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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第7章 幻影への鎮魂歌
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第百四十二話 急襲者ガイ・ジーヌ

裕Pセンセにはゾッ帝カイト編の禁断の森編だけでも続きを書いてほしい。

黒装束集団を率いているのは、死んだはずのカイトの爺さんではないかと個人的には思っています。

 

 謎の男を追跡していたショーナ。

 廃ビルにて交戦の中、老朽化した床が抜け下階へと落下。

 六階建ての最上階から地上へ叩きつけられてしまった。

 その結果は間違い無く死。

 かと思われたが…


「…あいつ行ったか?」


 瓦礫の中から起き上がるショーナ。

 以前、メノウから教わった硬質化の魔法。

 それを使いつつ受け身を取ることでなんとかショーナは助かることが出来た。

 しかしいくら硬質化とはいっても着地時の衝撃自体は避けられない。

 受け身をとってはいるもののダメージは大きいだろう。

 瓦礫をベッドがわりにし、一旦その場に横たわるショーナ。


「一体ヤツは…?」


「なんじゃろうな?」


「ん?」


 そう言って聞き覚えのある声の方を向くショーナ。

 そこにいたのはやはりメノウ。

 傷自体は塞がっているが、無残にも血で赤く染まったローブが痛々しい。


「メノウ、大丈夫だったか!傷は?」


「傷自体は問題ない、じゃがあの男…」


「どうしたんだ」


「なかなか恐ろしい物を使ってきおるわ」


 メノウの話によると、先ほど謎の男が使用した短剣には少量の毒が塗られていたという。

 死ぬほどの猛毒でこそないが、数日は体が満足に動かなくなるほどの効力を持つ。

 メノウだから大丈夫だったが、もしショーナが受けていたら…


「…本当に大丈夫なのか?」


「ああ。毒や薬品には耐性をつけてあるからのぅ」


「そうか」


「以前のこともあるしな。そこはしっかり対策済みじゃ」


 数年前、メノウは薬品を盛られ自由に戦えなくなったことがあった。

 その時の弱点は克服してある。

 とはいえ、薬害耐性はそう簡単につけられるものでは無い。

 彼女の特異な身体だからこそつけられたのだろう。


「ショーナ、ここは危ない。一旦宿に戻ろう」


「…ああ。周りに注意しながらな」


 そう言って期間中に滞在している宿へと戻る二人。

 当初の目的だった食事のことは後回し、とりあえずは落ち着くことが先決だ。

 辺りを警戒しつつ、宿へと戻る。


 帰りの道中では特になにも起きなかった。

 宿の部屋に戻った後、食事はルームサービスで済ませることにした。

 ラフな部屋着に着替え、ベッドに転がるショーナ。


「とりあえずは落ち着いたな」


「さすがに部屋にまでは襲ってこんじゃろう」


 切り裂かれたローブを脱ぎ、テーブルに広げるメノウ。

 ローブの切断面の部分に指を当て魔力を流し込む。

 このローブは魔法具であるため縫製などは必要ない。

 魔力を使うことで修復ができるようになっている。

 シャツと下着だけになってメノウが補修作業を続ける。


「メノウ、さっきのヤツは魔王教団の関係者か?」

 それを待つ間に先ほどの者が誰かを整理する二人。

「違うな。魔力も一切感じなかったしのぅ」


「じゃあ幽忠武の奴らが負けた腹いせに来たとか?」


「それも違うじゃろうな」


 あの戦いでは幽忠武側は完全敗北を認めていた。

 だからこその賞品であり、今更彼らが来たとも思えない。

 確かに毒を使う戦法自体は幽忠武の戦士ヤツ・テミータに近いが…


「まぁ、可能性はゼロじゃな」


「ゼロなの!?」


「いや、ゼロは無いかもしれんわ。確証が無いわ」


「う~ん」


「じゃがほぼ無いと思うぞ」


「そうか…」


 そう言った丁度その時、部屋に料理が届いた。

 単純なナスとタマネギのジュノベーゼパスタだ。

 具の無い簡単なスープと瓶に入った水、そして堅いパンも一緒。

 それぞれ二人前届いた。

 一応、メノウが毒が無いかを魔法で確認する。

 どうやら大丈夫のようだ。


「少し油が多いのぅ…」


「お前、そういえば油の多い料理苦手だったな」


