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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第6章 王都決戦
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第百十八話 王都到着


 フィーリアの元を旅立ち二週間と少し。

メノウとショーナはついに王都ガランにたどり着いた。

途中で足止めを喰らったものの、それを除けば通常よりも遥かに早くたどり着いたと言える。

これもアゲートとメノウのおかげだ。


「メノウ、少し休んだ方が…」


「なに、ワシは大丈夫じゃ」


「それにアゲートも…」


 フィーリアの元を出てからは、メノウがアゲートを駆り走っていた。

その間、両者は最低限の休息だけをとりここまで来たのだ。

超人的な体力と魔力を持つメノウと軍馬であるアゲートだからこそ可能な芸当だ。

当然道中でショーナは何度も休むように言った。

しかしメノウとアゲートはそれを拒んだ。

少しでも早くショーナを送り届けたい、その気持ちからだった。


「そ、それよりショーナ!検問の列に並んだ方がよいのではないか?」


「ああ。早く休もうぜ。俺とメノウ、そしてアゲートでな…」


 王都へ入るための関所。

そこに設けられた検問所の列に並ぶ。

犯罪者や危険人物などが入らないようにするために行われている。

特に近日行われる討伐祭の大会を狙ったテロ行為などを防ぐ、という目的もある。

とはいえ、肝心の魔王教団相手に効果があるのかは微妙なところだが…


「地区移動するごとにこれだから一々面倒なんだよな」


「駅じゃとまとめてしてくれるのじゃが」


「あっちのほうが楽でいいよな」


 数十年前の世界大戦前から残る、王都を囲む古い城壁。

その一部に作られた妙に近代的な関所。

若干風情が無い気もするが仕方が無い。

駅や空港、港だと荷物を軽く検査するだけで済むのだが、王都となるとそうもいかないらしい。

それでも順番を待ち、ついに二人の番になった。


「荷物はこのカバンと馬に乗ってるぶんです」


「それでは少し見せてもらいます」


 メノウとショーナの二人の荷物とアゲートに載せた荷物を検査する関所の役人。

とくにかわった物は無いのでそのまま通ることが出来た。

続いて身分証明だが…


「(しまった、ワシには身分証明になるものが無い…)」


 メノウには身分証明となるものが無い。

以前、王都ガランを訪れた際は高等魔術師のスートに頼んでなんとか通してもらった。

国内でも高い地位を持つ彼の権力で無理矢理通ったのだが、今回はそうもいかない。

ショーナも南アルガスタ四重臣の一人ではあるが、同じようにはいかないだろう。


「では、身分証明となるものを…」


「はい、俺と『メノウ』の身分証明書、それとアゲートの登録書」


 ショーナがメノウの身分証明書を取り出し、役人に差し出した。

アゲートの登録証と共に。

驚きを隠せぬメノウだが、これで関所を通ることが出来た。

門をくぐり、王都ガランへと入る。


「ショーナ、さっきの身分証明書はなんじゃ?」


 その途中、メノウが先ほどの身分証明書について尋ねた。

もちろん、周りに聞かれぬように小声でだ。


「ああ、あれか。実はな…」


 メノウが王都ガランに入れず、スートに頼み通してもらったという話はルビナ姫にも伝わっていた。

他にもウェーダーやヤマカワなど、まともな戸籍や身分証明を持たない者は多い。

今の時代、そう言った物を持たない者の方が多いのだ。


「いろいろな地区を移動するってなると不便だろ?」


「まぁ…そうじゃのう」


「ルビナ姫から貰ったんだ」


 今回の魔王教団との戦いにあたって国内を自由に移動できるように、メノウたちには正規の身分証明書が発行されていた。

ついでにアゲートにも登録証が再発行された。


「渡そうと思ってたんだけど忘れてたんだよ。悪いな」


「そういうことじゃったか。ちょっと見せてもらってもよいか?」


「ああ、いいよ」


 そう言ってショーナが証明書となる小さな紙を手渡す。

ゾット公用語で書かれたそれには、住所や名前、性別など必要最低限のものが書かれている。


「身分証明書かぁ…なんかいいのぅ…」


「これ持ってると国内でもかなり自由に動けるからな。いろいろと便利だと思うぜ」


「ふふふ、そうじゃな」


「今わたしておくよ。無くすなよ」


 そう言われ、証明書を受け取るメノウ。

どことなく嬉しそうだ。

それを大切そうにカバンにしまいつつ、王都の中を進んでいく。


「結構中世的な作りなんだなぁ」


「以前も来たことがあるが、やはりいい場所じゃな」


 関所を出てまず目に入ったのは、煉瓦で作られた街並みだった。

このあたりは数百年の間、この街並みを保ち続けている。

大戦時も攻撃を受けることが無かったためだ。


「そうか、メノウはルビナ姫に合いに来たことがあったんだったな」


「そうじゃ」

 

