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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第7章 幻影への鎮魂歌
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第百六十一話 星空のメモリー

ゾッ帝原作者である祐P先生が復活されたそうですが…

何だあれは…

 

 捕縛した魔王教団配下の兵士たちの身柄を東アルガスタ軍へと引き渡したルエラ。

 彼女たちがこれからやるべきことは一つ。

 急ぎ王都へと戻ることだ。

 行きと同様ドラゴンを駆り、王都を目指す。

 夜の闇を切り裂く三体の竜の翼。


「お願い、ドラゴンたち!」


 ルエラが叫ぶ。

 その声と共にカイト、ジン、メノウたちが乗るドラゴンたちが加速する。

 魔力によるシールドを風防代わりに貼ってあるためわかり辛いが、かなりの速度だと推測できる。

 地上から数百メートルの海上を超高速で飛ぶ。


「月がキレイだぜー」


「月…か」


 カイトの言葉を聞き、メノウが視線を月に移す。

 夜の闇に輝く月。

 満天の星空。


「そうじゃな。星空も月も…」


 ふとメノウは昔のことを思い出した。

 ショーナと出会う遥か以前。

 一人でラウル古代遺跡を守っていた時代のことを。


「あのころはよく星空を見ていたのぅ…」


 ほとんどすることも無く、ただ遺跡にいるだけだった日々。

 することと言えば寝て食事を作り、たまに遺跡を守る。

 それだけの臥薪嘗胆の日々だった。

 遺跡の天井を見上げじっと見たり、見飽きた壁画を見る。

 何の意味も無い行動をしていたこともあった。

 実に空虚な人生だったと言える。

 だが、今は違う。


「思えばいろいろあったな」


 ここ数年でメノウの人生は大きく動いたと言える。

 ショーナと出会い、南アルガスタでの戦いの渦となった、

 ツッツと出会い、西アルガスタで戦乱のトリガーを引いた。

 カツミと共に、東アルガスタでヤマカワや大羽と戦った。

 多くの人々と出会い、交流してきた。

 これは遺跡に引きこもっていては絶対にできないことだ。


「ふふ…」


 ふと自然に口から笑みがこぼれた。

 これから先に何が起こるのかは分からない。

 色々な人々との出会いが続いていくのか。

 戦いの中で命を落としていくのか。

 それとも…?


