第百七話 少女に迫るストレンジャー!彩湖 Mr.マイーン
伝説の『オフ0の日』が近づいておりますが、皆さんいかが…大丈夫でしたか?
8/11はオフ0の日です!
「せい!」
「うわぁっ!」
予選試合を順調に勝ち進んでいくヒィーク。
一般の参加者では彼の相手にもならないだろう。
ショーナが護衛についているものの、魔王教団のメンバーらしき者の姿も見えない。
予選の試合を何回か終え、一旦ヒィークの順番は終わった。
次の試合はまた少し後となる。
「ふぅ、すこし休憩しよう」
「お疲れ様です」
「ありがとう、僕の試合は終わったけど…」
ショーナが飲み物とタオルを差し出す。
それを受け取るヒィークだが、彼には気になることがあった。
メノウの事だ。
彼女は今、魔王教団の眷属たちの始末をしている。
「あの子に一人で任せてしまったが、僕も手伝いに行った方が…」
成り行きではある物の、少女に厄介ごとを押し付けてしまったのだ。
そのことに罪悪感を感じているようだ。
「大丈夫です、メノウは強いですから」
「けど…」
「アイツを信じましょう」
「…キミはあの子に絶大な信頼を置いているみたいだね」
「ええ」
「若いっていいね」
「あなたも若いでしょ」
「そういう意味じゃなくてさ。青春してるなぁ…」
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一方その頃、メノウは東アルガスタ予選会場内をまわり眷属を探索していた。
既に何人か見つけて倒しているものの、減っているようには感じない。
しかし一人ずつではあるが確実に倒していくことが重要だ。
「無色理論!」
「うわあぁぁ!」
「ああああああああああ!」
会場の裏手に魔王教団の眷属数名を誘い込んだメノウ。
それらを纏めて無色理論の魔法で元に戻していく。
魔法効果や約束事を打ち消す能力を持つこの魔法。
それを受けた眷属たちからは紋様が消えていった。
「どれどれ…」
その場に倒れた元眷族の人間の様子を見るためしゃがみ込むメノウ。
意識こそ失っているが、外傷などは一切ない。
少し時間が経てば、完全に元に戻るだろう。
「威力は抑えたつもりじゃったが…それでも少し負荷が強かったかのぅ…」
気絶した者たちを運ぼうと腕に力を入れようとするメノウ。
と、そこに…
「はいはーい!」
「ん?」
メノウの前に現れた一人の不審な男。
髪を剃り、肉付きの良い丸々とした顔。
小太りで小さめの身長にもかかわらず、少し頭が大きい謎の人物。
その彼が満面の笑みを浮かべ少しづつ近づいてきた。
今、この場は複数の人物が倒れ、その中央に少女が立っているという異様な光景が広がっている。
そんな中で笑みを浮かべて歩み寄ってくる者など普通ならばまずいない。
しかし、この不審な男は近づいて来た。
…それを見てメノウは確信した。
「お前さんもか…」
「何がですか?僕はですねこの大会に参加するついでにスピリチュアルな占いの屋台を…」
「魔王教団、と言えば分るか?」
魔王教団の名を聞いたその男に一瞬、動揺の色が見えた。
彼の名はカット・アサノ、またの名を『彩湖 Mr.マイーン』という。
この予選の参加者であり、そのついでに占いの屋台を出店しているという男だ。
予選でもそこそこの戦績を持つと聞いていたが、どうやらそれは紋様の力によるものだったようだ。
「アーッ!なんでそのこと知ってるんだよ!」
「正体あらわしたのぅ」
「チッ、うっせぇな緑髪のガキが…」
先ほどまでの丁寧な言葉とは打って変わり、荒々しい口調と険しい顔になるアサノ。
その怪しげな風貌から、魔力を見るまでも無く魔王教団の眷属であるということが分かった。
彼の着ている青い上着のせいで素肌を見ることはできないが、恐らくその身体にはあの紋様が刻んであるのだろう。
「一応言っておくぞ、その紋様は放っておくと大変なことになる」
魔王教団の紋様、それは刻まれた者に強大な力と教団への忠誠心をもたらす。
刻まれたものは通常の数倍の力を発揮できるようになり、同時に自然治癒能力や魔力なども上昇する。
しかし当然、デメリットも存在する。
長く紋様を刻まれたものは精神が徐々に崩壊していくのだ。
