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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第7章 幻影への鎮魂歌
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第百四十一話 大会再会!勝利は誰の手に

今回から第七章です。

裕P先生は原作ゾッ帝を再開して、どうぞ。

 幽忠武との戦いが終わり、メノウとスートは地上へと戻って行った。

 取り返した数十年前の優勝賞品を片手に。

 高度三千メートルから、地上の討伐祭会場へと降りる二人。

 既に日も落ちかけており、夕日が眩しく思えた。


「空の上は大変じゃったのう」


「ええ…」


「観客が誰もいないのぅ…」


「そうですね、ちょっときいてみますか」


 その場にいた大会の係員に尋ねるスート。

 観客たちは安全確保のために全員が帰宅させられたとのこと。

 数名の係員以外は誰もいない会場。

 少々それが不気味に思えた。

 人質だった者達やレオナ、アリスとアスカはどうなったのか、メノウが尋ねた。


「先に降りた方々は病院へとお送りしました。衰弱している方やケガをしている方もいたので…」


「レオナ…!?」


 キィーカックとの戦いでかなりの怪我を負ったレオナ。

 致命傷となる傷では無かったものの、痛みや疲労で精神的にもかなりダメージを受けているはずだ。

 魔法による治療は施したものの、精神面までは治せない。

 安静にし、少し休む必要があるのだろう。


「見舞いに行こうか…?」


 そう言うメノウ。

 しかし治療を受け、安静にしているところをいきなり押しかけても迷惑がかかるだろう。

 レオナ以外にも病院に運ばれた者はいるのだ。


「今日のところはやめておいた方がいいかもしれません」


 とりあえず今日のところは止め、明日に見舞いに行くことに。

 討伐祭も明日は試合が無い。


「試合開始は明後日からじゃな」


「ええ、今日は試合だったので。明後日から準準決勝ですね」


「そうじゃな」



 -------------------



 トウコ達から取り返した数十年前の賞品。

 それらは全てスートに任せることにした。

 メノウはそのような物の扱いは苦手だ。

 だが、彼ならばある程度うまいことやってくれるだろう。


「あとはこちらでやっておきますから」


「すまん、面倒事を押し付けてしまって…」


 運営の係員たちと共に、それらを運んでいくスート。

 姫君であるルビナとルエラ、そして大会運営にそれらを伝えにいったようだ。


「さて、これからどうするかじゃな…」


 日は既に落ち辺りは夜闇に包まれている。

 腹も減ってきたことだ、食事にでも行くか。

 誰かを誘うのも面倒だ。一人でいこう。

 そう思いつつ、メノウはその場を後にしようとする。


「さすがにもういないか」


 そう言って大会の待合室を覗くメノウ。

 灯りも付いていない。

 昼間は参加者たちがいたがもう誰もいないだろう…

 そう思っていた。

 しかし…


「あっ!」


「うう…ん…」


 そこには待合室の椅子で寝ているショーナがいた。

 メノウを待っている間に寝てしまったのだろう。

 眠そうに眼をこすり、あくびをしながら背伸びをし目を覚ます。


「お、メノウ!終わったのか」


「お主待っていてくれたのか」


「今回何もできなかったからな。せめてお前を待ってようと思ってたんだ」


「で、その間に寝てしまったと」


「ははは…」


 どうやら図星のようだ。

 ショーナの話によると、他の皆はそれぞれ別行動をとっているようだ。

 カイトとジンは王族の警護を。

 その他の者は街で各々行動している。


「ミーナとカツミはどうした?」


「あの二人なら一緒に食事に行くって言ってたぜ」


「ワシも腹減ったぞ」


「じゃあ街に飯食いに行こうぜ」


「そうじゃな!」


 そう言って二人で街へとくり出す。

 やはり討伐祭と復活祭が並行して行われているだけあり、街はいつもよりもかなり盛り上がっている。

 街は灯りによって照らされ、かつての戦いの勝利を祝うパレードが行われる。


「どこでメシ食う?」


「以前レオナに教えてもらったところがあるんだ。そこで食おうぜ」


「おう!」


 あちこちで宴が開かれ、祭の間の王都ガランは眠らぬ街となる。

 多くの人々が今から約百年前の魔王討伐を祝う。

 道にも普段より多くの人々が行き交う。


「やはり人が多いのぅ」


「東西南北の地区から人が来てるんだ、当然さ」


 あと数年でその戦いからちょうど百年となる。

 その時に魔王教団は行動を起こすといわれている。

 この人々を守るためにも、魔王教団の野望は絶対に阻止しなければならない。


「そういえばさ…」


「なんじゃ」


「アリスやアスカって言ったか、魔王教団の奴ら」


「ああ、そうじゃ」


 ショーナは以前、東アルガスタ予選の際に彼女たちと初めて出会った。

 あの時の威圧感は今でも覚えている。

 もし彼女たちを放っておけば、将来間違い無くこの世界に災いをもたらす存在となる。

 確実に。


「メノウ、魔王教団の奴らをどうする」


「当然『殺す』しか無いじゃろう」


「…そうか」


「眷属の奴らはワシの魔法『無色理論(クリア・セオリー)』で無力化できんことも無いが…」


