第百四十三話 カツドンアサノと刃物三兄弟
ゾッ帝原作アニメ化したらDVDBOX買う。
だから裕P先生復活してください。
街中での急襲から一夜が明けた。
小奇麗な宿の一室に差し込む朝日。
ベッドの上で寝ていたメノウを撫でるように光が差し込む。
「ん…んん…」
その朝日に起こされるメノウ。
昨夜はショーナの話を聞いたあと、少しして寝てしまったのだった。
時刻は七時過ぎ、そろそろ起きた方がよい時刻と言える。
横で寝ている彼の顔を覗き込む。
「…うおぉッ!」
「うわっ」
ちょうど目を覚ましたショーナと頭をぶつけてしまった。
その場で頭を押さえる二人。
「うぅ~お主がいきなり起きるとは思わんかった…」
「顔が近いぜ…」
「それよりショーナ、朝食を食いに行こう」
「痛てて…わかったよ」
「朝食は食堂じゃったな」
「…ちゃんと服着てからな」
「おっと、そうじゃった。昨日はこのまま寝たんじゃったな」
破れたローブを修復した後、そのまま放置していたのを忘れていたメノウ。
テーブルの上に広げてあったローブに目をやるが…
「朝からこれ着るのものぅ…」
修復自体は済んだものの、血の跡などはまだ残っていた。
さすがにこのままでは着ることはできない。
目立ちすぎるし汚らしい。
そう思ったメノウはかばんから着替えを取り出し、私服でいくことにした。
「こっちでいくことにする」
「あ、それって」
「以前にお主が買ってくれたヤツじゃよ」
大会前にショーナがメノウに買った服のうちの一つ。
白いハーフパンツと緑色の薄いシャツだった。
色の組み合わせ以外、あまりこだわりが無いのかあまりにも雑な格好だった。
メノウ本人は気にしてないようだが。
「もう少し服装に気を使った方が…」
「どーせ宿の中、大丈夫じゃよ」
「それもそうだな。みんなどうせ寝起きだしな」
その他の身支度を済ませ食堂へ向かう二人。
ショーナも持ってきた適当な服を着ている。
もともとこの宿自体がそこまでグレードの高い施設では無いため、そのような雑に服装でも大した違和感は無かった。
案の定、食堂にいる他の利用者たちもどっこいどっこいな服装だ。
「ほれみろ、みんな同じようなモノじゃ」
「ちゃんとした服装の方がかえって浮くなコレ」
宿の食堂はあらかじめ貰っていた食券と引き換えになっている。
カウンターにそれを差出し、朝食と交換するのだ。
他の利用者たちと同様に朝食を受け取り席に座る。
「よし、食べるか」
「そうじゃな…ん?」
受け取った木製のトレーに乗っていた料理を確認するメノウ。
同じく木製の器と皿に盛られた料理たち。
お椀には謎の白い液体のような何か。
もう片方には薄い野菜スープ。
皿にはポテトサラダと漬物がのっていた。
よくわからない組み合わせのメニューだった。
「なんじゃこの白い液体のは?」
「お粥だよ。米を使った料理さ」
「米かぁ…ワシは苦手じゃなぁ…」
「南アルガスタにいたときミーナがたまに作ってたな」
「ほぅ」
「味薄いから他の者と合わせて食えよ」
そう言われ漬物と一緒にお粥を食べるメノウ。
彼女が苦手なのは米の臭いだが、お粥ならばその臭いも無い。
「ふふふ、可愛いなぁ…」
「ん、お前さんは…」
「あッ!あの時!ガッ…女の子!」
「いまガキって言おうとしたじゃろ」
調理場にいたその男、それは以前メノウと交戦した男、カット・アサノだった。
小太りでスキンヘッドの特徴的な姿はなかなか忘れられない。
「いやぁ、僕がそんなこと言うわけないじゃないですか」
「お前さん、また変なこと考えてるんじゃ…」
「…考えてないですよ」
「他にも何かしてたんじゃないか?」
「…余罪はありますね」
「…へぇッ!?」
と、言い争いをするアサノとメノウ。
異変を感じた周りの利用者がこちらに視線を移す。
と、そこに…
「Hey!どうしたんだい首領!」
「おうおうおう!」
「ガキがイチャモンつけてきたようだな!」
「は、『刃物三兄弟』!」
何やら三人の屈強な巨漢がアサノの後ろに立つ。
アサノが刃物三兄弟と呼んだその男達。
どうやら彼の知り合いのようだ。
「ハハハ!ガキが首領にケンカ売るなんて2613年早ええーんだよ!」
浅黒い肌に銀色の髪の巨漢、彼がこの刃物三兄弟の長兄である。
名は『スレター・マイープ』、長包丁のスレターとして一部では有名だという。
