の野原。

 普段ならば青い空の元、風が奏でる草花の音が吹き抜けるその場所。

 しかし今は違う。


「幻狐流『炎舞狐陣(ファイアーフォックス)』!」


 彼女の手から放たれた魔力炎が周囲一帯を焼き払う。

 しかしその炎は延焼することなくファントムとメノウの周囲をかこっていく。

 炎の壁が炎陣となり二人の周囲を包み込む。


「この炎はミサキの技だな?物真似ばっかだなー」


「これがワシの戦い方じゃ。なんとでも言え」


 他人の技のコピーを使うことが得意なメノウ。

 この炎の陣はかつての南アルガスタでのミサキとカツミの戦いを見てコピーしたものだ。

 炎でファントムを翻弄しながらさらにメノウは攻撃を続ける。


「これもミサキの技じゃ、喰らえ炎舞折朱!」


「ぬお!?」


 この炎舞折朱という技もミサキが使っていたものだ。

 斬撃と炎を同時に飛ばし相手に多大な傷を負わせる。

 ミサキが使っていた技だけに炎舞狐陣ファイアーフォックスとの相性も高い。

 逃げ場をなくしつつ確実に炎で焼くことができる。


「調子に乗るなよ!幻影爪(ファントム・クロー)!」


 魔力を纏ったファントムの手刀。

 それにより炎舞折朱により発生した斬撃がかき消されてしまった。


「そもそも技名を叫ぶのも俺のマネじゃねぇか。このパクリ女!」


「なんじゃと!?それくらいどうでもいいじゃろうが!」


「ああ?」


 戦いの最中で言い争う二人。

 攻撃を交わしながらもそんなことができるのは余裕の表れか。

 それとも…?