「嫌いというわけじゃないんじゃが、ちょっとのぅ」


 ナスとパスタを口に運び、それを水で流し込むメノウ。

 口の中にジュノベーゼパスタ特有のバジルとチーズの香りが広がる。

 マズイわけでは無い、だがどうにもメノウは手が進まない。


「油が多い…」


「そんなに気にするほどか?」


「ぬぅ…」


 ニンニクも効いているが、こちらは対して気にならなかった。

 匂いの強い料理自体、メノウは得意な方だからだ。

 一方、ショーナはそれらに対し特に気に留めずに食べていた。

 料理を食べつつ先ほどの話の続きをする二人。


「…魔王教団や幽忠武とは関係の無いヤツか」


「ショーナを襲って得をする者…」


 メノウがソースのかかったタマネギを食べながら言った。

 彼女も襲われはしたが、あくまでそれはあの男を制止しようとしたから。

 あの男の目的は明らかにショーナだった。

 彼を狙い攻撃してきたのは明白。


「次のお前さんの対戦相手…か?」


「まさか…!?そんなわけ…」


「可能性はゼロじゃない。確証が無いだけじゃ」


「またそれかよ~」


「断言するのはやめておくわ…」



 そう言いながら皿に残ったソースをパンで拭きとり、口に運ぶメノウ。

 パスタは完食したらしく、残りのパンとスープを食べていた。

 それらを全て平らげ、さらに話を続ける。


「して、次の試合の対戦相手は誰じゃ?」


「えっと確か…」


 部屋に置いてあったかばんから討伐祭の試合の表を取り出す。

 ・ショーナとガイ・ジーヌ

 ・ミーナとレオナ・ミーオン

 ・グラウ・メートヒェンと汐之ミサキ

 ・シャムとサイトウ

 という対戦カードとなっていた。


「こうしてみると変な組み合わせじゃなぁ」


「確かにな」


 この準々決勝戦では、ミーナとレオナが戦うことになる。

 実力ではミーナの方が明らかに上。

 南アルガスタ四重臣として戦ってきたミーナ。

 一方、実戦経験も無く大きな武術大会での実績も特にないレオナ。

 身軽さや攻撃の重さでもミーナの方が上。

 レオナが勝つのは難しいだろう。


「どっちを応援すればいいのか分からないな」


「ワシも」


 グラウとミサキ。

 これは期待の試合だと言える。

 謎の少女グラウ、そして魔王教団の眷属であるミサキ。

 どちらも強者だけに、まさに必見だ。


「灰色のグラウ…あやつは…」


「どうしたメノウ?」


「いや、なんでもない」


 そしてシャムとサイトウ。

 何とも言えぬ組み合わせだ。


「ちょっと地味だなぁ」


「…うーん」


 そして肝心のショーナの相手。

 それは『ガイ・ジーヌ』という男だ。



「ショーナ、お前さんの相手はガイ・ジーヌというヤツか」


「ジーヌ…」


 メノウはこの人物が犯人ではないかと言った。

 ガイ・ジーヌ、この男は顔を常に犬の面で隠しているという奇人だ。

 しかし腕は立つ。

 前年の討伐祭では、ヒィーク・アークィンと戦い善戦。

 その結果、三位の座を取得している。


「確かにこいつは怪しい…」


 そもそもこのガイ・ジーヌという男の戦績もかなり怪しい。

 不自然な勝利や不戦勝が多いと、一部では有名なのだ。

 あくまで『偶然』の範囲内ではあるのだが…


「ヒィークを倒したお前さんを警戒して襲撃をかけてきたとは考えられんか?」


「わからない。けど…」


「試合で戦ってみればわかるかのぅ」


「ああ。試合前に何をされても関係ない。試合で戦って勝つだけさ」


「その言葉を聞いて少し安心したぞぃ」


 先ほどの襲撃を受け、臆病風にでも吹かれやしないかと心配していたメノウ。

 しかしその心配はなさそうだ。

 メノウが思っているよりもショーナはずっと逞しい。

 そのことを再確認できたからだ。


「食べ終わったし、斬られたローブの直しの続きを…」


 そう言って広げたローブの修復に戻ろうとするメノウ。

 そんな彼女に対し…


「メノウ」


「なんじゃ」


「それ、また後にしないか?」


「なんでじゃ?」


「明日は特に試合も無いし…」


「そうじゃな。明日は何も無いのう」


「一緒にしたいことがあるんだ」


「ん…?」


浅野特製ジュノベーゼパスタすき

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