「おらおらおら!」
「ガキはさっさと学校にでも行ってろや!」
刃物三兄弟の次兄『シュンギー・ランタ』と末弟『キャーベッツ・ノーエン』が続いて叫ぶ。
「ワシは学校にかよっとらん。じゃから行かなくてもいいんじゃ」
「は!?反抗的な態度とるんじゃねーよ!」
「独学じゃ独学」
「うるせー!」
メノウの腕を掴み持ち上げるスレター。
そのまま振り回し壁に投げ飛ばそうとするが…
「ふん!」
「おわッ!?なにしやがった!?」
スレターのその手を振りほどき、床に叩きつけるメノウ。
その動作にかかった時間はほんの一瞬。
何が起きたかわからず、当の本人のスレターはただ困惑するばかり。
床に頬をつけ倒れるスレターを笑うアサノとランタ、ノーエン。
「ふへっいやぁ~はははっへ!」
「ははははははは!」
「遊んでんじゃねーよスレター!」
「じゃあテメーらがやってみろって話だよ!」
「いいぜいいぜ!」
「やってやるよ、なぁ」
そう言って軽くメノウを叩こうといするランタ。
だが逆に叩き返され壁に叩きつけられてしまった。
ノーエンが思い切り蹴りを入れようとするも避けられ、倒れていたスレターにフレンドリーファイア。
結果的にスレターに更なる追い打ちをかける結果になってしまった。
「うげぇッ!」
「あ、わりぃ…」
「こ、このガキ強いぞ…」
「ヤバいヤバい…」
想定外のメノウの強さに戸惑いを隠せぬ刃物三兄弟。
そんな彼らが頼ったのは当然…
「首領!お願いします!」
「へ?いやあ~こういうのはねぇ~…ちょっとインナーチャイルド的に…」
「俺たちじゃ勝てないっす!この長兄スレター一生の願い!」
「ぜひ!ぜひ!ぜひ!」
「頼みます!首領!」
「「「GO!勝つ!首領!カツドン!」」」
「う、うおおおおお!」
刃物三兄弟にのせられたアサノがメノウに特攻を仕掛けた!
だが…
「王武壊!」
「うわああああ!」
アサノの特攻を体を大きく捻りその攻撃を避けたメノウ。
それだけではない、彼の左足を掴み、力を込め投げ飛ばした。
その勢いのまま壁にに叩きつけられるアサノ。
「ド、首領がやられた!」
「ヒィィ!ヒィィ…!」
「カツドンが…」
うろたえる三人と白目をむき気絶するアサノ。
その四人の前にショーナが立つ。
「あー悪いけどこれ以上騒ぎを起こさないでくれるかな?」
「なんだテメーは!部外者は黙ってろや」
「周りの人も迷惑してるしさ」
「なんだとガキが!黙れ!」
末弟ノーエンがショーナに殴りかかるもそれを避けられ捕縛されてしまった。
遠巻きにそれを見ていた食堂の利用客たちが小さな声で歓声を上げる。
「あまり傷つけたくないんだよ、頼むからどこか行ってくれ!」
「くッ…」
今の姿勢ならば、ショーナが少し力を入れ、ノーエンの腕を折るくらいはできる。
それを理解したノーエンはランタと共にアサノとスレターを抱えその場を後にした。
「覚えてろよ」と、そう言い残して。
「別に手を出さんでもよかったというのに」
「そうもいかないだろ?あいつら刃物隠し持ってたからな…」
刃物三兄弟というだけあり、あの三人は刃物を隠し持っていたらしい。
最初は使う素振りは見せなかったものの、最後の末弟のノーエンだけは違った。
フルーツナイフを取り出そうとしていたが、それをショーナが制圧したのだ。
「周りに迷惑がかかるだろ?」
「ぬぅ。ワシのことも少しは心配して欲しいぞ…」
「お前は大丈夫だって」
「そうじゃなくて…」
「えっ?」
「ふん、もういい。食事も済んだしいくぞ」
そう言って二人は部屋に戻って行った。
今日は体を休め、明日の試合に備えるつもりだ。
あのガイ・ジーヌを倒すために。
「あとでレオナの見舞いに行こうな」
「昼前くらいがいいかのぅ?」
「そうだな!」
『刃物三兄弟』
長兄 スレター・マイープ 二十五歳
次兄 シュンギー・ランタ 二十三歳歳
末弟 キャーベッツ・ノーエン 二十一歳
カット・アサノを『カツ・ドン』と呼ぶ三兄弟。
血の繋がりは無く、義兄弟の契りを結んでいる。
その通りなのとおり、全員が常に刃物を携帯している。
浅黒い肌に銀色の髪の巨漢が長兄のスレター。
武器を扱わせたら三兄弟一の次兄ランタ。
切れると恐ろしい長髪の末弟ノーエン。
かつてアサノに命を救われ、それ以降彼を『カツ・ドン』と呼ぶようになった。




