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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第7章 幻影への鎮魂歌
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第百五十九話 前夜の会話 それを見つめる黒い影…!

シャムさんが復活して話題になりましたが、どうなるのか。

それよりも原作ゾッ帝削除悲しいなぁ…

何故削除してしまったんだ…

 メノウたちが魔王教団の本拠地へと向かい、戦っていたその頃。

 王都ガランにて。

 カツミ達が病院へ向かった丁度その時。

 ショーナは一人、城下町を散策していた。


「みんな予定入ってたのか。言ってくれればよかったのに」


 メノウが戦っていることを彼は知らない。

 意図的に彼にのみ伝わらないよう、周囲の人物に頼み込んでいたからだ。

 ショーナには心配を掛けさせたくない、そう彼女の思いからだった。


「準決勝前日だから休めって言われてもなぁ…」


 明日はショーナが参加する討伐際の準決勝、そして決勝が行われる。

 本来ならばショーナも敵対勢力に対して警戒を強めなければならない。

 メノウたちが居ない今ならなおさら、だ。

 しかし明日の大会も考慮し、今日だけは休息をとるべきだと上から言われた。


「メシでも喰うか」


 多くの人々が行き交う街。

 その中でふと見つけた料理屋。

 客は多くも無く少なくも無く丁度いい塩梅。

 値段も手ごろそうだ。

 その店に入り適当に料理を注文する。


「ひよこ豆のパンとスープ、あとケバブで」


「はい、少しお待ちください」


 道沿いにある小さな店。

 彼が座る席からは人通りがよく見える。


「メノウ…」


 ふとメノウの名が口から洩れる。

 何か妙な胸騒ぎがするような気がする。

 気のせいだと思いたい。

 そう考えるショーナ。

 メノウは一人で考えすぎる節がある。

 少しは相談してくれてもいい者ではないか、そうショーナは考えていた。


「ほかのみんなも居ないしなぁ」


 城に残っていたのはヤマカワのみ。

 それに彼にもやるべきことがある。

 他の知り合いは皆ではらっていた。


「レオナのやつ、何してるかな」


 友人であり、明日の試合の対戦相手でもある少女レオナ。

 彼女の予定が開いていないか、ふとそう思うショーナ。

 だが、ショーナは彼女のことが少し苦手だ。


「でもあいつ、なんか大人っぽいからなぁ…」


 ショーナの性格は昔からあまり変わっていない。

 だがレオナは随分と成長しているように見える。

 ショーナの視点から見れば、の話だが。

 話していても会話がたまにかみ合わなくなったりすることがあった。

 価値観の違い…だろうか?