「死ねメノウ!」


「ここで終わらせるぞファントム」


 そう言って剣を構えるファントム。

 それと同時に再び戦巫女セイバーを展開するメノウ。

 緑色の魔力で形成された不定形の刃、戦巫女セイバー。

 次の瞬間、二つの刃がぶつかり合った。

 その衝撃で二人の周囲をかこっていた炎舞狐陣ファイアーフォックスの焔の壁が吹き飛んだ。



 そんな二人の戦いを遠くから眺める三人の少女。

 魔王教団のアリスとアスカ、そしてアルアだった。

 メノウとファントムの戦う丘から少し離れた場所にある古い城壁跡。

 その上から二人の戦いを観戦する。


「それにしてもすごい戦いだねェ」


「やっぱり普通の人間じゃ、あそこまでできないよね~」


 そう言うアスカとアリス。

 今はこの三人でいるためかアリスの言葉使いが親しい友人へ向けた物になっている。


「けどあれじゃあダメ…」


「そうかい。うまくいくと思ったんだけどね」


 アルアの魔法で紋様を刻み、アスカがそれを中継。

 それを受け取ったアリスの魔法で使役する。

 この方法で死体から次々と手駒となる兵士を作る。

 その為に三人は北アルガスタの遺跡で簡易実験を行った。

 そしてファントムの遺体が眠る古戦場跡から彼を蘇らせた。

 しかし…


「蘇ったファントムには忠誠心も何もないの。ただ暴れるだけ…」


「それは困るねー」


「手綱を握れないとこちらが襲われかねないからね」


 蘇ったファントムの目的はメノウの抹殺のみ。

 今のところは従っているものの、仮にその目的が達成されたら彼がどう動くかは分からない。

 生者ではないため紋様によるコントロールも中途半端にしか効かない。


「精神も不安定、操ることもできない、でもその割に魔力だけはかなりの量を消費する…」


「戦闘能力以外は役立たずってことか」


「この数か月で使ってみて分かったの。死者蘇生の魔法は失敗作、とても使えない」


「えぇー…アルアちゃん大失敗じゃない」


「…ごめん」


 ファントムとメノウの戦いを尻目にそう言う三人。

 彼女たちの言う「失敗作」により復活したファントム。

 そしてそれと戦うメノウ。

 ある程度離れていても、その戦いにより発生した『音』と『衝撃』をその身に感じることができた。


「ぬああああぁぁぁッ!」


「まだじゃあ!」


 メノウの戦巫女セイバーの緑色の輝きが空を斬る。

 それに反撃を与えるファントム。

 失敗とはいえ、ここでメノウを倒せばもうけもの。

 その後の処遇はどうとでもなる。


「まぁ、いいさ。それより…」


 アスカがそう言いかけたとその時、ふとあることに気が付いた。

 懐からあるものを取り出す。


「アスカちゃんのそれ…なんだっけ?」


「以前ウェスカーから借りた軍用の小型携帯電話だったか」


「電話かかってきたの?」


「ああ。そうみたいだね」


 その電話はウェスカーからだった。

 魔王教団と彼の一派は現在協力態勢にある。

 当然この電話も重要な内容に違いない。

 だが…


「こうなったら用もないさ」


 その言葉と共に電話を手から滑り落とし地面に落下させるアスカ。

 乾いた軽い音と共に電話は破壊された。


「ファントムもウェスカーももう用無しだよ…」




 -------------------------



 丁度その頃、王都ガランの王城にて。

 アスカの言った通り電話の主はウェスカーだった。

 魔王教団側の動きに妙なものを感じていた彼。

 あることを確認すべく電話を掛けたのだが…


「やはり出んか…」


 そう言って電話を置くウェスカー。

 王城にある仕事用の自室に備え付けられた電話。

 それを軽く眺めながらそう呟いた。

 ゾット帝国内の情報を流し、魔王教団を国内で活動させやすくする。

 その代わり、魔王教団が国を統治後した後の高い地位を約束する。

 これがウェスカーが魔王教団と交わした契約だった。

 しかしどうも調子がおかしい。


「奴らの仮拠点が制圧されたと聞いたが…」


 東アルガスタ軍から連絡により、魔王教団の仮拠点となっていた海底油田が制圧されたという連絡が入っていた。

 そのことについて電話で問いただそうとしたウェスカー。

 だったがその電話には誰にも出なかった。


「魔王教団とはいえやはりまだ子供か」


 眼を閉じ椅子に体を預けるウェスカー。

 ふと嫌な予感がした。

 少なくとも、今まで自分がしてきたことはまともな活動では無い。

 その『嫌な予感』が何なのかは分からなかった。

 心当たりがあまりにも多すぎたからだ。


「…これは」


 自室に向かって何者かが近づいてくる。

 一人では無い。

 複数人の足音が聞こえる。

 その足音の主たちが部屋のドアを勢いよく開けた。


「フィゼリス・ウェスカー!あなたに話が有ります!」


 十数名の兵士を引き連れ現れたのはルビナだった。

 そしてその彼女の後ろには…


「ジン!貴様…!」


「最初からあなたについたわけではない。元々、私はこちら側だ」


 ウェスカーは以前、ジンを味方に引き入れた。

 いや、引き入れたと思い込んでいた。

 ジンはルビナとルエラと密偵の会話を録音した資料と大会参加者の資料をウェスカーに渡していた。


「あれは両方とも一部改竄したものだ」


「ぬぅ…」


 ウェスカーの顔がゆがむ。

 協力関係にある魔王教団とは連絡がつかず。

 仲間に引き入れたはずのジンには裏切られた。


「くッ…」


「動かないで!」


 腰のオートマチック銃に手を伸ばそうとしたウェスカーをルビナが制する。

 兵士がウェスカーの両手を掴み拘束。

 オートマチック銃を奪い取る。

 拘束したまま彼を連れて行く。


「ご同行願います。ウェスカー様」


「分かっている」


「暴れるとこちらもそれ相応の対応をいたします」


「クッ…自分で歩ける!それ以上触れるな!」


 ウェスカーはそのまま捕縛された。

 言葉は荒いが抵抗することは無かった。


「後は彼から話を聞き、調査をします」


「ありがとう、ジン。面倒な潜入捜査までさせてしまって」


「いえ、以前は姫にも面倒な変装までさせてしまって…」


 ジンが潜入捜査をするためウェスカーと廃ビルで取引をした時のことだった。

 怪しまれぬ服装ということで、ルビナが黒い修道女の服を着ていたことを思い出した。


「彼から魔王教団について重要な情報を聞ければいいのですが…」


「姫、ウェスカー配下の騎士団については…」


「そうね…『フィゼリス・ウェスカー騎士団(ナイツ)』ね…」


 ウェスカーが直々に率いる騎士団。

 それが『フィゼリス・ウェスカー騎士団(ナイツ)』だ。

 軍の内部でも独立した存在であり、ウェスカー以外の命令は受けつけぬ特異な部隊だ。

 しかし…


「ウェスカーの名を使い、招集をかけその後調査をします」


「まずはウェスカーを、ということですね」


「ええ。その後でも遅くは無いはず」


 独立した存在、ウェスカー騎士団(ナイツ)

 そう言えば聞こえがいいが、この騎士団は別な意味でも特異な存在でもある。

 この騎士団に所属するのは、かつての大戦で活躍した老兵、またその子や孫などで構成されている。

 実戦的部隊、というよりは高い地位を与えるために作られた、式典用のお飾りの騎士団なのだ。

 そのため戦闘能力も高くは無く、後回しにしてもいい。

 そう考えたのだ。


「ウェスカー…魔王教団…そのつながりはここで絶ちます」


「このゾット帝国内で好き勝手はさせない」




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