表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第7章 幻影への鎮魂歌
157/191

第百五十三話 過去からの復讐者 カイト危機一髪

最近ゾッ帝原作者の祐P先生の目撃証言が上がっているらしいです。

今年中に復活するって言っておいてもう九月なんですがそれは…

 

 ルエラの指示のもと、三体のドラゴンは兵士たちを次々となぎ倒していく。

 長い尾を鞭のように使った薙ぎ払い、吐息による吹き飛ばし。

 出来る限り殺傷能力の低い攻撃を続ける。

 ある者は海に叩き落され、またある者はルエラの魔法により捕縛される。


「みんなを先にいかせないと…」


 その固い皮膚は生半可な武器による攻撃は一切通さない。

 相手は魔物でもなんでもない、単なる兵士。

 それに訓練もされていない烏合の衆だ。


「ひ、怯むな!相手は一人だぞ!」


「ど、ドラゴンが三匹も…無理だぁ!」


「うわーッ!」


「ひいぃ!」


 ドラゴンたちを目前に逃げ惑う兵士たち。

 無理もない。

 しかし一部の者達は残り抵抗を続けている。

 それを片付けるのがルエラの仕事だ。


「魔王教団がかき集めてきたならず者たちなんでしょうけどね」


 腿のベルトに隠していた銀色の棒を取り出し、それに強い魔力を込める。

 姉であるルビナから借り受けた武具。

 魔力とイメージを込めることでその形を自由自在に変えることができるのだ。

 ルエラが願った武器、それは…


「やっぱりこれ!フックショット!」


 フックショット…

 正確には武器では無い、探索や哨戒などに使われる補助器具だ。

 だがこの状況ではこれ以上の道具は無い。

 ルエラとしては敵とはいえ、相手の兵士を大きく傷つけたくはない。

 無傷で捕縛は難しいかもしれないが、できるだけ軽い傷で済ませたい。


「ドラゴンのみんな!下がって!」


 フックショットの極細ワイヤーを通し、ルエラの放った魔力が敵の兵士たちに伝わる。

 この武器は魔力伝導率が非常に高い素材で作られている。

 このような使い方をするには最高の相性だ。


緊縛平野(バインド・プレイン)!」


 魔法『緊縛平野(バインド・プレイン)』は単なる拘束魔法に過ぎない。

 しかし、この状況では最高の効果を発揮する。

 フックショットの極細ワイヤーを伝わり、残りの兵士たち全員に同様の効果が現れる。

 あっという間に兵士たちは制圧されてしまった。


「大人しくしてなさいよね」


 そう叫ぶルエラ。

 それと共にドラゴンたちが咆哮する。

 ドラゴンたちの咆哮を聞き身をすくませる兵士たち。

 これまでの戦い、三体のドラゴンの鋭い眼光。

 そしてこの咆哮。

 残された兵士たちの戦意を奪うには十分すぎるほどだった。


「あとはここを見張っていれば…」


 もし援軍が来ても、ここを通さなければいい。

 中に入れぬドラゴンたちを見張る役目もある。

 海底油田内部は一行に任せることにした。



 一方、カイト、ジン、メノウたち。

 海底油田内部に入り、下層フロアへと降りるため下へと向かっていた。


 海底五十mまで続く油田の下層フロア。

 かつては居住エリアや倉庫、その他研究室代わりに使われていたという。

 今では魔王教団がそれを勝手に使用している。

 とはいっても、ここは彼らにとってもあくまで仮の拠点でしかない。

 老朽化した部分などはほぼそのまま。

 最低限の修復のみが施された状態になっている。


「電気は通ってるんだな」


「どうやら波力発電で電力を得ているらしいな」


 下層フロアの海中一階にたどり着いた一行。

 海中に造られた施設とは思えぬその広さに驚くカイト。

 天井には暗くではあるが電灯がついている。

 一応明かりには困らないだろう。


「それにしても広いな。もっと狭いかと思ったぜ」


 ちょっとした体育館程度はあるであろう面積のフロア。

 天井も十五m以上はある。


「倉庫みたいじゃな。コンテナがたくさん並んでおる」


 フロア内に大量に積み並べられた大型コンテナ。

 それを見ながらメノウが言った。

 おそらく、かつては下層フロアで使用する物資や、外へ持ち出す研究資料などがおかれていたのだろう。

 試しに一つのコンテナを開けてみるが、中には何も入っていなかった。


「何か入ってた、ウェーダー?」


「何も入ってねェよアズサ。面白くもねぇな」


 開けたコンテナを軽く蹴飛ばすウェーダー。

 乾いた金属音が大倉庫内に響く。

 コンテナの積まれた大倉庫を走り、階段を目指す。

 奥に下層へ向かう階段が見える。

 そんな中、倉庫の奥にとある物を見つけた。


「お、でかいエレベーターがあるぜ!」


「物資を下に送るための作業用エレベーターみたいだな」