「(まぁいいか。さっさとメシくってしまおう)」


 出された料理を食べ終え、街の中を散策する。

 少なくとも街中では特に目立った事件などは起きていない。

 いたって平和な風景。

 裏で魔王教団や、それに協力する第三勢力が暗躍しているとは思えないほどに。

 と、その時…


「お、レオナ!」


「ショーナくん!」


 レオナと出会ったショーナ。

 買い物途中だったのか、レオナは小さな箱を持っていた。

 以前と同じく腕には包帯を巻いていた。


「よお、何してたんだ?」


「そこのお店でこれ買ってたの」


 そういって箱を見せるレオナ。

 どうやら焼き菓子の箱らしい。

 クッキーか何かのようだ。


「本当はお菓子作りの材料屋さんで材料を買って、自分で作りたかったんだけどね」


 今、レオナは近場のホテルを宿としているらしい。

 彼女の実家は王都ガランにあるので、一応帰宅することはできる。

 だが、ここからはかなり遠く行き来するのも面倒だという。


「だからそこで買ったの。おいしいって評判だから」


「へぇ~」


「あのさ、ショーナくん。もしよければ…」


「え?」


「一緒にこれ食べない?私の…泊まってる部屋で」


「お、ありがと!うれしいよ!」


 レオナに誘われ彼女の宿泊している施設の部屋へと向かう。

 なかなか高級なホテルだが、確かに調理器具や調理スペースなどは無い。


「ちょっと散らかってるけどごめんね」


「いやいや全然」


「とりあえず適当に座っててね。飲み物いま頼むから」


「うん」


「お茶でいいよね」


 そういってルームサービスの紅茶を頼む。

 購入してきたクッキーだけでは足りないかもしれない。

 そう考えたレオナは追加でクラッカーも注文した。


「すぐ来るって」


「わかった、ありがとう」


 そういって待っていると、レオナの言うとおりすぐにルームサービスの注文品が届いた。

 注文したクラッカー、そしてレオナの購入したクッキーをつまみつつ話す二人。


「ショーナくん…」


「なに?」


「ねぇ、怒ってない?この前のミーナさんとの試合のこと…」


 あの時は試合ということもあり興奮していた。

 レオナ自身もやりすぎたと後で感じ後悔した。

 ミーナに対しては申し訳ないと思っている。

 そうレオナは話した。


「自分でも信じられないくらい興奮しちゃって…自分が無くなる…みたいな」


「…ま、まぁ、そういうこともあるさ」


 確かにミーナは大きなけがを負ったがそれはあくまで試合中のこと。

 ミーナ本人も別に恨んでいるという訳でもない。


「それに明日は俺とレオナで準決だよな」


「うん」


「どっちが勝っても文句は無しだぜ」


「もちろん!」


「あ、そうだ。ちょっと聞きたいんだけどさ」


「なに?」


 以前、レオナの腕の包帯の下から見えた刺青。

 あれは禁断の森で交戦したシェンと青竜型ハンターが刻んでいたものと同じもののように見えた。

 メノウやスートたちが呼ぶ『紋様』だ。

 しかしショーナはその詳細についてほとんど知らない。

 レオナの腕にあるそれがなんなのか、尋ねようとショーナが話しかける


「そのほ…」


 だが以前、その刺青について尋ねようとした際のことを思い出した。

 その時レオナの機嫌が悪くなったことを、ふと思い出したのだ。


「なに?」


「あ、いや、メノウたち見なかったかなぁって」


「メノウちゃん…」


「ジンさんやカイトたちも居なくてさ。知らないか?」


「ううん、知らない」


「そっか…」


 その後も二人は会話を楽しみ、気が付くと日も傾きかけていた。

 どうやら気づかぬうちに話し込んでしまっていたらしい。

 窓から外を見たショーナがそれに気づき、部屋内にあった時計に目を移す。

 時刻はすでに十八時を過ぎていた。


「あ、もうこんな時間か!」


「十八時過ぎたね。このまま夕食も食べてく?」


 そう尋ねるレオナ。

 しかしショーナはそれを断った。

 今日の夜は南アルガスタ四重臣としての仕事が入っており、どうしても外せないらしい。


「仕事じゃしょうがないわね」


「ごめん!また今度、改めて俺から誘うよ!」


「…約束だよ?」


「ああ。絶対に!」


「じゃあ許す!」


 笑いながらそう言うレオナ。

 やはり昔からの友人だけあり、彼女は他の者には見せない一面をショーナに見せてくれる。

 そしてそれはショーナも同じ。

 メノウにも見せぬ表情をレオナに見せることもある。


「ははは。やっぱ昔からの友達っていいものだなー!」


「友達…」


「準決は絶対勝って見せるぜ!じゃあまた明日な!」


 そういってショーナはレオナの部屋を後にした。

 先ほどまで騒がしかった部屋が一気に静寂に包まれる。

 日が落ちてきたせいか、部屋の中が暗く感じる。


「惜しかったね、レオナちゃん」


 そんな部屋に響く一人の少女の声。

 レオナでは無い。

 彼女よりも小柄な黒装束の少女が彼女の前に現れた。


「アルアちゃん…!」


「残念だったね」


 どこからともなく現れた魔王教団の少女、アルア。

 ショーナが帰り、座る者のいなくなったその椅子に腰かけるる

 そしてレオナに優しく語りかけた。


「あの子、まだレオナちゃんの気持ちに気付いていないんじゃないかな?」


「たぶんそうだと思う。彼、昔からそういうの苦手だから…」


「そうだよね。けどそれだけが理由じゃないよね」


「…?」


「あの子が好きなのはメノウちゃん、だよね」


「それは…」


 ショーナにとってレオナはあくまで友達という存在。

 それは昔から変わらないし、これからもそうだと考えている。

 以前、彼女からの告白を断ったのもそう言う理由からだった。

 だがレオナはもう一度、その想いを伝えたい。

 悪い言い方をすれば、まだ諦めきれていないとも言える。


「ショーナくんがあの子を好きなのはわかってるの。でも…」


「わかるよその気持ち」


 淡々とレオナノ言葉に同調していくアルア。

 気持ちがこもっているのか、こもっていないのか、まったくわからぬ声。

 しかしその言葉はレオナをある答えに導いていく。


「ねぇ、レオナちゃん」


「なに?」


「私さ、こういうのって早い者勝ちだと思うんだよね」


「早い者勝ち…?」


「そうだよ」


 ショーナはメノウに対してまだその想いを伝えていない。

 それはあの二人の態度を見れば何となくではあるが察することができる。

 ならばその前にレオナが取ってしまえばいい。

 アルアはそう言った。

 当然その言葉に対して難色を示すレオナ。


「いや、そんなこと…」


「ふふふ、そう。でも本当にいいの?」


「え?」


「あなたが最初に告白したのに、取っていったのはあのメノウちゃんだよ」


「いや、でも…」


「それならとつても…なにも問題ないよね…?」


 アルアの持つ魔法の杖、その先の宝玉が鈍く光る。

 杖に魔力が宿り、それがレオナの腕に刻まれた紋様を通じ彼女に流れ込んでいく。

 少しずつレオナの思考が鈍くなっていく。

 眼から光が消え、まるで全身から生気が吸い取られているような感覚。


「うん。そうかもしれない…」


「私ね、もっと友達が欲しいの。前も言ったよね?」


「うん」


「だから協力して。ショーナくんも、メノウちゃんも、『友達』にしたいから…」




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