「おい、さっきから独り言ばっかで気持ち悪いぞ」


「お、おおう…すまんな」


 そのカイトの言葉を受け、口を閉じるメノウ。

 その間にもドラゴンたちは飛び続ける。

 王都に向かって…



 ------------------------



 一方その頃、王都ガランにて。

 緊急治療と魔法による治癒により無理矢理その身体を治したグラウ…

 いや、ツッツがスートとカツミに連れられ病院を出ていた。

 傷は塞がり後遺症も無い。

 だが精神力と体力はまだ完全には回復していない。


「本当に大丈夫かツッツ?」


「ええ。スートさんと病衣の皆さんの治療のおかげでこの通り…」


 そういって軽く腕を振るツッツ。

 確かに動き自体は以前とそう変わらないように見える。

 とはいえ完治したわけではない。

 まだ身体と腕には包帯が巻かれたままだ。


「それにしてもお前の話、にわかには信じがたいような内容だな…」


「…信じていませんか?」


「物事の真贋くらい見切れるさ。その話が本当だってこともわかってるよ」


「そうですか」


「ツッツさん、カツミさん。とりあえず王城に戻りましょう」


「そうだなスートさん」


 王城へと向かう三人。

 城の方にはメノウたちが魔王教団の拠点を『とりあえず』制圧したと連絡が入っていた。

 メノウたちの帰還を待ちながらその詳細を聞きたい、というのもある。


「(とりあえず制圧したってどういうことだ?)」


 拠点である油田にいたアスカとアリスの二人が単なる写し身だったということをカツミは知らない。

 連絡された言葉に疑問を浮かべつつ王城を目指す。

 ふと彼女はツッツの方に視線を移した。

 顔を歪め、若干ではあるが苦しそうな顔をしていた。


「無理はするなよ」


「はい、わかっています。ですが…」


 ツッツ目つきが変わる。

 空気の流れが変わった。

 それが何を意味しているかは二人も一瞬で察した。


「カツミさん、スートさん、気を付けて!」


「しまったッ!囲まれました!」


「面倒なヤツらだよ全く!」


 城へ向かう道中、街灯のあまり無い再開発地区を横切らなければならない。

 街の大通りから離れ、あまり人のいない区域。

 かつては住宅街として使われていたエリア。

 そこを狙われた。

 古い無人の建物に潜む者達に囲まれた。


「スートさん、こいつらは…?」


「盗賊の類では無い。恐らくは…」


「魔王教団ですね」


 カツミの問いにスートが答え、ツッツが同調する。

 古びたレンガ製の住宅街の屋上には何人もの魔王教団配下のならず者たち。

 ツッツがその視線を物陰に移す。

 小型獣型ハンターが数体身を潜めているのが確認できた。


「五十人ってところか」


「魔物の小型獣型ハンターが十体ほど…」


 ツッツが言ったその言葉にふとカツミは昔の戦いを思い出した。

 東アルガスタへ向かう道中、メノウと共に列車強盗と戦ったときのことを。


「小型獣型ハンターか、随分と懐かしいヤツだな」


「カツミさん戦ったことあるんですか?」


「ああ。昔な」


「そうですか」


「敵はハンター十体、ならず者五十人、そして…ッ!」


 突如遠距離から放たれた弾丸。

 それをスートが仕込み杖で攻撃を弾き飛ばした。

 逸れた弾丸は遠くの廃墟に着弾し爆発。

 爆音と共に建物が瓦礫と化した。


「魔王教団の眷属が一人ですね…!」


 ツッツは今の攻撃パターンに見覚えがあった。

 以前、西のアルガスタで汐之ミサキと共に襲ってきた軍人崩れの男。

 ヤーツァ・バッタリーのものだ。

 あの時と同じく夜の闇に隠れ、遠距離からの狙撃。

 これは厄介だ。


「狙撃手は僕が引き受けます。こちらはお願いできますか?」


「ああ。了解だ!」


「わかりました」


 その声と共にカツミとスートが二手に分かれる。

 建物に殴り込み、中に隠れていた兵士たちを倒していく。

 室内という狭い場所で襲いかかってきた数人を衝撃波の一撃で壁に叩きつけるカツミ。

 魔導波で一掃するスート。


「そう時間はかからなさそうっすね」


「ええ。しかし油断は禁物ですよ」


「とうぜんッ!」


 小型獣型ハンターがカツミに襲いかかる。

 かつてカツミが西アルガスタで戦ったものよりも強化されたタイプだ。

 恐らく紋様で能力があげられているのだろう。


「チッ…」


 攻撃を避け、脚部からの斬撃波で仕留める。

 いくら強化されているとはいえ、彼女の敵ではない。

 スートも楽に仕留めていた。


「数が多いですね」


 スートの言うとおり、まだ敵は多くいる。

 完全に倒すにはしばらく時間がかかりそうだ。

 そして一方のツッツは…


「あの二人の邪魔をしないでいただきたい」


「チッ…以前の灰色のガキか!」


 少し離れた地点で狙撃を行っていたヤーツァ・バッタリーを見つけ出したツッツ。

 彼もこのまま狙撃を続けられるとは思っていない。

 腰のホルスターからオートマチック銃をゆっくりと引き抜き、それをツッツへと向ける。


「オートマチック銃…」


「灰色のガキ、お前の武器は撃剣とか言ったか」


「…」


「へへ。確かミサキのヤツに使ってたよな」


 言葉による陽動で集中力を削ぐのが目的だろうか。

 内容の無い話を続けるヤーツァ。


「あまり時間はかけたくない。一撃で終わらせる!」


「それは俺も同じだ!」


 ツッツの撃剣とヤーツァのオートマチック銃。

 二人の攻撃が放たれたのはほぼ同時だった。


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