第百五十話 準々決勝終了! 決勝に向けて…
この小説が初めて掲載されたのが≪2015/09/03 23:59≫です。
≪2018/09/03 23:59≫でちょうど三周年になります。
原作ゾッ帝はいつになったら再開するのでしょうか?
カイトの口から語られた魔王教団についての話。
それは以前、グラウからもたらされた情報をもとにジン達が調査したものらしい。
以前、ジンがグラウから受け取ったフロッピーディスク。
ディオンハルコス教団キリカ支部の廃墟に置かれていた物だった。
「…ってジンのヤツが言ってたぜ」
「あの時のか!」
人斬り狐ミサキと灰色の少女グラウの初交戦。
ディオンハルコス教団キリカ支部の廃墟での戦い。
数か月前のことではあるが忘れるわけが無い。
「グラウ…」
「さっきやられてたヤツだよな。けど落ち込んでる場合じゃ無いぜ」
「それは…」
「あのディスクには二つの情報が入っていたんだ。魔王教団、そしてそれと結託するもう一つの勢力のな…」
恐らくかつてのディオンハルコス教団キリカ支部はこれらの組織と繋がりがあったのだろう。
何らかの取引をしていたものと思われる。
その中でもとくに重要な情報。
それは…
「魔王教団の奴らの本拠地だ!」
「それは本当か!?」
「ああ。って言っても当面の拠点ってだけなんだろうけど」
魔王教団の拠点。
それは東アルガスタの海洋上に存在していた。
かつての東アルガスタの軍閥長である『大羽』の研究施設が造られていたという『法輝火嶺諸島』、そのさらに東。
かつての大戦時に使われていた海上油田の跡地。
そこに魔王教団の拠点があるという。
「俺達はそこに強襲する。奴らを倒すんだ!」
出発は明日。
ゾット帝国政府の内部にも魔王教団やウェスカーとのつながりがある者がいる以上、計画を長引かせるわけにはいかない。
少数精鋭のメンバーでの強襲。
それがベストだと判断されたのだ。
「奴らはまだ人数もそんなに多くは無い。叩くなら今だぜ」
「なるほど…」
「お前も来てくれメノウ!」
「じ、じゃが…」
「ぐずぐずするな!早く決めろ!」
「…」
メノウには即断できない理由があった。
試合で傷ついた者達…
ミーナやグラウのことが気になる。
豹変したレオナのこと。
そしてショーナ、ミサキの今後の勝敗…
「…わかった」
ここは行くしかない。
行ってすべての決着をつける。
もし行けばファントムとも戦うことになるだろう。
だからこそ、行くしかない。
「さっきの灰色のヤツは病院で治療中だ。安静にしていれば大丈夫」
「本当か!?」
「…ってジンが言ってた。少なくとも命に別状はないらしいぜ」
「よ、よかった…」
とはいえ、手放しには喜べない。
今回の戦いは傷つく者が多すぎる。
かなりの強者であるミーナやグラウですら…
これ以上被害を出さないためにも、本拠地を叩かねばならない。
「魔王教団の…誰だったか…あ、ア…まぁいいや。とにかく奴らは数人だけだしな」
「じゃが眷属はアルガスタ各地に散らばっておる。そいつらはどうするのじゃ?」
「しらねぇよ。あとでゆっくり捕まえるんじゃねーの?」
眷族は時間を掛け、ゆっくりとらえればいい。
魔王教団のメンバーとは違い、潜伏して行動するということはしないのだから。
「そうか」
「それより、今日は王城でメシ出してもらえるらしい。みんなで食うんだとさ」
これまでのねぎらいの意味も込め、ルビナ姫とルエラ姫による特別の食事会が開かれるのだという。
以前二人によって招集された警備メンバーを集めての食事会。
前夜祭とは違ったラフなものだという。
これも断る理由は無いだろう。
「なるほど。それは行くべきじゃな」
「よし決まりだ!少し速いがさっさと行こうぜ!ショーナのヤツも呼んで来いよ」
「あ、ちょっと待て」
「はぁ、なんだよ!さっさと王城へ…」
「…ほら、今から今日最後の試合が始まるんじゃよ」
そう言ってメノウが壁の方を指さす。
そこをよじ登り試合場の方を見る二人。
なるほど、まさに今から最後の試合が始まろうとしていた。
会場の修復、清掃が終わり選手が入場してくる。
「そうか忘れてたぜ」
「これ見てからでもいいじゃろう、王城へ行くのは」
「おう。…そういえば戦うのって誰と誰だ?」
「北アルガスタの軍閥長のシャム、南アルガスタのサイトウじゃな」
「ああ、オッサン二人か」
まず入ってきたのはサイトウ。
