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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第7章 幻影への鎮魂歌
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第百四十六話 静かなる異変…?

夏休みと言えば、ポケモン映画が真っ先 (というわけでもないけど)に出てくるシャムさん。

でもマナフィは知らない。

クリスタル版はやってたみたいだからそこで知識が止まってるんかなぁ…

 

 ヤクモの場外落下により勝利を得たショーナ。

 初戦のヒィーク戦でも経過は違えど、同じ方法で勝利した。

 まさかヤクモも二回連続で同じ戦術を使ってくるとは思わなかったのだろう。

 しかし…


「(次からはさすがに場外は使えないな…)」


 次回の試合からはさすがに警戒される。

 囮くらいには使えるかもしれないが、もう場外狙いはむずかしくなってくるはずだ。

 よほどのことが無い限り、場外狙いの戦術を使っていくのは避けた方がいいだろう。


「う、うう…」


 堀の水の中から這い上がってくるヤクモ。

 全身ずぶ濡れになりながらショーナの元へと歩いていく。

 以前の前夜祭襲撃、そしてメノウとの北アルガスタでの戦い。

 そして彼は魔王教団所属。

 試合が終わってもなにをしてくるかは分からない。

 警戒を強めるショーナ。

 しかし…


「いい勝負でしたよ。随分と強くなったみたいですね」


「…へ?」


 勝者である彼を称える言葉と共に、握手を求めるように手を出すヤクモ。

 その顔には勝負に対する遺恨などまるで無い、清々しいものだった。

 これが以前、前夜祭を襲撃した男の顔なのか。

 そう思えた。


「あ、ああ。ありがとう…」


「次回の試合もがんばってください。応援していますよ」


「あ、ああ」


「ふふふ、では」


 そうとだけ言うと彼はその場を去って行った。

 なにやら妙な違和感を感じつつも勝利したことは事実。

 控室に戻るショーナ。


「ショーナ!よくやったのぅ!」


「ああ、これでつぎに進め…」


 とショーナがそう言いかけた時、メノウが彼に思いきり抱きついた。


「おっ」


「よかった…」


「…」


 しばしそのまま、勝利の余韻に浸ったふたり。

 その後に改めてメノウからある事をきかれた。

 それは…


「ヤクモから魔力を感じたかって…?」


「ああ。魔王教団特有のあの嫌な感じの魔力じゃ」


「いや、特には感じなかったが…」


「あの男も魔王教団の眷属のはず…なぜ感じんのじゃ…?」


「魔力を押さえていたとか?」


「…そうかもしれんが」


 ヤクモから感じる違和感。

 それが何なのかはまだわからない。

 彼は何かが違う。

 何かが決定的に。

 と、その時…


「おーい、いろいろ持ってきてやったぞー!」


「おお!ありがとうなカツミ!」


 飲料水や果物、医薬品を箱に入れたカツミが部屋に戻ってきた。

 別室から貰って来たらしい。


「ほらよショーナ、水とタオルだ」


「ありがとうございます、カツミさん」


「メノウ、薬や包帯あるから巻いてやれよ」


「わかった」


「りんごは一個残しておけよ二人とも。あたしが食うから」


「あ、はい。ちょっと向こうで顔洗ってきます」


 そう言って一旦その場を離れるショーナ。

 ヒィークとの戦いの時よりは苦戦しなかったものの、やはり疲労が溜まっているようだ。

 部屋に残されたメノウとカツミ。


「次の試合はミィのやつだな…」


「ミーナとレオナの試合か。どうなるか気になるのぅ」


「それまで時間もあるし、ショーナのヤツが戻ってきたらなんか食おうぜ」


「そうじゃな」


 メノウたちは次のミーナとレオナの試合までしばしの休息を取ることにした。

 軽い食事をとるため食堂へと移動する。

 メノウは揚げ豆とスープ、ショーナはハムと卵のサンドイッチ。

 カツミは…


「なんじゃそれ?」


「パスタ…ではないな」


 カツミの持ってきた白く細い麺料理に首をかしげるショーナとメノウ。

 冷やされた麺に薄いタレのような物が入った容器。

 そして細かく刻まれた香草。

 この辺りではあまり見ない料理だ。


「素麺っていう東方大陸の島国の料理だよ」


「ほう、珍しいのぅ」


「まーなー」


 そう会話をしつつ、時間は流れていった。




 そしてその数時間後。

 メノウたちが軽食を楽しんでいるうちに次の試合の時間になった。

 ミーナとレオナの試合だ。

 この大会では珍しい女性同士の戦いだ。

 試合前からも注目度が高いと評判の一戦となっている。


「ミィ、負けるなよ」


「わかってるよカッちゃん、勝ってくる」


 そう言って試合場へとでるミーナ。

 試合に使う混を持ちながら。

 軽く振り回し、構えを取る。


「この大会のためにずっと修行をしてきた。カッちゃんにも手伝ってもらった…」


 予選に出る数か月前から特訓を重ね、技を磨いてきた。

 平和な時が続いている間も決して練習は欠かさなかった。

