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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第7章 幻影への鎮魂歌
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第百五十八話 海底の決闘 対決!魔王教団!

あと一か月と少しで今年が終わります。

今年中に復活すると言った祐P先生はどうなるのでしょうか…?

気になるところです

 

 鉄を叩く高い金音を立て、下の階層へと続く階段を下るメノウ。

 皆が開いてくれた道を無駄にする訳には行かない。

 この奥にいるという魔王教団のメンバーを倒すために。


「よっと…」


 面倒になったのか数段をとび抜けテンポよく降りていく。

 この海底油田は下の階層に行くにつれ細かく複雑になっていく構造になっている。

 主要エリアは先ほどの三階層まで。

 それ以下は作業用や調整のためのエリアだ。

 その構造はまるで迷路のよう。

 だが…


「次はこっちじゃな」


 敵の魔力を探知することでその正確な道筋をたどっていく。

 さすがにこんな場所では敵も出てこない。

 残るは奥にいる魔王教団のメンバーのみ。

 唯一気になるのは『ファントム』のことだが…


「ここに奴はいない…」


 ここにファントムはいない。

 魔力を感じることも無い。

 そして何より、こういった場所は生前の彼が好む場所では無かった。

 ここに戦力を集中させるわけにはいかない、ということか。

 最深部の扉を開け、メノウがゆっくりとその中へと入る。


「ここは…!?」


 先ほどの大倉庫程の広さの大きな部屋。

 しかし今までのエリアとは決定的に違う点があった。

 それは…


「下は海水か…!」


 この部屋は巨大な貯水タンクの様になっている。

 メノウのいる場所やその周囲には足場があるが、その下は海水をためるタンク。

 海底油田全体の重さを調整するためのバラスト水のようなものが貯められるエリアなのだ。

 しかも思った以上に深い。


「落ちたくは無いのぅ…」


 そう呟くメノウ。

 改めて周囲を見回す。

 そして見つけた。そこに奴らはいた。


「上がうるさいと思ったら…」


「お、メノウちゃん。数日ぶり~!」


 やはり来るのがわかっていたのだろう。

 そこにいたのは魔王教団の二人。

 アリスとアスカだった。

 丁度メノウとは対になる場所、対面のエリアの足場に二人は居た。


「上には兵を置いておいたつもりだったが…」


「全部倒したの?すごーい」


「皆が足止めをしてくれた。だからここへこれたのじゃ」


 すぐにでも戦えるように構えをとるメノウ。

 それを軽く笑い飛ばすアスカとアリス。

 あらためてメノウは周囲を見渡す。


「随分と変なところが好きなみたいじゃな。こんな錆びだらけの場所…」


「別に好きなわけじゃないさ」


「そそそ!この辺りで探し物をしてたから。ちょうどよかっただけなのです」


「探し物?なんじゃそれは」


「それは…これなのです!」


 そのアリスの声と共に現れたのは二体の小型獣型ハンターだった。

 アリスの言う『探し物』というのは、数年前の大羽とメノウの戦いで海の藻屑となったハンターのこと。

 数年前の大羽との戦いの際にこの海の海底に沈んだハンター。

 それを回収し、データと再生可能な個体を得るためこの海域を当面の拠点としたのだ。


「単なるおもちゃと思ってたけど結構遊びやすくていいかんじ!」


「今回は魔獣をつかわんのか?」


「ちょっと理由があるからね」


「理由?」


「そそそ。さ、ハンターたち!やっちゃって!」


 小型獣型ハンターたちは、メノウに振り向いて大きく口を開けて吠える。

 まるで獲物の邪魔するなと言われているようで、攻撃を止めて戸惑うメノウ。

 メノウは大型肉食恐竜型のハンターに衝撃波で威嚇したり、睨み付け威嚇している。

 小型獣型ハンターたちはぶるぶると頭を振ってメノウを片足で踏み潰す。

 小型獣型ハンターたちに踏み潰されたメノウは頭を上げて吠え、頭が地面に突く。

 メノウの額から一筋の赤い血が流れる。

 小型獣型ハンターたちが襲い掛かろうとしているメノウを銜えて放り投げ、口の中の砲口が伸びてキャノン砲でメノウを撃つ。

 メノウが空中で身体を起こすのも虚しく着弾し軽く爆発する。

 小型獣型ハンターたちは尻尾でメノウを薙ぎ払い、口の中の砲口からキャノン砲でメノウを撃っている。

 メノウが小型獣型ハンターたちと戦っている。


「はぁ…はぁ…はぁ…以前戦ったヤツより遥かに強い!」


 メノウはこれまで様々なハンターの個体と交戦してきた。

 飛竜型ハンター、大型肉食恐竜型ハンター、青龍型ハンター…

 単なる戦闘能力ならばこれらの個体の方が高い。