 眷族には無色理論(クリア・セオリー)が有効。

 しかし魔王教団の正式メンバーには恐らく効かないだろう。

 たとえ相手が誰であろうと、敵対し街となる存在となるならば殺すしかない。


「…」


「…」


 街を歩きながら妙なことを話してしまったせいで、少々くらい気分になってしまう二人。

 これはまずい、話を変えねば。

 そう考えたメノウが話を切り出した。


「し、ショーナ」


「なんだ?」


「最近、ミーナとカツミの二人仲がいいとは思わんか?」


「そういえばそうだなぁ」


「メシとかいったり、一緒にいることが多い気がするのぅ」


「ははは、確かにな。…お、そこの店だぜ」


 どうやら、話しているうちに店の近くへとやってきたようだ。

 通りの向こうの先にある料理屋を指さすショーナ。

 街の大通りから少し入った場所にある食堂のような場所だった。

 上品すぎず、気軽に入れる場所だ。


「おぉ、そこか」


「ああ」


「いやぁ、ワシもすっかり腹が…ハハハ…」


 そう笑いながら言うメノウ。

 と、その時…


「ショーナ・トライバルハイトさんですね…?」


 物陰から現れた黒装束の男。

 顔を布で覆い、素顔は見えない。

 高く細い背格好と声のおかげで何とか男性とわかる。

 低くも無く高くも無い、抑揚も無い声。

 人間味が感じられず、少々不気味だ。


「トライバルハイト…なんでその名を…!」


「…いろいろと調べさせてもらいました」


「…ッ!」


「消えてもらいますよ」


 その声と共にショーナに短刀を向け切り付ける謎の男。

 間一髪で背後に飛びそれを避ける。

 しかし謎の男は素早い動きで間合いを詰める。

 当然ながら逃がす気はないようだ。


「ショーナ!ここはワシが…」


「邪魔だよ」


 メノウが謎の男に攻撃を仕掛ける。

 しかしトウコとの戦いの傷が彼女にはまだ残っていた。

 わずか数時間前の戦いだ、治っているわけが無い。

 トウコの炎の鞭によって焼き裂かれた皮膚が短刀によって再び切り裂かれた。


「エッハァ!」


「メノウ!?」


 メノウの白いローブが赤い血で染まる。

 トウコ戦の傷や精神的疲労が重なり上手く戦えぬメノウ。

 左肩から胸にかけて大きな傷が刻まれその場に倒れこむ。


「う、うう…」


「ボクの目的はショーナ・トライバルハイト。そこの女の子では無い」


「メノウ、大丈夫か!?」


 メノウに駆け寄ろうとするショーナを彼女が止める。

 隙を見せれば謎の男は確実に攻撃してくるだろう。

 そう言うかのように視線を送りながら。


「くッ…」


 狙いはメノウでは無くショーナ。

 逆に言えば、これ以上メノウが襲われることは無いということだ。


「…そんなに相手をしたいのならついて来い!」


「その気になったか」


「場所を変えるぞ!」


 さすがに街中で戦うわけにはいかない。

 街の他の人々や、傷ついたメノウにも迷惑がかかる。

 裏道の古い木製の廃墟へと謎の男を誘い出すショーナ。


「来い、ここなら存分に暴れてもいいぜ!」


「ふふふ…」


 古い木製の廃墟なので一部の床が抜け落ちてしまっている。

 階段を駆け上がりながら戦う二人。

 建物自体がもらくなっているため、衝撃波などの攻撃は使えない。

 短刀に気を付けつつ、階段の高低を利用した立体的攻撃で謎の男を攻撃するショーナ。

 

「お前は何者だ!」


「知る必要は無い」


 上階から蹴りを放ち、謎の男へ一撃を与えるショーナ。

 よろめくも反撃と言わんばかりにその足を折りにかかる。

 それを察知し、慌てて足を引くショーナ。

 しかしそのせいで階段から叩き落とされ、下の階へと叩き落とされてしまう。

 階段を転がり落ちていくショーナ。

 なんとか受け身を取り、戦闘を再開する。


「何がしたいんだよ!お前は!」


「さぁね…」

 

 階段を上がりながら戦う二人。

 部屋を抜け最上階へとたどり着くと、天井に開いた穴から屋上へ跳び上がる。

 

「お前も奴らの仲間か?」


「ふふふ…」

 

 ショーナの言う奴らとは当然、魔王教団のこと。

 しかしそれにも謎の男は答えない。

 曖昧な答えで流すのみ。

 メノウがいれば魔力パターンから何者かわかるかもしれないが…

 痺れを切らしたショーナが、ついに謎の男に飛び掛かった。

 

「ならば力ずくで…!」

 

 そう言って謎の男の下へと走り出す。

 しかし…


「なッ…!?」

 

 ショーナの踏み込んだ床の一部が突如砕け散った。

 そこは老朽化で特別脆くなっていた部分だったのだ。

 さらにその下の階も、ショーナが落下した衝撃と重みで抜けていく。

 そしてその下の階層、その下も…

 

「運が悪いヤツだよ…」

 

 それを上から見つめる謎の男。

 最上階から一階まではかなりの高さがある。

 それをショーナは古い木でできた残骸と共に落下していったのだ。

 大怪我か、死か…

 謎の男はすぐさまその場を後にした…


裕P先生はゴリラと焼肉のようなボディガードと共に無敵要塞に籠っているらしい…



また、この作品とは別に短編作品である『魔法少女セイヴァー☆ミルハ』を投稿致しました。

もしよろしければ読んでいただけると嬉しいです。

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