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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第4章 交錯する3人の主人公たち
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第九十九話 嵐を呼ぶ最終予選!血路を開け、東アルガスタの戦い!


 北アルガスタを立ち約一週間、メノウ達は東アルガスタへとたどり着いた。

あらかじめ少し早めに北アルガスタを出たため比較的早めにつくことが出来た。

このゾット帝国内で行われる討伐祭予選もこの東アルガスタで最後となる。

最終予選は参加者も最も多く、そしてレベルも高いと言われている。


「着いたぜ、東アルガスタ」


「ああ、着いたのう」


 そう言いながら列車から降りるショーナとメノウ。

二人は今、次の予選が行われる東アルガスタの中央都市『ナンバ』へとやってきていた。

数年前、疾風の少女カツミと共に旅をし、数多くの強敵と戦いを繰り広げたこの地だ。


「東アルガスタか…」


 当時は古代ラウルのドラゴンの生き残りであるオオバがこの地を支配していた。

メノウとの戦いにより彼は倒され、東アルガスタは現在別の軍閥長が治めている。

ゲンを担ぐ意味を込め、メノウは数年前の東アルガスタの旅の時と同じ服を身に纏っていた。

いつものローブとベール、そして首に巻いた白いストールと腕の純金製と純銀製のバングルを。


「やっぱりこの街はいつも賑やかじゃなぁ…」


 戦後に作られた都市としては珍しく、このナンバはとても発展を遂げている。

ゾット帝国の殆どの都市が戦前の街並みを修復、再現している中で唯一の近代都市だ。

高層ビルやアスファルト製の道路、街の隅々まで張り巡らされた送電線。

その町並みは数年前、メノウが訪れた時よりもさらに賑わっているようにも見えた。


「俺は初めて東アルガスタに来たけど、すごい未来的だな、ここは」


「人も多いしのぅ」


 貨車に積み込んだ荷物が降ろされるのを駅の構内で待つ二人。

以前訪れていた北アルガスタの寂れた町とは打って変わり、この東アルガスタは駅の中すら人で賑わっている。

ふと駅の構内を散策していると、食事を販売している売店を見つけた。


「あ、弁当売ってる」


「どれどれワシが買ってこよう。二人分な」


「いくらだろう?…あ!」


 この東アルガスタは物価が他の地区よりも少し高めだ。

そしてこの弁当がまた、なかなかいい具材を使った弁当だったらしい。

他の地区の駅で販売している弁当の二倍近くの値段をしていた。


「財布は確か…」


「よいよい、ワシが出すから」


「いいよ、俺が出すって…」


 互いに妙な気を遣わせてしまったと感じる二人。

少し考えた後、メノウが口を開いた。


「…そうか。ならばワシは向こうで水を買ってくるとしようか。お主の分もな」


「…おう、ありがとう!」


「ふふふ。後でゆっくり食べようぞ」


 そう言って別の売店に水を買いに行くメノウ。

弁当を買ったショーナと共に、一旦駅をでる。

東アルガスタに着いたばかりで浮かれていたが、ここにも来ているはずなのだ。

ルビナ姫からの依頼を受けた迎え人が。


「ここにも迎えが来ておるのかのぅ?」


「誰が迎えに来るのか心当たりはあるかメノウ?」


「東アルガスタじゃと…そうじゃなぁ…」


 南アルガスタではミーナとショーナ。

西アルガスタではウェーダーが迎えに来てくれていた。

ルビナが各地方にいる、メノウの知り合いを向かわせるよう手配をしてあると以前話を聞いた。

東アルガスタで迎えてくれるのは一体誰になるか…?