 しかしこの小型獣型ハンターたちは統率された動きによりその戦闘能力を限界以上に発揮している。

 …アリスが司令塔となっているためだろう。


「おいおい、このまま決着がつくんじゃないか?僕も戦いたかったのに」


「どうかなー?メノウちゃんはいざと言うとき強くなるから…」


 アリスの言葉は当たっていた。

 小型獣型ハンターの連携を崩すべく、メノウは動いた。

 彼女は長期戦が苦手だ。

 後に控える相手のためにもここで体力を消費しすぎるわけにはいかない。

 先ず一体のハンターに対し『無色理論(クリア・セオリー)』の魔法を使うメノウ。


無色理論(クリア・セオリー)!」


 無色理論(クリア・セオリー)は電子機器を操る魔法。

 大型肉食恐竜型ハンターのような巨大な個体では制御CPUにまで届かないため効かないが、小型獣型ハンターならば十分に操ることができる。

 同士討ちをさせ、弱ったところをメノウが一撃で下す。


「とりゃ!」


 その場に崩れ落ちる二体の小型獣型ハンター。

 しかしそれを見たアリスの表情は一切曇ることが無かった。

 最初から勝敗は見えていた、とでも言いたげなよう。


「あ~らら。負けちゃった」


「よく言うよ。本気は出していなかったくせに」


「まあね」


 アリスは以前、メノウに魔獣をけしかけたことがあった。

 自立行動型の魔獣であったためその時は敗北。

 生半可な『人形』では勝てないということは初めから知っていたのだ。


「いい人形が手に入るまで本気の勝負はしないのです」


「それならばお前さんが直接戦ったらどうじゃ?このワシと」


治癒魔法を使いながらメノウが言った。

先ほど受けた傷が次々とふさがっていく。

 

「それはいや。面倒なのは嫌いなの~」


 そう言いながら後ろへと下がっていくアリス。

 直接的な戦闘は苦手なのか…?


「(戦いを避けたのかのぅ…)」


 メノウは以前、彼女の戦いを一応見たことがある。

 幽忠武のメンバーの一人、手深蛇のヤツ・テミータとの戦いだ。

 しかしその戦いはアリスの圧倒的勝利で終わった。

 戦いが苦手なのでは無く、本当に面倒なだけなのだろう。


「そんなに戦いたいのなら、次はこの僕と戦ってくれないか?」


 そういってメノウの前に立つアスカ。

 小型獣型ハンターの残骸を踏み潰し、メノウに対しオートマチック銃を向ける。

 数メートルの距離だ、メノウならば回避できる。

 アスカもそれくらいは分かっている。


「キミのことだ、普通に撃ったら避けるだろう?」


「そうじゃな。この距離ならばそれくらいはできる」


「そうかい。じゃあ…」


「ッ…!?」


「遠慮なく、撃つ!」


 不敵に笑いながらそう言い放つアスカ。

 後方にて戦いを眺めるアリスも同じく笑みを浮かべる。

 それと同時に引き金が引かれ、銃口が火を噴く。

 薬莢が床に落ち、軽い金属音が響く。


「(避けるか!?掴んではね返すか!?)」


 メノウの頭に流れる一瞬の思考。


 何故無意味とわかっていながらオートマチック銃を撃ったのか。

 それだけが引っかかる。

 何かあるのか。

 避けてはいけない、掴むのも!


「ず、ずおおぉぉぉ!」


 何か悪いものを感じ取ったのか、放たれた銃弾に対し足先からの衝撃波を放つ。

 威力の低い攻撃だが、迎撃が目的ではない。

 その目的は…


「銃弾を下に逸らしたのか。これは意外だ」


「嫌な予感がしたんじゃ」


「結構鋭いねキミ。僕、そういうの嫌いじゃないよ」


「うぅ…」


 衝撃波によってそれた銃弾が、足場である金属板にめり込んでいる。

 そこからは青白い電気のようなものが走り回り、生物が本能的に嫌う音…

 金きり音にも似た痛そうな音を立てている。


「この銃とその銃弾は特別性でね。変わった性質があるんだよ」


「なるほどな」


「君に魔法が効かないというのはアリスから聞いている」


「アリスから…?」


 メノウは疑問に思った。

 この身体に魔法が効かない…この秘密は多くの者が知っているわけではない。

 ショーナをはじめとする一部の者にしか伝わっていないはずだ。

 それを何故…?


「何で知ってるの?って顔してるねメノウちゃん」


「あまり口外はしてないつもりじゃったが…」


「以前自分で言ってたでしょ。覚えてない?」


「自分で…あッ!?あの時か!」


 操られたスートと戦ったとき、メノウは自身に魔法が効かないということをつい口からこぼしてしまった。

 とはいえ戦いの最中に少し口走っただけ。

 それを聞き逃さず、はっきりと覚えているとは…


「有利になることは覚えておく!基本中の基本なのです」


「魔法は効かないが実体を持つオートマチック銃は通用する。これでなぶり殺しにしてやるさ」


「ぬ、ぬぅぅぅ…」


 海底油田での戦いはさらに激化していく…


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