 王城の城下町であるこの王都ガラン。

地面に敷き詰められた落ち着いた色合いの、色とりどりの煉瓦。

そして建物は煉瓦と硝子で作られている。

さすがに道行く人々は普通の格好をしているが。


「まずはどこへ行くのじゃ?」


「とりあえず、会場で本戦参加の受付だな。場所は…」


 歩いていた人に道を尋ね、会場の場所を教えてもらったショーナ。

どうやら街の中央の広場の近くに受付専用の建物があるらしい。

一旦そこで受付を済ませなければ本戦に参加はできない。


「場所はこの通りをずっと道なりに行けば着くよ」


「ありがとうございます」


「大会がんばれよ」


「はい!」


 礼を言い、受付を済ませるためその建物へと向かうショーナとメノウ。

街の中ゆえアゲートで走るのは無理だが、道が整備されているおかげで迷わずたどり着くことが出来た。

噴水のある広場、その隅にその建物はあった。


「お、あそこじゃな」


「さっさと済ませよう」


 小奇麗な受付の建物に入り、手続きを済ませる。

これで本戦へ参加が可能となった。

その場を後にし、広場のベンチでこれからどうするかを考えることに。

本戦開始までまだ数日ある。

大会中の宿なども考えないといけない。


「どうする?泊まるところ」


「ワシは早く休みたいぞぃ…急に疲れが出てきた…」


「そうだな、今日のところは早く休もう…」




----------------------



 しばらく泊まることになる宿を見つけ、そこで休むことにした二人。

馬小屋もあるのでアゲートも泊めることができた。

ここ最近は走り通しだったので疲労が溜まっていたのだろう。

メノウはすぐに宿で眠りに入ってしまった。


「しばらく眠りたい…起こすなよショーナ…」


「ああ」


「おやすみ…」


 起こさないよう、静かに離れるショーナ。

さすがの王都というだけあり、安宿とはいえそこそこ綺麗な場所だ。

ベッドにバスルーム、調理室、その他必要な一通りの設備はそろっている。

しばらく滞在する分には困らないだろう。


「さっき貰った冊子でも読むか…」


 備え付けのソファに座り、先ほどの受付でもらった大会本戦に関する冊子を読むショーナ。

それによると、数日後に開会式が開かれるそうだ。

大々的に行われるらしく、参加者は絶対に出なければならないらしい。


「魔王教団の奴らはどこで来るか…?」


 これまでの傾向から、人の多い場所でのテロ行為などをしてこないことは分かった。

恐らく開会式で一般人に多大な被害が出るようなことは無いはずだ。

しかしそれはあくまで『一般人に対して』だ。

参加者に対してでは無い。


「参加者は十六人、その中に魔王教団の眷属が少しいるとして…」


 東アルガスタ予選を勝ち抜いたミサキは眷族の一人だ。

それ以外は分からないが、実際に出会った参加者である

・グラウ・メートヒェン

・レオナ・ミーオン

・ヒィーク・アークィン

の三人は眷属では無い。

北アルガスタのシャムは、はっきりとは分からないが敵ではなさそうだ。


「それに以前、グラウの言ったもう一つの敵も気になる」


 以前、禁断の森でグラウの言った魔王教団と結託する『もう一つの勢力』についても気になる。

魔王教団がこのゾット帝国内で活動しやすくするために動いている協力者らしいが…


「今考えても埒が明かねぇな。食料でも買いに行くか…」


 数日後に開会式が、そしてその三日後に本戦が開催される。

毎年行われている魔王封印祭と同時に行われるためかなり大規模なものになるだろう。

魔王教団、そしてそれと共謀するもう一つの敵…



・ウォーターボール

【使用者:メノウ、スート、カイト、ミサ】

破壊力:c タイプ:防御

周囲の水分を使い、ジャンボシャボン玉を形成する魔法。

魔力を込めれば込めるほど強度、大きさを増大させることが出来る。

基本的に防御技だが、中に入って浮遊することもできる。

また、ジャンボシャボン玉を瞬時に魔力に再変換することも可能。

水では無く、土などを利用した攻撃技もある。

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