「カツ…いや違うな…」


「ん?」


「意外とビャオウやザクラかもしれん…?わからん。わからんわ」


「よくはわからないけど、まぁでも心当たりはあるんだな」


「まぁの」


「それならメノウ、お前はここで待っててくれ。俺はアゲートを引き取ってくるよ」


「おう。表で待っておるぞ」


 愛馬のアゲートを列車から降ろすため一旦場を離れるショーナ。

メノウは荷物と貴重品、弁当を抱えて、駅の表で待つことに。

行き交う人々に目を移しながらショーナが来るのを待つ。

と、そこで…


「ん、あれは確か…」


 駅前の多車線道路に目をやるメノウ。

そこを通っているのは殆どが普通の車だった。

しかしそこに一際、目を引く乗り物があった。


「大きなバイクじゃな、珍しい…」


 大排気量の大型バイク、それが駅前にとまったのだ。

あまり見ない珍しい乗り物に少し興味をひかれるメノウ。

バイクの主がヘルメットを脱ぎ駅前に降り立った。


「ん…お前さんは…!?」


「久しぶりだな、メノウ」


 メノウが目を移したその先にいた一人の男。

それは彼女がよく知る人物だった。

開陽と玉衝、二つの流派の使い手ヤマカワ。

東アルガスタの旅の途中、メノウと戦ったこともあるカツミの兄弟子だ。

どうやらこの大型バイクは彼の物だったらしい。


「そうじゃなヤマカワ。久しぶりじゃな」


 以前の戦いから数年が経過している。

かつての荒々しさは影を潜め、どこか落ち着いた雰囲気をしていた。

しかしその腕はあの時よりも遥かに洗練されたものであろうことは、服の上からでも一目でわかった。


「数年ぶり…くらいか?」


「ああ、それくらいだ。帝国の使いの者から話は聞いた。全てな」


 近くのベンチに座りこむヤマカワ。


「全て…魔王教団のこともか?」


「ああ。それも聞いた。大変なことになっているらしいな…」


 あらかじめメノウの交友関係と各地の実力者を調査し、彼女に協力できそうなものにその要請。

ここまで手を回したルビナの腕には心底驚かされる。

流石は王族の権力者というべきか。


「先に言っておくが、カツミのヤツは来ていないぞ」


「なんと」


 どうやらヤマカワによると、数年前に再び放浪の旅へと出てしまったらしい。

元来、ひとつの場所へ定住するのが性に合わない性格なのだろう。


「そうか、残念じゃ。できればあいたかったが…」


「目立つのは好まぬアイツのこと。討伐大会にも参加はしないだろう」


「ヤマカワ、お前さんは参加するのか?」


「一応そのつもりだが」


 大会に参加するのは開陽の流派からはヤマカワのみらしい。

他に参加するのは一般の参加者だ。

とはいえ、この地区は東方大陸からの移民が多い。

東方大陸に伝わる拳法を使う者もいるという。


「姫からの依頼通り、俺もできる限り協力はしよう。宿泊先の用意や修行相手くらいだが…」


「いやいや、かたじけない…」


 ヤマカワと話すメノウのもとに、ショーナが戻ってきた。

アゲートも一緒だ。


「メノウー!アゲートのヤツ連れて来たぜー!」


「おうショーナ、迎え来ておったぞ」


「まじかー!?」


「姫から案内を任されたヤマカワだ。よろしく頼む」


「よろしくおねがいします、ヤマカワさん」


 一行はヤマカワの案内の元、予選会場のある街の郊外へと向かうことに。

とはいえこの時点ではまだ会場に入ることはできない。

予選会場の近くに出場者用の宿があるため、一旦そこに向かうという。


「宿も街外れにとってある。大会開催まではそこを使うといい」

 

「ありがとうございます」


「すまないな、ヤマカワ」


「これくらいなんでも無い。馬も泊められるから安心してくれ」


 そう言ってバイクを噴かせるヤマカワ。

彼をメノウの駆るアゲートで追うことになった。

ショーナもメノウと共に載っているためいつも通りの速度は出ないが、街中ならはぐれる心配は無いだろう。


「それにしても大きいバイクじゃなぁ」


「荒野を旅するならこれくらいは必要だからな」


「ほぅ」


 そう言打と共に、今まで通っていた大通りから裏道へ入って行く。

裏道とはいえ、人通りが少し減った程度で道路の広さなどは変わらないが。

別の車が減ったおかげで先ほどよりすこし走りやすくなったと言える。


「お前たちこそ、単なる馬でよくそんなスピードが出せるものだ。なかなかいないぞそんな馬」


「ワシの…いや、ワシとショーナの自慢の相棒じゃからな」


「なるほど」


「あと少しで宿に着く。少しスピード出させてもらうぞ!」


「おう!」


「予選開始まであと三週間、その間なにもないといいが…」



 

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