 仕事で忙しくとも、どんな時でも。


「(数年前、メノウとは結局決着はつけられなかった…)」


 ミーナはメノウと戦ったことがある。

 しかしその時の戦いは悪い者たちによって中断。

 その後は共に旅を続けることとなり決着は二の次になってしまった。


「(この大会が終わったら、メノウにもう一度挑戦する。この新技と共に…)」


 技の構想自体は数年前からあった。

 だが身につけるには当時のミーナでは技量が足りなかった。

 それを実現させるために彼女は特訓を重ねた。

 そしてついに新たなる技を身に着けたのだ。


「(悪いけどレオナ、アンタにはその新技の相手になってもらうよ!)」


 一方のレオナ。

 ケガ防止のグローブと髪を纏めるバンダナをつけ準備をする。


「ショーナくん!私、絶対勝つよ!」


「おう、絶対勝てよ!」


「うん!」


「レオナー!ミーナは強いが、負けるんじゃないぞぃ!」


「ああ、うん。わかってる」


 そう言って試合場へと出る通路を歩いていくレオナ。

 出るときにメノウの頭にポン、と軽く手を乗せていった。


「んん…?何か変な感じじゃ…?」


「じゃあ行ってくる」


 通路を抜け試合場へと出る。

 試合前の張りつめた空気をその身に感じるミーナとレオナ。

 混を持ったミーナ

 そして彼女と対峙するレオナ。

 珍しい女性同士の戦いということもあり、会場は大いに沸いていた。


「いい試合見せてくれよー!」


「もっと絡めー!」


「がんばれよー二人ともー!」


 その他にもさまざまな応援の声が飛び交う。


「手加減はしないよ」


「ええ」


「じゃあ遠慮なく!行かせてもらうよ!」


 二人が構えを取り、試合開始の音が鳴る。

 試合開始と同時にミーナが勢いをつけ猛攻を仕掛けた。

 レオナの周囲を高速で動き回り、混で突きの連打を与え続ける。


「速い!」


「ワシと戦ったときよりもずっと…ッ!」


 観戦していたショーナとメノウが驚嘆の声を上げる。

 かつてメノウと戦ったときよりもずっと速い攻撃。

 その動きから攻撃精度もあの時の数倍は上がっていることが分かる。


「練習の時よりも鋭さが増してる…!」


 カツミと共に練習した時よりも僅かにその速度は上がっていた。

 試合ということもあり、より力が入っているのだろう。

 これまでの予選では見せなかった新技。

 相手が実力者であるレオナだからこそ使える技だ。

 並みの相手では最初の突きの段階で倒してしまいかねない。


「…ッ!」


 腕でその攻撃をガードし続けるレオナ。

 連続の突きとはいえ一発一発は弱い。

 しかしそれも当然。

 この連続突きは次の攻撃のための布石。


「混を高速で動かし、多重分身をしているように錯覚させる!」


 試合用の混は当然、仕掛けの無い一本の棒に過ぎない。

 しかしそれを高速で振り続けることで、あたかも多節混のように見せることが出来る。

 通常の混をミーナ本来の武器である多節混と同様、或いはそれ以上の武器に昇華させたのだ。


「(いきなりで悪いけど、これで終わりだよ!)」


 多重の突きの中にたった一つだけ紛れ込ませた本命の攻撃。

 強烈な一撃を相手に与え気絶させるのだ。

 それをレオナに向けて放つ。

 腕でガードをしているとはいえ必ずどこかに守りきれない部分は出てくる。

 ミーナはそこを突いた。



「えッ…」



 勝利を確信したミーナ。

 だが、その攻撃はレオナによって受け止められてしまった。

 多重の突きの中から『本命の一突き』だけを…


「こ、この!」


「…はッ!」


 衝撃波でミーナを吹き飛ばし、試合場の床に叩きつける。

 受け身を取ることもできずそのまま叩きつけられるミーナ。

 固い石畳でできた床だ。

 叩きつけられただけでもかなりの痛みが伴う。


「痛っ…」


「まだまだですよ」


 ミーナの顔を掴み、アイアンクローの状態で持ち上げていくレオナ。

 その細い腕からは想像できぬほどの強い力だ。

 そしてそのままミーナの頭を地面に勢いよく叩きつけた。


「がはッ…!」


 ミーナの額から血が流れ落ちる。

 石畳にヒビが入るほどの威力だ。

 かなりの傷だろう。

 予想外の攻撃に対応しきれずその場に崩れ落ちるミーナ。


「(め、滅茶苦茶強い…)」


 混濁し薄れゆく意識の中、なんとか降参の意思を伝えようとするミーナ。

 短期決着を目指したため、相手が完璧な対策を練ってきたときのことを想定していなかった。

 しかしそれだけが理由では無い。

 単純にレオナが『強すぎた』のだ。

 以上すぎるほどに…


「こ、こうさ…」


「…はッ!」


 降参の声を聞く前にレオナがミーナに最後の攻撃を与えた。

 全身の体重と力を足先に込めた蹴り。

 …それを倒れたミーナの右脚に。


「ガッ…うぐ…」


 攻撃を受け完全に気を失ったミーナ。

 もはや彼女が試合など続けられぬことは明白。

 攻撃を受けたミーナの脚は曲がってはいけない方向へと曲がっていた…





もうすぐ8/11ですね…

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