南アルガスタ出身のとび職の男だ。
かつては過激派組織である『紅の一派』を率いていたが、メンバーのほとんどが魔王教団に引き抜かれ解散。
現在は昔馴染みの面子と細々と真面目に働いているらしい。
「真っ赤な派手な半被だな、お祭り気分かよあのオッサン」
「ハハァ…」
紅い桜柄の半被を羽織り、腹に白い腹巻を巻いているサイトウ。
下は大工が穿くような黒いズボンで、黒い足袋に草履。
確かに祭りの格好と言われても不自然では無い。
いくら『討伐祭』という祭の最中とはいえ、格闘技の大会にはあまりに合わない服装だろう。
「で、次はあのシャムっていうオッサンか」
「…待てカイト」
「なんだよ!」
「なにか係員とサイトウが揉めておるぞ」
「あ、本当だ」
会場の喧騒によって何を話しているかまでは分からなかった。
相当な剣幕で怒っていることは分かる。
係員の胸ぐらをつかみ、怒声を上げ問い詰めるサイトウ。
「どういうことや!あのオッサン来んのか!」
「そ、それが…シャムさんは体長が悪く…来れないと…」
「なんやそれ!ふざけてんのか!」
「だから…貴方を不戦勝に…」
「そういう問題じゃないって言ってんや!あのオッサン舐めとんのか!」
そう言って係員を突き飛ばすサイトウ。
なんとシャムは体調不良で参加できないらしい。
会場アナウンスでそのことが告げられ、試合はサイトウの不戦勝となった。
「なんだよそれー」
「つまんねー」
「さっさと帰ろうぜ」
「そうね」
会場の観戦客たちもどこか不満そうな表情だった。
とはいえ、それもしょうがないだろう。
ショーナ対ガイ・ジーヌ(ヤクモ)、ミーナ対レオナ、グラウ対ミサキ。
いずれも内容はどうであれ見応えのある試合だった。
その最後を締める準々決勝の最終戦がこれでは盛り上がりも尻すぼみになってしまう。
「なんだよ不戦勝って、おもしろくもねぇ」
「せっかくじゃから試合見たかったのぅ」
「見ろよ、観客もみんな白けてるぜ」
とはいえ、これで準々決勝が終わったのも事実。
勝ち残ったのは以下の四人。
ショーナ、レオナ、ミサキ、サイトウ。
本命であったヒィーク・アークィンや猫夜叉のミーナが消え、ダークホースばかりが残る結果となった。
明後日から準決勝、そして決勝が始まることになる。
「…城へ行こうぜ」
「…そうじゃな」
「ミサのやつ呼んでくる」
「ワシもショーナたち呼んでくる」
あんまりな試合に言葉を失った二人。
それぞれ連れを呼び、共に王城へと向かうことにした。
帰る観戦客たちとは逆の、スタッフ用の裏口から出て城へと向かう。
この時間にもなるとほとんどの客足は城下町の方へと向かう。
わざわざ城へいく者などほとんどいない。
…メノウ達を除いては。
「裏の方で立食形式でやるみたいだぜ」
「前夜祭の時と同じじゃな」
カイトに案内され、王城の裏庭へと進んでいく。
メノウとショーナに加え、ミーナの見舞いに行っていたカツミも一緒だ。
あの後、ちょうど戻ってきたところを見つけたので声をかけ連れてきたのだ。
スート達は他の者と既に先に行ったらしい。
「前夜祭の時はヤクモのやつが襲撃かけてきたから、ゆっくりできなかったんだよなー」
「ヤクモ…あいつは…」
カツミとショーナが言った。
二人は共にヤクモと戦ったことがある。
魔王教団所属でありながら、どこか不思議な感じのするあの男。
掴み所のない妙な人物だ。
「あんな奴のことなんかどうでもいい。せっかく姫サマのお誘いなんだから今日だけはゆっくりしようぜ」
「え、ええ。そうですね」
裏庭では既に食事会の用意が進められていた。
さすがに酒の類は出してはいないがそれ以外は一通りそろっているようだ。
「さすがに姫サマはいねーか」
「姫も忙しいんですよ、きっと」
「そっか…」
そう言いながらパンと水、肉のソテーを貰うカツミ。
ミーナのこともあってか元気が無さそうだ。
一方、カイトはいつの間にかカレーを貰ってきたらしい。
カレーとジュースを運びながらメノウとショーナに話しかけた。
「俺はカレーもらって来たぜ!お前らは?クレープとかいらんのかー?」
「クレープか、ワシもらって来ようかのぅ」
「俺も欲しいな。カイト、どこにあるんだ?」
「あっちだあっち」
「ありがと!とってくるよ」
メノウたちはしばしの休息を楽しむことにした。
魔王教団との最初の決戦を前に。
ゾッ帝主人公特有の食欲優先思考。