「もうそんな者は見たくない。ワシならそれを消せるが…」
以前メノウは魔王教団に洗脳されたスート、アズサ、ウェーダーと戦った。
後にその術を調べた結果、あの洗脳術というのは紋様による精神崩壊を利用した物だということが分かった。
紋様をわざと弱めに刻むことで精神崩壊ギリギリの状態にし、彼らを操っていたのだ。
操るため完全には精神崩壊しないようストッパーもかけられていたが、通常の紋様にはそれが無い。
「…いやぁね、この力さえあればね、勝負に勝てるんですよ。誰にも頼らず自分の力でね」
「自分じゃない、借り物の力じゃ」
「そう思うのはあなたの勝手です。とにかくこの力は絶対わたしません!」
「…ならば実力行使しかない!無理矢理にでも消させてもらう!」
紋様を消すためには多少の実力行使もやむを得ない。
地を蹴りアサノとの距離を詰め、無色理論を放つ。
「無色理…!」
「エイ!ヤァ!」
近くに落ちていたアックスを拾い上げ、それでメノウに斬りかかるアサノ。
難なく避けるメノウだが、デタラメに振り回されるそのアックスにただただ困惑を隠せない。
このまま放っておいて勝手に疲れるのを待ってもいいがそれも面倒だ。
そう考えたメノウは敢えて攻撃を誘った。
「それでは一生かかっても勝てんぞ」
「…幼女相手でも手加減はしないんで。エイ!アー!」
「ヌッ!」
挑発を受け、力を込め振りかざしたアックス
それはメノウでは無くその背後にあった木製の資材に突き刺さった。
アックスが当たる瞬間、メノウがそれを避けたのだ。
「アァッ!?ふざけんなよぉ!」
アックスは深々と資材に突き刺さり抜くのには時間がかかりそうだった。
それは彼も理解しているのかアサノはアックスをそのまま捨てた。
その代わりに別の資材を武器代わりにメノウに殴り掛かった。
「ガアァァァァァァァァァァ!」
「もうやめろ!無色理論!」
「ガァァァァァァ!!」
無色理論の魔法を受け、奇声を上げながらその場にしゃがみ込むアサノ。
さきほどの一撃で倒れた者たちよりは多少腕がたつらしい。
魔法攻撃によるダメージで意識を失うことなく、苦痛に歪んだ顔でメノウを見据える。
「せっかくもらった力がぁ…」
「そんなものに頼るな」
「くそぉ…!俺のインチャを癒せるチャンスだったのにぃ…!」
「無色理論を受けても気絶しないというのはすごいが…」
その場にうずくまるアサノを見て油断したのか、メノウに僅かな隙が生まれた、
アサノはそれを見逃さなかった。
彼も一応はこの予選大会の参加者。
相手の隙を見極めるくらいの実力はある。
「今だ!『アイブライト』!」
「オォッ!?」
被術者のステータスに異常を発生させる『アイブライト』と呼ばれる魔法攻撃。
それを彼は使用できるのだ。
僅かな時間、脳に異常を発生させ命中率や回避率を減退させる。
「アイブライトを使って幼女に…ふふふ…」
「お前さんは何を考えておるのか」
「え、効いていないの?」
「ワシに魔法は効かん」
「効かない強敵だったのか…」
「ハッ!」
呆然とするアサノに対し、メノウが軽い衝撃波を放った。
威力はほとんど無居に等しく攻撃用では無い。
ちょっと強い突風程度の風圧だ。
突然の風にあおられたアサノはその場に尻餅をついてしまった。
「あっ!」
「しばらく頭を冷やしておれ!」
尻餅をついた彼の頭を軽く叩くメノウ。
これも先ほどの衝撃波と同じくダメージを与える目的の攻撃では無い。
脳に軽い衝撃を与え、興奮状態にあった彼を気絶させるための技だ。
それを受けたアサノは気絶。
その場に崩れ落ちた。
「なにか変わったヤツじゃったなぁ…」
「うぅ…インディゴ…」
「とにかく、他の眷属もできるだけ見つけ出さんとな!」
その言葉と共にメノウはその場から立ち去って行った。
名前:カット・アサノ
別名 彩湖 Mr.マイーン
性別:男 歳:32 一人称:僕、俺などを使い分けている
恰好:スキンヘッドに来いアゴヒゲ、青い上着が特徴的。
目つきが鋭くどこかワイルドの雰囲気が漂う。
武器:アックス、棒術用の混など
東アルガスタの名家出身の男。
東洋武術を一通りたしなんでいる。
スピリチュアルな思想の持ち主で心が弱い。