 カイトが゜倉庫内である者を見つけた。

 大倉庫の物資を下層フロアへ送るための作業用エレベーターだ。

 かなりの大きさであり大型の車位ならば軽く乗せることが出そうだ。

 しかし…


「さすがにもう使えないよなぁこれ。ジン、どう思う?」


「かなり錆びついているな。電源は生きているみたいだが使わない方がいいだろう」


「だよなぁ…使えれば楽なのに」


 名残惜しそうにエレベーターを見つめるカイト。

 その近くに普通のエレベーターもあったがこちらはワイヤーが切れ、下層に落下していた。

 これではさすがに使うことはできない。


「やっぱり階段しかないな」


「そうじゃな」


 そう言う二人。

 そんな中階段に向かって歩く途中にウェーダーが言った。

 先ほどのルエラの戦いについてだ。


「それにしても、姫サマ強いんだな。あれだけの数の敵を相手にできるなんてな」


「ドラゴンの扱いも凄い上手かったわね」


「王族は総じて魔法の扱いが上手いんだ。…知らなかったのか?」


「聞いたことないわ」


「俺も聞いたことないなジンさん」


「…以前話したと思ったが気のせいだったか。すまない」


「情報の共有は大事だぜ、ジン!」


 カイトの言葉を受け頭を軽くかくジン。

 そのやり取りを聞きながらメノウはあることを考えていた。


「(『情報の共有』か…)」


 確かにそれは大事だ。

 誰かに話していたことを別の誰かに話していなかったりするだけで、会話に食い違いが生じる。

 防げたことを防げなくなる。

 無駄な労力も発生する。

 たった数個の会話をしないだけで…


「(カツミやショーナに何か話していないことあったかのぅ…?)」


 のど元に引っかかるような『何か』を感じる。

 何かを話していないような…


「(気のせいじゃな)」


「おーい、こっちだぞー!階段ー!」


 階段を下りることにした一行。

 罠が無いかをメノウが調べる。

 …特に何もなかったらしく、このまま進むことができそうだ。

 警戒を払いつつ、下へと降りていく。

 しかし…


「…先に行ってくれないか?みんな」


「どうしたんだよ、カイト」


「うるせぇよ酔っ払い野郎」


「なんッ…!?」


「頼むよ、ウェーダー」


 普段のふざけた様子のカイトとは異なるその様子。

 どこか凛とした表情で言い放つ。


「…そういうことか」


「ああ」


「任せたぜ、カイト」


 その態度を見て全てを察した一行。

 彼をこの場に残し、皆は下層へと進んでいった。


「まかせたぞカイト」


「すぐ後を追うぜ、ジン」


 そういって大倉庫内に残るカイト。

 彼が残った理由、それはここにある者の気配を感じたからだった。

 積まれたコンテナの影に視線を移す。


「出てこいよ。そこにいるのはわかってるぜ!誰かは知らないけどよ」


「クケケケケ…ッ」


 気味の悪い声を上げながら現れたのは、二メートルを超える大男だった。

 錆びた金属のような赤茶けた長い髪。

 黒い古びたコートにボロボロの黒ずんだ赤いマント…


「お前は…確か…」


「忘れたかカイト?この俺を!」


「覚えているよ。うるせえなぁ」


 それは数年前の出来事だった。

 禁断の森での事件を解決したその後、カイトは友人と共に南の島に出かけたことがあった。

 その時彼らはとある事件に巻き込まれた。

 彼の乗っていた客船が海賊に襲われたのだ。


「数年前、『十三人目の海賊』事件で俺達と戦った海賊の頭!」


「そうだ!この失った腕の恨み…今こそここで晴らす!」


「南大洋の魔王『キャプテン・シザー』、だろ?」


「クヘへへへ…」


 精巧に造られたその左腕の義手。

 ボロボロの身体とは異なり、その部分だけが綺麗な銀色に輝いていた。

 あの紋様もそこに刻まれていた。


「なんか変な模様ついてるぜ、オッサン」


「黙れ、死ね!」


 マントの裏から彼がとりだしたのはその身長のほどもあろう巨大なハサミだった。

 彼がキャプテン・シザーと呼ばれる理由ともなっている必殺の武器だ。

 それを構えカイトの元へと突進する。


「うわ、いきなりかよ!」


「キィエアッーー!」


 いきなりの攻撃に一瞬反応が遅れるカイト。

 攻撃を避けるため後ろに下がろうとする。

 と、その間に何者かが割って入った。

 それを受けシザーが突進を止め、一歩下がり間合いを取る。


「私も相手するわ。カイトくん」


「アズサか!」


「面倒そうだしね。手伝うわ」


 忍者刀を構え、シザーと対峙するアズサ。

 カイト、アズサとキャプテン・シザーの戦いが今、この大倉庫内で始まった。



謎のオリキャラ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